夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

ふたりのアトリエ~ある彫刻家とモデル(その1)

2014-03-26 22:23:31 | 映画
全編モノクロームの映画。1943年、ドイツ占領下のフランス、南西部のスペイン国境に近い田舎の村で、創作意欲をなくしていた老彫刻家が、若く美しいモデルの女性と出会い、大作を完成させるまでの一夏を描く。

さわりだけあらすじ
映画の冒頭、クルスは森の中をぶらぶら歩いている。木の枝、地面に落ちた鳥の巣、鳥の骨の頭部などを拾ったり、手に取ったり。あるいは、町のカフェで道行く人々の様子をただぼんやり眺めているが、表情に生気はなく眼はうつろである。

ある日、クルスの妻のレアは、町の道ばたで眠りこけている一人の娘を見かける。彼女は宿無しらしく、広場の噴水池で足などを洗っている。レアはその様子を見て、彼女の体つきが主人好みであることに気付き、モデルになってもらおうと家に連れて帰る。


この娘はメルセといい、スペイン北東部・カタルーニャの出身だった。両親と共に収容所に入れられていたが、脱走してきたのだという。レアは、夫が女性をモデルに彫刻を制作する芸術家であることを説明し、山のアトリエハウスに住んでモデルになれば、食事も謝礼も出す、それが仕事だと言う。


メルセは翌日、山のアトリエに連れて行かれ、そこで初めてクルスに会う。クルスは戦争が始まってからは一度もここには来ておらず、家の中は埃と蜘蛛の巣だらけ。石膏像やデッサン画があちこちに散らばっている。
クルスからは早速、服を脱ぎなさいと命じられ、羞恥に耐えながら裸になる。
「後ろを向いてくれ。手を頭の上に上げろ。…それでいい。両手を握って。よし。今度は腕を下げて。そこに座ってかがんでくれ。」
クルスはデッサンを始めるが、やがて苛々し始め、大きく×を付け、紙を叩きつける。
「だめだ!!」
クルスは翌日もデッサンをするが、なかなか勘が取り戻せないらしく、うまくいかない。
「私のせい?」
「いや、違う。」


 ある日、クルスはメルセが川にたたずむ姿を絵に描いたり、粘土で像を作ったりしていた。と、メルセは川で泳ぎ始め、魚を捕まえて大笑いする。彼女は収容所生活で無口になっていたのだが、次第にクルスに打ち解け、クルスも彼女に心を許すようになっていく。