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テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ どこまでもドラマを ~

2025-03-20 22:03:14 | ブックス

「こんにちわッ、テディちゃでス!

 きょうからァ~のびィまァ~スゥ!」

「がるる!ぐるるるるがるる!」(←訳:虎です!お日さまを味方に!)

 

 こんにちは、ネーさです。

 『春分の日』である今日を境に、

 ぐんぐん伸びてゆくのは、“昼間の時間”、ですね。

 どうか今年は猛暑にならないでおくれ、とお日さまを拝みつつ、

 さあ、本日の読書タイムは、こちらの御本を、どうぞ~♪

  

 

 

           ―― 色の物語 ゴールド ――

 

 

 著者はヘイリー・エドワーズ=デュジャルダンさん、

 原著は2020年に、画像の日本語版は2025年1月に発行されました。

 仏語原題は『OR - Ca,c'est de l'art De Toutânkhamon À Andy Warhol』、

 『ツタンカーメンからアンディ・ウォーホルまで』と

 日本語副題が付されています。

 

「こんどはァ~きんいろッ?」

「ぐるがるぐるるる!」(←訳:華麗なるキンピカ!)

 

 青、黒、赤、ピンク……

 《色》をテーマに、

 古今東西のさまざまなアート作品を紹介してゆく

 《色の物語》シリーズ最新刊は、

 表紙も内容も、金、金、金、と、

 キラキラのピカピカです。

 

 ええ、日本人の私たちにとって、

 キラキラまばゆい黄金色の輝きは、

 おめでたくて、華やかで、

 お祝い事に使われる色、という印象ですよね。

 

 その最たる例は、

 結婚式の金屏風、でしょうか。

 金糸を織り込んだ豪華な帯も、

 正装にふさわしい最高級品です。

 

 けれど、西欧の文化では、

 黄金は、必ずしも

 “めでたい“とは直結していないようです。

 

 結婚式で花嫁さんが身に着けるのは、銀。

 

 幸運を招くのは銀色で、

 黄金色は、むしろ、

 お葬式で使われる色、に近いニュアンスがあり、

 この御本の冒頭でも、

 突きつけられているのは、

 

 《金は善か悪か》

 

 という、古くからの難題です。

 

「むむッ? きんいろォ、だめェでスかッ?」

「がるる?」(←訳:金が悪?)

 

 金のイメージは、

 貪欲、権力、暴力などのネガティブなもの、

 神の光、聖なるもの、寛大さといったポジティブなもの、

 これら両方です。

 

 相反する、両極端な”色の作用“を

 見事に使いこなしているのは、

 本文44~47ページの

 ウジェーヌ・ドラクロワさん作

 『サルダナパールの死』(1827年)。

 

 バイロン卿の詩に触発されたドラクロワさんが

 大画面に描き出したのは

 死の群像劇――

 

 アッシリアの暴君サルダナパルスは

 敗北を前に、投降ではなく、死を選びました。

 が、それは、自分ひとりの孤独な死ではなかったのです。

 厩から愛馬たちを引き出し、

 後宮の美女たちや財宝、

 愛するあらゆるものを道連れにしての死、でした。

 

 彼の死は悲劇だったのか。

 傲慢で言語道断なわがままだったのか。

 

 ドラクロワさんは、

 倒れ伏す美女たちの傍らに、

 暴れる駿馬の装具に、

 そして王の額の上に、

 輝く黄金の絵の具を置きました。

 

 おそらく、じきに、ここには火が放たれる。

 いや、画面の右手には、既に煙が見える。

 数分後には火の海。

 数時間後には、灰。

 

 生命あるものも、黄金の美も、

 すべては灰に。

 

 そう、ドラクロワさんにとって、

 黄金は、幸福な色、ではなかった……

 

「ぶゥーぶゥー!」

「ぐるるがるるぐるるるるぅ!」(←訳:幸福な金色もありますよぅ!)

 

 ええ、もちろんです。

 50~51ページにあるのは、

 グスタフ・クリムトさん作

 『接吻』(1907~1908年)。

 

 俵屋宗達さんか尾形光琳さんか、

 明らかに琳派の影響がうかがえる

 クリムトさんの代表作です。

 

 クリムトさんは、アンチというか、

 論敵も多かったと伝えられる御方ですが、

 『接吻』は展覧会で発表するや大好評!

 展覧会終了直後にオーストリア政府がソッコーで購入し、

 それへ文句をつける者はいませんでした。

 

「めいさくゥ~なのでス!」

「がるるるるぐるる!」(←訳:唯一無二の宝もの!)

 

 善なのか、悪なのか――

 人類を魅了してやまない

 永遠の輝き。

 

 現代では、人工衛星やロケットの部品にもなって、

 宇宙へと進出してゆく《黄金》、

 その光と影の物語を、

 アート好きな皆さま、ぜひ♪

 

 

 

 

 (付記:暴君サルダナパルスのモデル?ともいわれる

     アッシリア末期のアッシュール=バニバル王は、

     暴君などではなく、

     世界最古の図書館を建てた理知的な人物であった、

     という説が有力であるようです。

     ご参考までに……)  

コメント
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