テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 塀の彼方の音楽は ~

2024-08-29 22:03:11 | ブックス

「こんにちわッ、テディちゃでス!

 けんこうこつゥ、ぐるぐるゥ~!」

「がるる!ぐるがっるーる!」(←訳:虎です!耳をマッサージ!)

 

 こんにちは、ネーさです。

 台風による気圧の影響で体調が下降気味な時は、

 はい、肩甲骨をゆっくり回して、耳朶のツボ押しも。

 締めくくりに深呼吸でリラックスしたら、

 本日の読書タイムは、さあ、こちらの御本を、どうぞ~!

  

 

 

             ―― マーラーの姪 ――

 

 

 著者はウィルソン夏子(Natsuko Wilson)さん、

 2024年7月に発行されました。

 『アウシュヴィッツの指揮者、アルマ・ロゼの生涯』

 と副題が付されています。

 

 20世紀を代表する音楽家

 グスタフ・マーラーさん(1860~1911)の名は、

 現在でも広く知られていますし、

 妻・アルマさんの名もまた、

 19世紀末~20世紀初頭のウィーンで

 多くの芸術家のミューズとなったことから

 アート好きさんの間ではよく知られています。

 

 しかし、マーラーさんに、

 妻と同じ名前を持つ姪御さんがいたことは、

 あまり知られてはいません。

 

 彼女――アルマ・ロゼさんが、

 アウシュヴィッツで生命を落としたことも。

 

「にげなくちゃッ!」

「ぐるがるる!」(←訳:早く国外へ!)

 

 1938年3月、オーストリアは

 ヒトラー率いるドイツに占領されました。

 それ以前からも、世情は悪化する一方で、

 マーラーさんの8歳下の妹・ユスティーネさんの家族に

 ¨選択のとき¨が近付いていました。

 

 このまま国に留まるか、

 国外へ脱出するか。

 

 ウィーン・フィルのコンサートマスターを務める

 父・アルノルト・ロゼさん、

 作曲家、指揮者として活躍する

 兄・アルフレートさん、

 アルマさん自身もヴァイオリニスト、と

 ロゼ家は音楽一家でしたが

 ……ユダヤ人だったのです。

 

 ロゼ家はカトリックに改宗していましたが、

 国がドイツ色に染まる中、

 父と兄は失職、

 8月に母が亡くなった後、

 兄・アルフレートさんは妻マリアさんを伴って米国へ。

 父・アルノルトさんは英国へ。

 

 アルマさんも米国への脱出を考えました。

 しかし、不運にも兄が送ってくれた書類を入手できず、

 欧州の各地を逃避行の末、

 1942年に逮捕され、

 1943年、アウシュヴィッツ収容所へ移送されます。

 

「そんなのォ、だめでスゥ~…!」

「がるぐるる……!」(←訳:残酷すぎる……!)

 

 人体実験に付されるはずだったアルマさんを救ったのは、

 音楽でした。

 

 『最後の願いとして

  ヴァイオリンを弾かせて頂けないでしょうか』

 

 この一言が、ヴァイオリンの音色が、

 アルマさんを救い、

 さらに、何人もの収容所の女性たちの生命を

 救うことになったのですが、

 或る日、彼女に身に起こったのは……。

 

「あくむゥ、でスゥ……」

「ぐるるがるる……」(←訳:言葉もないよ……)

 

 1944年4月、

 アルマさんは37歳で世を去りました。

 

 著者・ウィルソンさんは、

 マーラーさんが予感した¨人類の悲劇¨を克明に描き、

 アルマさんの生涯を掘り起こしてゆきます。

 なぜ、どうして、

 生きるべき命が、

 失われてしまうのか。

 

 全活字マニアさんにおすすめしたい

 ノンフィクション作品です。

 どうかぜひ、一読を。

 

コメント
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