カメラといっしょ★

地元福岡~イタリア留学からワーキングビザ取得しての海外生活を写真で綴るつれづれ日記

親愛なるリチャードへ

2013-03-17 22:11:47 | └・リチャードへの手紙

あなたがいなくなってから何年経ったでしょう。
生きる事で精一杯で、あなたを思い出す時も少なくなりました。
でも私は今、あなたの愛がどれだけ深く大きかったか痛感しています。

側にいても、離れていても、
あなたの愛がどれほど温かく力強く私を包んでいたか。
泣きべそをかいても、
すぐに元気に笑った私は、
あなたの愛に包まれて安心していたから。

私の泣き声を聞くと
あなたは駆けつけてきて、
私を大きな腕に抱きかかえて、
ピタッ、ピタッといいながら背中をたたく。
ピタッと泣き止むおまじない。
大の大人が必死にピタッと言ってるのがおかしくって、
直に私は笑い出す。泣きながら笑い出す。
泣きながら笑っているうちに、
なぜ泣いていたのか私は分からなくなる。
あなたの温もりの中にいると、
泣くほど辛い事なんてないって思えてくるから。

あなたほどに私を愛してくれる人はこの世にいない。
その温もりを失って、
この孤独に今、声を上げて泣いてしまいそうだ。

今、泣き出したらきっと一人では泣き止めない。
だから泣かないように、必死で堪えている。
堪えて、堪えて、泣いてないけれど、
堪えきらない思いがもう喉を切り裂いて叫び出しそうだ。

それでも私は泣かない。
あなたに安らかであってほしいから。
私を心配してもう心を痛めて欲しくないから。
私が泣かないようにあなたが守ってくれたように、
あなたが痛まないように今度は私が守るよ。

どうか、どうかもっと強くなれますように
この孤独に耐えられる強さを
大切なものを守れる強さを

あなたのいる空がいつも穏やかでありますように。

最愛の父の命日に、冥福を祈って




親愛なるリチャードへ

2012-03-17 21:44:17 | └・リチャードへの手紙
 
あなたがいる空も曇る事はありますか?
それともいつも美しい青空でしょうか。
私の住む世界は晴れたり、ひどく荒れたりします。
覚えていますか?あなたもいた世界です。

私は今、霧煙る曇天の下にいます。
視界は白く煙る霧の中、先を臨むことも出来ません。
足下も悪く、下を見て歩かなければなりませんので、
容易に顔を上げることも出来ません。

耳だけが研ぎすまされて、
私はある音を聞くようになりました。
命が削れる音。
幼い頃には伸びていくばかりのようだった命は
いつの間にか伸びることを止めただ削られていくだけになるのですね。
おてんば放題だったあなたの小さな私も、すっかり大人になりました。
あなたの空を見る日もそう遠いものでもないようです。

私は恐れています。
いつか命が尽きて、あなたの空を見る日がくることではなく、
晴れないこの世の空の下を生きていくことが本当は怖い。
怖くて下を向いて歩いているばかりです。

でも、空が晴れないのなら、自ら照らせる私でありたい。
勇気を持って今一度、空を見上げよう。
その空の向こうにあなたがいるならきっとそこは青空。
恐れることなどきっとない。

私が見上げるあなたの空がいつも平和でありますように。

最愛の父の命日に、冥福を祈って

親愛なるリチャードへ

2011-03-17 21:41:27 | └・リチャードへの手紙

年に一度だけあなたに声をかける事ができるのが今日ならば
私は今、あなたにありがとうを伝えたい。

あなたは私に
あなたの中で一番輝くものを譲ってくれたね。

それは何者にも汚されない
純粋で真っ直ぐな魂

故郷を離れ遠く世界の淵に立ってみて
その先に見える景色は美しいばかりでない。
時に憤怒の嵐に切り刻まれ
畏怖の闇に煮溶かされ
灰のようにホロホロと形をなくしていった私の中に
それはたったひとつ燃え残っていたよ。

どんな嵐に襲われても憎む事なく
晴れ渡る青空を美しいと思える
どんな闇に飲み込まれても荒む事なく
明ける光を愛おしいと思える

それが私の強さ
弱くて愚かな私の強さ

あなたが譲ってくれた一番の宝物
何者にも汚れず
どこまでも真っ直ぐで誠実だったあなたの
強くて美しい魂

ありがとう、お父さん

私は私の中にあなたがあると知って
自分を少し誇れるようになったよ。
怯む事なく信じた未来を
顔を上げて歩いて行くから。


最愛の父の命日に、冥福を祈って

親愛なるリチャードへ

2010-03-17 16:30:38 | └・リチャードへの手紙


私は今、フィレンツェにいる
生まれた町から遠く遠く離れた空の下
それでもあなたのいる空よりは遠くない

今ここに生きてふと思う
私はあなたの生きたかった人生を生きてるのではないかと
でも私はあなたの身代わりに生きているのではない
私のほとんどはあなたで出来てるのだから
私の選ぶ道があなたの選びたかった道と同じだとしても不思議はない
きっと私は、あなたが生真面目な気質の中に閉じ込めた好奇心

いつも私の事が心配で修学旅行にまで付いていくと言ったあなたは
今でも私の事が心配ですか?
人よりも自分の信じた道を行こうとする私を
今でも叱るでしょうか?

もう二度とあなたの厳しい声を聞く事は無い
もう二度と私のしどろもどろな言い訳をあなたが聞く事も無い
もうあなたがどこにもいないことを知っている
それでも今日だけ、あなたに声をかけるとしたら
どうか知らせたい
私は今、しあわせです
何もない、本当に何もない弱々しい身だけど
今、この美しい景色の前にいて
それを写真に撮ることができて
今ここに生きて、しあわせです

だからどうか私の事を案じたりせず
あなたがずっと安らかでいられますように


最愛の父の命日に、冥福を祈って

親愛なるリチャードへ

2009-03-17 19:39:58 | └・リチャードへの手紙

海と山と宇宙をこよなく愛したあなた
一見、無骨でがんこな「いごっそう」
でも本当は、ウイットに富んだ親父ギャグと
ベートーベンが大好きなロマンティストだった。

実直を人の形にしたみたいなあなただから
好き勝手に生きる私を決して許してくれなかったけど
でも私を目に入れても痛くないというのは
世界中であなたしかいないだろう。

私はあなたにそっくりで
たぶん私のほとんどはあなたでできてるから
あなたがいなくなっても少ししか寂しくない。
でも未だにあなたの墓前に手を合わせることができないほどに
私の心は悲痛に凍り付いたままだ。

それでも私はあなたの名を呼んで引き止めたりしない。
あなたが全身全霊で私を守ってくれたように
あなたの背負い続けたすべての苦しみから解き放ってあげたい。
そのすべてを私が引き受けることになっても
その重みに私が潰れることになろうとも
私は今、あなたの平穏を願っている。

そしてどうかあなたが今いる場所にも
美しい空が広がっていますように。

最愛の父の命日に、冥福を祈って

青空のむこう

2008-03-17 21:50:51 | └・リチャードへの手紙

父が亡くなった。

突然だった。

昨年末、ガンの手術をして、順調に回復に向っていたから
これから元気になって、また好きな海外旅行に行くんだと思っていた。

その矢先、、
心臓発作だった。

ナキガラとはよく言ったものだ
死んだ人の体は殻だ。

父の死顔は品にあふれたきれいな顔だった。
もう表情筋でごまかしたりできなくなったから
その人の本心の顔になるのか。
静かに品格をまとったその顔は父の生き方そのままを示している気がする。

私は死んだとき
こんなにきれいな顔をしているだろうか。。

突然の死だったけど
私はどこかで知っていたような気がする。
そして父もわかっていたのではと思う。
前日、自分の意思よりもむしろ無意識に、父に電話して車で迎えにきてもらい、一緒に夕飯の買い物をして、私の手料理でお酒を飲んだ。
そして帰るときに、普段は決して私を見送ったりしない父が玄関先まで見送りにでてきた。
へんだな、と思った。
それから次の日、仕事中は携帯をロッカーに置きっ放しでほとんど見ない私が、なぜか危篤の連絡が入った数分後に携帯をわざわざチェックしている。
あとで思えば不思議だけど、でもすねの骨の形までそっくりな私たちだから、どっかでつながっていたって不思議はないのかも。

とても落ち着いて父の死を
静かにむかえいれることができている。

小さい頃からお父さんっ子で
おんぶだ、だっこだとまとわりついていた私だから
もちろん思えば寂しくてしかたがない。

でも、曲がったことを決してせず
全てにまっすぐに向い誠実に丁寧に生きた
博識で実直な父を私は心から尊敬していたから
亡くなったくらいでは気持ちはぶれたりしないらしい。

たぶん父はもうここにはいない
あっさりさぱりと青空の向うにむかっている気がする