カメラといっしょ★

地元福岡~イタリア留学からワーキングビザ取得しての海外生活を写真で綴るつれづれ日記

Moret-sur-Loing

2011-03-28 00:48:28 |  └・フランス
村のあっちの門をくぐり真っ直ぐ行くと
あっという間にこっちの門を出てしまった。
本当に小さな村だ。
 
でもこっちの門をくぐって息をのんだ。
ここは、ここはどこだろう。
朝日を背に浴び輝く水は
妖精が背負う透明な羽のように
チラチラと小さく輝いている。
その美しさ。

なんて、なんて、美しい。。
 
 
喉を通る空気はとても心地良く冷たく湿っている。
ざらざらと埃ぽく乾いた人の住む世とは別世界。
ひんやりとした朝の空気を揺らさないようにそっと歩いて行く。

道はほどなく運河を離れ、村の外の住宅街を抜ける。
 
 
まだ静かに眠る家々。
質素な石の壁を彩る明るい色の扉が
なんともかわいらしくフランスっぽいセンスの良さが伺える。
この扉の向こうにどんな生活があるんだろう。

家を挟む通りもすぐに終わり、また運河に出た。
低い土地をすれすれに這う川面はとても静か。

道行く町の人達がみんな手に
焼きたてのバケットを持っていたのがうらやましくって
つい買ってしまった長ーいバケット。
手に持っていては写真を撮れないので
旅の仲間、くたくたの革のカバンにつっこんだ。
おおぶりのかばんにも入りきれず頭が出てしまう。
そしてずっとつきまとう香ばしい焼きたてのパンの香りに
我慢しきれずに、川縁に座って一口食べた。
ふわぁぁぁぁぁぁ、おいしい~~。
かりっと焼けた外側にもっちりとした内側
なによりこの小麦の味わい深さは何だろう。
本当に本当においしい!
ああ、これ持って帰りたいよ~
フィレンツェに、日本に、
私の大切な人達みんなに食べさせてあげたい。。
今私に何万キロを飛び抜く力があったらなぁ。
 
結局おいしくってバケット1本まるまる食べてしまったので
膨れたお腹を抱えて散歩の続き。
シスレーが描いたままの水辺をひとりとぼとぼ歩く。

ここには何もない。
あるのは美しい光とそれを映す水。
でもそれだけをいつまでも見つめていたい。
日とともに起き、光に呼応してシャッターを切る。
それがまるで私の宿命であるみたいにはっきりと自分のその姿が浮かぶ。
本当にそんな風に暮らせたらどんなに写真家冥利につきるか。
美しい景色の中で自分の撮りたい写真だけに向き合えるなんて幸せだ。
幸せ?
でも大切な物を離れて、そうやってひとり行きていくことは本当に幸せだろうか。
幸せでない私が撮る写真が誰かに何かを伝えることができるのだろうか。

夢のように美しい景色の中で完全に現を見失って
ふらふらとただひたすらに1本道を歩いているのでした。

最新の画像もっと見る

2 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
美しいものを見るために (mio lucca)
2011-05-10 20:28:36
「美のチチェローネ」の著者ヤーコブ・ブルクハルトは、
「美しいものや偉大なものを絶えず眺めることによって、我々の精神は愛情に満ちた幸せなものになる」とある学生に語ったそうです。

美しいものを眺めていると、キット幸が訪れると信じていたいものです。
返信する
コメントありがとうございます!! (sweet cacao)
2011-05-15 23:52:32
いつもコメントありがとうございます。
素敵な言葉ですね。
私も美しい景色に出会う度に、本当に幸せだなって思います。
いつか私も誰かに幸せを運ぶような写真を撮りたいです。
返信する

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。