▼14日、午前零時30分に目覚ましを設定していたが、その少し前に目が覚めた。まもなくSTVで、核のゴミ処分場問題に揺れる、ドキュメント番組が始まるからだ。
▼番組は「自分の肌感覚では、町民の賛成が多い」とし、町民の意見も聞かず核のゴミ処分場の文献調査に応募した、北海道寿都町の片岡春雄町長(5期目)を追う。
▼町長室で、風力発電の作動状況をPCで確認するのが毎日の楽しみだという。年間3億5千万円もの売電費用が入るこの施設、町にとっては、貴重な財源だ。
▼だが10数年後は、この収入が半額になるという。その対応策から考え出したのが、2年間で20億円、次の概要調査では70億円の交付金がもらえるという、核のゴミ地下埋設処分場の受け入れだ。
▼自治体は交付金獲得に奔走する。「交付金にいいとか悪いとかあるのか」と片岡は豪語する。さらに交付金の獲得が首長の責務で、それが町民の幸せにつながるとの持論だ。
▼国の原子力政策は、核のゴミ処分場の設置に失敗してきた。溢れ出るゴミは、核開発問題として国際問題化している。何が何でも処理しなければならない。そこでの交付金を餌に、誘致場の選定だ。
▼そんな意味有りの餌と知っていながら、交付金に貴賤はないというのが、片岡町長のレトリックだ。
▼さらに文献調査は小学校入学程度の段階で、大学までの知識を深めると、考え方や判断が違ってくるとまで言い放った。
▼寿都町民の核のゴミの理解度は、幼稚園レベルだという、まさに町民を侮辱する町長の発言だ。
▼核のゴミ問題に一石を投じることで、町の活路を開くなどという発言も、5期目という長期政権で、町民の上に君臨しているという、自負心の強すぎる態度だ。
▼直接選挙で選ばれた首長が長期政権を保つと、必ずと言ってもよい、陥りやすい宿命だ。まるで仏様の様な首長でも、長期で地獄に落ちた人?も知っている。
▼「分断」という言葉が浮かんでくる。朝鮮半島はなぜ、同じ民族が殺し合いをしなければならないのか。それは「分断」で利益を持つ勢力がいるからだ。
▼終戦で、北海道をソ連が分割する案があった。考えてもぞっとする歴史だ。寿都町にはその「分断」が始まろうとしている。
▼反対派は住民投票を行なおうとしている。しかし、その行動は「分断」を深めることになりはしないかと心配する。白か黒にはっきり意志表示されるからだ。
▼人間の倫理を問う「踏み絵」ではない。分断の溝を深める、住民投票になりかねないからだ
。早まった行動は、かえって墓穴を掘りかねない。
▼寿都町だけの問題ではなく、道民全体の問題として捉えてくという、北海道スタイルを構築していくべきではないだろうか。
▼IR問題もそうだし、米軍や豪州軍との合同演習も、道内で展開される今後を考えれば、そんな投げかけが北海道の未来には必要ではないか。
▼「核のゴミ問題を北海道全体で考えよう」。こんな宿題が全道の自治体に投げかけられたとする。さて函館市民は、つまり、その代表的組織である「市町会連合会」は、どんな討論をおこなうのだろうか。
▼ちなみに函館市議会は、寿都町の核のゴミ処分場に反対する決議案を“否決”している。「木枯し紋次郎タイプ」だ!。・・・「あっしにはかかわりのねえことでござんす」。これが【魅力あるまち全国一位】の市議会だ。
▼寿都町は片岡町長の私有地ではない。少なくとも北海道の土地の一部だ。町長の独断行政で、地域の「分断」は避けるべきだ。
▼「分断」を政治に利用するというのは、多数派が少数派の息の根を止めるまで、内部分裂が続くということだからだ。
▼核のゴミ誘致は、寿都町が目指す洋上風力発電の建設を、有利に進めるためだとも、町長は腹の内を明かす。国と道と町民を手玉に取った、権謀術数が蠢く(うごめく)片岡春雄だ。
▼核のゴミ処分場問題は「危険だから」で、処理しようとする。国防問題も同様だ。「危険だから」という意味には、国家主権への匂いが色濃く漂っている。
▼日本国憲法は「公共の福祉」に反しない限り、国民の権利は保障するとある。【自民党改憲草案】では【公益や公の秩序】に反しない限りとしている。
▼つまり国民の人権は、常に「公益や公」に反しない限りでしか認めないということだ。核のゴミの処分や国防問題は「国益や公」のためにあるというのであれば、憲法改正時には、それに反する者の人権は守ることはないと解釈される。
▼精密調査までは20年も要する。それまでに憲法が改正されれば、反対派の人権を国は守らないということだ。
▼核のゴミ問題の視点は、そこが決定的に欠けている様に思う。番組の中で片岡町長の口から洩れたのは【結果よければすべてよし】だ。
▼いずれ憲法が改正されれば、自分たちの行動が「公共の福祉」に寄与することになるだろう
という、確信に満ちた言葉に聞こえた。
▼そんな日本の近い将来を見据えての、片岡春雄の核のゴミ文献調査の受け入れを分析した番組だった。
▼私がディレクターなら『核のゴミ問題と憲法改正』というサブタイトルを付ける。しかし、改憲問題は、改憲派の土俵に乗せられたらまずいという、反対側の意見がある。
▼コロナ禍の今、憲法改正派の問題点を指摘する攻めの姿勢が、待ったなしだと思う。1年を振り返れば、与党の権謀術数ばかりが目立ち、野党の無策が国民に印象付けられた2020年だったような気がする。