ごまめの歯ぎしり・まぐろのおなら

サンナシ小屋&京都から世界の愛する人たちへ

ベトナムの海からアメリカの犯罪を思う

2010-03-11 | 南の海
 フエから南に車で1時間ちょっと、Langco beach という美しい砂浜が広がるリゾートが、今回の仕事の場所だった。二日間、難しい話をした。1日目の夕方、おかしくなった頭を冷やしに海に入った。でもしばらく運動していない体は思ったように動かない。太平洋から打ち寄せる波に、潮水をのんでしまった。もっと体を鍛えないといけないと反省した。

 すべての仕事が終わってみんなで近くのラグーンの水上レストランに昼食を食べに出かけた。店の前でハマグリやカニや魚を水槽で飼っているのを見ていたとき、一人の物売りの子供が近づいてきたのを見て、息をのんだ。水頭症の子供だったのだ。お多福のように巨大な頭をした5-6歳の子供が、なにやら土産ものを売りに来た。私はどう対応して良いか分からず、いそいで目をそらし、彼がなにやらベトナム語で言っているのも無視して、足早にそこを去ってしまった。

 彼を見て、やっと思い出した。このベトナムは35年前まで20年間もあの偉大なベトナム戦争を戦い、アジアの小国が世界の覇王アメリカ帝国を実力で追い出した国だったのだ。アメリカがベトナム全土に徹底的に撒き散らした大量の枯れ葉剤というダイオキシンを含む猛毒によって、いまだにベトナムではその後遺症に苦しむ人たちが多い。母親の胎内で被曝した子供たちが、あるいは異常発生で胎児のうちに死に、あるいは異常を持ったまま生まれてきている。ベトちゃんとドクちゃんの多頭一体の例などは日本人にもよく知られているが、ベトナムではこれまでそのようなことが日常茶飯事だったのだ。アメリカはそれでも乳児の高死亡率や異常児の出生とアメリカが行った枯れ葉剤の散布には関係がないと言い張っている。責任を取ろうとしない。その姿勢は、イラクやアフガンで起こっている白血病の多発とアメリカ軍が使った劣化ウラン弾の間に関係はないというのと同じ構図である。アメリカはベトナムの事例に何も学んでいないか、もしくはベトナム人やイラク人が死のうが異常になろうがかまわないと思っているのだろう。

 いや、そうとも言えないのかもしれない。同様なことはアメリカ国内でもあるのだから。スリーマイル島の原発事故や、核実験場、原子力発電所周辺の住民の放射能被曝による乳幼児の死亡率の高騰さえも、関係ないと未だに言い張っているだけではなく、あきらかに周辺の住民の乳幼児が他と比べて10倍以上の死亡率が明らかになったときに、それ以後の乳幼児死亡率の統計を取ることを止めてしまった(もしくは公表しなくなった)。自国民でさえ、平気でそのようなことをする。(日本もいまだに原発は安全だと言い張っている)

 すべての水頭症がダイオキシンの影響とは言えないのは承知しているが、ベトナムで見たあの子供の未来を押しつぶしたのがアメリカの行為でないとどうして言えようか。そして、その子供を見てどうして良いか分からなかった自分に今、やりきれなさを感じている。あのベトナムで行われた米軍によるベトナム虐殺に日本の自民党政府もアメリカの前線基地を提供しておおいに協力したのだから、彼の巨大な頭は私たち日本人にもその罪を問うているのだ。

 ベトナムから帰った昨日、夜中に大きな頭をしたお多福のようなお化けの夢を見た。心の中に彼の姿がいつまでも残っているのだろう。非人道的な戦争を今すぐ止めさせたい。地球の上から戦争が無くなる日が来ることを祈る。そのために私は何をしたらいいだろうか。