夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

短歌集成 その5 雑歌

2014-03-10 22:42:23 | 短歌
雑歌

雑歌(ぞうか)とは本来、歌材や内容の上で明確に分類できない雑多な歌をさすが、ここでは、祝・哀傷・旅など、人事・人生に関する内容の歌をまとめて収めることにした。


卒業を祝ふ
今日よりは古巣とならむ学び舎(や)を出(い)でよ若鷲高く羽ばたけ

哀傷
祖母みまかる
かねてよりながらふまじく聞きしかど見舞ひも行かで今ぞくやしき(2012/6/26)
  浅草寺本堂にて
朝夕の勤めたゆまぬ人なれば浄土へ参る道しるべせよ(2012/6/28)
山川は昔ながらに亡き人の帰らぬのみぞ悲しかりける(2012/6/28)
百年(ももとせ)にななとせ足らでみまかりき約束(かねごと)叶へ見せましものを(2012/6/28)
新盆
新盆に魂迎へすと塚清め手向くる花に初秋の風(2012/8/8)
祖母一周忌
なき人の魂(みたま)に捧ぐ料ぞとて花もて祭る今日にもあるかな(2013/6/23)
秋彼岸
彼岸花見れば亡き人おもほゆる魂(たま)安かれと祈る心に(2013/9/20)
道端にて死にたる猫を葬るとて
もの言はぬ獣なれども弥陀(みだ)の国蓮(はちす)の下(もと)へ迎へ入れなむ(2013/6/15)
無常
人みなに死ぬるならひを知りながら知らず顔にて世を過ぐすかな
死出の道そなへよとてもいかがせむ日々のつとめのほかのものかは(2012/12/18)


上野駅
外国(とつくに)の言葉もあまた聞こえたり上野の駅を人の行き交ふ(2012/6/28)
言問橋
いにしへをしのぶとすれどよしなくてともにわびあふ都鳥かな
人心うつれば変はる駅の名をいかが思ふと汝(なれ)に問はまし(2013/1/13)
鳥羽・城南寺
安楽の浄土をうつす鳥羽の宮の跡ににほへる白梅の花(2014/2/25)
布引の滝
雪さそふ風に晒せる白糸の氷りて見ゆる布引の滝(2013/1/18)
瀬戸の海
いかにして君に見せばや瀬戸の海波路はるかに沈む夕日を(2014/1/14)
石見の海
つのさはふ石見の海にここだくも荒き波風磯に響動(とよ)みて(2013/2/10)

天橋立
  名に高き天橋立を思ひて
音に聞く天橋立 大江山いくのを越えて踏みもみてまし(2013/5/28)

神仏
石清水八幡宮
男山けはしき坂を越えて来て都の四方(よも)の眺めをぞ見る(2012/10/31)
清水寺
時雨の雨木々を染めつつ麓より霧たちのぼる音羽山かな(2012/10/28)
住吉大社
住吉の社(やしろ)の松に行く末を祈る心を結びこめつつ(2012/11/3)
住吉の千木(ちぎ)のかたそぎ そのかみにいかなることを契りおきけむ(2012/11/6)
出雲大社
八雲立つ出雲の社(やしろ)支へこし柱を見れば神世しのはゆ(2012/11/23)
岡山護国神社
なき人の御魂(みたま)に捧ぐともしびに社(やしろ)の庭に置きまよふ雪(2013/1/5)
龍ノ口八幡宮
年を経て祈る心は龍の口の峰の月もや見そなはすらむ(2012/11/1)

過去二年ほどで詠んだ歌の集成は、以上で終わり。
今回読み返して、どうしても気に入らなかった歌は省いた。
それでも、今見ると腰折れ歌ばかりだし、類型にすがってなんとか三十一字になっているだけの代物であり、オリジナリティというものはほとんどない。
このままではいけないということもわかっているが、ここで一応、今までの詠草をまとめておいて、先に進むこととしたい。

短歌集成 その4 冬歌

2014-03-10 22:21:14 | 短歌
冬歌

立冬
風の音も昨日にかはる心地して峰の紅葉をわたる木枯らし(2012/11/7)
木の葉時雨
こがらしに木の葉ふりしくさらさらに時雨の音と聞きも分かじな(2012/11/18)
紅葉
もみぢ葉は濃きも薄きも夕暮の光をうつしここら照り映ゆ(2012/11/16)

風寒み心もさゆる空なれど虹見るほどぞしばしなぐさむ(2012/11/15)
時雨
神無月空かきくらし降る雨に峰のこずゑぞ色まさりける(2013/11/15)
冬の月
冬の夜の河風寒くなるままに三野の堰(ゐせき)に月ぞさえゆく(2012/11/28)
世の人の心にしめていかばかり今宵の月に物思ふらん
かくばかり物思へとや山の端につれなく出でて月のすむらん(2012/11/30)
物思はぬ心を求(と)めてひさかたの月の都へ行くよしもがな(2012/11/14)
夕暮にしのぶるとしもなけれども昔おぼゆる山の端の月(2012/12/27)
水鳥
降り積もる上毛(うはげ)の雪もはらひあへで氷のひまに浮かぶ水鳥(2014/2/9)
聖夜
諸人よともに歌へよあまねくも恵みを垂れに主は来ませると
諸人の今宵ばかりは争はず罪も嘆きもなからましかば(2012/12/25)
歳暮
百八つの迷ひ悩みをかぞへつつ二年(ふたとせ)かけて過ぐす夜半かな
もろ人の闇路に深き迷ひをばみなつきねとて鐘ぞ打つなる
月さゆる空に響ける鐘の音に今年かぎりの夜半ぞふけゆく(2012/12/31)
春兆す
春近き空のけしきものどかにてかねてぞかすむ遠(をち)の山々(2014/2/1)

「聖夜」は伝統的な和歌にはそぐわない歌題だが、いちおうここに入れてみた。
冬の歌も、時雨と歳暮以外には、詠んでいた記憶があまりなかったので、思ったよりも数が多かったことに驚いている。