▼北海道から京都に修学旅行中の学生が鉄道自殺した。地元での死を遂げず、はるか遠くの京都での死を選んだ胸中を察すると、いじめの問題が、ますます深刻化してきていることを実感させられる。学校だけでなく生まれた土地までが、自分を受け入れてくれないと考えたのだろうか。この事件のその後は、ほとんど報道されていない。と思っていたら、今度は青森県黒石市で女子中学生が、いじめにあい自殺した。だが、この少女「手踊りの名手」で、地元の「黒石よされ」の祭りでの写真コンテストで、青森市の男性が写した少女の満面笑顔の写真が、最高賞の市長賞に内定した。
▼だが、この少女が自殺していたことが判明したので、市が「賞の趣旨になじまない」とし、受賞取り消しを遺族に申し入れ、発表直前に「市長賞は該当なし」とした。だが、遺族は「受賞を取り消した理由が二転三転したので納得ができない」と抗議する。さらに、撮影者の男性に受賞辞退を求めた際「経緯を口外しないよう」求めたという。市には苦情が多数送られているという。
▼私も若い頃、青森市内の民謡居酒屋で手踊りを見た。お酌に付いていたおばさん(おばあさんに近かかった)が、手踊りが始まると、飛ぶようにして舞台に上がり、軽快に踊り出したのを思い出している。手踊りは団体で競い合う踊りのように記憶している。動作がとても機敏で、一糸乱れぬ行動だ。みんなが心を一つにしている熱心さが、見る者に伝わり感動を覚えるのだ。学校生活は、そうではなかったのだろう。それにしても。写真の少女は、まさしく日本一の笑顔だ。このような笑顔が心底できる少女が、13歳で命を捨てなければならない学校現場でのいじめとは、我が国の教育の崩壊そのものなのだろう。
▼学校も学校なら、市の教育関係者や市側の対応も、教育現場とは思われる対応ぶりだ。黒石市ばかりではなく、この問題をすべての教育現場で取り上げて、対処策を講ずるという、事はないのだろうか。自分の身近だけには起こってほしくないという、そんな考えがはびこっている「ことなかれ主義」が、現在の教育現場なのではないだろうか。
▼ただ、遺族の「こんないい笑顔をしていた娘が」という言葉に心が震える。私の提案だが、この受賞作の写真を、いじめ撲滅のポスターにして、全国の学校に配布してはいかがだろうか。「もう、いじめはやめよう」というメッセージを全国に発信してこそ、手踊りの名手の少女も、あの世で微笑むことができるのではないだろうか。写真の少女の笑顔は、単にいじめだけではなく、世界平和のメッセージも私たちに問いかけているような、素敵な笑顔だからだ。