全トヨタ労働組合(ATU)

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AKK吉田裁判の現況

2014年09月23日 08時50分01秒 | Weblog
吉田裁判は今どのように進んでいるのか
 8月8日(金)刈谷市内にて裁判を支援する会総会が開かれました。5人の弁護団を代表して、豊田けやき通り弁護士事務所の梅村弁護士から報告をいただきましたので、数回に分けて掲載します。尚、補助参加の取り扱いについては高裁で今だ検討中です。支援する会は「参加」を認めないよう団体要請署名行動を行っています。協力していただける団体があればご一報ください。

二つの裁判
 今、吉田さんの裁判は二つ闘われています。一つは、国を相手にした裁判。もう一つは、アイシン機工を相手にした裁判です。
国を相手にした裁判は、吉田さんが、手首を痛めて労災申請しましたが、岡崎労働基準監督署西尾支所長が、業務外との決定を行ったので、その決定を取り消してくれというものです。これはすでに判決が出ています。
アイシン機工に対する裁判は、アイシン機工が吉田さんのケガが治らないということで休職期間満了による退職としてしまいました。しかし、吉田さんが手首を痛めたのは、業務によるものであるから、退職扱いはできないという労働契約上の地位の確認と、手首を痛めた原因は業務にあり、会社に責任があるので、損害賠償を求めるものです。この裁判は、一審で係属中です。

労災認定裁判の判決内容
実は、吉田さんは、利き手の右手だけでなく左手も痛めています。そこで、両手とも労災認定を求めていたのですが、2014年3月18日の判決では、右手については労災を認め、左手については認めませんでした。
この判決の内容を簡単に説明しておきます。
まず、判決では、右手も左手も手首に損傷があるということは認めています。
2つめに、手首が悪くなる原因、すなわち危険因子には、こちら側の証人である宇土医師が言われていた手首の回内・回外運動があると認定しています。
3つめに、吉田さんが、回内・回外運動を伴う作業を行っていたと認定しています。
吉田さんは、エンジンカバーの製造業務に従事していたのですが、その作業の中に、接着剤のついたスタットボルトをねじ込む作業がありました。それは、手で回しただけでは入らないのでインパクトレンチを使ってやるのですが、そのためには手であらかじめボルトの仮締め作業をしないと安定して入らない。その仮締め作業を1つのエンジンカバーをつくる作業に付き、2本のスタットボルトを、1回転から2回転、360度~720度、行っていました。それを、吉田さんは厚手のゴム手袋をつけてやっていましたので、しっかりとスタットボルトをつまんで回さないといけない。国側(会社側)は指先だけでつまんで、くるくると回して入れることができると主張していたのですが、判決では強くつまんで手首の回内・回外運動をやらないと入らないという認定をしています。
4つめに、判決では、回内・回外運動が手首を痛めたことの原因になったかどうかの判断をするための基準を示しています。
手首の回内・回外運動は、日常的に行うものであり、手首を痛める原因はいろいろあるのだが、業務での回内・回外運動が、他のいろいろな回内・回外運動より相対的に有力な原因だと言えないと業務起因性は認めませんよ、という基準を設定しています。
5つめに、判決は、スタットボルトの仮締め作業で行う回内・回外運動は、他の回内・回外運動より相対的に有力な原因となると認めました。
他の回内・回外運動としてどのようなものがあるかというと、裁判の中で国側の証人の藤澤医師は、吉田さんが高校時代に卓球をやっていて悪くなったと言っていますし、国側は、日常動作でも悪くなると主張しています。判決では、会社の作業の手順は決まっていて、スタットボルト2本を入れる作業を11秒以内にやらないといけない。急いでやっていた。それを1日に1400~2400回やらなければいけない。それも5年間の長期に渡ってやっていた。したがって、その作業は特徴的具体的でありかつ頻度の高いものであったと認定しました。それに比べて卓球は、高校時代のことで、時も経っている。日常動作もあるかもしれないが、抽象的なものであるとし、相対的に仮締め作業の回内・回外運動が有力であるとしました。
もう1つ、プラスバリアントの問題がありました。手首に尺骨と橈骨という二つの骨があるのですが、そのバランスが悪くて、手首が痛くなったのではないかという問題です。吉田さんの場合、右手首では、2ミリの違いがあり、国側は、それが原因ではないかとも言っておりました。このことについて、判決では、尺骨が長いというのはそうなのですが、右手については、そうたいしたことはない、特異なものとまでは言えない、ということで、尺骨が長いということがあったとしても、やはり業務が有力であるとして業務起因性を認めました。
6つめに、判決は、左手については、業務起因性を認めませんでした。その理由は、左手で作業をしたという証拠がないということでした。一般論としても左手でやるのは難しいし、いちばんの問題は、吉田さんが、労基署で聴取をされたときに、左手で作業をしていたとは言ってなかったということです。そのようなことを理由に、裁判所は左手で作業をやっていなかったと認定しました。だからあれこれ言うまでもなく業務起因性がないのだという判断です。また、判決は、それに付け加えて、骨の長さの違いが右手は2ミリだが、左手は5ミリあり、それが左手の損傷の原因であるとも言っています。
以上が、国に対する裁判の一審の判決の内容です。つづき