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80代の人の歌を聴く-2つの声楽発表会から

2014-09-30 17:40:18 | 音楽
 秋から冬は、音楽教室の発表会が多い。ぼくは声楽の発表会に足を運ぶことが多い。ベルカント発声の声(声、息の使い方、呼吸など)、歌唱力(技術、声の表現など)、表現(曲の解釈、聴衆への伝達力)といった観点を自分で作り聞くのが好きだ。審査員気取りではなく、日頃励んでいることに敬意を持って聞くことが多い。
 音大生の声楽教室の発表会は、学びの途上の若い人歌を聴くのは楽しい。一般の発表会は歌う人の人となりと指導の特徴を想像するのである。

■イタリアの歌とアリア
 イタリアの古典歌曲、アリアの発表会である。この種の催しは女性ばかりなのが一般的だが、めずらしく男性が3人である。
 楽譜を持っての歌う人がいるし、どちらかというと抑制的に歌っていたようだった。高音を爆発的に出すというよりは柔らかい声で、イタリア語の発音と声がなじんでいる人が多いようだった。
 テノールの人はアリアを演技も取り入れて表現を工夫して、聴衆を楽しませるぐらいなれている人であった。
 指導者が司会と曲の解説と伴奏したので、終わってみればその印象が残った。出演者の名前を紹介しなかったのがめずらしいことに思えた。

■華やぎと人となり
 その地域で広く声楽指導活動している教室の発表会は、300人余りのホールに80%ぐらいの聴衆だった。プログラムは、18人の出演者の写真とそれぞれのコメントが200字余りで添えられていた。
 驚いたのは80代半ばの人が5人。その中のひとりは持病があり、最近骨折したがリハビリで歩けるようになったとのこと。みんな姿勢もよくそれぞれ味わいのある声での歌唱に聞き入ったのだった。高齢でなおしゃきっと歌に取り組んでいることに、感心した。

 この発表会は1年半ごとにやっているとのことだが、前回も聞いて記憶に残っている。前回高音の発声が硬いと思っていた人が、それを克服して「蝶々夫人」のアリア「ある晴れた日に」を見事に歌っていたのに驚いた。
 全員がドレスを前半と後半を変えたので、華やいだ感じだった。これは単純に派手と見るのではなく、自分らしい表現の装置ではないかととらえてみた。するとほどよい緊張の中にも意欲とゆとりを持っている人が多いように見えた。
 めずらしかったのは、和服の人がいたこと。日本歌曲「落葉松」は歌にマッチしていると発見した。間奏のとき後姿で帯を見せたが、着慣れた和服をステージでの表現に取り込んだことが理解できた。
 娘や孫だろうが花束を渡す人が多かったが、家族からも暖かい声援のなかで歌っているのかと、ほほえましくなった。

 指導者は抑制的に進行役に徹していたが、その姿勢は出演者を讃えるようにも思えたのだった。多くの人がカラオケへの親和性を持つ時世だが、そのような人たちを指導者はベルカントで歌う機会をつくっているように思えた。
 カラオケよりベルカント良いと単純に捉えるのは誤りだが、ベルカントで歌うのは声をつくる、歌唱力を高める等「覚悟」をして励まなければならない。その観点からこの教室の指導者は、地域の文化への貢献は大きいのではないかと考えてみたのだった。



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