今さら原因は何? などと考えても仕方のないことなのだが、この1,2カ月が猛烈に
忙しかったのは事実。
「障害者スポーツ大会」 に向けての準備や研修そして3日間の本番、地元の「市民
まつり」 のろう協会ブースへのお手伝い、さらには中途失聴者・難聴者協会関係の
大きな記念イベント、と行事が目白押しに続いた。
その合間を縫って、自宅に植木屋さんを入れたり伯母の付き添いで出かけたり、母の
病状のことで話を聞きに行ったり。おまけに、テニスや二胡や手話…というルーティン
ワークも欠かさず続けていたから、私の頭はパンク寸前だったのだろう。
ある朝目覚めたら、前日の記憶がきれいさっぱり消え失せていた。手帳を見ると
午前中はテニス、夕方から中難協関係の会議と書かれているし、それぞれに参加
したのはかすかに覚えている。だが、その中身というか詳細がまったく思い出せなく
なっていたのだ。
前の日の夜私が帰宅した時の様子を夫から聞いて、愕然とした。
「今日は何日かって10回以上訊かれたよ。冷蔵庫の中を
見て自分が買ってきたお菓子なのに『これ、どうしたの』
って何度も訊いてきた」
義母のアルツハイマー症状を体験済みの夫は、この際逆らったり叱りつけたりしては
いけないと自分に言い聞かせ、忍耐強く私の質問に答え続けたと言う。退職して介護に
専念する覚悟を半ば決めながら……。その時のやりとりを私自身は全く覚えていないと
いうのが何とも恐ろしいのだが、一方で夫の戸惑いっぷりを想像して思わず笑ってしまう
私、実に薄情な妻だ。
病院でCT写真を撮ってもらい脳に異常はないことが分かってホッとはしたのだけれど、
それ以来、自分の行動と記憶が不安でたまらない。気がつくと直前の行動の確認作業を
している私である。診断は 『一過性全健忘』。失われたあの一日は永久に戻ってこない。



