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環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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日本の産業界の環境自主行動計画、その成果は? 

2009-01-07 21:22:51 | 温暖化/オゾン層
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12月10日の環境新聞が「産業界の環境自主行動計画について 2007年度の達成状況」に関する、次のような記事を掲載しています。



この記事によりますと、39業種中、過半数を占める20業種が目標未達成であり、CO2排出量については29業種で増加していたそうです。記事の最後に、昨年度の目標未達成の団体が公表されています。ここには、日本の主要な企業が参加する団体が名を連ねています。

公表された団体名を見て、私は2004年11月12日の朝日新聞に掲載された業界団体の意見広告「地球を守るために私たちは行動します。環境税はいりません。」を思い出しました。私には、昨年度の「環境自主行動計画」が未達成な団体とこの広告に名を連ねている団体がオーバーラップして見えます。




日本の産業界の「環境自主行動計画」に対して、私は以前から危惧を抱いてきました。そして、ことあるごとに警告してきました。その危惧がこの記事に表れています。「自主行動計画では、目標設定において総量と原単位の選択が任意である」というところです。京都議定書ではCO2排出量の総量削減を目標としているのですから、論理的に考えても「総量の削減」を目標とすべきなのです。次の図の私の意見と東京電力㈱理事の小林さんの意見を比べてみてください。



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緑の福祉国家15 気候変動への対応④(2007-01-26) 

★あの時の決定が日本の「地球温暖化対策」を悪化させた(2007-02-26) 


この記事に合わせて、2007年度の日本のCO2排出量が過去最高になったことを再確認しておきましょう。

 
このような結果は自然現象で起こるのではなく、政治や行政、企業などの選択した結果であることをしっかり理解してほしいと思います。

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日本がなぜ、「今日の化石賞」を受けるのか? 経済成長、エネルギー消費、CO2の整合性なき政策(2008-12-07)


数年前まで、「日本のCO2排出量は、世界に冠たる省エネ技術を駆使することによって産業界では増えておらず、問題は民生部門と運輸部門だ」と豪語していた産業界の見解はどこへ行ってしまったのでしょうか。

ドイツとポーランドが「今日の化石賞」受賞、 欧州のNGOが環境政策ランキングを公表

2008-12-11 21:51:36 | 温暖化/オゾン層
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12月5日のブログで、日本がCOP14で「今日の化石賞」を受賞したこと、7日のブログでは、日本がなぜ、「今日の化石賞」を受ける回数が多いのか?、その時々の事情ではなくて、受賞しやすい傾向を私なりに考え、お伝えしました。

今朝の毎日新聞によりますと、ドイツが「今日の化石賞」特別賞を受賞したそうです。この賞の創設(1999年)以来、日本は48回受賞、ドイツは今回で2回目の受賞です。


また、この日の毎日新聞夕刊によりますと、欧州のNGO「ジャーマンウオッチ」と「CANヨーロッパ」が環境政策ランキングを公表したそうです。この記事によると、最高位はスウェーデンで、66.7点、日本は57か国中43位で47.1点でした。



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温暖化対策実行ランキング スウェーデン1位、 日本42位

日本がなぜ、「今日の化石賞」を受けるのか? 経済成長、エネルギー消費、CO2の整合性なき政策

2008-12-07 16:00:10 | 温暖化/オゾン層
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一昨日のブログで
、今年もまた、日本が不名誉な「今日の化石賞」を受賞したことを紹介しました。今日は、「世界に冠たる省エネ国家、環境技術を有する国」などという政府関係者や一部の評論家の勇ましい発言にもかかわらず日本がなぜ国際NGOからこの種の賞を与えられるのかを具体的な例で考えてみましょう。




結論を先に言えば、日本の「省エネや環境技術」の定義あるいは判断基準が国際NGOと異なるからです。私がこのブログですでに明らかにしましたように、「日本の省エネ」という概念が意味するところは「エネルギーの効率化」であり、環境技術は「公害防止技術」だからです。これらの概念の相違は日本の省エネや環境関連法に由来するものだと思います。

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日本はほんとうに「省エネ」国家なのか? 評価基準の見直しを!(2007-03-17) 

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私の環境論7 「環境問題」は「公害問題」ではない(2007-01-17) 

日本の国づくりの議論を混乱させる2つの指標 「国民負担率」と「環境効率」(2007-03-16)  


次の図をご覧ください。



2003年2月15日付の朝日新聞の全面広告に、2002年12月10日に東京の日本青年館で開かれたエネルギー・シンポジウムの様子が掲載されています。茅陽一さん(東京大学名誉教授)が日本の地球温暖化対策がいかにむずかしいかを説明しておられます。

茅さんのご専門は「システム制御工学とその社会・エネルギーシステムへの応用」、また茅さんは政府の総合資源エネルギー調査会の会長(当時)であり、日本のエネルギー政策を左右する重要な立場におられた方です。「地球が有限」であることを前提に経済のあり方を見直すべきであることを提唱した、「ローマクラブ」の有名な報告書「成長の限界」(1972年)にも、かかわっておられました。

この図では、これまでのGNP(なぜ、GDPでなく、GNPという指標を使っているのか不明ですが)の推移から現状をフォアキャスト(延長・拡大)して2010年のGNPを推定しています。CO2の推移をそのままフォアキャストすれば、GNPと同様に並行して急上昇するはずですが、この図では2010年のCO2は1990年レベル以下に削減するように描かれています。 

これは日本政府が2002年6月4日に「地球温暖化防止京都議定書」を批准し、議定書の目標を達成するために、2010年頃までにCO2をはじめとする温室効果ガスの排出量を1990年比で6%削減することを国際的に公約したからです。

茅さんは「日本で発生しているエネルギー起源の炭酸ガスCO2とGNPの推移は、ほとんど並行的です。つまり経済が成長すれば、当然それだけいろいろな生産が増える。そうすると消費も増えて、それぞれから出てくるCO2は増えてしまう。ところがCO2の目標値は下げなければいけない。一方、GNPは増やすのが政府の目標です。この両方を達成するには、点線のように、両方に分かれなければいけない。その対策として、まず第一に政府は石油換算にして約7千万キロリットルの省エネルギーを掲げました。これは全家庭で消費しているエネルギー量に匹敵します。それを産業、民生、運輸部門でそれぞれ実施します」と説明しておられます。

茅さんのご説明では、地球温暖化対策の3本柱として約7千万キロリットルの省エネに加えて、新エネルギーの利用と原発の利用を述べておられます。

茅さんの発言を正確にフォローするために、上の図の枠をつけた部分を拡大してみます。



このことは、政府の目標であるGNPを下げないために、仮に「産業部門、民生部門の業務、運輸部門のエネルギーの消費量を現状のまま」と仮定すると、日本のすべての家庭で車や家電製品をいっさい使うことができないばかりでなく、電灯もつけられない、ガスでお湯も沸かせないなど、まさに江戸時代以前の生活に戻るしかない、というたいへんなエネルギーの削減が日本では必要である状況を示唆していることになります

太陽光発電や風力といった新エネルギーの利用を3倍にするといっても、すでにこのブログでも取り上げたように、これらの新エネルギーは稼働中にCO2を排出しない電源ではありますが、CO2削減装置ではありません。原子力も同様です。つまり、茅さんのご説明ではCO2を削減することは論理的にも無理な話なのです。 

関連記事

自然エネルギーにCO2削減効果はあるだろうか?(2008-01-14)

原発を考える⑪ CO2削減効果はない原発(2007-04-22) 


2002年12月10日に開催されたこのフォーラムから6年経った現在の状況を改めて検証しますと、茅さんのご説明が不適切極まりないものであったことがおわかりいただけると思います。ということは、日本政府の温暖化対策が不適切に策定されているといってもよいでしょう。次の図をご覧ください。


この図は、『暴走する地球温暖化論 洗脳・煽動・歪曲の数々』(池田清彦、伊藤公紀、岩瀬正則、武田邦彦、薬師院仁志、山形浩生、渡辺正 著 文藝春秋 2007年12月15日 第1刷 発行)の「はじめに-頭を冷やそう」のp5に掲載されている渡辺正さん作成の図です。この図は京都議定書の基準年(1990年)から18年経過したにも関わらず、日本のGDPとCO2の排出量が並行のままであり、デカップリングしていないことを示しています。

関連記事

日本の「温暖化懐疑論」という現象(1)(2008-09-24) 

日本の「温暖化懐疑論」という現象(2)(2008-09-25) 


さらに次の2つの図をご覧ください。日本政府の最新データと日本の電力事業者の最新のデータが渡辺さんの示した傾向をはっきりと裏付けています。




今日最後に見ていただきたいのは、京都議定書の基準年(1990年)から16年間のスウェーデンの経済成長(GDP)と一次エネルギーの推移を表したデータです。2002年12月10日のエネルギーフォーラムで茅さんがめざした「経済成長と一次エネルギーのデカップリング」がスウェーデンでは見事に実現されていることがおわかりいたたけるでしょう。




日本の現状は、「21世紀に私たちが望む便利で快適な社会」をめざしているとは到底思えません。この現状は、政府の目標である「GNP(あるいはGDP)の拡大」とそれを達成する手段としてのエネルギー政策、その結果としてCO2が増えることとの間に、政策的な大矛盾があることを示す以外の何ものでもなく、問題の解決をいっそうむずかしくしています。いかがですか。この説明で、日本の現状がいかに絶望的であるかがおわかりいただけたことでしょう。


2008年COP14で 日本が「今日の化石賞」を受賞

2008-12-05 14:12:14 | 温暖化/オゾン層
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次の図をご覧ください。今年も日本が不名誉な「今日の化石賞」を受賞した写真を、昨日の朝日新聞が掲載しています。


1972年の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)を受けて、その具体的な内容を検討する場として設置されたCOP(Conference Of the Parties/締約国会議)に合わせて、環境保全の面から見て後ろ向きな発言をしたり、交渉をブロックするような発言をした国に、世界の環境NGOなどの連携組織である「気候行動ネットワーク(CAN)」から「Fossil of the day(今日の化石賞)」が贈られます。この賞は日本にとっては馴染み深い賞です。昨年も、そして2000年も、2001年も受賞しています。

関連記事

今なお低い日本の政治家の「環境問題に対する意識」


「世界に冠たる省エネ国家、環境技術を有する国」などという政府関係者や一部の評論家の勇ましい発言にかかわらず、日本がなぜ国際NGOからこれらの賞を与えられるのかを、次回に具体的な事例で考えてみましょう。

日本の「温暖化懐疑論」という現象(2)

2008-09-25 15:56:14 | 温暖化/オゾン層
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昨日は、2007年2月2日に公表された「IPCC第1作業部会の第4次報告書」が「温暖化は人為起源の可能性がかなり高い」と主張しているのに対し、日本では「温暖化懐疑論」が今年の7月から8月にかけて「環境図書売り上げベスト10」(「環境新聞 2008-09-03」)に華々しく登場している現状を紹介しました。そして、この状況は私には「少々奇異に感じられる」と書きました。

さて、今日は「温暖化懐疑論」に対する、この分野ではまったくの素人の、私の考え を書きます。温暖化という現象にはたくさんの論点が含まれており、 「温暖化懐疑論」の論者の議論もさまざまな分野にまたがっていますので、ここでは、最も基本的なテーマである「温暖化の原因」に関する懐疑論に限定して 、私の考えを述べます。「温暖化の原因」の議論は、さまざまな懐疑論を含めたすべての温暖化議論の出発点だからです。 


●地球温暖化の原因に関する「温暖化懐疑論」

「環境図書売り上げベスト10」に登場した7人(武田邦彦、丸山茂徳、伊藤公紀、渡辺正、池田清彦、養老孟司および赤祖父俊一の諸氏)のうち、 「温暖化の原因」について、科学者としてしっかりとした議論を展開しておられるようにお見受けするのは「地球温暖化論に騙されるな!」の著者、丸山茂徳・東京工業大学大学院教授(地質学者、専攻は地球惑星科学)と、「正しく知る地球温暖化」の著者、赤祖父俊一・アラスカ大学フェアバンクス校名誉教授(地球物理学者)のお二人でしょう。他の方々の議論は「温暖化の原因」以外の議論が中心のようなので、ここでは議論しません。

昨日のブログに登場した丸山さんは、「地球温暖化論に騙されるな!」のエピロークで、気候変動の5つの要素あげ、それらの要素の影響度を次のように整理しておられます。





そして、結論として、「過去100年ほど地球の平均気温が上がっているのは事実、温暖化ガスの温室効果は微小ですが、気温を上げる要因です。『温暖化=二酸化炭素犯人説』はまったくの誤りだと断言しますが、私は現在の『二酸化炭素排出削減運動』を全否定はしません」と述べ、丸山さんの総合的な予測は「温暖化」ではなく、「寒冷化」であると主張しておられます。

一方、米国・フェアバンクスのアラスカ大地球物理研究所と国際北極圏研究センター(IARC)の前所長であられた赤祖父さんはインターネット上の「OhmyNews」の2008年1月16日号「誤報だらけの地球温暖化情報 (上) 映画『不都合な真実』は、科学とは無関係なエンターテインメント?」で、伊須田史子さんのメールによるインタビューに次のように答えています。

X X X X X 
地球温暖化は実際に起きています。問題はその原因です。気候変動には自然変動と、人間の活動による変動とがあります。私は手元にある実データをもとに、気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)が示すことをしていない、この2つの比率を独自に算出しました。結果ですか? 観測されている温度上昇の6分の5ほどは自然変動によるもの、残りの6分の1ほどが人間の活動によるものだということが分かりました。
X X X X X 
  
赤祖父さんは、丸山さんとは逆で、「地球温暖化は実際に起きている」、しかし、その原因は「人間の活動」によるよりも「自然変動」によるほうが大きいと主張されています。そして「要は、エネルギーのムダを省き、石油資源をできるだけ子孫に残しましょう、で十分な大義名分があるのです」と語っておられます。

お二人の科学者の主張は「寒冷化」と「温暖化」で正反対ではありますが、気候変動の主な原因は「人為的要因」ではなく、「自然要因」であるという点で一致しており、「エネルギー消費の削減」にはお二人とも肯定的です。

お二人の議論は、赤祖父さんの主張に象徴されますように、考えうる温暖化の様々な原因(要因)の総和のうち、それぞれの原因がどの程度を占めるのかのという議論であり、その意味では「温暖化の原因」をめぐる科学的な議論ではありますが、この種の科学的議論は温暖化の原因を極めるために組織された専門委員会でその道の専門家同士が議論することではないのでしょうか。私は「IPCC第1作業部会」はそのような目的で作られた部会だと思っておりましたが、懐疑派の科学者から見るとそうではないのかもしれませんね。

しかし、「現実の人間社会への温暖化の好ましくない影響の可能性」を考えるときには、たとえ「自然変動主因説」が科学的には正解であったとしても、その主因を人為的にコントロールするのがほとんど不可能であることを考えれば、温室効果ガスを削減しようとする対応政策は社会的常識論として論理的に正しいのではないでしょうか。

このことは、赤祖父さんの主張を比喩的にいえば、コップの容量100%(温度上昇の要因を6/6とすると)の83%以上(温度上昇の5/6)が人間がコントロールできない「自然要因」という名の液体で占められていて、その上に、人間がコントロールできる「温室効果ガス」という名の液体が残りの17%(温度上昇の1/6)を占めており、しかも将来的に「温室効果ガス」が間違いなく増加すると仮定した場合、コップの中の液体がこぼれない(温暖化による困った状況が起こらない)ようにするためには、「残りの人為的な17%の温室効果ガス」を少しでも削減する方向の努力を続けていくことが現実的で望ましいことになるのではないでしょうか。ここでいう温室効果ガスには水蒸気は含まれていません。自然界の水蒸気を人間が地球的規模でコントロールすることは不可能だからです。

世界の現状を、 「コップの中身がほぼ満杯で、まもなくコップの中の液体がこぼれだす(科学者が想定する気候変動への限界を超える)状況にある」と仮定しますと、「自然要因」が増えても、あるいは、「人為的要因」が増えても、どちらの場合にもコップの液体はこぼれだすことになります。繰り返しますが、「自然要因」は現実問題として人間がコントロールすることは難しく、「人為的要因」は私たちの意思でコントロールできる可能性があります。つまり、私たちの将来が「寒冷化」であろうと、「温暖化」であろうと、この問題を好ましい方向に転換させるために私たちにできることは「人為的要因」をコントロールするしかなく、あとは「自然の法則」に身をゆだねざるを得ないのです。


●温暖化問題に対する私の考え方

そうであれば、たとえIPCCの主張と懐疑派の主張が対立したままであっても、私の環境論で「温暖化問題」に十分対応できそうです。次の図を御覧ください。

この図は私の環境論の「環境負荷」を示す重要な図です。以前にこのブログで紹介しましたので、ご記憶の方もいらっしゃるでしょう。

丸山さんと赤祖父さんの主張は、この図の「人間の意思」ではコントロールできない事象の①および②の一部に相当します。ですから、私たちにできることはIPCCが主張し、懐疑派の科学者も肯定する「人間の意思」でコントロールできる事象、つまり「経済活動に伴う環境への負荷」(環境への人為的負荷)をできるだけ少なくするということになるのです。そして、このことは「温暖化対策」だけでなく、「酸性雨」などの大気汚染や他の環境問題解決にとっても望ましいはずです。


●「科学者の9割は『地球温暖化』CO2犯人説はウソだと知っている」を評価する参考になりそうな「関連ブログ」

環境図書月刊売上ベスト10の2位にランクされている丸山さんの「科学者の9割は『地球温暖化』CO2犯人説はウソだと知っている」(宝島社 2008年8月23日第1刷発行)は、このブログで取り上げた「『地球温暖化』論に騙されるな!」(講談社 20008年5月29日 第1刷発行)のおよそ3カ月後に発売されたもので、私は後者に比べると、前者は内容的に非常に見劣りがすると思います。素人の私は後者はしっかりとした論調だと思っていたのですが、前者を読んだ後偶然にも、後述する吉村さんのブログに出会い、丸山さんの“科学者としての行動”に疑問を感じ、失望しました。前者(宝島社)を先に購入していたら、私は後者(講談社)を購入しなかったでしょう。

シンポジウムで行われたアンケートによれば、「『21世紀が一方的温暖化である』と主張する科学者は10人に1人しかいないのである。一般的にはたった1割の科学者が主張することを政治家のような科学の素人が信用するのは異常である・・・・」と書いておられるのですが、アンケートの対象となったのは何人の科学者なのかというような基本的なことが書いてありません。どのようなアンケートだったかもこの本からは分かりません。

詳しいことは、シンポジウムの参加者にしかわからないのですが、幸い、ネット上には、このシンポジウムに参加した温暖化論を支持する科学者の吉村じゅんさん(専門は気象学)という方のまじめなブログがありますので、このブログが丸山さんのこの本を評価する手がかりを与えてくれるように思います。

吉村じゅんさんのブログ 

2008年9月2日  「科学者の9割は『地球温暖化』CO2はウソだと知っている」(1) 

2008年9月14日  科学者の9割は『地球温暖化』CO2はウソだと知っている」(2)   



私もこれまで「地球温暖化を含む環境問題に対する日本政府の対応」や一部の「環境・エネルギー分野の活動」に私の環境論から異論を唱えてきました。その一端は再開前のこのブログでも書いてきました。日本の最近の「温暖化懐疑論」という現象には少なからず違和感があります。皆さんは、最近のこの現象をはじめとする「環境問題懐疑論」現象をどのように考えますか。

常に国際社会の動きに振り回されて来た感がある日本で、このやや特異な現象が日本の環境政策や市民の環境運動に今後どのような影響を及ぼすか注視する必要があると思います。

日本の「温暖化懐疑論」という現象(1)

2008-09-24 11:07:23 | 温暖化/オゾン層
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今日と明日の2回に分けて、この「温暖化懐疑論」について、私の考えまとめておきます。まず、お断りですが、私は複数の大学で「環境論」を講じ、その一環として「気候変動問題への対応政策」(国際的には気候変動という言葉が主流、日本ではなぜか地球温暖化あるいは単に温暖化が定着、今日の議論は素人の議論なので、2つの言葉を混用する)に興味を持ち、スウェーデンと日本の温暖化への対応政策の相違などを講義しています。

私は温暖化の専門家でもなければ、研究者でもありませんので、「温暖化問題」へ特化して議論しているわけではありません。その意味で、私は「温暖化問題」の素人です。ですから、ここでの議論は、温暖化問題の素人が最近、雨後のタケノコやキノコのように唐突に登場した日本の科学者の「温暖化懐疑論」という少々奇妙な現象(私にはそのように感じられます)に対する一市民の考えを率直に示したものとご理解いただければ幸いです。


●「私の環境論」における「温暖化」の理解

「化石燃料の使用により大気中のCO2濃度が増えると、地球が温暖化する」という仮説を最初に唱えたのはスウェーデンの科学者スバンテ・アレニウスで、1896年のことでした。

この112年間に「世界の経済状況」と「私たちの生存基盤である地球の環境状況」は大きく変わりました。112年前にスウェーデンの科学者が唱えた仮説がいま、現実の問題となって、私たちに「経済活動の転換」の必要を強く迫っています。

厳密にいえば、「温室効果」は「環境問題」ではありません。オゾン層の存在とともに、地球上の生命が生存できるかどうかにかかわる本質的な要因です。地球の大気中に水蒸気とCO2がなかったら、地球の平均気温は現在の平均気温(15℃)よりおよそ33℃低いマイナス18℃で、地球は氷結していたことでしょう。

経済活動の拡大、つまり化石燃料の大量消費にともなって排出されたCO2が増えたことによって温室効果ガスの排出が増加し、温室効果が高まったことが、「環境問題」なのです。過去150年にわたる経済活動が、大気中のCO2濃度をおよそ30%上昇させ、地球の平均気温は20世紀の100年間に、およそ0.5℃上昇しました。気温の上昇はとくに、20世紀最後の25年間に加速されています。

温暖化の原因には、人間の意思ではコントロールできない太陽の活動などの「自然的要因」と人間の意志でコントロールできる温室効果ガスの排出などの「人為的要因」があると言われています。温室効果ガスには、水蒸気、CO2、フロン、メタン、亜酸化窒素などがあり、とりわけ水蒸気がいちばん大きな効果を持っています。しかし、人間の意思でほとんどコントロールできない水蒸気を除けば、残りの温室効果の大部分がCO2によるとされています。CO2の大気中濃度は、産業革命以前には270ppmだったのに、1987年には350ppmを超えるほどに増えています。亜酸化窒素、メタン、フロン、地表レベルのオゾンなども強力な温室効果ガスですが、大気中濃度は高くありません。 

ですから、温暖化をくいとめるために大気中のCO2の濃度を増やさない対策がとられるのです。CO2は炭素が燃えてできるものですから、なるべく炭素を燃やさないようにすること、すなわち化石燃料の消費を抑えることが必要なのです

すでに1990年の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第1次評価報告では、「温室効果ガス濃度を現状に安定化するには、寿命の長いCO2、亜酸化窒素、フロンなどの人為的排出量を60%以上、メタンを15~20%、ただちに削減する必要がある」とされています。


●最新のIPCCの報告書は 

すでに皆さんもご存じのように、地球温暖化の「科学的根拠を審議するIPCCの第1作業部会」は2007年2月1日に「IPCC第1作業部会報告案」を承認し、翌2日に「IPCC第1作業部会報告」を公表しました

この報告書では「温暖化が確実に進み、人間活動による温室効果ガス排出が要因の可能性がかなり高いこと」を確認し、最終的には90%を超す確率であることを示す「人為起源の可能性がかなり高い」と表現しています。

次の図をご覧ください。これは、前述の報告書の公表のおよそ2週間前に「「IPCCの第4次報告書案の概要」を報じた1月19日の毎日新聞に掲載された解説記事です。




●環境図書売り上げベスト10は「温暖化懐疑論」が花盛り

そこで、次の図をご覧ください。


こちらは、私が購読している「環境新聞」(2008年9月3日)の12面の環境図書館の欄に掲載された最新の「環境図書売り上げベスト10」です。なぜか日本では、 「IPCC第1作業部会報告」で終止符が打たれたはずの 「温暖化懐疑論」が花盛りのようです。

私は、このベストテンに登場する「偽善エコロジー」(武田邦彦)、「科学者の9割は『地球温暖化』CO2犯人説はウソだと知っている」(丸山茂徳)、「『地球温暖化』論に騙されるな!」(丸山茂徳)を発売直後に購入し、読んでおりました。また、このベストテンには載っておりませんが、同じく地球温暖化懐疑論である「『暴走する地球温暖化』論 洗脳・煽動・歪曲の数々」(武田邦彦、池田清彦、渡辺正、薬師院仁志、山形浩生、伊藤公紀、岩瀬正則 著 文芸春秋 2007年12月15日 第1刷)も購入し、読みました。

このベスト10の著者のうち、武田邦彦、丸山茂徳、伊藤公紀、渡辺正、池田清彦、養老孟司および赤祖父俊一の諸氏は、その著書などに紹介されている略歴によれば、大学の理学部あるいは工学部(武田さんは教養学部)出身で、現在は大学の理学系あるいは工学系の教授(池田さんは国際教養学部)、名誉教授、あるいは大学の医学系の名誉教授です。ですから、私のような一般市民の感覚ではまさに “科学者”、“専門家”であることは間違いありません。著者の中には、著書で自ら科学者であることを強く主張している方もおられます。 

一昨日の毎日新聞が丸山茂徳さんを紹介しています。




なお、この環境図書月間売上ベスト10にはありませんが、日本の環境問題に対する対応に疑義を唱えた一般向けの著書2点をこのブログでも取り上げましたので、次の関連記事をご覧ください。

関連記事

同じ情報を与えられても解釈は異なることがある(2007-10-11) 

武田さんの「環境はなぜウソがまかり通るのか」と槌田敦さんの「環境保護運動はどこが間違っているのか」(2007-10-14)


槌田敦さんが理解するスウェーデンの原発事情(2007-10-20) 


-次回へ続く-



気候変動への対応:「米国のブッシュ大統領の演説」と「スウェーデンのラインフェルト首相の演説」との落差

2008-04-18 11:57:13 | 温暖化/オゾン層
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久しぶりに、私の環境論の柱のひとつである 「今日の決断が明日の環境問題を原則的に決める」 を実感できるような事例が、一昨日、昨日と報道されましたので、それらの報道を紹介します。あまりの落差の大きさに驚く方も多いと思います。でもこれが現実です。そして、このことが米国とスウェーデンの温室効果削減の成果にも大きな落差を生じています。


★米国のブッシュ大統領の演説

昨日の朝日新聞(夕刊)は米国のブッシュ大統領が4月16日に行った演説を一面トップで次のように伝えています。


この演説に対して、町村官房長官は記者会見で次のように発言しています。


そして今朝の朝日新聞の社説は次のようです。


そして、他国のコメント、鴨下環境相のコメントです。前日の町村官房長官のコメントとはかなりの隔たりがあります。


関連記事

06年の米温室ガス減少、ブッシュ大統領が声明を発表!(07-12-03) 

21世紀の資本主義、その行方は???(08-03-30) 



★スウェーデンのラインフェルト首相の演説

来日中のラインフェルト首相が昨日(2008年4月17日)に、読売国際経済懇話会(YIES、 Yomiuri International Economic Society)で行った演説文(英語) をネット上で読むことができます。


Speech Yomiuri International Economic Society, Tokyo 17 April 2008
Combining a Climate-Friendly Policy with Economic Growth(気候に配慮した政策と経済成長の統合)

この演説文の一部に、次のような趣旨の文言があります。

xxxxx
昨年ニューヨークで行われた国連気候会議で、私は洪水に対処するため援助を求める島嶼国家の指導者の訴えを聞きました。私は発展途上国の指導者が、気候変動がどれだけ彼らの国に影響をおよぼしているかを聞きました。

私は3つのことを確信しています。

私たちは世界に起こっている懸念を訴えている人々に耳を傾けなければなりません。

私たちは指導的な科学者の分析と結論に耳を傾けなければなりません。

人々が気候変動を懸念し、指導的な科学者がこれは事実である言っているときに、私たちは耳を傾けているだけではだめで、行動を起こさなければなりません。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によれば、2050年までに温室効果ガスの排出量を少なくとも50%削減する必要があるとのことです。最近の科学的知見では、地球の気温の上昇は高まっており、温暖化の影響は以前に予測されたよりも大きくなっています。
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再び「科学者」と「政治家」のかかわり(07-11-29) 


おそらく21世紀前半社会の最大の問題である「気候変動」に関して、わずか1日の差で行われた米国大統領の演説とスウェーデン首相の演説の内容の相違はあまりにも大きすぎます。米国は世界最大の温室効果ガス排出国であり、スウェーデンは世界の排出量の1%にも満たなく国です。

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緑の福祉国家14 気候変動への対応③(07-01-24) 

3月19日に経産省が発表した「CO2排出量の試算」、対策費20年度までに全体で約52兆円

2008-03-20 19:10:30 | 温暖化/オゾン層
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毎日新聞の連載記事 「暖かな破局」(第3部 削減を阻むもの)を読む ②

2008-03-19 12:52:17 | 温暖化/オゾン層
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毎日新聞が3月4日から8日まで、5回にわたって「暖かな破局」(第3部 削減を阻むもの)という連載記事を掲載しました。「第3部 削減を阻むもの」というサブタイトルが付けてあることから容易に想像できますように、この連載記事を企画した担当者や実際の取材にかかわった記者の方々が明らかにしたかったことはなぜ、日本では温室効果ガスの削減が進まないのか、その原因を探ろうとしたものです。そのあらすじの要約は昨日の記事をご覧ください。

今日は、上記の連載記事の最終回として3月9日の毎日新聞が掲載した「企業へのアンケート調査」の結果の概要をお知らせします。

企業へのアンケート調査」

暖かな破局

7月に開かれる北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)は、環境問題が焦点となる。日本では4月に今日議定書の約束期間が始まり、地球温暖化対策は待ったなしだ。毎日新聞が主要120社に実施したアンケート(回答率90%)では、議定書を評価しつつも、削減目標の達成を疑問視する声も根深い。主要排出源の企業の取組は十分か。排出削減の最前線を報告する。(温暖化問題取材班)




3月9日の毎日新聞は4面すべてを使って、紙面の左側に今年1月末から2月中旬にかけて120社を対象に行った「企業へのアンケート調査の結果」の詳報を、紙面の右側には、松下電器産業の空調機子会社、松下エコシステムズとソニー、佐川急便の取り組みの紹介と、環境NGOの気候変動ネットワークの畑直之さん、東北大学教授の明日香寿川さん、京都大学教授の一方井誠治さんのコメントを掲載しています。

昨日と同じように、記事を読む機会がない方のために、そして、私自身のメモとして、日本の代表的な企業120社がどのような考えを持っているかについてある程度の推定ができるよう見出しを拾い出しておきます。 

紙面の左側:企業アンケート詳報

環境税導入に過半数反対
温暖化対策 「成長制約せず」 68%    電力、鉄鋼中心に「京都」評価せず
暫定税率廃止 賛否は拮抗  
 

紙面の右側:松下エコシステムズ、ソニー、佐川急便

企業 創意工夫で独自策
排出削減の現場 松下・・・・・省エネ空調で2割減、ソニー総量目標を先行導入
識者のコメント 「目標不透明」批判も ■自主行動計画  改善ペースは鈍化 ■エネルギー効率        方向性がなく、各企業は困惑

紙面の中央:90年代前半を風靡したあの言葉、絞れ「乾いた雑巾」 が据えられています。


私は、この記事を眺めただけで、日本の状況は絶望的だと思ってしまいます。国民各層の間で「温暖化対策」に対する共通の認識が十分に共有されていないからです。私の予測が大きく外れることを期待するのみです。



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毎日新聞の連載記事 「暖かな破局」(第3部 削減を阻むもの)を読む

2008-03-18 22:05:50 | 温暖化/オゾン層
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毎日新聞が3月4日から8日まで、5回にわたって「暖かな破局」(第3部 削減を阻むもの)という連載記事を掲載しました。「第3部 削減を阻むもの」というサブタイトルが付けてあることから容易に想像できますように、この連載記事を企画した担当者や実際の取材にかかわった記者の方々が明らかにしたかったことはなぜ、日本では温室効果ガスの削減が進まないのか、その原因を探ろうとしたものです。

興味のある方は、この連載記事を読んでいただきたいと思いますが、記事を読む機会がない方のため、そして私自身のメモとして何が日本の問題なのかをある程度推定できるように、それぞれの記事の見出しを拾っておきましょう。

ここに書かれている日本の問題点は、私のブログですでに述べてきたことばかりで、特に目新しいことはありません。関連記事として過去のブログ記事にリンクを張っておきます。私の基本認識では、たとえ、ここにあげられた問題点が改善されても(排出権取引を導入し、IT化が進展し、森林計画が順調に進み、原発が正常に稼働し、そして風力発電がかなりの割合で設置されても) 、日本の二酸化炭素の排出量を削減することは難しいでしょう。日本の温室効果ガスの総排出量の90%を占めると言われているエネルギー起源の化石燃料の削減が実質的に担保されていないからです。

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スウェーデンは今、GDPの成長と温室効果ガス(GHG)の排出量の「デカップリング」がさらに明確に(08-03-16) 

日本政府が温室効果ガスの排出枠をハンガリーから購入(07-11-30) 


暖かな破局(第3部 削減を阻むもの) ①排出量取引 導入検討
●首相「洞爺湖」見据え決断

政府は国内排出量取引の導入検討を表明した。地球温暖化対策の一環で、活動が規制されると導入に反対する経済界を押し切った。なぜ、急転したのか。第3部は首相官邸から始めたい。

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混迷する日本⑭ 「CO2排出権取引論」の虚実、10年前の議論だが(08-01-28) 


暖かな破局(第3部 削減を阻むもの) ②IT化でCO2増

京都議定書の目標達成に伏兵が現れた。IT(情報技術)の急激な拡大だ。業務効率化で省エネにつながると期待されたが、事情は違うようだ。

●排出量、効率化上回る予測も

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暖かな破局(第3部 削減を阻むもの) ③森林依存 計画倒れ

日本は京都議定書の削減目標6%のうち3.8%分を森林の二酸化炭素(CO2)吸収で賄う計画だ。実現には森の手入れが不可欠だが、林業の衰退で達成は難しい。

●CO2吸収 間伐遅れが障害

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暖かな破局(第3部 削減を阻むもの) ④原発は不安定な電源

二酸化炭素(CO2)の排出が少ない原発が世界的に見直されているが、国内では相次ぐ運転停止で「不安定な安定電源」となっている。排出削減が進まないと、電気料金にも影響が出る。

●「石炭」増加、温暖化対策は後手

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暖かな破局(第3部 削減を阻むもの) ⑤風力発電に「逆風」(最終回)

風力は二酸化炭素(CO2)を排出しない再生可能エネルギーだ。欧州で急拡大するが、日本では逆風が吹いている。

●電力業界、コスト増に反発

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スウェーデンは今、GDPの成長と温室効果ガス(GHG)の排出量の「デカップリング」がさらに明確に

2008-03-16 12:31:59 | 温暖化/オゾン層
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今年2008年は、1997年に採択された「京都議定書」の約束期間の始まりの年です。7月7日から9日まで洞爺湖サミットが予定されています。そのようなわけで、マスメディアが一方的に多量のフローの情報を流すので、少しはストックな情報を提供することによって議論に道筋をつけたいと考え、 「1990年代の日本の温暖化対策」の大筋をとらえる試みを行って来ました。その結果、日本は1990年代にほとんど有効な手立てを行ってこなかったことが確認されたと思います。また、2000年以降の取り組みも国際社会をリードするまでには至っていないように思います。 

そこで、今日はスウェーデンの状況をとりあげます。スウェーデンは1995年1月1日にEUに加盟しました。それ以降、スウェーデンの政策はEUメンバーとして、EUに協力すると同時に、スウェーデン独自の政策を展開していくことになりました。

1996年にスウェーデンが「エコロジカルに持続可能な社会(緑の福祉国家)の構築」を21世紀前半社会のビジョンとして掲げてから12年が経とうとしています。スウェーデンの考え方が日本の考え方と決定的に異なるのは、「エコロジカルに持続可能な社会の構築」が国家のビジョンであって、「気候変動(地球温暖化)への対応」はそのビジョンを実現する一側面(最大のものではありますが)だということです。


現在に至るまでのスウェーデンの行動計画については、私のブログの「市民連続講座 緑の福祉国家」で63回にわたってひととおり書きましたので、今日はこの12年間の「気候変動への対応」の結果だけを紹介します。そのためには、次の5枚の図を紹介するだけで十分でしょう。






図5は一次エネルギーの供給量が90年以降13年間若干増えているものの、ほとんど横ばいの状況にあることです。この間の経済成長は伸びています。なお、図5の原子力について注意してほしいことは、図の3分の1が実際に発電に使われている量で、残りの3分の2は排熱として捨てられていることです。つまり、電力への転換ロスがきわめて大きいのが原子力エネルギーの特徴なのです。 


2008年2月21日、スウェーデンのラインフェルト首相はEU議会で演説し、「1990年以来、スウェーデンは44%の経済成長(GDP)を達成し、この間の温室効果ガスの排出量を9%削減した」と語りました。

ここで重要なことは、これまでの結果が国内の努力によって達成したものだということです。京都議定書以降はEUの一員として、EUの次の目標である2020年に向けて、さらなる温室効果ガスの削減に努めることになります。

以上のデータから、スウェーデンでは経済成長(GDPの成長)と温室効果ガス、二酸化炭素、一次エネルギーの供給の間のデカップリング(相関性の分離)が認められるようになってきたと言えるでしょう





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緑の福祉国家24 エネルギー体系の転換③ GDPと1次エネルギー消費のデカップリング(07-04-24) 

一人当たりのCO2排出量の現状と将来の目標(07-10-23)

EU、CO2削減の国別数値目標を提案(2008-01-30) 


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EU、温室効果ガス削減を2009年に法制化をめざす

2008-03-15 13:17:01 | 温暖化/オゾン層
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EUが、今年1月に提案した温室効果ガスの国別削減目標に関する首脳会議がブリュッセルで開催され、2009年前半に関係法を成立させることを申し合わせた、と今朝の朝日新聞が報じています。

この件をもう少し具体的に紹介した関連記事がありますので、合わせてご覧ください。


関連記事

EU、CO2削減の国別数値目標を提案(08-01-30)


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日本のCO2排出量 もう一つの側面

2008-03-14 10:17:35 | 温暖化/オゾン層
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3月8日の毎日新聞と3月12日の朝日新聞が、日本のCO2排出量について「もう一つの側面」を紹介しています。記事のもとになっているのは、環境NPO「気候ネットワーク」の最新の分析によるものです。







これらの記事によると、気候ネットワークは「03年度のCO2の国内排出量推計」に続いて上の記事のもとになった「05年度のCO2の国内排出量推計」を公表しているようです。私の手元に、「03年度のCO2の国内排出量推計」をまとめた資料がありますので、関連部分を紹介します。上の記事と読み合わせると、日本の地球温暖化政策の「もう一つの側面」が見えてくるように思います







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国連への日本の提案 セクター別アプローチ、実効性はどうか?

2008-03-13 18:55:34 | 温暖化/オゾン層
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温室効果ガスの削減に関する国連への日本の提案が明らかになったと、3月5日の朝日新聞が報じています。同日の毎日新聞は、昨日、紹介した記事にあるように、日本の提案の内容の紹介よりも、その提案が提出期限を過ぎてもまだ、国連へ提出されていないことを重視していました。

朝日新聞が報じた「日本の提案」はセクター別アプローチと呼ばれる積み上げ方式です。






日本の提案は昨年12月のCOPで提案され、今年1月に世界経済フォーラムの総会で表明した構想に基づくものだそうです。世界経済フォーラムで表明された構想に対して大阪大学の西條辰義さんが朝日新聞の「私の視点」で「日本の積み上げ方式」に異論を唱えておられます。



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国連へのポスト京都提案 日本、締め切り遅れ、

2008-03-12 22:26:41 | 温暖化/オゾン層
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何ということでしょうか。3月5日の毎日新聞のこの記事を読んで、私は愕然としました。そして、18年前のリオデジャネイロの地球サミットのときのことを思い出しました。この時も、日本は国連環境会議に提出すべき報告書を提出期限内に提出できなかったのだそうです。最も、この時はスウェーデン以外は皆、状況は同じだったようですが。

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90年代日本の温暖化対策④ 18年前、OECD 日本にCO2導入圧力(07-02-11) 


日本は、CO2排出量が世界の2%以上ある主要国の中で、ロシアとカナダとともに、2月22日の締め切りを過ぎてもまだ国連に「ポスト京都議定書の提案」を提出していないのだそうです。


そして、未提出の理由が「国内での合意形成の遅れ」という、何とも日本特有の理由であることに失望感を禁じえません。




社会的な合意形成はスウェーデンが最も得意とすることですし日本が最も不得意とするところです。私のブログでも2007年2月28日の「社会的な合意形成① 合意形成への2つのアプローチ」 から 3月8日の「社会的な合意形成⑩ 私たちには英知があるのだろうか」 まで10回にわたって検証してきました。あれから1年経ってしまったのですね。もう一度1年前を振り返ってみることが必要でしょう。


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