「こんにちわッ、テディちゃでス!
けんこうこつゥ、ぐるぐるゥ~!」
「がるる!ぐるがっるーる!」(←訳:虎です!耳をマッサージ!)
こんにちは、ネーさです。
台風による気圧の影響で体調が下降気味な時は、
はい、肩甲骨をゆっくり回して、耳朶のツボ押しも。
締めくくりに深呼吸でリラックスしたら、
本日の読書タイムは、さあ、こちらの御本を、どうぞ~!
―― マーラーの姪 ――
著者はウィルソン夏子(Natsuko Wilson)さん、
2024年7月に発行されました。
『アウシュヴィッツの指揮者、アルマ・ロゼの生涯』
と副題が付されています。
20世紀を代表する音楽家
グスタフ・マーラーさん(1860~1911)の名は、
現在でも広く知られていますし、
妻・アルマさんの名もまた、
19世紀末~20世紀初頭のウィーンで
多くの芸術家のミューズとなったことから
アート好きさんの間ではよく知られています。
しかし、マーラーさんに、
妻と同じ名前を持つ姪御さんがいたことは、
あまり知られてはいません。
彼女――アルマ・ロゼさんが、
アウシュヴィッツで生命を落としたことも。
「にげなくちゃッ!」
「ぐるがるる!」(←訳:早く国外へ!)
1938年3月、オーストリアは
ヒトラー率いるドイツに占領されました。
それ以前からも、世情は悪化する一方で、
マーラーさんの8歳下の妹・ユスティーネさんの家族に
¨選択のとき¨が近付いていました。
このまま国に留まるか、
国外へ脱出するか。
ウィーン・フィルのコンサートマスターを務める
父・アルノルト・ロゼさん、
作曲家、指揮者として活躍する
兄・アルフレートさん、
アルマさん自身もヴァイオリニスト、と
ロゼ家は音楽一家でしたが
……ユダヤ人だったのです。
ロゼ家はカトリックに改宗していましたが、
国がドイツ色に染まる中、
父と兄は失職、
8月に母が亡くなった後、
兄・アルフレートさんは妻マリアさんを伴って米国へ。
父・アルノルトさんは英国へ。
アルマさんも米国への脱出を考えました。
しかし、不運にも兄が送ってくれた書類を入手できず、
欧州の各地を逃避行の末、
1942年に逮捕され、
1943年、アウシュヴィッツ収容所へ移送されます。
「そんなのォ、だめでスゥ~…!」
「がるぐるる……!」(←訳:残酷すぎる……!)
人体実験に付されるはずだったアルマさんを救ったのは、
音楽でした。
『最後の願いとして
ヴァイオリンを弾かせて頂けないでしょうか』
この一言が、ヴァイオリンの音色が、
アルマさんを救い、
さらに、何人もの収容所の女性たちの生命を
救うことになったのですが、
或る日、彼女に身に起こったのは……。
「あくむゥ、でスゥ……」
「ぐるるがるる……」(←訳:言葉もないよ……)
1944年4月、
アルマさんは37歳で世を去りました。
著者・ウィルソンさんは、
マーラーさんが予感した¨人類の悲劇¨を克明に描き、
アルマさんの生涯を掘り起こしてゆきます。
なぜ、どうして、
生きるべき命が、
失われてしまうのか。
全活字マニアさんにおすすめしたい
ノンフィクション作品です。
どうかぜひ、一読を。