50代くらいと思われる男性相談者の怒りは相当なものだった。事情は
こういうことらしい。夫婦で出かけた旅先で撮影した写真のフィルムを
DPEに出し、戻って来たプリントを見ると、撮影した風景に重なって
見覚えのない画像が映り込んでいたというのだ。
業者がミスを犯して、別のネガを重ねて現像してしまったに違いないと
いうのが相談者の言い分。
「こんな、幽霊みたいなのが写っちゃって、せっかくの旅の写真が台無
しだ、どうしてくれるんだ」と火を噴くような怒りっぷり。
どうしてくれるんだ、と言われても消費生活センターではどうしようも
ないので、当事者の一方である現像業者に事情を尋ねてみた。それによ
るとーーーーーー
「一度撮影したフィルムを再装てんして撮るとこんなふうに
なります。仮にネガを重ねて現像した場合は二重に写るの
ではなく一方が真っ黒になってしまいますから」
写真についての専門的なことは消費生活相談員にも分からない。納得し
てもらえるだろうかと内心ドキドキしながら相談者に説明を試みた。
私が話し終わると一瞬の間…そして電話の向こうで「あっ!」という声。
たぶん、お心当たりがあったのでしょう。嘘のようにトーンダウンした
声でひとこと。「わかりました。ありがとう」
納得していただいて本当にホッとしました。写っていた幽霊みたいなも
のは、ひょっとしたら奥さんだったのかなぁ。デジタルカメラが普及す
る何年も前の話です。




