屋根と壁の塗り替え作業は続行中。その作業の都合でエアコンの室外機の位置がずらされて
いた。それを見た夫が言うことには
「外のあの機械、昨日は家の裏側に移動してあったよ。あれ何なの?」
話の内容が理解できない私、何度か説明を求めてようやく分った。
ひとつ……家の裏側に移動してあったと彼が主張する室外機は、昔っから
そこに設置されていた二階の部屋のエアコンの室外機。
ふたつ……位置がずれていた室外機は、居間のエアコン用のもので、どこへも
移動なんかしていない。もしどこかへ動かされていたとしたら、
居間のエアコンは使用不能のはず。
みっつ……すなわち、エアコンが作動するには室外機の存在が不可欠である
ということを、夫は知らなかったらしい。
これほどまでに家電製品に疎い人だったとは、と呆れてしまう。確かに、テレビ番組の
タイマー予約は出来ないし、電子レンジは 「あたため」 しか使えないし、FAXで何か
を送信する時は私を呼びたてるし。携帯電話を何とか使いこなしているのが不思議な
くらいだ。
さて、そんな夫に昨日はFAX電話を買ってきてくれるように頼んでみた。カタログの写真
にしっかり丸をつけた上で 「これを買ってきてね。在庫がなかったら注文してください。
万一、製造が終わっているなんてことになっていたら、こっちの機種にしてね」
1時間後、私が指定したFAX電話器をしっかり購入してきた夫が、意気揚々と帰宅。家電
製品を夫ひとりで買い物することが出来た 「はじめてのお使い」 でありました。
我が家の車は今年13年目を経過し、今回が最後、と法定点検を済ませた。だが、
世間ではエコカー減税とか補助金とかが話題で、今が買い替え時とメディアも
大宣伝だ。特に、新車登録から13年以上経った車を廃車にして一定基準を
クリアした新車に買い替えると、25万円もの補助金がもらえるという話だから、
心は動く。
しかもその期限は今年の9月30日まで。そろそろ買い換えようと思っている我々
のようなユーザーにとっては 「まさに今がその時」 なのだ。
だがしかし、夫は首を縦に振らない。
「来年まで待つとして、買った時の値段を14で割る、
それに車検でかかったお金の半分を足してごらんよ」
その金額が補助金より多かったら、うちの車の残存価値は補助金を上回っている
と言えるのだから、今買い替えるのは損になるという理屈らしい。 せこっ!
だけど、犯罪的なほどに燃費の悪い3ナンバーをいまどきのスーパーエコな車に
乗り換えたら、ガソリン代は半減するのではないのか。そう思って計算してみたら、
う~~ん……トントンという結果に。
あとは、新品の車に今すぐ乗れるという楽しみを取るか、新車の寿命を1年でも先へ
伸ばす方を取るか、そういう話になってくるのかなあ。
夫の誕生日プレゼントは何にしようかと考えていた。
スペインで上等のベルトをお土産に買ったから、それを使い回そうかとも思ったが、
ちょっと図々しいねと思い直す。
そういえば、夕食時必ず飲んでいたビールを、この冬の夫は封印している。代わりに、
白ワインをグラスに1,2杯飲むようになった。プレゼントにはワインがいいかも。
デパートのワイン売り場で 「和食に合う辛口の白、さっぱりキリッとしたワインを下さい」
と、ものすごくアバウトな要望を伝えて選んでもらったのがこの二本。誕生日プレゼント
だから、お値段はちょっとだけ張ってる。
楽しみだなあ、私もしっかり飲む気でいるのだ。
ちなみに、左端はスペイン産の赤ワイン(もちろん1000円台のお手頃価格)。
スペインで飲んだワインがとても美味しかったので、私のワインはしばらくその線で…
寝室の床の上に、夫のスーツが二着落ちていた。落ちていたというか、
ドサッという感じで置いてあった。合い物だったので、たぶん着る季節
が終わったのだろうと思い、さっそくクリーニングに出した。
帰宅した夫に一応報告。
「今朝床の上に置いてあった背広、クリーニングに
出したからね。次のシーズンまで着ないわよね」
「えっ! あれ捨てるつもりだったんだけど」
「わーっ、だったら言ってよね」
「だって床に置いたものは処分するってことに
なってたでしょ」
そうだった。実は、スーツにしろセーターにしろ、夫自身が床の上にポイッ
と置いた場合は処分してもよい、という暗黙の約束事があったんだっけ。
でも、二着もいっぺんに捨てるなんていうのは想定外だったから、確認も
せずに洗濯屋さんに持って行ってしまったのだ。
しまったなあ。だが、自分の失敗はこの際棚の上に放りあげて強弁する私。
「クリーニング代を無駄にするのはもったい
ないから、もう1シーズン着てよね!」
まあ、逆の失敗でなかったということで良しとするしかない。捨てるつもり
のないスーツを2着も処分してしまったとしたら、悔やんでも悔やみきれな
かったであろうから。
「ここにあったフロッピー知らない?」と言いながら、夫はプラスチックケースを手に、
机の周囲をキョロキョロ。私は内心ドキリとした。一か月ほど前、一念発起して机周り
の大整理を敢行した際、確かに大量のフロッピーディスクを処分したことを思い出し
たのだ。
夫はいまだにフロッピーディスクユーザーである。というのも、彼は授業で使う教材
をすべてワープロで作成しているからだ。そのワープロも市場から姿を消してしまっ
たから、今やオークションで中古を入手するしかないという世界なのだが。
その大切な教材の入ったディスクが無くなった? 一大事である。ましてや、私が捨
ててしまったとしたら、取り返しのつかない許されざる失敗だ。 必死で探す私の背中
に向って
「もういいから…」
と声をかけて出勤していった夫。でも、とにかく探さなくっちゃ。机の下、本箱、戸棚……
あらゆる場所をひっくり返して探しまわる。おかげで、季節はずれの大掃除効果で
ある。
だが、結局見つからない。やっぱりあの時捨てちゃったのかなあ。私ったら何てこと
したんだろう。困り果てて、夫が手にしていたケースを何気なく開けてみた。何とそこ
には 「講義プリント」 と書かれたフロッピーディスクが合計8枚ちゃーんと納まって
いるではないか。
「あるじゃない!! ちゃんと確認してから言ってよね。馬鹿!」
ホッとした勢いで、思わず悪態をついちゃったけれど、捨てていなかったという事実に
心底安堵した一瞬だった。そうよね、いくら捨て魔の私とはいえ、タイトルを見もしない
で廃棄するはずがないではないか。
にわかに強気を取り戻し、元気になった私でありました。
SとM
身につける物のサイズのことである。未だにこの大ざっぱなサイズ表示でOK
な衣類のジャンルも存在しているのだ。
たとえば帽子。実家の母に帽子を送ろうと思ってデパートへ行った。私の頭で
試着してぴったりだったSサイズのものを選んだのだが、どうやら母には少し
小さ過ぎたらしい。
「大丈夫、交換してもらえるから」と電話したら、喜びついでに母が誇らしげ
に言い放った一言ーーー
「覚えておいてね。私にSサイズなんてものは
上から下までいっさい縁のない大きさなんだ
から」
************************
紳士服売り場で、夫に良さそうな初夏向きのブルゾンを見つけた。本人が一緒
ではないけど、エーイ買っちゃえ。ところが店頭にあるのはMサイズとLサイ
ズのみ。小柄な人なので、Sじゃないとダメかなあ。でも上着だから、少々ゆ
ったりでもいいわよね、と勝手に決めて購入した。
しかし、帰宅して夫に着てもらったら、やはり多少のだぶつき感は否めない。
「明日行って、Sサイズを取り寄せてもらうことにするから」と私。
「言っとくけど、これからもMサイズは絶対だめ
だからね。とにかく僕はS! 分かった?!」
そんなに威張ってスモール・サイズを強調しなくたって・・・・
「ヒッチハイクと言えばさ」何がきっかけだったかは忘れてしまったが、夫が振ってきた
話である。
「この間、テニスコートへ行く途中、突然道の真ん中に立ち
ふさがったおばあさんがいてね。両手をこう大きく振り回
してるんだ」
「テニスクラブのちょっと手前。で、おばあさんを轢いちゃう
わけにいかないから車を止めたの。何だったと思う? お墓
へ連れて行けって言うんだよ」
「霊園行きのバスを待ってたんだろうけど、あそこのバスなかなか
来ないだろ。しびれを切らして、通りかかった車を止めちゃ
ったってわけ。仕方ないから乗せてあげた。相当のおばあさ
んだったし、霊園はテニスコートのちょっと先だったからね」
いやぁ、笑った笑った。住民同士がみんな顔見知り、みたいな山奥の村とかだったら
あり得る話だけど・・・まさか、東京に隣接する人口60万のベッドタウンで、
ヒッチハイク。しかも、おばあさんが!
「あのおばあさん、霊園へ行く時は、通りすがりの車をけっこう
止めてるんじゃないかな。慣れてる感じだった」
夫のこの感想に、わたし、もうひと笑いした。
夫は、その仕事柄、通勤時の服装はとてもパリッとしている。反面、自宅での身なりはヨレヨレの極み。落差が激し過ぎてまるで別人だ。
ポロシャツやセーターなどは、私が適当にみつくろって買ってくればいいんだけど、問題はボトム。彼の自宅用のパンツは2本ぽっち。それを何年も何年もはき倒しているから、色は抜け、生地はすり切れ、ひどい有様。恥ずかしくって一緒に外出も出来ないよ~
「今日こそはズボンを買うからね」としぶる夫を引きずるようにしてジーンズ専門店に向かった。ここは、とても見立ての良いお店。店主のおじさんはすごく親身になってパンツ選びを手伝ってくれるから、私もしばしば利用している店なのだ。そのおじさん、夫のはいていたコーデュロイパンツを一目見るなり
「だんなさん、これはいい生地だねぇ。うちで買ってくれたんだよね。
大事にはいてくれて有り難いなあ」
ほめられているのか、呆れられているのか正直微妙だと思う。何しろ10年以上前に買ったパンツだものねぇ。物持ちの良さにも程があるってものだ。
友人と銀座で食事をした帰り道、東京駅の地下「グランスタ」へ立ち寄った。
デパ地下なみの華やかさは、ここが駅の中とは信じられないほどだ。
その通路の中間地点あたりに30人程が列を作っていた。どうやら、ある店で
買い物をするために並んでいるお客さんの固まりらしい。いったい何を買う
ための行列? 列の最後尾には「待ち時間50分」と書いた貼り紙。7、8人
ずつが順番に係員に誘導されて売り場へ向かう。何とも仰々しい買い物風景である。
それはかりんとうを売る「日本橋錦豊琳(にしきほうりん)」という名の店だった。
「え~っ、かりんとうを買うのにこんなに並ぶの~?」
「日本人て、こんなにかりんとうが好物だったっけ」
友人と私は呆気にとられてその光景を眺めたのだった。帰宅した私は、もらって
来たリーフレットを見せながら、もちろん夫に報告である。
「50分並んでも手に入れたいほどのかりんとうって、
どんな味なのかしらね」
「でも、『かりんとう』は『かりんとう』だろう?」
そして翌日、夫が持ち帰ったお土産はーーーー。わざわざ東京駅へ寄り道して、
30分並んでやっと買えたのだとか。しかも、15袋も! まだ食べていないけど、
美味しいんだろうなあ。並ばなければ買えないという付加価値がついてるしね
(店舗は「グランスタ」のみ。通販もなしですって)。
竹炭を練り込んだものから、ねぎ味噌味や
きんぴらごぼう味まで・・
朝晩の冷え込みが相当厳しくなってきた。掛け布団を、肌掛けから分厚い
羽毛にそろそろ代えなくちゃと思い、夫に尋ねる。
「私はそろそろ厚い羽毛布団にするけど、あなたはどうする?」
「うーん、僕はまだいい」
答えは分かっていた。何しろわが夫は、寒がりのくせに やせ我慢の貧乏性
なのである。彼の理屈はこうだ。
「我慢出来るうちは薄い布団でいい。これからもっと
寒くなるんだから、その時に備える」
「大丈夫よ。段階を追って暖かく出来るんだから。まず厚い羽毛
でしょ。次にベッドカバーをかけると重みであったかくなるでしょ。
次にシーツをタオル地に代えたらもっと暖かくなるから」
「やっぱりいい。レベルアップをなるべく後ろにしたい。どこまで
寒くなるか分からないんだからさ」
はいはい、わかりました。でも、そんなこと言って我慢しているうちに冬が
終わってしまうかもよ~。
これ、お土産ねーーー1泊の出張から帰宅した夫が、小さな包みを取り出した。
「わぁ! 上等のわさび漬けね。うれしい~」
「どうかな、食べられるかどうか開けてごらん」
ん、どういうこと? 夫の意味ありげな言葉にひっかかる。伊豆の三大みやげ
といったら、干物、かまぼこ、わさび漬けでしょ。どれも大好き。特に、前回
夫が買って来た最高級のわさび漬けは美味しかった。刻んだ本わさびがたっぷり
入っていてその香り高さは絶品。てっきり今日のお土産もわさび漬けだと思った
んだけど。
包みを開いて口あんぐり。水晶とめのうのペンダントトップだ。ちょっと微妙か。
たぶん私だったら選ばないなあと思ったけれど、せっかくのお土産だものね、
ありがとう。
「泊まったホテルが皇室御用達みたいなところでね。この
水晶も美智子妃殿下お買い上げって別ケースに入ってた
んだよ」
うーん、美智子妃殿下ねぇ。たぶん、何かお土産を買わなくてはいけない状況で、
やむなく無難なところをお選びになったのではないだろうか。ところで、夫の
出張先は伊豆ではなくて山梨。知らなかった。だから水晶だったのか・・・。
『鮭のムニエル クリームソース添え』というのを作っている最中、
クレソンを買い忘れていたことに気づく。「ソースの仕上げにクレソンの
茎を刻んで加える」とテキストに書いてあるので、絶対必要だと思い込む私。
まもなく夫が駅に着く頃だと思い、彼の携帯にメールを送った。「クレソン
を買って来て下さい」 そして、最後にクレソンを入れれば出来上がり、
というところまでソースを仕上げてひたすらクレソンの到着を待つ。
ところが、20分ほどして帰宅した夫の手にクレソンは無いじゃないの。
「メール見てくれなかったの?」
「ごめん、見なかった。メール見るのすっかり忘れてた」
「クレソンが絶対要るの。今から買って来て」
「はい、はい」
駅に着いたら必ずメールを見るという約束のはずなのに、夫はしょっちゅう
メールチェックを忘れるのだ。そのために、人参1本、大葉1袋、
パセリ1束・・・帰宅早々、靴も脱がずにスーパーへUターンという気の毒な
ことになってしまう。ごめんね。でも、今晩の夕食のために今すぐ絶対
必要な物なんです。
「そもそも最初に買い忘れたあなたが悪いんでしょ!」としっかり自分に
ツッコミ入れてますとも、もちろん。
帰宅した夫が、何気なく(だと思うんだけど)発したひとことーーーー
「今日、誰か来たの?」
わぁー、何で分かるんだろう。別に後ろめたいことがあるわけではないが、
言い当てられてドギマギしてしまう自分が悔しい。どうして分かったの、
と尋ねたら、
「食器の洗いカゴに、いつもは使わない
コーヒーカップが伏せてあったから」
そうかぁ、食器洗いは夫の仕事だから、彼は我が家の食器を完全に把握
しているのだった。
「今日はエアコンの取り付けに来てくれた業者さんに
コーヒーを出したから・・・」
「そうか、やっとエアコン来たんだね」
食器カゴに見慣れないコーヒーカップ。確かに、日常をちょっとだけ逸脱
する風景かもしれないなあ。
新しいエアコンが付き、凍える日々をやっと脱出。
猫も快適、ソファーでのうのうと寛ぐ
逆切れ
テレビ大好き、特に2時間ミステリドラマはほとんど欠かさず見ている私。
翌日が休みの日に限っては、夫も私につき合って一緒にドラマを見る。
私は必ずと言っていいほど途中で眠くなるので、その辺に転がってうとうと。
目が覚めるとドラマはほとんど終わっていて、当然話の筋は分からなく
なってるから、律儀に見続けていた夫に尋ねる。
「最初の被害者を殺したのが上司だったとすると、その上司
を殺したのは結局誰だったの?」
「あの居酒屋の主人だろ」
「居酒屋の主人にはアリバイがあったじゃない。佳奈って女
の伯父さんじゃないの?」
「そうだ、そうだ。竜雷太の方だ」
「じゃあ、居酒屋の主人はどう絡んで来るの?」
「佳奈の両親の殺人事件に関係してた過去があるから、
彼女を助けようとするんだ」
「自転車泥棒の証言をした女の子も関係あるの?」
「どの女の子だっけ」
「最初に出て来た女の子でしょ!」
「池内の役割は結局何?」
「池内って誰だっけ」
「ほら、信金の理事」
「えーと、どうだったかな」
「もうっ、ちゃんと見ててよね。説明へた過ぎ!」
完全に逆切れ状態の私です。うたた寝なんかしないで自分で見ろって
話ですよね。
生命保険
夫を被保険者にして掛けている生命保険のひとつは、一年ごとに自動更新
する定期保険。今年の3月、半年ごとに自動的に引き落とされるその保険料
の金額を見て、あまりの高額にびっくりしてしまった。
「えっ、一年分?」と思ったほどの額だったが、ちゃーんと半期分ということに
なっている。いつのまにこんなに高くなったんだろう。確かに本人の年齢に
応じて保険料が上がっていくというのは知っていたけれど。
約款を確認するとやっぱり60歳を境に保険料がばーんと跳ね上がっている。
夫は今61歳だものね。
娘は大学を卒業して一応社会人として働き始めているから、すでに学費の
心配はなくなった。この定期保険を掛け続けていた理由は、万一のときの
娘の進学費用を確保することだったから、もはや不要になった生命保険である。
必要のない保険に、しかもめっちゃ高くなってしまった保険料を、少なくとも
1年半の間払い込んでいたということになるんだぁ。
私としたことが迂闊にも程がある。悔しいよ~。それでさっそく解約手続きを
とろうとしたのだがーーーー
何と、年度途中での契約解除は出来ない決まりになってるじゃないの。
否応なく、来年の3月までは契約続行ということだ。泣く泣く後期分の保険料を
支払い、思わず夫に向かってひとこと。
「死ぬんだったら、来年の3月までの間にお願いね。
それを過ぎたら、元気で働き続けてね」
悪魔のような女、べに丸。