「こんにちわッ、テディちゃでス!
うりゃッ! たいけつゥ、なのでスゥ~ッ!」
「がるる!ぐるがっるぅ!」(←訳:虎です!勝負あったぁ!)
こんにちは、ネーさです。
かの有名な、ライヘンバッハの滝の上で繰り広げられた
世紀の死闘とは? そこにひそむ謎とは……?
さあ、本日の読書タイムは、
全シャーロキアンの耳目を集めるこちらの御本を、どうぞ~♪
―― シャーロック・ホームズの護身術 バリツ ――
著者はエドワード・W・バートン=ライトさん、
監修は新美智士(にいみ・さとし)さん、
翻訳は田内志文(たうち・しもん)さん、
2024年3月に発行されました。
英語題名は『RARITSU : Sherlock Holmes' The Art of Self-Defence』、
『英国紳士がたしなむ幻の武術』と日本語副題が付されています。
「ばりつゥ~…!」
「ぐるがるるる……!」(←訳:存在したんだ……!)
シャーロック・ホームズさんの物語を
一度でも読んだことがあるのなら、御記憶でしょうか。
アーサー・コナン・ドイル卿著
『空き家の冒険』の中で、
ワトスン博士は驚愕のあまり気を失います。
目の前に、我が友ホームズが!
犯罪界のナポレオンことモリアティ教授と、
スイスのライヘンバッハの滝の淵で戦い、
深い滝壺に落下して
亡くなったと思っていたホームズが!!
それへ、ホームズさんの方は、
ワトスン博士を介抱しながら、
当たり前のように答えたのでした。
《 ぼくは日本の格闘術であるバリツを少々かじっていて、
何度もそれに救われたことがあってね 》
「うむゥ! たすかッてェ、よかッたでス!」
「がっるぐるるる!」(←訳:ホッとしました!)
ええ、はい、その通りです。
ホームズさんを咄嗟の危機から救った
格闘術・バリツ――
って、何?
武術が訛って、バリツ?
柔術のような、体術の一種?
「わきゃりませんッ!」
「ぐるるるるがる~」(←訳:謎なんだよねえ~)
コナン・ドイル卿が、単語を書き間違えた?
出版社か印刷所でのミスプリントか?
そんな名の闘法は、日本にはないぞ?
と、多くの人が首を傾げた
《バリツ問題》の答え、かもしれなのが、
エドワード・ウィリアム・バートン=ライトさん(1860~1951)
によって編み出された
『バーティツ(Bartitsu)』です。
「かわしてェ、ねじるゥ!」
「がるるぐる!」(←訳:素手で流す!)
「ていッ!」
「ぐるがる!」(←訳:悪漢撃退!)
この御本では、
護身術『バーティツ』の実技の解説、
技をかけているところを撮影した写真が紹介されています。
写真を拝見したところでは、
基本は柔術で、
武器として用いている杖の使い方は、
槍術(そうじゅつ)、それも短槍を使う槍術か、
棒術をアレンジしたもの……?
ただ、時系列の問題が残っているんですよね。
『バーティツ』の記事が
『ピアソンズ・マガジン』誌に載ったのは1899年、
バートン=ライトさんが
ロンドンに『バーティツ』の道場を開いたのは1900年。
しかし、
道場はふるわず、1902年には殆ど機能しなくなって、
1903年には閉鎖されました。
モリアティ教授と闘った『最後の事件』は1893年に、
『空き家の冒険』は1903年に発表されています。
『バーティツ』は『バリツ』なのか。
だとしたら、ドイルさんは、ホームズさんは、
いつどこで『バリツ』と遭遇したのか。
「ふわァ~…すてきィでスねェ~…」
「がるるるるる!」(←訳:答えのない謎!)
監修者・新美さんと、
翻訳者・田内さんによって炙り出される
謎の武術バリツと、《バーティツ》。
シャーロキアンの皆さまは必読!な一冊です。
本屋さんで、図書館で、
ぜひ、探してみてくださいね~♪