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環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

スウェーデンの環境相が「温暖化対策推進」で鳩山政権に期待

2009-09-02 21:26:00 | 温暖化/オゾン層
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9月13日の大井玄氏の学習会は延期となりました。代わりに、岡野守也氏(上図の左)をお招きしお話を伺います。
詳しくは、当会のブログ(ここをクリック)をご覧ください。
 


EU議長国スウェーデンのカールグレン環境相が、毎日新聞のインタビューに答えて、「鳩山政権に期待している」と、今日の夕刊が次のように報じています。





このインタビュー記事の背景を知るために、次の関連記事をご覧下さい。

関連記事
判断基準の相違③:「気候変動」への対応の相違(2009-08-13) 

スウェーデンが「EUの議長国」としての活動開始(2009-07-02)



ちなみに、スウェーデンの2020年の温室効果ガス削減中期目標は、次の図に示しますように90年比で40%です。



 
関連記事 
またしてもミスリードしかねない「スウェーデンの脱原発政策転換」という日本の報道(2009-03-21)

70年代からCO2の削減努力を続けてきたスウェーデン(2009-06-02) 



判断基準の相違③: 「気候変動」への対応

2009-08-13 21:55:40 | 温暖化/オゾン層
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今日は②気候変動への対応を検証してみましょう。


1991年の決定

日本では「気候変動」という言葉よりも「地球温暖化」という言葉が好んで用いられます。これは、二酸化炭素に代表される温室効果ガスの大気中の濃度が増加していくと、平均地表気温が上昇する可能性がある、という話です。

地球の温暖化の原因をめぐっては学者の間でさまざまな意見が出されていますが、大勢は大気中の二酸化炭素などの温室効果ガスの増加により、温暖化が起こるというものです。   

ですから、「二酸化炭素などの温室効果ガスをできる限り減らさなければならない」という世界共通の認識が生まれました。ところが、実用的な規模で大気中への二酸化炭素の排出を低減させる技術が世界のどこにもないのです。

ただ、同じ二酸化炭素でも、例えば、潜水艦とか宇宙船のように非常に限られた小さな空間で、比較的二酸化炭素の濃度が高く、しかも人命の保護のために十分にお金がかけられるという場合はそれらに対応する技術は存在します。

けれども、石油とか石炭、天然ガスなどの化石燃料や廃棄物を燃やした時に出てくる大量の排ガス中の低濃度の二酸化炭素や、自動車の排ガス中に含まれる低濃度の二酸化炭素を低減させる実用的な技術はいまのところありません。

それにもかかわらず、世界の科学者で構成しているIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は90年に公表した「第一次評価報告」で、二酸化炭素などの温室効果ガスを直ちに60%以上削減しないと温暖化を免れないと警告をしています。

適切な技術が存在しないのに、二酸化炭素の排出量を減らさなければならないということになりますと、スウェーデンは「技術がなければ、二酸化炭素を排出する行為に排出税をかけると同時に、二酸化炭素の主な排出源となる化石燃料に二酸化炭素税をかける」という経済的手段で排出量を低減させることを決定し、91年1月1日からこの新税の導入を開始しました。

日本はこのような実用的な技術がないことも、科学者の警告があることもわかっているはずですが、二酸化炭素税の導入については産業界を中心に国民の間でも反対が強いようです。では、二酸化炭素税の導入に代わる有効な対応があるかといいますと、めぼしいものはありません。このような国際的な認識に対しても2つの国は違う対応をとっているのです。


18年前の判断基準の相違は、現在どうなったか

2008年2月21日、スウェーデンのラインフェルト首相はEU議会で演説し、「スウェーデンは1990年以来、44%の経済成長(GDP)を達成し、この間の温室効果ガスの排出量を9%削減した」と語りました。




上図に示したように、スウェーデンでは96年頃から経済成長と温室効果ガス(そのおよそ80%がCO2)排出量の推移が分かれ始めています。このことは、「経済成長」と「温室効果ガス排出量」のデカップリング(相関性の分離)が達成されたことを意味します。ここで重要なことは、この成果が「国内の努力によって達成されたもの」であることです。

スウェーデンは今後も、独自の「気候変動防止戦略」を進めると共に、EUの一員としてEUの次の目標である2020年に向けてさらなる温室効果ガスの削減に努めることになります。日本は1986年頃から、経済成長(GDP)とCO2の排出量とが見事なまでに相関関係を示しています。

さらに困ったことに、日本では今なお、二酸化炭素税の導入がままならないばかりでなく、次の図が示すように、2007年度の温室効果ガスの排出量は過去最悪となりました。





スウェーデンが「EUの議長国」としての活動を開始

2009-07-02 07:33:40 | 温暖化/オゾン層
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下の図をクリックしてください。
 


昨日のブログで、日本政府が6月10日に決定した「日本の2020年時点の温暖化ガスの中期目標」に対する考え方に基本的な問題点があることを確認しました。この中期目標は7月のラクイラ・サミット(イタリア)や12月にコペンハーゲンで開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)の議論を経て、おそらく修正された上、正式な日本の中間目標として決定されることになっています。

さて、昨日、7月1日はスウェーデンがEUの議長国になった日です。EUの議長国は持ち回りで、任期は半年。今回の議長国は1995年1月1日にEU加盟して以来、2回目となります。前回は2001年1月1日から半年間でした。このことに関する私の個人的な関心事は、スウェーデンがEUの議長国として「世界的な同時経済危機の解決」「2013年から始まるポスト京都議定書の次の枠組みづくり」に政治的リーダーシップを発揮してどのような好ましい道筋をつけるかを見とどけることです。

●Swedish Presidency of the European Union


今日の日本経済新聞と毎日新聞が、スウェーデンがEUの議長国になったことを伝えています。
          

次の図は両大使の発言の背景にある日本とスウェーデンの経済成長(GDP)と温室効果ガス(GHG)の排出量の推移を示しています。


日本の場合は政府や企業や市民の削減努力(?)にもかかわらず、GDPとGHGが見事なまでにカップリングしている(相関性がある)のに対し、スウェーデンでは京都議定書の成立の前年の1996年あたりから、GDPとGHGのデカップリング(相関性の分離)が始まり、年々その状況が顕著になってきたことがわかります。このような顕著な成果の相違は「京都議定書の位置づけ」と「京都議定書への対応策」の相違にあります。 

●京都議定書の位置づけ

●京都議定書への対応策

●CO2の削減の有効な手法

毎日新聞が伝えているリチャードソン大使の「日本の中期目標が不十分」という発言やノレーン大使の「温室効果ガスを排出量を9%減らしつつ、経済成長率46%を達成した」という説明は、すでにこのブログでも取り上げました。

関連記事

2020年時点で90年比4%増が大勢、いよいよ混迷の度を増してきた日本の温室効果ガスの中期目標(2009-05-15)

日本はトップレベルの低炭素社会? 経済界の判断基準が明らかにされた「意見広告」(2009-03-17)

ドイツとポーランドが「今日の化石賞」受賞、欧州のNGOが環境政策ランキングを発表: スウェーデン1位、日本43位
(2008-12-11)
 


気候変動への対応: 「米国のブッシュ大統領の演説」と「スウェーデンのラインフェルト首相の演説」の落差(2008-04-18)

スウェーデンは今、GDPの成長と温室効果ガス(GHG)の排出の「デカップリング」がさらに明確に(2008-03-16)

温暖化対策実行ランキング:スウェーデン1位、日本42位(2007-12-09)



また、この日の日本経済新聞は、スウェーデンが議長国となったことと関連させて、次のような記事を掲載しています。

●バルト海沿岸活性化戦略 EU6.4兆円投入-環境対策やエネルギー



1970年代からCO2の削減努力を続けてきたスウェーデン

2009-06-02 11:29:06 | 温暖化/オゾン層
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5月21日の全国紙の一面に、2020年を目標年次とする日本の「地球温暖化問題」の中期目標に対する産業界の意見広告が掲載されました。この意見広告は、今年3月17日の意見広告に次ぐ第2弾です。

私はこの意見広告には、「現世代への公平」については、考えているのかもしれないが、地球温暖化の本質であるはずの「将来世代への公平性」が考えられていないと懸念を表明しました。

今日は、温暖化防止に対するスウェーデンの小さな、しかし、着実な努力の結果をお知らせしましょう。

★70~80年代のCO2排出量の推移



★80年代のCO2排出量の推移 


★90年代のCO2排出量の推移


★90~2005年までのCO2排出量の推移

経済界の意見広告 第2弾 「考えてみませんか? 日本にふさわしい目標を。」

2009-05-21 17:27:34 | 温暖化/オゾン層
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今日の全国紙の一面に、2020年を目標年次とする日本の「地球温暖化問題」の中期目標に対する経済界の意見広告が掲載されました。この意見広告は、今年3月17日の意見広告に次ぐ第2弾です。

この意見広告の主張の一つに「国際的公平性」「国民負担の妥当性」「実現可能性」が確保されるのはケース①(2005年度比▲4%)です、とあり、一見ごもっともな合理的な意見のように見えるのですが、ここには「基本的な誤解」あるいは「読者をミスリードさせるための意図」というか、「誤り」があると思います。

この意見広告が主張する「国際的公平性」というのは、温室効果ガス(その排出量の割合からCO2といってもよい)の排出量についての「現世代の公平性」を主張しているようですが、それも大切ではありますが、もっと大切である地球温暖化防止政策の主たる目標である「将来世代の公平性」を無視しているのは大問題だと思います。温室ガスは大気への蓄積性が高い物質だからです。同様に、「国民負担の妥当性」および「実現可能性」も、現世代の日本の都合に過ぎません。

経済界は今年3月17日の全国紙にも次のような意見広告を出しています。


関連記事

日本は世界トップレベルの低炭素社会? 経済界の判断基準が明らかにされた「意見広告」(2009-03-17) 


上の2つの意見広告を比較してみますと、「日本は世界トップレベルの低炭素社会です」というタイトルがついた図が共通して使われていることがわかります。この図の出典(IEA Emissions from fuel combusution 2008 Editon)に当たってみますと、新たに次のようなことがわかります。



上の図を見ますと、2006年の状況をこのような相対的な数値で表しますと、日本の前に、スイスとスウェーデン、ノルウェー、アイスランドの北欧諸国、日本の次にデンマークがあることがわかります。しかしk、私の環境論から見ますと、このような相対的な数値を用いて、あたかも日本が優れているかのような結論に導くのはおかしいといます。国別の「相対的な数値」よりも国別の「総量」の変化のほうが重要なのです。

以上2つの経済界の意見広告に合わせて、2007年度の日本のCO2排出量が過去最高になったことを再確認しておきましょう。

 
このような結果は自然現象で起こるのではなく、政治や行政、企業などの選択した結果であることをしっかり理解してほしいと思います。
 

関連記事

日本の産業界の環境自主行動計画、その結果は?(2009-01-07) 

企業の07年度の温室効果ガス(CO2換算)上位10社(2009-04-14)

07年度温室効果ガスの排出 鉄鋼/セメント業界が上位(2009-04-04)

2020年時点で90年比4%増が大勢?  いよいよ混迷の度を増してきた日本の温室効果ガスの中期目標

2009-05-15 20:37:40 | 温暖化/オゾン層
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下の図をクリックしてください。



★いよいよ私の懸念が現実味を帯びてきた

4月3日のブログ「日本政府の中期目標検討委員会が受賞した『化石賞』」で、検討委員会が提示した「中期目標の6つの選択肢の分析結果」を紹介しました。そして、「6月までに決める予定の『政府の中期目標』はこれから2ヶ月ぐらいかけてこの委員会に招集された委員のもとで、この6つのうちのどれかに落ち着くということでしょうか。これではあまりにお粗末ではありませんか」と書きました。そして、参考までにスウェーデン政府が最近決定した2020年の温室効果ガス削減目標を紹介しました。スウェーデンの目標は、総エネルギーに占める再生可能エネルギーの割合を50%総エネルギーの削減を20%温室効果ガスの削減を90年比で40%となっています。 

さて、5月14日の産経新聞が日本の中期目標6案をわかりやすく解説した記事を掲載しています。 


4月20日から東京、大阪、名古屋など全国5カ所で計6回開いた国民との意見交換会が5月13日に終了し、内閣官房によると、2020年の時点で「1990年比4%増」が大勢(7割)を占め、 「25%減」が2割で、2番目に多かったとのことです。そして、政府はネットでも意見を求めており、麻生太郎首相が、国民の声も参考にして最終決断をするとのことです。いよいよ、私が「これではあまりにお粗末ではないか」と書いた懸念が現実味を帯びてきました。

1997年の京都議定書で「90年比で6%減」を国際的に公約した日本が、2020年の中間目標を決める過程で「90年比4%増」が大勢を占めたとは!


さて、政府の中期目標検討委員会が示した6つの案に対して、日本経団連、日本鉄鋼連盟、日本セメント協会、電気事業連合会、石油連盟が次のようなコメントを出しています。いずれも、第1案を支持しています。




そして、このような産業界の意見に対して、環境相は次のようにコメントしています。


関連記事
日本はほんとうに「省エネ」国家なのか? 評価基準の見直しを!(2007-03-17)

「省エネルギー」の考え方(2007-11-27)

日本は世界トップレベルの低炭素社会? 産業界の判断基準が明らかにされた「意見広告」(2009-03-17)

斉藤環境大臣が今回の「業界の意見広告」を批判、過去には密約や怪しげな根回し(2009-03-19)

07年度の温室効果ガスの排出 鉄鋼/セメント業界が上位(2009-04-04)

企業の07年度の温室効果ガスの排出量(CO2換算) 上位10社(2009-04-14)


★日本とスウェーデンの温室効果ガスの排出量の推移

ここで、日本の温室効果ガスの排出量の推移とGDPと二酸化炭素の排出量の推移を見ておきましょう。参考までに、スウェーデンの実績をあわせて掲載します。



★日本とスウェーデンのGDPと二酸化炭素の排出量の推移

日本の実績では、1986年以降、GDPと二酸化炭素(CO2)の排出量が見事なまでに重なっていますが、一方スウェーデンでは、1996年以降、GDPと二酸化炭素の排出量が見事なまでに乖離(デカップリング)しています。


   
 

日本の温室効果ガス削減中間目標 これはもうどう考えたらよいのだろう???

2009-04-18 09:49:06 | 温暖化/オゾン層
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昨日のブログで、「このような、人類の歴史的会議の流れの中で、スウェーデンがまさに最先端の考えを国際社会に提示してきたのと対照的に、世界第2位の経済大国を自認する日本は、 実質的には1992年の議論「環境と開発のかかわり」のレベルに止まっているかのようです
と書きました。

偶然にも、この状況は、次の二つの記事を読み比べるだけで確認できます。私のコメントなどは一切不要でしょう。最初は一昨日の日本経済新聞です。次は今日の朝日新聞です。


関連記事
日本政府の中期目標検討委員会が受賞した「化石賞」(2009-04-03)

企業の07年度の温室効果ガス排出量(CO2換算)上位10社(2009-04-14)

低炭素社会は日本の政治主導による「持続可能な社会」の矮小化か?(2009-01-12)



追加

企業の07年度の温室効果ガス排出量(CO2換算)上位10社

2009-04-14 12:18:19 | 温暖化/オゾン層
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4月11日の毎日新聞が次のような記事を掲げています。


この記事は、私が4月4日のブログ「07年度の温室効果ガスの排出 鉄鋼/セメント業界が上位」で疑問を呈した問題にみごとに答えてくれています。今日掲げた記事の表では、東京電力をトップに、なんと排出量上位10社に電力会社7社が入っているではありませんか。

参考までに、4月4日のブログに掲げた朝日新聞の記事を再掲します。
 
今回の事例によく似た事例があります。岡田幹治さん(朝日新聞ワシントン特派員、論説委員を歴任されたあと、東京経済大学非常勤講師)は、雑誌『世界』(2007年9月号)に寄稿した論文「日本の国家戦略? 美しい星50 徹底批判 日本経団連の主張を丸呑みした安倍内閣の総合戦略」(p170~175)の「日本経団連の思惑」という項で、経団連と経産省の主張のうち、次の「三つの誤り」を指摘しておられます。

誤りその1 CO2削減には「業務」「家庭「運輸部門」の努力こそが必要だ。
誤りその2 日本産業の効率は高く、「乾いた雑巾」のように、削減の余地は少ない。
誤りその3 京都議定書は「不平等条約」であり、その過ちを繰り返してはならない。

この三つの誤りのうち、「誤り その1」が今日のブログの問題点の説明になると思います。岡田さんは、温室効果ガスの排出量の表現方法には「直接排出量」「間接排出量」があり、多くの国では、「直接排出量」が使われているが、日本では「間接排出量」が使われる傾向が強いことを指摘されておられます。そして、直接排出量でみると、日本の全家庭から排出されるCO2は6780万トンで、日本の総排出量の5.2%(ちなみに、間接排出量では日本の総排出量の13.5%)にすぎず、東京電力1社の総排出量約9700万トンより少ないとのことです。

岡田さんは、この論文で「部門別排出量といえば、多くの国では直接排出量の数字が一般に使われているのに対し、日本の環境省の発表では『参考データ』としてしか扱われていない。マスコミも間接排出量だけを報じている。このようにして、電力業界に有利な情報操作が行われているのである。」と書いておられます。

この件もまた、昨日の経験則「今日の決断と将来の問題」の応用例といえるでしょう。つまり、最初の出発点が不十分であると、やがて不十分な結論を導く結果となるということです。

私が思うに、記事の内容から見て、この二つの記事の情報源(環境省と経済産業省が地球温暖化対策推進法に基づいて公表したとありますので、)は同じだろうと思います。しかし、興味深い情報がマスメディアを通じて読者に提供されたとき、情報の受け手である私たち一般読者は通常、もとの情報に当たることはほとんどないのではないでしょうか。ですから、ある意図のもとに提供されるデータはほとんど検証されることなく、そのまま通過し、次の議論のときにはあたかも検証済みの、議論に耐えるデータであるかのように利用され、その結果として議論の方向を誤るということになりかねないのです

●経済産業省のニュース・リリース 2009年4月3日
 地球温暖化対策推進法に基づく温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度におけ る平成19年度温室効果ガス排出量の集計結果の公表について 

ただし、このニュース・リリースを参照してもよくわかりませんでした。       

炭素税 神奈川県の県地方税制等研究会が導入検討を促す報告書を松沢知事に提出

2009-04-06 11:02:04 | 温暖化/オゾン層
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4月1日の朝日新聞の「さがみ野」版に掲載された次の記事を読みました。


報告書では、「低炭素社会を目指し、国が全国一律の環境税(炭素税)導入に向けて議論を加速化させる必要がある。県が独自に炭素税を導入することは、議論を促進させるフロントランナーの意義がある」しているそうです。この記事によれば、東京都は厳しい経済状況を踏まえて、導入見送りを決めているそうです。

●県が初めて排出量の速報値を公表 CO2排出量10%増


ともあれ、東京、大阪に続く人口第3位の神奈川県の松沢知事にはこの報告書の提案を前進させるために強いリーダーシップを発揮してほしいと希望しますが、私は知事がこの問題に対する十分な基本認識をお持ちなのか非常に疑問を持っています。およそ1年前に松沢知事が行った次のようなパフォーマンス的な、私には無意味に思える決断を行ったからです。今はやりの「カーボン・オフセット」の一例です。


松沢知事の説明に対して、当時の高村外務大臣が「7月の北海道洞爺湖サミットに向けていい前例になる。同様の取り組みが他の都道府県にも広がることを期待したい」と応じたそうですが、そうなりますと、外務大臣の基本認識も疑わざるを得ません。

カーボン・オフセットについては、2008年2月7日に環境省が公表した「わが国におけるカーボン・オフセットのあり方についての指針」というのがあります。この指針のなかに「カーボン・オフセットが実現されるまでの期間」という項目があります。

●カーボン・オフセット

●カーボン・オフセットが実現されるまでの期間

県の説明では「横浜で開催されるアフリカ会議に伴って排出される1万3000トンのCO2を30年かけて吸収するために約8300万円の予算で県有林の整備や植林を行う」とありますから、県も知事もそして、外務大臣も3ヶ月前に出されていた「環境省のカーボン・オフセットのあり方についての指針」の存在さえ、知らなかったということなのでしょうか。

皆さんは、ここに示された県、知事、外務大臣の「気候変動に関する基本認識」をどう考えますか。私には、「世界に冠たる環境技術や省エネ技術を有し、世界第2位の経済規模を持ち、環境立国をめざす日本」と言ってはばからない「政治家と行政のお粗末な基本認識」が垣間見えたとしか言いようがありません。

関連記事
前途多難な日本の温暖化対策(2008-01-06)

今なお低い日本の政治家の「環境問題に対する意識」(2007-09-28)

07年度の温室効果ガスの排出 鉄鋼・セメント業界が上位

2009-04-04 17:00:40 | 温暖化/オゾン層
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経済産業省と環境省は、地球温暖化対策推進法に基づいて、排出量の多い企業など9260社の排出量をまとめたと、今日の朝日新聞が報じています。
 
この記事に掲載された2007年度の温室効果ガス排出量上位10社は、当然のことではありますが、去る3月17日付の全国紙の1面を使って「日本はトップレベルの低炭素社会です」という意見広告を打った業界団体の代表的な企業です。しかし、私はこの表に疑問を持っています。なぜ、この表には電力会社の姿が見えないのでしょうか。その理由は「発電に伴う排出量は、実際に電力を使った企業に割り振られて算出されている。割り振り前の排出量は東京電力が最も多い」という説明に現れています。


関連記事
斉藤環境大臣が今回の「業界の意見広告」を批判、過去には密約や怪しげな根回しも(2009-03-19)

日本のCO2排出量 もう一つの側面(2008-03-14)



関連記事
2007年度の発受電実績 1兆KWhを初めて突破!(2008-04-16)



そして、京都議定書で義務づけられている90年比6%削減のために、チェコから温室効果ガス排出枠を購入するのだそうです。



関連記事
日本政府が温室効果ガスの排出枠をハンガリーから購入(2007-11-30)

混迷する日本⑰ 京都議定書が守られなかったら、どうなる?(2008-02-02)

 

日本政府の中期目標検討委員会が受賞した「化石賞」

2009-04-03 21:17:37 | 温暖化/オゾン層
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★日本の2020年の温室効果ガス削減目標

3月28日の朝日新聞が次のような記事を掲載しています。


関連記事
日本は世界トップレベルの低炭素社会? 産業界の判断基準が明らかにされた「意見広告」(2009-03-17)

斉藤環境大臣が今回の「業界の意見広告」を批判、過去には怪しげな密約や根回しも(2009-03-19)


記事の表中には「中期目標の6つの選択肢の分析結果」とあります。ということは、6月までに決める予定の「政府の中期目標」はこれから2ヶ月ぐらいかけてこの委員会に招集された委員のもとで、この6つのうちのどれかに落ち着くということでしょうか。これではあまりにお粗末ではありませんか。この6つの選択肢のうち、国内総生産(GDP)への効果が0%なのは2020年に90年比で4%増だけで、あとはいずれもマイナス予測(2つの選択肢で影響の試算なし)となっています。

関連記事
日本の温室効果ガス削減中間目標 これはもうどう考えたらよいのだろう???(2009-04-18)
 

私の環境論では、必要な施策例にあがっている「太陽光発電の設置個数」や「次世代自動車の普及率」を高めただけでは温室効果ガスの削減には寄与しないはずです。太陽光発電は発電時に温室効果ガスをほとんど出さない発電方式ではあっても温室効果ガスの削減装置ではありませんし、次世代自動車もたとえ温室効果ガスを排出しないものであっても、温室効果ガスの削減装置ではないからです。

関連記事
自然エネルギーにCO2削減効果はあるだろうか(2008-01-14)

これらの普及によって温室効果ガスを削減するというのであれば、同時に火力発電所を縮小し、化石燃料を動力とする自動車(ガソリン車やディーゼル車)の台数を実際に削減しなければ意味がありません。火力発電所を現状のままにしておき太陽光発電の設置個数を増やしても、そして、化石燃料の自動車を現状のままにとどめて次世代自動車の普及率を高めても温室効果削減にはほとんど効果はないでしょう。

このようなあまり意味のない政府の中期目標の議論を見越して、国際環境NGOは4月1日に日本に「化石賞」を贈ったのだそうです。

関連記事
2008年COP14で 日本が今日の「化石賞」を受賞(2008-12-05)

日本がなぜ、「今日の化石賞」を受けるのか、経済成長、エネルギー消費、CO2の整合性なき政策(2008-12-07)

ドイツとポーランドが「今日の化石賞」受賞、欧州のNGOが環境政策ランキングを公表(2008-12-11)



★スウェーデンの2020年の温室効果ガス削減目標

スウェーデンのラインフェルト連立政権、2月5日に 「環境・競争力・長期安定をめざす持続可能なエネルギー・気候政策」と題する4党の合意文書を発表しました。その中で示された2020年の温室効果ガス削減目標は1990年比40%です。

この図で注目してほしいのは、まずエネルギー利用効率を20%改善すること、そして、温室効果ガスは90年比40%削減です。



思い起こしてほしいのは、スウェーデンは京都議定書の基準年である90年から2007年までにすでに温室効果ガスを9%削減(京都議定書に沿って、EUはスウェーデンに4%増を配分したにもかかわらず、です)してきた実績があることです。そして、この17年間に経済成長(GDP)は44%増加しました。つまり、「温室効果ガスの排出量」と「経済成長」がデカップリングできたということです。

●スウェーデンの温室効果ガス排出量の推移

●スウェーデンの温室効果ガス(GHG)の排出量とGDPの推移 1990~2005


スェーデンの状況は、日本政府の中期目標検討委員会が議論を始めようとしている矢先に、日本のメディアが「環境と経済 両立見えず」と見出しにつけた状況とは大きく違います。



代替フロン(HFC)で新たな問題が発生

2009-03-26 17:29:33 | 温暖化/オゾン層
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今日は、オゾン層保護の目的で開発された代替フロン(HFC)の大気への漏出が見積もりより多く、日本の温室効果ガスの総排出量を過去に遡って修正し、修正地値を国連気候変動枠組み条約事務局に報告することになった、というニュースを取り上げます。

次の記事をご覧ください。



代替フロン(HFC)はオゾン層破壊物質ではありませんが、強力な温室効果ガスとして知られています。欧州では、2010年までに排出予測量の約1/4に削減する規制があります。

日本では 「フロン回収破壊法」が2002年10月から施行されました。この法律では「特定フロン」と「代替フロン」の使用後の処理が義務付けられていましたが、その対象はカーエアコン、業務用冷蔵庫および空調機にかぎられていました。

●代替フロン放出野放し パソコン用スプレー

平成19年10月1日から「改正フロン回収破壊法」が施行されましたが、パソコン用スプレーはこの法律の対象外です。現在は平成12年(2000年)5月24日成立、平成13年4月1日施行の「グリーン購入法」には同法適合品というカテゴリーがあり、パソコン用スプレーはこのカテゴリーである程度制限されています。

関連記事

緑の福祉国家18 オゾン層の保護への対応①(2007-02-05)

緑の福祉国家19 オゾン層の保護への対応②(2007-02-06)



アクアラインの通行料値下げは、環境負荷を増大する

2009-03-24 20:48:40 | 温暖化/オゾン層
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麻生政権の景気回復対策が小さな一歩を踏み出しました。次の記事をご覧ください。


●高速値下げ「特需を逃がすな」、ETC好調、企画練る観光地

およそ510兆円ほどまでに膨張した日本のGDPを「持続的経済成長」のためにさらに拡大するには、その構成要素である政府の支出(公共事業)、企業の設備投資、貿易、民間住宅投資、そしてなんといってもGDPのおよそ60%を占める個人消費を拡大する必要があります。政府の支出、企業の設備投資、貿易、民間住宅投資は限界にぶつかっているので、「景気回復には個人消費の拡大」しかない、というのがエコノミストや評論家の多くの一致した主張となっているようです。したがって、個人消費の拡大のためのさまざまな提案がなされています。
 
たとえば、「景気回復のために国民の消費行動を活発化するには、本州四国連絡橋や東京湾アクアラインの交通料金を無料にしろ、そうすれば、消費活動は活発になる」という類の提案をする人がいます。この提案がまずは上記の記事のように現実になったのです。
 
この種の提案は、景気回復のために「個人消費を拡大する」という1点では有効ですが、それに必然的にともなう資源・エネルギー・環境問題はまったく考慮されていませんので、環境負荷を増やすことは間違いないでしょう。

このブログでもこれまでに何度も述べてきたように、環境問題が現代の大量生産・大量消費・大量廃棄の生活によって引き起こされていることは明らかだからです。そして、大量消費を推し進めているのは、大量生産をしている企業であり、それらの製品を消費している消費者であることも明らかです。
 
今日の市場経済社会では、商品やサービスを組織的・計画的に運営し、販売しているのは企業で、消費者は市場にあふれる商品やサービス群のなかから、個人の必要や要求に基づき、商品やサービスを選択し、購入しているにすぎません。企業は徹底的な市場調査を行ない、消費者の形にあらわれていない欲望まで見つけ出し、それを商品化(ちょっと言いすぎかもしれませんが、自動車ナビやETCなど)しています。このように、先進工業国では、企業(製造業、サービス業など)が環境問題に最も大きな役割を演じていることは明らかです。

次の図をご覧ください。皆さんにもお馴染み「家庭でできる10の温暖化対策」で、私が常々「ほとんど実効性がない。日本の温暖化対策をミスリードする」と主張してきたものです。今日のテーマは「できるところから始める」というあまりにナイーブな市民の「エコ」の努力を一瞬にして無効にしてしまうでしょう。


今回の政府の決断は、「家庭のエコ」がいかに無力であり、景気回復のための「有料道路の通行料無料化」という20世紀型発想が環境負荷を高めることを知るよいきっかけとなるでしょう。この決断がたとえ初期の目的である「景気回復」に有意に貢献したとしても環境負荷は高まりますし、まったく景気回復に貢献しなかったとしても、環境負荷は高まるのです。スウェーデンの経験からすれば、運輸部門のCO2の削減は現行の化石燃料で動いている車両を中心とする交通システムではきわめて困難なのです。

それにしても、この国の政治家、政策担当者、中央・地方行政そして市民の「温暖化に対する認識」は一体どうなっているのでしょう。世界第2位の経済大国で、「環境立国の実現」を標榜している日本のこの現状はあきれるばかりです。

このことは国の対策に整合性がなく、その場しのぎの対策しかないことを示しています。これでは、これから策定しようとしている「日本版グリーン・ニューディール」の実現性も危ぶまれそうです。


                 

斎藤環境大臣が今回の「業界の意見広告」を批判、過去には密約や怪しげな根回しも

2009-03-19 21:44:21 | 温暖化/オゾン層
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一昨日ご紹介した日本の温暖化対策に対する産業界の「意見広告」 に対して、今日の朝日新聞夕刊は、斎藤環境大臣が批判をしたと報じました。 


この機会に、日本の産業界や行政がこれまで社会に対してどのような行動をとってきたかを見ておきましょう。今回の産業界の意見広告が今に始まったことではなく、これまでの産業界や行政の行動の上になりたっていることがおわかりいただけるでしょう。

2004年
●地球を守るために私たちは行動します。環境税はいりません。

2005年
●官房長官:京都議定書 6%削減達成は「可能性は高い」 vs 首相 「決して容易ではない」

●経産省、根回しメール 業界団体に「環境税反対を」

2007年
●経産・環境省 環境税など意見対立 温暖化対策で合同審議会

●環境税構想 経産次官が酷評  「環境税、単なる啓蒙ではない」

●環境税バトル 甘利経産相も参戦

●温室ガス削減 「義務的目標に」 同友会代表幹事

2008年
●議定書の裏に密約 

●外交弱める内部対立
 削減目標設定理想か実績か
 欧米連携締め出し懸念
 国内議論、今こそ深く



マスメディアが報じた上記のような温暖化問題に対するさまざまなレベルの問題点は、日本の国際的な立場を極めて脆弱にしています。また、国内での行動の前提である「情報の共有化」あるい「社会的合意形成」の上でも支障をきたしています。常に世界の動きに振り回されている感がある現在の日本で最も欠けているものはほとんどの分野で「共通認識」が乏しく、「社会的な合意形成」がなされていないということでしょう。翻って、920万の小国スウェーデンが国際的に存在感があり、EUをリードできるのは国民の間で多くの分野で社会的合意形成がなされており、「政治的な意思」と「国民の意識」が同じ方向性を持っているからです。

日本は世界トップレベルの低炭素社会?  経済界の判断基準が明らかにされた「意見広告」

2009-03-17 14:01:17 | 温暖化/オゾン層
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今朝の朝日新聞を開きましたら、日本の経済界の「意見広告」(全面広告)が飛び込んできました。大変おどろきました。おそらく、他の全国紙にも同じ全面広告が打ってあるのでしょう。



まず、「日本は世界トップレベルの低炭素社会です」とあります。これまで、経済界がそして、かなりの評論家や識者、それにかなりの政治家や政策担当者が執拗にマスメディアを通じて主張してきた内容です。幸いなことに、今回の意見広告は経済界がそのように考える判断基準を明確に図示しています。広告の左側にレイアウトされた5つの棒グラフ

GDPあたりのCO2排出量
■電力を火力発電で1KWh作るのに必要なエネルギー指数比較
■セメントの中間製品(クリンカ)を1トン作るのに必要なエネルギーの指数比較
■石油製品を1kℓ作るのに必要なエネルギー指数比較
■鉄1トンを作るのに必要なエネルギー指数比較

がそれです。いずれも、原単位(GDP、1KWh、1トン、1kℓ)という相対的な数字で表現されています。広告の左下に名を連ねている58団体は日本の経済システムに組み込まれており、日本の21世紀社会の方向性を決める政治力を持っています。そして、大変興味深いことはこれらの団体の多くが環境自主行動計画の未達成業界と重なり合っていることです。

さて、この意見広告のメッセージは明らかに国民をミスリードし、事態をますます混迷させるものですが、この意見広告の唯一の功績は経済界の「気候変動問題に対する判断基準」が「私の環境論」が主張する温室効果ガスの「総量規制」ではなく、 「原単位の向上」に基づいていることを経済界自ら明らかにしたことです。この発想は20世紀の発想そのもので、21世紀には不適切なものです。

次の図は日本の技術者が理解していた「1996年当時の省エネの概念」です。今回の意見広告で明らかにされた「経済界の省エネに関する判断基準」を見ますと、経済界の考え方や認識が13年経った現在でも今なおほとんど変わっていないことを示しています。


京都議定書は日本に90年比で-6%の温室効果ガスの「総量の削減」を求めています。しかし、日本の経済界が行ってきた努力は、この目標の達成には全く効果はありませんでした。目標を達成するという努力をしなかったからです。本来なら、「総排出量の削減」という目標が設定され、その目標を達成する手段として「効率化」別の言葉でいえば「原単位の向上」があるのです。
 
「原単位の向上」という経済界の懸命の努力にもかかわらず、日本のエネルギー消費量も温室効果ガス排出量も減少するどころか逆に増え続けているのです。特に最新の温室効果ガスの排出量(2007年)は過去最高、つまり、日本の歴史上最悪を記録したのです。このことは次の2つの図を見れば明らかです。






それにしても、この意見広告の最大のメッセージと考えられる「考えてみませんか? 私たちみんなの負担額。」は国民への偽装メッセージではないでしょうか。

日本の温室効果ガスの排出は産業部門(もう少し正確に言えば 15%程度の家庭部門以外の企業活動に関する部分)が最大であるにもかかわらず、経済界が努力したのは「原単位の向上」であり、温室効果ガスの総排出量の削減ではありませんでした。ですから、当然のことではありますが、一生懸命原単位を向上させたにもかかわらず、日本の現実は結果としてエネルギー消費の増加にに寄与するという、望まない現象が生ずることになったのです。

これ以上の説明は必要ないでしょう。次の関連記事をご覧ください。


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3月19日に経産省が発表した「CO2 排出量の試算」 対策費20年度までに全体で約52兆円(2008-03-20)

日本の経済界の環境自主行動計画、その成果は(2009-01-07)



経済界の総意とも言える「日本は世界のトップレベルの低炭素社会です」、(そして、いま、さらに向上の努力をしています)という「意見広告」が事実であれば、日本はどうして、「今日の化石賞」などという不名誉な賞を繰り返し受賞するなど国際社会の評価が芳しくないのでしょうか。

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