夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

何か黒かりき

2018-07-19 19:38:23 | 日記
毎週、近代短歌の授業時、出席確認で学生にやらせている「穴埋め短歌」の小テスト、今回の出題は中城ふみ子。

①ひそひそと 秋あたらしき 悲しみ来(こ)よ 例へば■■の 悲哀のごとく (中城ふみ子『乳房喪失』)

元の歌「チャップリン」 
学生の解答
・「落葉」(人から顧みられず、踏みつけにされる。家庭内で居場所がなく、邪魔な定年後の男性を「濡れ落葉」ということまである。)/「転校」(二学期に転校すると、なかなか友達が作れなくて辛い。)/「アネモネ」(花言葉は、「はかない恋」「恋の苦しみ」「見捨てられた」「見放された」だそうで。)/「日曜夕方」(「サザエさん」のエンディング曲を聞くときに憂鬱を感じる人、多いそうです。)

②熱たかき 夜半(よは)に想(おも)へば かの日見し ■■■■■■■は 何か黒かりき (中城ふみ子『花の原型』)

元の歌「麒麟(きりん)の舌」
学生の解答
・「彼の素肌」(松崎し○る!? Mr.メラニン。)/「害虫の王」(ゴ○ブリの言い換え乙。)/「あの弁当」(のり弁におかずがひじき、椎茸、昆布、茄子…。)/「宿の刺身」(朦朧とした意識で、食中毒の原因を思う。)/「カイロの中」(使い捨てカイロの中身、開けてみたんだ…。)

③死後のわれは 身かろくどこへも 現れむ たとへば ■■■ ■■■■■■■ (同)

元の歌「きみの 肩にも乗りて」(「あの子の 肩の上とか」という、きわめて近い解答があった)
学生の解答
・「好きな あの人のところ」(同様多数。この設定はマンガ・小説・ドラマ・映画にも多い。)/「明日の 授業参観」(子を残して死んだ親は気がかりでならないだろう。)/「夜の 理科準備室」(幽霊が行って楽しいところかという基本的な疑問が…。)/「墓場で 運動会など」(いやこれ、「鬼○郎」のパクリだから!)/「寝ている 子供の夢に」(スゲーな、夢の世界にも移動できるんだ…。)/「君の 振り向く先に」(相手からは見えていないと分かっていても、せめて視界の中に、という切ない気持ちが伝わります。)/「庭へ 花を咲かせに」(まるで妖精のよう。)/「無人の ディズニーランド」(「真夜深きネズミの国は寄る辺なき霊たち集う園(その)となりおらん」お粗末…。)



感想
キリンの舌はなぜ黒いのか。気になったので、ネットで検索してみた。
キリンは舌を出して枝などを巻き取って摂食するため、舌が日差しに晒される時間が長くなりがちなので、紫外線で舌が傷むのを防ぐためにメラニン色素がついていると考えられているそうである。
それにしても、高熱にうなされながら思い出すのが、可愛い顔をしたキリンの不気味な長く黒い舌、というところに、中城ふみ子の非凡な感性と想像力を感じる。

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