「こんにちわッ、テディちゃでス!
きょうからァ~のびィまァ~スゥ!」
「がるる!ぐるるるるがるる!」(←訳:虎です!お日さまを味方に!)
こんにちは、ネーさです。
『春分の日』である今日を境に、
ぐんぐん伸びてゆくのは、“昼間の時間”、ですね。
どうか今年は猛暑にならないでおくれ、とお日さまを拝みつつ、
さあ、本日の読書タイムは、こちらの御本を、どうぞ~♪
―― 色の物語 ゴールド ――
著者はヘイリー・エドワーズ=デュジャルダンさん、
原著は2020年に、画像の日本語版は2025年1月に発行されました。
仏語原題は『OR - Ca,c'est de l'art De Toutânkhamon À Andy Warhol』、
『ツタンカーメンからアンディ・ウォーホルまで』と
日本語副題が付されています。
「こんどはァ~きんいろッ?」
「ぐるがるぐるるる!」(←訳:華麗なるキンピカ!)
青、黒、赤、ピンク……
《色》をテーマに、
古今東西のさまざまなアート作品を紹介してゆく
《色の物語》シリーズ最新刊は、
表紙も内容も、金、金、金、と、
キラキラのピカピカです。
ええ、日本人の私たちにとって、
キラキラまばゆい黄金色の輝きは、
おめでたくて、華やかで、
お祝い事に使われる色、という印象ですよね。
その最たる例は、
結婚式の金屏風、でしょうか。
金糸を織り込んだ豪華な帯も、
正装にふさわしい最高級品です。
けれど、西欧の文化では、
黄金は、必ずしも
“めでたい“とは直結していないようです。
結婚式で花嫁さんが身に着けるのは、銀。
幸運を招くのは銀色で、
黄金色は、むしろ、
お葬式で使われる色、に近いニュアンスがあり、
この御本の冒頭でも、
突きつけられているのは、
《金は善か悪か》
という、古くからの難題です。
「むむッ? きんいろォ、だめェでスかッ?」
「がるる?」(←訳:金が悪?)
金のイメージは、
貪欲、権力、暴力などのネガティブなもの、
神の光、聖なるもの、寛大さといったポジティブなもの、
これら両方です。
相反する、両極端な”色の作用“を
見事に使いこなしているのは、
本文44~47ページの
ウジェーヌ・ドラクロワさん作
『サルダナパールの死』(1827年)。
バイロン卿の詩に触発されたドラクロワさんが
大画面に描き出したのは
死の群像劇――
アッシリアの暴君サルダナパルスは
敗北を前に、投降ではなく、死を選びました。
が、それは、自分ひとりの孤独な死ではなかったのです。
厩から愛馬たちを引き出し、
後宮の美女たちや財宝、
愛するあらゆるものを道連れにしての死、でした。
彼の死は悲劇だったのか。
傲慢で言語道断なわがままだったのか。
ドラクロワさんは、
倒れ伏す美女たちの傍らに、
暴れる駿馬の装具に、
そして王の額の上に、
輝く黄金の絵の具を置きました。
おそらく、じきに、ここには火が放たれる。
いや、画面の右手には、既に煙が見える。
数分後には火の海。
数時間後には、灰。
生命あるものも、黄金の美も、
すべては灰に。
そう、ドラクロワさんにとって、
黄金は、幸福な色、ではなかった……
「ぶゥーぶゥー!」
「ぐるるがるるぐるるるるぅ!」(←訳:幸福な金色もありますよぅ!)
ええ、もちろんです。
50~51ページにあるのは、
グスタフ・クリムトさん作
『接吻』(1907~1908年)。
俵屋宗達さんか尾形光琳さんか、
明らかに琳派の影響がうかがえる
クリムトさんの代表作です。
クリムトさんは、アンチというか、
論敵も多かったと伝えられる御方ですが、
『接吻』は展覧会で発表するや大好評!
展覧会終了直後にオーストリア政府がソッコーで購入し、
それへ文句をつける者はいませんでした。
「めいさくゥ~なのでス!」
「がるるるるぐるる!」(←訳:唯一無二の宝もの!)
善なのか、悪なのか――
人類を魅了してやまない
永遠の輝き。
現代では、人工衛星やロケットの部品にもなって、
宇宙へと進出してゆく《黄金》、
その光と影の物語を、
アート好きな皆さま、ぜひ♪
(付記:暴君サルダナパルスのモデル?ともいわれる
アッシリア末期のアッシュール=バニバル王は、
暴君などではなく、
世界最古の図書館を建てた理知的な人物であった、
という説が有力であるようです。
ご参考までに……)