▼豊洲移転問題も小池知事の踏ん張りで、そろそろ真相究明に手の届く範囲に来ているのではないかという感じがしてきている。この問題の暗闇のキーマンの一人は、石原元知事だろう。だが、この問題がこれほどの年月と共に関係者も多くなれば、当時担当していた人物が、自分の責任を自覚したとしても、責任の度合いが薄れてしまっているのではないだろうか。
▼都政という大きな川に住みついていた魚が川の中が騒ぎ出すと、最後は大海に流れ出てしまうが如く、以前は川の魚だったにも関わらず、海の魚になってしまったような感じだろうか。責任の所在が大海で分散化してしまい、自分の責任も曖昧化してしまうという、これが巨大組織に巣食うブラックホールの実態のようだ。
▼例えていえば、ヤマメの稚魚が大海に出て、やがて立派なサクラマスと変身し、ヤマメであったことなど忘れてしまうという、そんな状態なのか。だが、サクラマスは、母川に遡上し産卵するのだ。豊洲問題に関わった人たちも、最後は都民に信頼される古巣の川にいたことを思い出し、豊洲問題の解明に向け記憶を呼び戻してほしいものだ。
▼ロッーキード事件を思い出している。航空機などの導入で、賄賂をもらい便宜を図ったとして、当時総理だった田中角栄が逮捕された。ロッキード社からの賄賂は田中へ5億円、全日空へ2億円、田中は派閥に気前よく配り、全日空は関係代議士へ配分したようだ。だが、仲介役の児玉誉士夫への21億円は不明のままで、児玉・田中両氏が死亡したため捜査は終了した。戦争に勝った国と占領された国とでの、国家間の取引だ。もし不正が暴露されても、責任は誰もがかぶらない仕組みになっていたのだろうが、戦争に負けた国の総理が、犠牲になったのかも知れない。
▼このロッキード事件で、逮捕されたのが我が選挙区の佐藤孝行だ。佐藤は地元での報告会で、私の質問に何でも話してくれた。ロッキード事件について聞かなかったのが、私の心残りの一つだ。私はこの事件で、佐藤が逮捕されるきっかけになった、ある歌手の公演にも出席していた。さらに、全日空の旅客機内で、当時の若狭全日空社長と同乗の経験もある。田中角栄とは面識はないが、彼の日本列島改造計画時代に、私はゴルフ場の開発会社に勤務していて、自然環境が悪化するこの計画の是非を常に問題にしていた。
▼私の人生で最も身近に感じれた、戦後日本の大事件。その縮小版の豊洲問題なら、小池知事が解決してくれると期待している。それに「天才・田中角栄」を上梓した石原慎太郎なら、国家を揺るがす事件の真相に迫っているに違いない。東京都の田中角栄ともいわれる石原慎太郎。逃げも隠れもせず、堂々と都民に全貌を明らかにしてほしいものだ。そうでなければ「悪だ川・作家」の汚名を背負ったまま、あの世へと旅立たなければならない羽目になる。
▼1964年の東京オリンピック。そこに世間が知らない不正があったのかは、もはや詮索はしない。だが、あの時代、日本中が心から歓喜し感動したことは、高校生だった私の身体に染み付いている。最終日の男子マラソン。国立競技場内で円谷選手が英国選手に抜かれ銅メダルになった。その後、円谷選手は自死した。国家の威信という重圧も十分理解できた、あの頃の日本だ。日本人が世界に向かい、襟を正した民族であることに誇りを持っていた時代だような気がする。
▼2020年のオリンピック。日本は一体どこに向かうのか。オリンピックは世界平和の祭典だ。人類が一つになり、戦争のない世界にしようとするエネルギーに満ち溢れているのを感じる。1964年のオリンピックも、国威発揚というサブ・テーマを実感したが、次期オリンピックでは「富国強兵」などというスローガンは御免被りたい。それまでに、アベ政権が崩壊することを望みたい。
▼まずは豊洲問題だ。日本社会に巣食うムラ構造を解体し、日本晴で2020年のオリンピックを迎えてほしいものである。・・・ガンバレ日本。ガンバレ百合子さん。