カメラといっしょ★

地元福岡~イタリア留学からワーキングビザ取得しての海外生活を写真で綴るつれづれ日記

そしてここにもどり、ここからはじめる

2011-03-28 01:46:33 |  └・フランス
カメラとほんの少しの日用品をまとめてホテルを出た。
思えば私なんて、このくたびれた革のカバンひとつに入る、
たったそれだけのもんだ。
地下鉄に乗って向かったのはエッフェル塔。
パリに来たからにはどうしてもこの景色を眺めておきたかった。

地下鉄の駅を出て、トロカデロ庭園に立ち息を飲んだ。

天にかけられた梯子のように空に伸びるエッフェル塔

それはやわらかな薄紅色の朝もやの繭の中で眠る夢のように
どこまでも甘く、このうえなく美しく。
そこから生まれる今日はどんなに素晴らしいものだろうか。

この世は果てしなく美しい

 
まだ夜の冷たい空気が残る誰もいない広場に
ぺたりと腰を下ろし、ずっとずっと眺めていた。

なぜだか心に幸せが湧き上がってきた。
この美しい光景を見る事ができて本当に幸せ

幸せ

私は今、私で、今ここにいていいんだ
迷子になんてなっていない

ふと涙が流れてきた
それは感動にじわじわと涙腺が熱くなる涙ではなく
肌を刺せば当然流れる血液のようにすーっと頬をつたう。

たくさん傷つき、悩み、苦しんで
自分のかたちを窮屈にねじ曲げてきた。
でもその全ては今完結し、また最初に戻ったのだ。
私は、わたし

涙をぬぐいもせずひたすら思う
神様、どうかこの美しさをたくさんの人に伝える私でありたい。
このカメラを、この筆をもって。

 
夢の朝もやが消え、青空に人々が目覚める頃
ようやく私も動き始めた。
春の公園をぬけ、エッフェル塔まで行ってみる事に。
 
近づけば近づく程大きく高くそびえ
重い鉄の塊のそれは脅威にすら感じられた。

でもさらに近づけばその繊細で華奢なレースのような構造が
なんとも華やかで軽やかにさえ感じる。

塔に上る長蛇の列を横目でみて
そのまま塔の真下をくぐって向こう側に出た。
 
順光をあびてすっくりと立つその姿は
完璧に均整の採れた美しい女神のようであり、
でも愛くるしいおもちゃのようでもある。
ほんとうにかわいい。
いつか大切な人と手を取り合って、また見に来たいな。

さて、午前中いっぱいをエッフェル塔にゆっくり費やし、次はランチ。
先日パリ旅行に行ったばかりの友達にきいたおいしいお店に行ってみる事に。
地下鉄で少し郊外へ向かう。

教えてもらった住所通りに行ってみた。
それらしきお店を見つけたけど閉まってるみたい。
ま、まだお昼までにはちょっとあるし待ってよ、と
近くの小さな公園でひなたぼっこ。
 
可憐に咲く桜の下に座ってぼんやり。
公園ではお母さんやおじいちゃん、おばあちゃん達が小さな子どもを遊ばせている。
こどもの笑う声、桜は咲き、空は青く、あたたかな春の日差し
世界はなんてすてきなんだ。

待ってる間、お土産に買ったマカロンを激写。
連れがマカロンを好きかどうか聞かなかったけど
でも私が食べたいから勝手にこれにした。
日本にいたときはそんなにマカロンには惹かれなかったけど
とにかくパリのマカロンは素晴らしくおいしい。
心ときめくようなきれいな色、まるくかわいい形、
外はぱりっと中はしっとり、どこまでも軽やかな口当たり
フルーツを使った物は果実をぎゅっと凝縮して宝石にしたみたいな味わい。。
ああ、早く食べたいな~~

そうこうしているうちに、どこかで鐘がなって
公園の子どもたちが大人たちに手を引かれ一斉に家に帰って行った。
お昼ご飯の時間なんだな。

私もさっきのお店に戻ってみた。
でもやっぱり開いてない。。
どうしよう、この辺はあまりお店ないし、中心街まで戻るかな。。
でもその向かいにあったお店がなんかおいしそうな雰囲気をむんむんさせてたから
少し考えて、思い切ってそのお店に入ってみる事に。

店の中心に大きなバーカウンターがあって
そのまわりを赤色のギンガムチェックのクロスを設えたテーブルが囲む。
なんだかパリの下町ってイメージ。
窓際の端っこの席に座ってもいいってきいたら
こっちにしてよ、と長テーブルに座らされた。
数分後、その意味が分かった。
広い店内はあっというまに満席、私はすし詰めの相席となった。
込みだした店内で、ぼやぼやしてたらいつまでたってもご飯にありつけない
読めないフランス語のメニューを解読してる場合じゃないので
ウエイトレスが来たタイミングですばやく日替わりランチを注文。
ま、日替わりランチってんだから、それらしきものが来るでしょ。

じゃーん、日替わりランチ。
ひき肉の上にマッシュポテトが乗っている本当にシンプルな料理。
でもこれがやたらうまかった。
なんだ、なんでだろう?
ポテトもお肉も多分普通の食材なのに、どっちもすごくいい塩加減、
お肉はジューシー、ポテトはクリーミー。
おいしい!!
写真では分かりづらいけど、結構な量でてきたのを結局たいらげた。
お腹を満たしたら、周囲の事が気になった。

みんな何やら大きなステンレスのボールみたいのをかかえて食べてる。
何だ?ありゃ?
ちょうど隣の席の人達のところにも運ばれてきたので覗いてみたら
なんと山盛りサラダだった。
しかもチーズだのベーコンだの卵だのいっぱい具がのってて超おいしそう☆
あ”!!!もしかして、友達が勧めてくれたお店ってここだったんじゃ?!
確か山盛りサラダがおいしいって言ってた。
行けなくて残念と思ってたのに、ちゃんとたどり着いてたんだ。
ああ、わたし!どこまでもおっちょこちょいだ。
くぅぅ~、サラダおいしそう!超大好物なの、サラダ。
ああん、食べたかったよぉ。
くそぉ、また絶対来てやる、パリ!!

2泊3日のパリ家出旅行も今日が最終日
最後に私が一番大好きな美術館へ。
 
オランジュリー美術館、モネの睡蓮の間
ここに骨を埋めてもらいたいくらい大好きだ。

帰りの便までの時間をたっぷりモネの絵に囲まれて過ごす。
時にうたた寝しつつ、睡蓮のようにふわふわと漂いながら
この絵の持つ空気がぴったりと私にはりつくように
そっと息をひそめて沁みて行くのを待つ。

美術館を出た時、私の心はシンと静まり返っていた。
不思議だ、旅に出れば新しい物に出会って
心は沸き立つものだと思っていたのに。

意思を湛えた心はもう波だったりしない。
私の行くべき先はきっとあると信じて見上げるパリの空は
モネの描いた絵のように不思議な色に輝いているのでした。

パリのキラキラ集め

2011-03-28 01:17:58 |  └・フランス
ランチにおいしいクレープを食べて機嫌良く
またセーヌ河岸を歩いて戻る。

向かったのはサントシャペル教会
前回の旅でその美しさに心を揺るがされたところ。
自分がまるで聖なる清水に浸されたようにシンと澄んだのを覚えている。
もう一度あの感動を味わいたい。

相変わらずの長蛇の列を根気づよく待ってようやく入った教会。
去年は前面が修復中で見れなかったけど、
今回は全ての壁のステンドグラスを見る事が出来た。
全ての壁!!360度ステンドグラスの光に包まれてごらんなさい、
それは自分の足下をすくわれるような浮遊感。
宙に浮いた私は全てから切り離されて
自分の重心がどこにあるかを思い知る。

まるで宇宙の星を集めたみたいに美しいバラ窓。
前回見たのは午前中だったので、より青い光を放ち
本当に宇宙に抱かれているような感覚になった。
でも今回はもう午後の光、その色は意味を変え
また別の物語を私に語りかけてくる。

オレンジ色の光は星のように散る事なく
ひとつの大きな塊となって優しく全てを包み込む。
とてもあたたかい、あたたかい光、
全てから許され、解放され、穏やかに微笑む終焉ような安堵感。
とても心地よくてずっと眺めていた
もしこれが人生の果てにたどり着く場所なら悪くない。

急にふと、帰らなくっちゃっと思い立った。
どうしてだろう、帰らなくっちゃって。
多分、私は異空間で深い淵の奥まで覗き込みすぎたのだ。
帰らなくっちゃ。

でも、私の帰る場所なんて今はどこにもない。
日本にも、仮暮らしのフィレンツェにも。

途方に暮れて、またパリの街をひとりとぼとぼと歩く。
暖かな春の光が私を温め、美しい街の影が心をつっつく。
そうとなればしょんぼりなどしていられず
いつしか顔を上げて歩き出していた。

去年のパリ旅行は美術館廻りをテーマにとにかく動きまくった。
たくさんのものを吸収して、すごく充実して楽しい旅だったけど
健脚を活かし、常にものすごい早さで歩いてた。
今回はゆっくり歩きたいな、この街を。

セーヌ河岸の遊歩道に降りてゆっくりと歩く。

川面に反射したたくさんのキラキラが目を覆う。

眩しすぎて閉じた瞼にチラチラと映る影。
それは昔見た遠い国の影絵物語のように幻想的にうごめく。

小さな私が見た夢、今も私が追い続ける影。
キラキラ、キラキラと。

暖かな日差しの中を歩いてルーブルまでついた。
(今回は美術館には入らなかったけど)
私はこのチェルシー公園が大好きだ。

いつか家族とか、とても大切な人とこんなふうに
日がなピクニックとかのんびりしたいなぁ、、

小さな夢とか大きな希望とか色々並べて
今日という日を見送る。
その赤色が消えるまでずっとずっと公園に座っていた。
最後の赤色を見届けて、ため息をついて
今回の旅の目的を達成したのでした。





世界で一番ロマンティックな街 パリ

2011-03-28 01:08:56 |  └・フランス
絵画のように美しい「モレ・シュル・ロワン」でひと通り写真を撮ってまわって
そこに留まってじっくり感じたい気持ちもあったけど、
2泊3日の短い旅だし、やっぱりパリに戻る事にした。

パリ、最高にロマンティックなこの街にいるだけで
なんだか華やいだ気分になる。
 
キラキラと流れるセーヌ川。
ああ、やっぱり好きだな~、この街なんて思いつつ
ぷらぷらと写真を撮りながら歩いていたら
おじいちゃんに声をかけられた。
 
 
  
「日本からきたの?地震大変だったね、お大事に」と言われ
普段なら知らない人はガン無視の私もそれには丁寧にお礼を言うようにしている。
あんな東の端っこにあるちっちゃな国の事をみんなとても気にかけてくれていて
本当にありがたい。
しばらくおじいちゃんと立ち話。
ひとりで来たの?と聞かれ、うん、と答えたら
ぼくが君の彼だったら、世界一ロマンティックな街で
君をひとりになんてしないよ!と言っていた。
う~ん、さすが世界一ロマンティックな街に住むおじいちゃん、
あなたもそうとうロマンティストです。
コラ!見習え、日本男児。おじいちゃんに負けてるゾ。

見たいお店が近くにあったので寄ってみたノートルダム大聖堂。
前回の旅では入る為の長蛇の列に恐れを成して入らなかった。
今日はどうかしら、と思ったら、すんなり入れた。
 
 
広い内部空間にずっと上まで飾られたステンドグラス
どこまでも厳かなその空間は
人の祈りを天へ届ける道が開かれているよう。
 
そろそろお昼、おなかも空いたのでランチ、
パリといえばクレープ!この世で一番ロマンティックな食べ物(!?)
前回の旅で食べてすっごくおいしくって感動したので
また同じお店に行く事に。
 
 
前回はすごくすんなり着いたから、その記憶を頼りに歩いたら
思っていたより遠くてかなり歩くはめに。
記憶ってあてにならない(特に私の場合)ま、いっかお散歩おさんぽ。

たくさん歩いて、お目当てのお店に着いた頃には空腹は限界。
欲張ってランチセットにした。
甘くない惣菜クレープとデザートクレープと飲み物がついて来る。
飲み物のメニューを読んで「ソーダ」と思ってたのだけど
「シードル(りんごの発泡酒)」が出てきた。
そっか、あれ、シードルって読むんだ。ラッキー☆シードル大好き!
それがまたすっごくおいしかった!!
ほんのり甘くて少しとろっとしたのどごし、でもしゅわっと酸味爽やかで
ああ~、おいしい!!これ樽ごと家に備え付けたいっ。
 
はい、そして念願のクレープ。
あれ、これ何?って言わないでね、全くそっくりなこの二つは
左がチーズ、卵、ハムの惣菜ガレット(そば粉のクレープ)
シンプルな具材をうまみたっぷりのかりっと焼いた生地が包んでとってもおいしい。
右はバターと砂糖のシンプルなデザートクレープ。
これがね、この上もなくおいしかった!!
きっとおいしって、すっごくシンプルな物なんだね。

しかしこのお店、日本人観光客でいっぱいだ。
前回来たときはひしめき合うパリジェンヌに混ざってクレープを食べて
それもまたおいしい記憶につながっていたのだと思うのだけど、
ここまで全員日本人だと少し興ざめかも(ってその私もかく言う日本人なのだけど)
ま、おいしいものにあくなき探究心を持つ民族だってことで
すばらしいということにしておこうかな。
しかし、観察していると日本人の食事風景というのは少し変わってる。
みんなもくもくと食べ進め、連れ合いと楽しげに食事を共にするという雰囲気がない。
旅行中で疲れてるのかな?海外で緊張してるのかも。
イタリア人はアホみたいに(失敬)楽しそうにご飯を食べるから
それを私が見慣れてしまったのか。
そういえば食事中にそんなにしゃべったら母に行儀が悪いとしかられたっけ。
世界で見ると日本人は礼儀正しく、行儀がよいね。

おなかいっぱい、しあわせいっぱい抱えて
またセーヌ河岸をプラプラと歩く。

春の日差しを浴びて等間隔で並ぶ恋人たちの影がとてもかわいらしく
ロマンティックに、楽しげに映るのでした。

<クレープを食べたお店>
■la Creperie des Canettes
10 Rue des Canettes
tel: 01 43 26 27 65

Moret-sur-Loing

2011-03-28 00:48:28 |  └・フランス
村のあっちの門をくぐり真っ直ぐ行くと
あっという間にこっちの門を出てしまった。
本当に小さな村だ。
 
でもこっちの門をくぐって息をのんだ。
ここは、ここはどこだろう。
朝日を背に浴び輝く水は
妖精が背負う透明な羽のように
チラチラと小さく輝いている。
その美しさ。

なんて、なんて、美しい。。
 
 
喉を通る空気はとても心地良く冷たく湿っている。
ざらざらと埃ぽく乾いた人の住む世とは別世界。
ひんやりとした朝の空気を揺らさないようにそっと歩いて行く。

道はほどなく運河を離れ、村の外の住宅街を抜ける。
 
 
まだ静かに眠る家々。
質素な石の壁を彩る明るい色の扉が
なんともかわいらしくフランスっぽいセンスの良さが伺える。
この扉の向こうにどんな生活があるんだろう。

家を挟む通りもすぐに終わり、また運河に出た。
低い土地をすれすれに這う川面はとても静か。

道行く町の人達がみんな手に
焼きたてのバケットを持っていたのがうらやましくって
つい買ってしまった長ーいバケット。
手に持っていては写真を撮れないので
旅の仲間、くたくたの革のカバンにつっこんだ。
おおぶりのかばんにも入りきれず頭が出てしまう。
そしてずっとつきまとう香ばしい焼きたてのパンの香りに
我慢しきれずに、川縁に座って一口食べた。
ふわぁぁぁぁぁぁ、おいしい~~。
かりっと焼けた外側にもっちりとした内側
なによりこの小麦の味わい深さは何だろう。
本当に本当においしい!
ああ、これ持って帰りたいよ~
フィレンツェに、日本に、
私の大切な人達みんなに食べさせてあげたい。。
今私に何万キロを飛び抜く力があったらなぁ。
 
結局おいしくってバケット1本まるまる食べてしまったので
膨れたお腹を抱えて散歩の続き。
シスレーが描いたままの水辺をひとりとぼとぼ歩く。

ここには何もない。
あるのは美しい光とそれを映す水。
でもそれだけをいつまでも見つめていたい。
日とともに起き、光に呼応してシャッターを切る。
それがまるで私の宿命であるみたいにはっきりと自分のその姿が浮かぶ。
本当にそんな風に暮らせたらどんなに写真家冥利につきるか。
美しい景色の中で自分の撮りたい写真だけに向き合えるなんて幸せだ。
幸せ?
でも大切な物を離れて、そうやってひとり行きていくことは本当に幸せだろうか。
幸せでない私が撮る写真が誰かに何かを伝えることができるのだろうか。

夢のように美しい景色の中で完全に現を見失って
ふらふらとただひたすらに1本道を歩いているのでした。