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気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

Moonlight Weeps by Vincent Zandri

2016-02-21 09:32:34 | 読書感想

The Shamus Award by PWA(Private Eye Writers of America) Best P.I. Original Paperback部門  2015年受賞作品

俺、Dick Moonlightは拳銃で自殺しようとして失敗し、その銃弾が脳に止まり、何時死んでもおかしくないと医者に言われている。人々から気違いじみたやつ(head case)と呼ばれる俺は探偵を生業としている。

そして、今日、俺は一文にもならないと分かった調査の報告を依頼人にしている時、死んだはずの俺の最愛の恋人Lolaにうり二つの女性が目の前を通り過ぎていくのを見て衝撃を受ける。数ヶ月前、俺は彼女が息を引き取ったのを見て路上に彼女を放置してその場を去った、彼女の死んだという事実からできるだけ遠ざかるため。
俺は、彼女を失った絶望感の深さから、Lolaについては思い出さないように努力していて、彼女の葬儀が行われたかどうかも知らなかった。
Lolaが生きている可能性はあるのか?彼女の後を尾行して彼女がLolaであるか確認したいという欲求が俺の心を騒がせる。しかし、別人だと分かったときの落胆と今以上の絶望感を思い、俺は、確実に報酬を払ってくれる依頼人の下に自家用に使っている父親が残してくれた霊柩車で向かう。

俺を待っていたのは高級なスーツを着た脳外科医Schroder。酒とパーティー好きな彼は飲酒運転で運転免許を取り上げられていた。彼は、免許停止が解かれるまでの間、運転手兼ボディーガードとして俺を雇いたいと話す。報酬は一日300ドルプラス経費、金欠気味の俺にとって悪くない仕事だ。俺は彼に、俺は脳には障害があり、運転中に気を失う可能性があることを話すが彼は気にしないと言い、俺は仕事を引き受ける。

俺が与えられた最初の仕事は、女子学生にレイプされたと訴えられ、停学処分になった彼の馬鹿息子Stephenを学校に迎えに行くことだった。未成年であるにもかかわらずビールとタバコを要求する馬鹿息子、息子の停学処分を気にもせず、その要求に応えてビールとタバコを用意するSchroderの親馬鹿ぶりに俺は唖然とする。

そして、その馬鹿息子がレイプと殺人で警察に逮捕されたことで俺は探偵として雇われることになる。彼は自宅で開いたパーティーにやってきた女子学生をレイプし、その場面を写真に撮りネットに公開した。レイプされたと訴えている女子学生は、それを苦にして自宅の地下室で首を吊って自殺していた。警察は自殺は写真投稿に因るものものだとしてレイプばかりでなく殺人容疑(reckless murder)で彼を逮捕していた。
Schroderは息子はレイプなどしていないと断言し、息子の無実を突き止めてほしいと俺に調査を依頼する。

俺は銃弾が脳にあるために いつ死んでもおかしくない状況にある。そのため俺は依頼人の利益よりも何が正義であるかに留意して調査を行う、あの世で神に祝福してもらうために。
Stephenは女子学生をレイプしてその写真をネットに投稿したのは事実か?Schroderは、彼らを監督することなく息子のために自宅でパーティーを開き、未成年者の彼らにアルコールをふるまったのは事実か?そしてみずからも酔っ払い運転で捕まったのは事実か?もし それが事実ならそれは正義ではない。またそれが事実でないならば警察が逮捕したのは正義に反する。
そして、警察が女子学生が自殺であるのが明白であるにもかかわらずStephenを殺人罪で逮捕するのは正義に反する。

俺は事件当夜なにが起こったのか、真実を突き止めるべくSchroder父子はもちろん当時現場にいた人間から事情聴取を始める。そして、警察がなぜ、Reckless Murderという不可解な理由で彼を逮捕したのか、警察は明らかに彼らに対し遺恨を持っているように見える。警察と彼ら父子にどんな対立関係があるのか、俺は視野を広げて事件を調べることを決意する。

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各章が短く、コミックのカット割りの描写ように場面転換が早い。なかなか読み易い。
プロットもうまく捻ってあって、Moonlightの推理も聞き込みをするたびに軸が揺れ、事件の真相がなかなかわからない。そのまま、最後のクライマックスに突入、どういう風に終わるのかとわくわくドキドキさせるが、僕としては、違う結末を期待していたので、ちょと期待はずれな終わり方だった。

キャラはなかなか魅力的、脳の中に手術不可能な銃弾があり、何時その銃弾が脳に衝撃を与え死ぬかわからない。しかし、彼はその事実を達観している。昔の探偵小説コミックを読んでいるような錯覚を覚える。今は亡き(?)恋人を想い続け、酒を浴びるほど飲み、たばこをくゆらしながら事件の調査を行う。運転する車は葬儀屋だった父親が彼に残した霊柩車。依頼人の利益を考えず、常に何が正義かを考えて行動する。

Kindle版 ★★★★ 235ページ 2014年8月出版 480円プライム会員なら無料


Armed and Fabulous by Camilla Chafer

2016-02-14 12:15:20 | 読書感想

アラバマ州のMontgomery市にあるGreen Hand損害保険会社の非正規従業員として働くLexi Gravesは上司の要求する保険に関する法律や資料を調べる仕事をしている。仕事は単調退屈で、彼女は素早く上司に提出する調査レポートを作成しては、就業時間の残りは、密かにネットサーフィンで買い物などをして過ごしている。たまに 上司で超イケメンのAdam Maddoxのプリンターに誤って買い物した商品の内容(下着)を送って慌てたりするが。

そんなある日、調査資料の作成に熱中するあまり残業になってしまった彼女は、残業代が稼げたと喜びながら、人気のない社内を依頼された資料を届けに副社長のMartin Deanの部屋に行く。そこで彼女は、銃で撃たれた彼の死体を発見する。呆然としていた彼女は殺人犯と思われる男の足音が近づいててくるのを聞き、慌ててクローゼットに隠れるが、そこにはAdamが隠れているのを見てパニックになる。

ふたりは、男たちの隙を見て、その場を抜け出す。そして彼女は、Adamが数百万ドルの保険詐欺を捜査している潜入捜査官であることを知る。Adamは彼女にDeanが容疑者であったこと、殺人犯はDeanから彼女が作成した資料を欲していたと話し、心当たりがないか問う、また社内に詐欺に関係している者が他にいると云い、彼女に同僚の中に疑わしい行為をしている者がいるか密かに調べるよう捜査協力を要請する。

Lexiは、シリーズ全作品を見たジェームズボンドのように自分がスーパー シークレットエージェントになった気分になり、興奮する。そして、秘密にするようにAdamから忠告されていたにもかかわらず、つい、親友のLilyにすべてを話してしまう。

そして、LexiとLilyのふたりはゲーム感覚で独自にDeanの身元を調べ始める。Lexiが第2の犠牲者を発見、これが遊びではなく現実の殺人事件であることに気づき、恐怖におびえるまでは。

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重めのミステリーを読んだ後は、こういう軽めのミステリーを読むと気分が楽しくなる。決して死体が出てこないと言うのではないけど、散々、死体が無惨に切り刻まれていたというミステリーを読んでいた僕には気軽に読んでいける。

プロットがいまいち。内定捜査を始めているなら、その根拠となる資料や証拠を掘り下げて捜査が進むと思っていたら、結局、Lexiの身勝手な行動(?)、推理によってだけ捜査が進展していく。肉体的には魅力的な二人の捜査官、もうちょっと捜査能力のような知的な魅力も必要だと思うのだけど。

Lexiの語り口がすごく心地よく、どんどんストーリーに引き込まれていく。退屈な事務仕事に飽きていたLexiが、まるでスパイ映画のヒロインのように、潜入捜査のメンバーとなって(?)、無邪気にわくわく、興奮する様子が彼女のナレーションから伝わってきて、読んでいる方もわくわくしてくる。超魅力的なAdamとの潜入捜査という響きに引かれた軽薄なキャラかと思っていると、Adamが、彼が言うとおり、本当に警察官であるか、警官である兄にそれとなく確認したりして意外としっかりしている。

Lexiが二人の魅力的な男と出会い、どちらとも決めかねずに両方に恋心を抱いてしまう。ちょっと、他の作者のシリーズの設定と似ているところもあるがこういう設定はロマンスミステリーの定番として気にしないことにしよう。


Lexi Graves
29歳、 Alabama州 Montgomery市在住
好奇心は人一倍あるが、超臆病。犯人捜しに夢中になっているにもかかわらず、何かあると、すぐに怯えたり悲鳴をあげたり・・
死体を見ても冷静に状況を判断する。自分の指紋を現場から消去したり、死体を調べたり・・・
スマート⇒与えられた仕事を上司が想定したよりも短時間でこなす。また調査能力も抜群。
要領がいい⇒地下室に資料を調べに行くと言ってスターバックで時間を過ごす。

Kindle版  ★★★ 300ページ 2012年5月 出版 300円


A Faint Cold Fear by Karin Slaughter

2016-02-07 09:49:15 | 読書感想

日曜日、小児科医と検視医を兼務するSara Lintonは妊娠中の妹Tessaと買い物を楽しんでいるとき、元夫で警察署長であるJeffrey Tolliverから検視の要請を受ける。
SaraはTessaを連れて、死体があるという大学の敷地の河川敷に車で向かう。大学のセキュリティ責任者のChuck Gainesによって、死体は学生のAndy Rosenだと判明したが、彼は橋の上から飛び降り自殺したと、Saraは結論づける。自殺にしては不自然な傷が彼の背中についていることに疑念を持ち、最終的な結論は解剖を待ってと言いながら。

検視を終え、車に戻ったSaraは、妹のTessaがいないことを知る。Tessaを探しに行ったSaraは何者かに刺されて血だまりの中に倒れている彼女を見つける。たとえ、Tessaが頼み込んだったことだとしても、彼女を犯罪現場に連れてきたことで起きた惨事にSaraは自責の念にかられる。Saraは瀕死の状態の妹が助かることを神に祈りながら救急ヘリで彼女とともに病院に向かう。

JefferyはAndyの手首に自殺しようとした痕跡があることや遺書も発見されたことから彼は自殺した可能性が高いと考える。しかし、すぐ近くでTessaが何者かによって襲撃されたことやTessaが襲われた現場付近でAndyが身に着けていたネックレスが発見されたことなどから、JeffreyはTessaを襲撃した犯人がAndyを自殺に見せて殺した可能性も考慮に入れて捜査を指揮することを決心する。

また彼は元部下だった刑事のLenaがTessaを襲撃した犯人を追跡したにもかかわらず、犯人の特徴や服装を供述しなかったことに、彼女が何かを隠している?という疑惑を持つ。

そして翌日、また、大学生が自殺する出来事が起こる。現場を検証したJeffreyは 、自殺というには不審な点があるのを発見する。Jeffreyからこのことを聞いたSaraは、自殺か殺人か見極めるために二人の司法解剖を自ら行うことを決心する。

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一年前の事件から立ち直れないLenaの行動に終始やきもきしながら読み終わった。会う人々、皆に敵対的行動をとるLena。Lenaの活躍を期待していた僕にはがっかりな彼女の態度、行動だった。

つぎつぎと犠牲者が出て飽きることなく物語に引き込まれていくが、犯人が分かる過程、謎解きがいまいち説明不足で不満。

SaraとLena、二人の女性のキャラが前作(Blindsighted)と比べるとひ弱になっている。犯罪捜査にあたる女性なのだから容疑者や大男にあってもビクつくことなく対応できることを期待していたのだが。 

前作の感想で家族の絆の強さが清涼剤と書いたが、今回はその家族の絆の強さがピンチ。爽やかな部分が無くなって、読んでいくうちに、すごく重苦しい気分になってしまう。

SaraとJeffreyの関係も、仲がいいと思うと急に関係が悪化したり、また親密になったりの繰り返しが延々とつづられていって、ミステリーというよりロマンス小説?と思ってしまう。

 Kindle版  ★★ 343ページ 255円 2004年7月 出版

 


Blindsighted by Karin Slaughter

2016-01-31 09:48:40 | 読書感想

Georgia州、Grant CountyのHeratsdaleという小さな町で小児科医と検死医を兼務するSara Lintonは昼食を取りに行った店のトイレで女性がレイプされ刺殺されているのを発見する。
殺された女性はSaraも顔見知りのSibyl Adamsという目が不自由な33歳の大学教授だった。

彼女は直ちに警察署長で元夫のJeffrey Tolliverに連絡する。現場に到着したJeffreyは腹部を十字に切り裂かれた死体を見て慄然とする。被害者Sibylは犯罪捜査課の唯一の女性刑事Lenaの双子の姉であった。被害者の身内であるLenaを捜査から外すべきか悩んだ彼は、彼女を捜査から外すと独断で捜査を行うことを懸念、また彼女が刑事として優秀であることを考慮して、彼女を捜査チームに加える。LenaはSibylの死に驚愕するが、Sibylの死を悼むよりも彼女を殺した犯人を突き止め電気椅子に送ることに全力を挙げることを決意する。

捜査会議に参加したSaraは、犯人は盲人であるSibylのお茶に利尿作用のある薬belladonnaを投入し、トイレでSibylを待ち伏せて殺したと話し、犯人が誰であろうと、かなり注意深く計画された犯行であると断言する。
Jeffreyは、Sibylの身近な人間への聞き込みの他、性犯罪歴のある住民のリストを作り、捜査員たちに個別に当たるように指示する。

そんな中、Sibylの交友関係を調べに彼女の教えている大学に行ったJefferyとLenaはJulia Matthewsという女子学生が行方不明だということを知る。そして翌日、彼女がSaraの車のボンネットに放置されているのがSaraによって発見される。

彼女を綿密に調べたSaraは、12年前に、自分に起きた悲惨な出来事が事件の手がかりを握っている可能性に気づく。それはまた、彼女の身に危険が迫っていることを意味しているのだが。

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Sara Lintonが主人公の物語と思って読み始めたが、Grant Countyシリーズと名付けているようにSara、Jeffrey、Lena3人が主人公で展開するストーリーだった。Saraが死体から殺された状況を的確に推理していく様子がかっこよく、彼女の主導でストーリーが進むかと思ったら、やはり検死医という立場のため捜査には関与せずにJeffreyが捜査の主体となっていたのは残念。もうすこし彼女を捜査に関与させてほしかった。

検視の場や救急現場では毅然とした態度を取りながらも、自分の過去の悲惨な体験をJeffreyに知られることを恐れるSara。黒人や女性を対等とみない南部アメリカ社会の偏見と苦闘するJeffery、そしてなんとかSaraの愛情を取り戻そうと奮闘するJeffrey。女であることで同僚の刑事たちから軽んじられていることに苛立ち、反発するLena、また保守的な町でSibylがレスビアンであったことを隠し、姉の名誉を守ろうとするLena。それぞれのキャラがとても魅力的に語られていく。また、Saraを見守る両親、妹の絆の強さが物語の清涼剤となっている。

検視の場面、犯行の場面、過激な描写にびっくり。絶対、映像では見たくない。頭にその場面を思い浮かべたくないけれど、He didn't want to think about Sibyl Adams,blind,sitting on the toilet while her attacker slit....と描かれたら読んでる方は、つい、そのシーンを頭に想い描いてしまう。文章を通して被害者の恐れ、動転した様子、またLenaの回想を通して幸せそうに微笑むSibylの姿が見事に描かれている。

blindsight ➡ 盲視(光源や他の視覚的刺激を正確に感じ取る盲人の能力)、またbelladonnaの薬効によって起こる作用you can see ,but your mind can't make out what it is you're seeing p242より

Kindle版 ★★★★ 434ページ 985円 2001年出版


Lethal Bayou Beauty by Jana Deleon

2016-01-17 12:50:16 | 読書感想

CIA所属の暗殺者Fortuneは、武器密輸業者から100万ドルの賞金をかけられ世界中の犯罪組織から命を狙われている。彼女の身を案じた上司の命令で、彼女は、Louisiana州、Sinfulという田舎町に図書館職員と身分を偽って、身を隠す。
退屈な田舎暮らしを想像していた彼女の予想に反して、彼女は、次々と事件に巻き込まれていく。

今回の事件は、Pansy Arceneauxという女性がこの町へ帰ってきたことから始まった。彼女は元beauty queenで、数年前に女優を目指してハリウッドへと旅立っていった。
Pansyの帰郷の目的は、Summer Festivalで行われる子供達の美人コンテストの美容指導を行うためと云われているが、Fortuneの世話役を自認する老婦人のIda BelleGertieの二人は女優になる夢を絶たれ、母親のCeliaから金を無心するために彼女は戻ってきたのではないかと考えていた。一方、町の多くの男たちが、Pansyと肉体関係をもっており、彼女が帰ってきたことに戦々恐々としていた。

Fortuneは、Pansyと同じく元beauty queenの図書館職員というふれこみでこの町に身を隠しているため、このコンテストに参加を余儀なくされる。
そして、子供達が集まったコンテストのリハーサルの日、美容について全く無知なFortuneはPansyから侮蔑的な言葉を浴びせられる。怒ったFortuneはもう一度同じ言葉を浴びせたら彼女を殺すと威嚇する。

翌朝、Fortuneは副保安官のCarterから、深夜、Pansyが自宅で殺されたと告げられ、彼女のアリバイについて聞かれる。
町の多くの人々が昨日の二人の諍いを目撃していて、彼らはFortuneがPansyを殺したと考えていた。
もし、警察が自分を容疑者として逮捕して、身元を調査し始めたら、犯罪組織に潜伏場所が知られてしまう。その可能性を憂慮したFortuneは Ida BelleとGertieの協力を得ながら、自ら真犯人の捜査に乗り出す。

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アメリカ特有のドタバタコメディーにはついていけないところもあるが、Fortune,Gertie、Ida Belleの3人のキャラの面白さで楽しく読めた。
普通、NYやDCの大都会に過疎の町からやってきた若者が、何も知らないの田舎者とバカにされるのに対し、都会から過疎の町にやってきたFortuneが世間の常識を知らない田舎者(?)として描かれているのがおもしろかった。


Kindle版 269ページ ★★★★  561円 2013年3月8日出版


Invisible City by Julia Dahl

2016-01-11 16:08:24 | 読書感想

フロリダの大学のジャーナリスト学科を卒業したRebekah Robertsは、世界の中心地New Yorkの一流紙の記者となり名声を得ることを夢見ていた。しかし、応募が殺到する一流紙の新聞記者となるのは容易ではなく、彼女は、タブロイド紙New York Tribuneの非正規の記者となり、毎朝、編集デスクからその日の取材対象を指示される遊軍記者となる。

そして 厳寒の一月の金曜日、彼女は編集デスクからBrooklynのスクラップ置き場で全裸の女性の死体が発見されたので取材に向かうよう指示される。
現場に着いた彼女は殺された女性がユダヤ教の厳格な規律に従うHasidicであることを知り胸騒ぎを覚える。
彼女の母親もHasdicで、彼女が生まれてまもなくフロリダに住む彼女と彼女の父親を見捨てて、New YorkのBrooklynのユダヤ人地区に移り住んでいた。彼女が New Yorkに職を求めた理由のひとつは、母親がBrooklynに住んでいることも関係していた。

取材を始めた彼女は 警察とHasdicとの奇妙な関係に戸惑う。彼女は、殺された女性の死体が死因の特定に必須である検死を行うことなく、現場に駆けつけたHasdicの男達に引き渡される場面に遭遇する。警察は真剣に事件を捜査する気があるのか?彼女は疑問を感じる
やがて、彼女は殺された女性がスクラップ置き場のオーナーAron Mondelssohnの妻Rivka であることを突き止め、さらなる情報を得るためにHasdicが住むユダヤ人居住区Borough Parkに向かう。そこは 新聞もTVも見ることを許さない世間とは隔絶したInvisible Cityであった。そして、そこは彼女の母親が生活している町でもある。彼らは自分達に起きた出来事は自分達で解決する自治権を主張し、部外者の介入を好まなかった。

Rivkaの自宅前で聞き込みを行おうとした彼女は、彼らに拒絶され取材は困難をきわめる。しかし、粘り強く取材を続けた彼女は、彼女もユダヤ人であることを知った数人から殺されたRivkaの人物像を得ていく。また、彼女は、そこで思いがけなく彼女の母親を知っているというユダヤ人の警官Saul Katzに出会う。彼は NYPDは捜査に消極的で、このままでは Rivkaの死の真相はあいまいなままに終わってしまうと言い、警察の捜査にプレッシャーをかけるため、事件を記事にして欲しいと話す。彼は 密かに、Rivkaの死体を彼女に見せ死因は殴打によるものだと教えるなど、他の誰も知らない情報を彼女に与えていく。

彼女は、スクープの予感に緊張する、今までは、デスクの指示で事件を取材しているだけで、一つの事件を追及し続けることはなかった。
Rebekahは、何時間も人々の前に無惨な姿をさらしていたRivkaの無念を想い、また、Rivkaのことを調査していくことは、同じHasdicだった母親のことを知ることになると考え、独自に取材していくことを決心する。

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ミステリーというよりは、Hasdicという閉鎖された社会に対する好奇心とRebekahのキャラで読ませる作品だと思う。また、Rebekahの取材を通して見えてくるRivkaの生き様、不合理と思われる戒律から抜け出そうともがき苦しむ彼女の様子がよく描かれている。

2015年のMWA新人賞と Mary Higgins Clark Awardsの最終候補作になったにも関わらず賞を逃したのは、おそらくミステリー色が、いまいち、薄かったため?。ただ、SHAMUS AWARDSのBEST FIRST P.I. NOVELを獲得している。たしかに Rebekahの粘り強く取材を続けるキャラは探偵としてとても魅力的。

 

また、作者が記者だという経験から描かれていると思われる取材の実態の様子。取材するのは記者、記事を書くのはエデェターという分担。なかなか事件の関係者からコメントを取れない点など、ワイドショーのレポーターが事件の関係者から情報を聞き出そうとマイクを突きつける姿を思い浮かべながらとても興味深く読めた。

 

 Kindle版 ★★★★ 298ページ


No Good Deed by Allison Brennan

2016-01-03 15:59:15 | 読書感想

!! この本はDead Heat,Besr Laid Plansに次ぐ3部作の最後の作品、順番に読むことをお薦めします。前の作品のネタバレが含まれています。少なくとも,Besr Laid Plansは先に読むことをお勧めします。!!

 

Texas州、San Antonio、月曜日朝、護送中のNicholeの乗った車が彼女の仲間によって襲撃される事件が起きる。多数の犠牲者が出る中、Nicoleは仲間と共に行方をくらます。彼女はDEAの捜査主任だったが、麻薬カルテルと結託していたことが露見し、逮捕、勾留されていた。
FBI捜査官のLucyは、週末の休暇中にSeanからプロポーズを受け、幸福感に満ち足りた気分でいたが、Nicoleの脱走の報告を聞き、直ちに現場に向かう。彼女は、Nicoleの不正を暴いた1人だった。多くの捜査官が麻薬カルテルのボスTobiasの犯行だと主張する中、Lucyは、護送方法を熟知している者しか考えつかない、子供が乗ったスクールバスを利用した鮮やかな脱走、襲撃の手口から、Nicoleがこの計画の首謀者だと確信する。
Nicoleの元パートナーだったDEA捜査官のBradは、Nicoleが襲撃の時間、場所をあらかじめ知っていたことから、DEA内部にNicoleの協力者がいると確信して、部外者であるLucyを上司の了解を得て捜査のパートナーとする。

Lucyは良く練られた計画だったことを考慮して、彼女が海外脱出の手段、潜伏するための隠れ家を用意していると確信する。そして、犯罪心理学者の資格を持つLucyは、上司のAbigail DurantからNicoleの身元調査書と経歴書を渡され、彼女のプロファイルを作るように命令される。
Nicoleの経歴を調べ始めたLucyは、彼女の経歴に嘘や謎が多く存在することを知る。彼女の警官だった父親はドラッグ業者の手によって殺されたと言う。何故、彼女はそういう彼らを取り締まろうとせずに、彼らと手を結んだのか?また、San Antonioに着任するまで、彼女は頻繁に勤務地の異動を上層部に申請していたのは何故か?。Lucyは、浮かび上がってくる多くの謎を解明するために彼女を知る人物をピックアップして彼らの話を通して彼女の人物像を特定しようとする。

そんな中、彼女が捜査中に知り合った捜査官達がNicole達によって次々と殺されていく。
遂には、Tobiasの行方を追っていたSeanの兄Kaneも行方不明になる。

Nicoleは何故、国外に逃げず、San Antonioに留まっているのか?DEAに対する復讐のため?彼女の思考パターン、行動パターンを理解するためにLucyはNicoleのプロファイルを完成することに全力をあげる。

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 最初から最後まで息詰まる展開。捜査機関内部に、Nichole達に情報を流す内通者がおり、自分の身の回りの人間を信用できない緊迫感の中で、次々と仲間の警察官や一般市民が殺されていく、アメリカのテレビドラマ「24」を観ているようなワクワクドキドキする面白さがあった。

また、Nicle、Tobias、Elise、3人の人間関係が分からず戸惑っていたが、やっと彼らの関係が明かになる、Tobiasの思いがけない正体にはビックリした。NicoleへのJosephの絶対的な愛は、SeanのLucyに対する愛情に匹敵、共に愛する者のために闘う姿は読みごたえがある。

Lucyは仲間、上司との関係が上手くいってないように感じて落ち込んだり、自分の推理が間違えていたらと不安に思ったり、悩み戸惑いながらも、他の捜査官が見逃すような出来事から犯人に迫っていく推理の冴えは見事。

 Kindle版 ★★★★★  発売日2015年11月3日 461ページ

 


Best Laid Plans by Allison Brennan

2015-12-20 10:32:48 | 読書感想

2ヶ月前の事件の後、上司Justinから2週間の公的休暇を取らされていたFBI捜査官Lucyは、Justinから現場に復帰するよう電話で命令され、直ちに現場に向かう。
Justinによると、モーテルで10代の少女を買春したHarper Worthingtonという男が性交渉中に心臓発作で死亡したという事案、一見、事件性はないように思われた。しかし、Harperは政府の防衛部署と取引している会計監査法人の所長で、妻のAdeline Reyesが下院議員であることが分かり、FBIが捜査を担当することになる。買春相手の少女は、男が死んだことに怯えて、男の金と携帯電話を抜き取ってその場を去っていた。

Lucyは、検死官のJulieからHarperの死について、いくつかのの不審な点を指摘され殺人の可能性が高いと告げられる。Lusyはそのような状況で死んだ男に同情を感じなかったが、仕事でダラスに出張したHarperがわざわざ買春のために飛行機でSan Antonioに来て、またすぐにダラスに戻る計画をしていたことを知り、彼の行動に疑問を感じる。

Lucyは男の死に立ち合っていたと思われる少女から当時の状況を聴くために少女の身元を突き止めるべく全力をあげる。
そして、Lucyは彼女が持ち去った携帯電話のGPSから、携帯電話が近くのホテルに放置されているのを発見し、ホテルの監視カメラから少女と客の映像を確認する。映像を見ていたLucyのパートナーのBarryは客の男をJames Everetという不動産業者と断言する、彼はHarperの知り合いで、Adelineの選挙資金の支援者でもあると。これは、偶然なのか?それともHarperの死と関係あるのか?鍵を握る少女の行方を追うLucyはHarperの死の背後に深い闇の存在を感じ始める。

そんな中、DEAのBradがLucyを訪ねてきて、二人が参加して壊滅させたメキシコマフィアの生き残りの男が組織の再構築を画策していることを話し、彼の顔つきを知っている唯一の人間、Lucyの命を彼が狙っていると彼女に警告する。
また、Lucyの恋人Seanは、Lucyが彼女を精神的破綻に追い込もうとする人物の存在に怯えていることを知る。そんな恐怖を忘れるために、捜査にのめり込んでいくLucyを見て、Seanは自分の持っている能力、人脈を利用して彼女を守るために全力をあげる決意をする。

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この本を購入した時の情報から、この本のページ数は560ページと思っていたので、435ページ辺りでEpilogueの章になって、あれっ?て思ってしまった。小さな出来事で始まった物語がどんどん広がって行き、先の展開が予測できず、わくわくドキドキしながらクライマックスへと導かれていく。うーん、面白い!でも560ページと思って読んでいたので、更なるどんでん返しがあるのかなぁと思っていた。、早めの終わり方に、ちょっとガックリ。まだ、未解決の問題が残っていて 次回作に持ち越しという感じ。

ただプロットは、タイトル通りよくできていて面白く読めた。特に、Lucyの好敵手と思われるキャラが登場するが、二人の対決は面しろかった。

 ★★★★ Kindle版 438ページ


Touch & Go by Lisa Gardner

2015-12-13 17:22:44 | 読書感想

Bostonの高級住宅街で大手建設会社の社長夫妻Justin Denbe,Libby Denbeと娘Ashlynが誘拐される事件が発生する。警備会社に勤めるTessa Leoniは、早朝、建設会社からの依頼で事件を独自に調査するよう、上司から命令される。
現場に着いたTessaは、捜査官にJustinがGPS付きのジャケットを着ていることを伝え、GPSトラッカーで彼の居場所を突き止めるようとする。しかし、誘拐犯にGPSの存在を察知され、GPSはNew Hampshire州北部の廃屋の側に放置されていた。FBIと共に事件を担当することになったNew Hampshire州保安官のWyatt Fosterは、GPSが放 置されていた場所に人質の死体がないことに安堵し、人質が生きていると確信する。だが、州北部の広大な原野の中にいると思われる人質を探し出すことはに絶望感を抱く。

Tessaは誘拐犯人が家族全員を拉致したことから、身代金目的の誘拐ではないと考える。身代金が目的なら夫のJustin1人を拉致すればいいはず、さらに、誘拐犯が家族の貴金属を放置して行ったことから、彼女は個人的な恨みから、家族は誘拐されたと推測する。
そして、誘拐犯人が家の警報装置を解除していたことや、部屋の配置を熟知していたことなどから、身近な人間が事件に関与していると確信する。

Tessaは、会社内や家族の周りの人物で、彼らに恨みを抱いているものがいないか調査していく。
だが聞き取りを始めると、一家を知る誰もが彼らに好意的で、Justinの社員からの人望、愛妻ぶり、娘に対する溺愛ぶりを語り、また、妻のLibbyの夫に対する献身ぶりを褒め、Denbe一家は誰もがうらやむ理想的な家族だと、Tessaに断言する。

しかし、一見、幸せそうに見える家族の暗部を身をもって知っているTessaは、粘り強く聞き込みを続け、やがて、彼ら家族の世間に知られたくない秘密を暴き出していく。さらに、順調そうに見える会社の窮地も。

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前作で与えたTessaの強烈なキャラに惹かれて、シリーズの続編であるこの本を読むことにした。だが、Tessaは、前作の一人称から今回は三人称に変わっているせいなのか、一人称で語られる、人質に囚われたLibbyのキャラが強く印象に残った。子に対する絶対の愛が胸を打つのかも。

ただ、Tessaが警察官時代を含めて誘拐事件は初めて、29才という若さと経験不足ということから、捜査に当たる刑事達から最初、軽んじて見られていたが、徐々に能力が認められて彼女の意見が捜査方針に取り入れられていく様子は、Tessaファンとしては溜飲が下がる思いがした。

また、Libbyの身辺を調べるのに行きつけの美容院に行ったのは、女性ならではの視点。ちょっと思いつかなかったが、聞き込みの内容を読んで、なるほどなぁと納得。

誘拐事件の結果は、ある程度予測できるのだけど、それでもどういう顛末になるのかハラハラさせてくれて、面白く読めた。

ただ、この作者は、どうも捜査官同士をくっつけすぎる。D.D.WarrentとBobbyの元恋人同士、今回のシェリフのWyattとFBI捜査官Nicoleも元恋人という関係、そしてTessaとWyattもデートの約束をしている。男女コンビが好きなのかな?

 ★★★★ 384ページ Kindle版


Love You More by Lisa Gardner

2015-12-06 17:35:17 | 読書感想

雪が降り積もるBostonの3月の日曜日、ここ数日、吐き気を伴う体調不良に悩まされていたBoston警察の殺人課捜査主任D.D.Warrenは、休日を自宅で過ごそうと考えていた。そんな時、元恋人で相棒である州警察の刑事Bobby Dodge から、州警察のパトロール巡査Tessa Leoniが夫Brianを殺害、彼らの6才の娘Sophieが行方不明になっている事件が起き、彼女がこの事件を担当することになると教えられる。警察は直ちに娘Sophieの行方について公開捜査を実施していた。

現場に着いたD.Dは夫のBrian Darbyが胸に3発の銃弾を受けて殺されていて、妻のTessaが夫の暴力に耐えかね、正当防衛で夫を殺したと主張していることを知る。それを裏付けるかのように彼女の顔はひどく腫れ上がっていた。そして、尋問したD.DにTessaは一刻も早く娘を捜して欲しいと懇願する。しかし、D.Dは彼女の証言にいくつかの不審な点を覚える。暴力的な男のあしらいに慣れている警察官の彼女がいきなり銃で夫を射殺したこと。さらに、彼女の手に防御痕がないことなど。また娘が行方不明になっているにも関わらず、警察に捜索を依頼することをせずにまず上司に電話したことにも。Tessaが娘の安否を気にするなら真っ先に警察へ電話をするはずなのに・・・

D.Dは行方不明のSophieの所在を突き止めることを最優先に捜査をすることを決定する。彼女は何者かがSophieを誘拐したということに疑問を感じていた。夫婦が争っている時に、娘が誘拐されるという可能性はほとんどないとして。彼女は夫婦のどちらかが娘を殺した可能性が高いと推理していた。
彼女はSophieとBrianの仲、母娘の仲がどうだったのか、また、BrianとTessaの身元を徹底的に調べるよう指示する。
やがて、D.DはTessaの衝撃的な過去の出来事を、Brianの世間に隠したい悪癖を暴き出していく。

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印象に残るTessaの言葉がいくつかあって、もう一度読み返してしまった。Tessaがこれから母親になろうとしている女性に与える言葉、そこには彼女の娘に対する愛情が溢れている。そして、父親、友達に与えた言葉、それぞれ胸にジー ンとくる。

読みどころは、DD、BobbyのコンビとTessaの知恵比べ、DDの推理がTessaが築いた正当防衛の根拠を次々と打ち破ってTessaを窮地に追いやっていく。Tessaのモノローグを読む限り、彼女にも考えがあると言っているが、なんだか、一方的に押されていると思ったら!!女性でこれだけ強烈な行動を起こすヒロイン(?)は初めて読んだ。D.D.Warrenには悪いが、断然、Tessaを応援したくなる。次のTessaの作品も読みたくなった。

 

Kindle版 ★★★★ 351ページ