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准介護福祉士資格を新設

2007-12-03 15:46:32 | 福祉
 高齢者施設の介護職は、措置制度から介護保険制度になった際、労働条件が切り下げられ、06年の介護保険制度の改正でさらにきびしくなった。そのように労働条件の悪化を反映して、職員を求人しても確保が難しくなっている。
 介護福祉士の資格が創設されて20年をへたが、固有の専門性を持ちながらも、その資格を有していない職員が仕事をしているのが現実である。家事や育児といった経験の延長でもケアの実務は出来ないことはない。それに加えて短期間の講習と実習で取得可能なホームヘルパーで実務の基礎を獲得している職員もいる。
 このような状況からして、介護福祉士固有の専門性に対して社会的評価がともなっているとはいいがたい。
 
 朝日新聞の11月28日の報道によれば、介護福祉士の制度改正案が参院の厚生労働委員会をとおり、28日の参院本会議で可決するとのことである。
 改正の主要な点は、
①これまで専門学校等の高等教育や国家試験で取得できたのを、国家試験受験資格としすべて国家試験の合格によって資格を授与するようになる。
②介護福祉士とは異なり、あらたに養成機関をへて無試験で准介護福祉士を新設する。
 である。

 改正の問題点を考えてみよう。
 ①についてすなおに考えれば、介護福祉士の専門性を高めるために国家的ミニマムエッセンシャルを設けて質の管理をする、ということである。
 ところが現実には質の管理どころか、資格を有しない職員に頼らざるを得ない職員不足の状況がおきている。介護職の絶対量が不足しているかというと、労働条件の低下と専門性が高い割には社会的認知が弱いといったことから、介護職を希望しなくなっているのである。これまでの介護福祉士養成が起動に乗っているとはいいがたい状況である。
 国家試験を設けたからといって、現在抱えている課題に即した介護職場と介護福祉士の状況が好転することとは無関係である。どうして実態を無視した政府の願望にもとづく机上のプランを実施するのか、理解に苦しむ。
 ②無試験で資格を授与することは、かねてからのフィリピンとの経済連携協定(EPA)にもとづく、フィリピン人介護職の受け入れのための制度である。フィリピン側からすると、これまで日本で示していた条件のハードルが高すぎて労働輸出が難しいので、日本が緩和措置をとったのである。
 かつてはの受け入れ条件は、大卒で介護の養成をへて来日して仕事をし、3年以内にで日本の介護福祉士の試験に合格すると継続できる、というものであった。フィリピン側としてはこれをクリアーできる人材は多くない。たとえばカナダの場合は、フィリピンの高等教育で使われている英語なのでコミュニケーションはよく、3年仕事をすると永住権が取得できるとのことである。

 労働条件の低下による介護職不足という状況ができあがり、フィリピンの介護労働者受け入れ条件ができたということでもある。
 ところで准介護福祉士が新設されると、フィリピン人のみに適応されるわけではないはずなので、国家試験で専門性のミニマムエッセンシャルを求めつつ、もう一方には専門性と問わない准介護福祉士を設けることになる。この二重資格が、現場が専門性を求めて仕事の質を高める力が弱まりはしないか、懸念するのである。現場の運用として、業務内容を仕分けして仕事をするようになる可能性が考えられる。
 国家試験を制度化しながら、ともすれば専門性の劣化になりかねない二重資格を作ることになった。高齢化社会に向かうのに、国家予算の社会保障費の削減のために、高齢化施設は明るい材料が少ない。日本の将来を憂う気持ちがもたげてくるのである。

*フィリピンからは最初の2年間で介護福祉士600人、看護師400人と受け入れる。

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