夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

陽なたのアオシグレ

2014-03-30 23:30:40 | 映画
『寫眞館』と同時上映で、こちらもわずか18分間の作品。
小学生の淡い初恋と切ない別れの話で、見ていて胸が痛痒くうずいてきた。

内容の紹介
突然だけど、ぼくはシグレちゃんのことが好きだ。
シグレちゃんと話したい。


小学4年生のヒナタは、内向的で繊細な感覚を持つ男子で、いつも同じクラスのシグレという女の子で妄想している。
公園の池を二人でスワンボートに乗って楽しむとか、彼女を大きなドーム型のバードハウスに案内してあげるとか。


実際には、ヒナタはシグレには自分から話しかけることもできず、クラスの人気者の彼女が、友達と楽しそうに話している姿を遠くから見つめるだけ。彼女がヒナタの視線に気づいてこちらを見ると、慌てて逃げ出す始末。
ある日、ヒナタは学校の屋上で、大きな白鳥の背中に二人で乗り空を飛ぶ場面を妄想し、それを絵に描いているところを、シグレに見つかり、慌てて逃げる。
彼女は、「なんで、ヒナタくんは私のことを避けるの?」と尋ねたり、一緒に鳥小屋の世話をしようと言ったり、何かと気遣ってくれる。


その後、ヒナタは一生懸命鳥小屋の世話をしたり、シグレにアピールするようになるが、ドジばかり。それでも、彼女と交流できるようになったことが嬉しく、「ぼくはなんて幸せ者なんだろう。」と思っていた矢先、いつものように屋上に絵を描きに行くと、シグレが一人で泣いていた。
「ごめん、今日は用事があるから先に帰る。」
後でわかったことだが、シグレは突然、転校することになったのだ。
ヒナタは彼女に何もすることができないまま、ついにお別れの日がやってくる。
雨の中、校門の前で、母親とタクシーに乗り込む前に、クラスの皆とお別れのあいさつをするシグレ。しかし、ヒナタは彼女に声をかけることができない。
タクシーが去った後、鳥小屋で泣き崩れていると、
「ヒナタくん。」
とシグレの声が聞こえたような気がして、ヒナタは雨の中を駆けだしていく。
「ぼくは、シグレちゃんに思いを伝えるんだ!」

感想

タクシーの後を追って、雨の中を夢中で走るヒナタの脳内妄想空間は、やはりアニメーションでなければ表現できないもので、その可能性がとことん追及された映像は、迫力とともに、詩情をも感じさせるものだった。
妄想の中で、ヒナタはすでに電車に乗ったシグレに併走して必死に走るが、追いつくはずもなく…と、自分で描いた絵の白鳥が現れ、ヒナタを乗せて羽ばたき、電車を追いかけてくれる。


現実のヒナタは、日野駅でシグレと母親が電車に乗り込もうとする直前に追いつき、完成した絵を彼女に手渡す。
「シグレちゃん。ぼくは…、ぼくはシグレちゃんのことが…元気でね!」
「ありがとう。」


短い上映時間だったが、不思議に充実した18分間だった。
絵も丁寧に描き込まれていてきれいだし、キャラクターデザインもよい。
しかも、このシグレちゃんというのが、男子なら誰でも好きになりそうな可愛い子。
水色のワンピースに青い瞳って、クララ(アルプスの少女ハイジ)かいっ!と思わずツッコミを入れたくもなるが。
主題歌の「不思議」(スピッツ)も、この映画の雰囲気にピッタリ合っていて、とてもさわやかな感じだった。
アニメは子どもの見るものと、抵抗がある人にもぜひオススメしたい映画だ。