世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●腑に落ちない新元号、次時代を予感 「令」は冷たい

2019年04月17日 | 報道

 

天皇はなぜ生き残ったか (新潮新書)
本郷 和人
新潮社

 

「承認欲求」の呪縛 (新潮新書)
太田 肇
新潮社

 

違和感のススメ
松尾 貴史
毎日新聞出版


●腑に落ちない新元号、次時代を予感 「令」は冷たい


世論調査などによると、新元号「令和」は6~7割の国民が好感を持って受けとめたとの報道がめだつ。

端から新元号にケチをつけるのも憚られるので、「まぁ、良いんじゃないですか」と云う感じの回答が多かったようである。

そういう意味では、日本人は如才がないと云うか、よほど“忖度”が好きな国民なのだろう。

古代史を紐解くと、日本と云う地においては縄文と云う時代が一万年も続いていたのだそうだ。

つまり、縄文人の一万年の歴史が土台にある国と考えれば、ここ10年くらいで起きた出来事で、四の五の考えるのは冗談的でもある。

イメージ的にも、言葉の響き的にも、“rei”には温かみはない。“wa”が温かいから良いじゃないかと云うが、冷温で帳消しだ。

以下のコラムで指摘するように、筆者も確認したが、”「令」を大修館書店の「大漢語林」を繰った。令の項には(1)命ずる。いいつける。法令などを発布する。「命令」(2)みことのり。君主の命令。「勅令」(3)のり。おきて。法令。布告書。「律令」……と続く。”と。

安倍晋三首相は発表当日の自民党役員会で「令はいい意味」と説明したが、「よい」の意味が出てくるのは6番目だ。旧い漢和辞典なら7番目に漸く「よい」と云う意味が出てくるが、ほとんどが「命令」的な意味合いで、律すると云う上から目線な文字だと言える。


そもそも、無理やり国書だと言いながら、古事記や日本書紀からならいざしらず、謂わば、当時の歌謡曲である歌集から選んだ点である。

穿った見方をすれば、当時の藤原の統治権力を正当化させる古事記、日本書紀ではなく、政治性の薄い万葉集から選びました、とエクスキューズを言いたいところだろうが、正当な歴史哲学が欠けており、田舎育ちの長州武士的だとも 言える。

しかし、日本の歴史の中において、点にしか過ぎない議院内閣制から誕生しただけの安倍総理が、己の物のように「元号」を扱うのは控えたら如何なものだろう。

NHKのニュース報道などを見聞きしていると、安倍総裁の所有物であるような扱いが目立つのは、顰蹙ものである。

しかし、わが国の愚民な人々は、安倍政権の手柄であり、内閣支持率を5~8ポイント上昇させるのだから、目出度い。いや、フェークな調査なのかもしれない。

まぁ、暗黒の時代の幕開けとして、残念であるが“暗黒の令和”と云うゴロの良さも手伝い、かなり日本には厳しい時代が訪れるようだ。

しかし、国の立場が厳しくなる時代には、救世主のように多くの国民が目覚めるとも言われているので、その歴史的事実に期待しよう。


≪新元号「令和」 礼賛一辺倒だが…「負」の面にも目を
世の中が新しい元号「令和」ブームに沸いている。各種の世論調査で7割前後の人が「好感が持てる」と回答。出典となった万葉集にも注目が集まり、関連本の増刷も相次ぐ。だが、そんな「礼賛一辺倒」に疑問を投げ掛ける人もいる。【小松やしほ】 「いやあ、参りましたよ」。東京大学史料編纂(へんさん)所の本郷和人教授は開口一番、こう言って頭を抱えた。テレビの歴史バラエティーやクイズ番組で、分かりやすく楽しい解説で人気の教授が何に「参った」のか。

 新元号が発表された翌2日のこと。テレビ朝日の情報番組に出演し、「令」の字の「悪口」を言ったことで、ツイッターなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で猛批判され、胃の痛む日々を過ごしているという。

 そんな思いをしてまで、口を開いたのはなぜか。「僕がテレビに出てバカやっているのは、歴史学の面白さを少しでも多くの人に分かってもらうため。学界と皆さんをつないで、研究の成果を分かりやすく伝える人間が必要だと考えているからです。そんな僕が今回、元号の問題に目をつぶって『政府万歳』ってやったら、曲学阿世(きょくがくあせい)と言われてもしかたない。さすがにそれはできないなあと思いました」  曲学阿世--。学を曲げて世にへつらう、の意。学問の真理に背いて時代の好みにおもねり、世間に気に入られるような説を唱えることを言う。「研究者にとって一番の恥だ」と本郷さんは断言する。

 さて「令和」である。この元号を評価しない理由を改めて聞いた。候補となった6案の中でふさわしくない漢字は「令」の字だけだという。「一度、漢和辞典を引いてごらん」と本郷さん。大修館書店の「大漢語林」を繰った。令の項には(1)命ずる。いいつける。法令などを発布する。「命令」(2)みことのり。君主の命令。「勅令」(3)のり。おきて。法令。布告書。「律令」……と続く。安倍晋三首相は発表当日の自民党役員会で「令はいい意味」と説明したが、「よい」の意味が出てくるのは6番目だ。

 「令和を『order and peace』と訳した海外メディアがありました。それに対して外務省が『Beautiful Harmony』と伝えるよう在外公館に指示したそうですが、漢字の意味からすれば、その解釈には無理がある。安倍首相は、憲法9条を拡大解釈している現状が嫌だから改憲したいと言うならば、元号も拡大解釈はやめるべきです。ダブルスタンダードの極みですよ。安倍さんの周りには誰も『令という字は良くないですよ』という人はいなかったんですかねえ」

 令嬢、令息、令夫人は令を「良い」の意味で使った熟語だが、本郷さんが令を使った熟語でまず思い浮かべたのが「令色」であり「巧言令色鮮矣仁(巧言令色、鮮(すくな)し仁)」だ。「論語」に出てくる孔子の言葉で、巧みな言葉を用い、表情をとりつくろって人に気に入られようとする者には、仁の心が欠けている--という意味だ。「孔子にとって一番大切な概念が仁。今の言葉で言えば愛です。その仁に一番遠いのが巧言令色。言い換えれば、そんたくです」

 本郷さんは「令旨(りょうじ)」という言葉を挙げて、令は皇太子につきものの漢字でもあると解説してくれた。「令旨とは、皇太子の命令を言います。学問的に見れば、令という字のついた天皇なんて、皇太子殿下に失礼ではないですか」。平安時代の高級貴族は政所という私的な役所を持つことを許され、役人に荘園の経営や管理を任せた。そのトップを令という。「家令という言葉がありますが、令は律令に規定のある役人であり、使用人です。それを元号に入れるとは」

 本郷さんは自身を「日本の伝統文化が大好きな愛国者だ」と言う。「元号を国書から選ぶことは構わないし、国民が選んだなら民主主義なので文句を言いません。だけども、候補を公に示さず、『これに決まりました』と。その中に令という字が入っている。これでは、政府は国民に何かを下す存在なんだと思われてもしかたがない。黄櫨染(こうろぜん)のように天皇陛下だけが着られる色があるように、上に立つ人にはそれにふさわしい字がある。安倍首相に皇太子殿下を侮辱しようという意図があったとは思いませんが、周りの学者は何をしているのかと。気がついていないなら学者として失格だし、気がついていて言わないなら、それこそ最大のそんたくですよ」

■歌集は格下、戦争利用の過去も
 万葉集の研究者も喜んでばかりではない。青山学院大の小松靖彦教授は、万葉集を出典としたことは「意外だった」と言う。なぜなら、「万葉集が編まれた7~8世紀には、中国文化圏に由来する厳然とした書物の序列があった」から。一番上は、仏教や儒教、道教の経典、次に律令などの法典、そして時の政権の正統性を説明する日本書紀などの歴史書、その下に政治の担い手である教養人が文章や詩を作る時に手本にする漢詩文集。歌集はそれよりも格下だ。「元号が国書から選ばれるかもしれないと言われても、古事記や日本書紀からと思っていました」

 そして、「万葉集が注目されるのはうれしいですが、戦争で利用されたという歴史もきちんと知っておかなくてはいけない」と言うのだ。まず、万葉集の成り立ちとその魅力を解説してくれた。

 「舒明天皇に始まり、聖武天皇に至るまでの皇統の歴史を描こうとしたものであり、天皇のための古代の理想像の歌集です。けれども一つ一つの歌には歌集の意図を超える力がある。それは古代人が洗練して作り上げた詩であると思っています。言葉を磨きに磨いた末に、文学の持つ力に気がついた、その時代に生きた人々の大事な証言です。人間が生きていく、そのどこか根本的なところに触れるような調べがある。そこが最大の魅力だと思います」

 次に、小松さんは「かつて、万葉集が戦争に利用されたという歴史に、今日、あまり触れられていない」ことを危惧する。

 万葉集の歌風は「勇壮な男子」を意味する「ますらをぶり」が特色とされているが、「当時の貴族か官僚にしか使わない表現です。例えば兵士である防人(さきもり)には、自分のことを『ますらを』などと、恐れ多くて絶対に言えないという意識が当時はありました」。

 ところが、時代が下り、幕末の倒幕派の志士たちがこの言葉を使い始めた。「彼らは身分が低いので、自分たちのことを『侍』や『もののふ(武士)』と名乗るのに抵抗があったようです。彼らは万葉集に古代の天皇中心の理想的国家像を見て、天皇に忠誠心を持つ勇壮な男性は『ますらを』だと。自らそう名乗り、自分たちの行動に意味を与えようとしたのです。以後、この精神は徐々に浸透し、日清、日露戦争を経て、太平洋戦争下で一気に広まりました」  例えば、楽曲「海ゆかば」は万葉集巻十八の大伴家持の長歌から引用されている。

 海行かば 水(み)漬(づ)く屍(かばね)  
 山行かば 草生(む)す屍  
 大君(おおきみ)の 辺(へ)にこそ死なめ  
 かへりみはせじ

 「満州事変(1931年)後に万葉集が小学校の教科書に載るようになりました。『海ゆかば』の曲は楽曲としては優れたものですが、これを胸に死んでいった人たちがたくさんいたことを忘れてはならない」と小松さん。戦中、「万葉の精神で」や「醜(しこ)の御盾(みたて)となって」という言葉も飛び交った。「万葉集をどう享受し継承していくか、それは今を生きる私たちにかかっています」

 おめでたいムードにけちをつける気は毛頭ない。だが、こうした「負」の部分もしっかり見つめて、新しい時代に踏み出したい。  ≫(毎日新聞)


≪新元号発表、どうして支持率が上がるの?
 この国は、新しい元号「令和」が発表されて、政権の支持率が上がるという不思議の国だ。こんなものが手柄になるなら毎年元号を変えればいい。一体、その人たちは何を評価したというのだろうか。ある調査では、10ポイント近くも跳ね上がっている。第一、政権が元号の選考に口出しするという、越権というかやぼというか、その差し出がましさのどこに支持率を上げる要素があるのかまったく理解不能だが、こんなことを言い出せばきりのないこの数年間ではある。

 元号は伝統文化の一つであるとは思う。文化、伝統として尊ぶのであれば、古式ゆかしく命名すればいいと思うのだが、歴史に名を刻みたいのだろうか、とにかく自身の影響で何かを変えたかったのだろう。

 出典が中国由来ではなく、初めて和書からの抽出でつけられたふうなことに胸を張る人々がいるが、それとて中国の書物からの孫引きになっているということには不思議と頓着しない。なぜここで伝統の形をゆがめてまで日本の書物から取った元号にこだわったのか、これまた不可解だ。

 「レイワ」と音読みになっている時点で中国由来の印象は残るから、それほどこだわりたいのならば訓読みにしても良かったのではないか。そして、中国で作られた漢字ではなく、いっそのこと、日本で生まれた平仮名にすればいい。いや、平仮名とて漢字を崩してできたものだから中国由来だが、そこまで言えばきりがない。だが、「万葉集」から取ろうが「古事記」や「日本書紀」や「古今和歌集」から取ったとしても、そもそも元号の制度自体が中国に倣ったものではないか。

 私たちの生活で、ちょっとした煩わしさをもたらすこの西暦と和暦の併用は、これから先も続いていくのだろうか。最近運転免許を更新した人によると、今までは「平成34年○月○日まで有効」などと表記されていたのが、西暦が加えられるようになったらしい。国際化する中で、旅行でやって来たり日本で暮らしたりしている外国人に、このドメスティックな文化を強要する必然は感じられない。さらなる外国人の労働力に頼らねばさまざまな産業の維持ができないといわれる状況の中で、これからもこの「和暦」なるものを公文書などでは使い続けるのだろうか。

 よく話題に上るのが、この「令和」の発音アクセントだ。「こんぶ」「つばき」「たぬき」のように最初の文字にアクセントを置いて発音するのか、「かつお」「さくら」「きつね」などと同じように平板で発音するのか。これはもちろん、前者なのだが、なんでも平板化する昨今では、後者の発音で話す人も多い。  4音の元号は、「安政」「大正」「平成」など、アクセント核の無い平板で発音する(平板型)が、3音で読む元号は、「元和」「元治」「明治」など、最初の音にアクセントを置く(頭高型)。しかし、「昭和」だけは使われた期間が過去247の元号で一番長く、長くなじんだものは平板化する傾向があるので、結構な年配の人でも平たく発音する人が多い。

 在りし日の立川談志師匠と「昭和」のアクセントについて、小論争になったことがあったが、師匠は平板説を唱えておられた。しかし、話の中で何度も無意識に頭高型で発音しておられたのがおかしかった。

 蛇足ながら、どこかのアナウンサー氏、元号を「248個目」と。「個」で数えることには違和感があるなあ。(放送タレント、イラストも)
 ≫(毎日新聞)

 

団地と移民 課題最先端「空間」の闘い (角川書店単行本)
安田 浩一
KADOKAWA / 角川書店

 

東大教授がおしえる やばい日本史
本郷 和人,和田 ラヂヲ,横山 了一,滝乃 みわこ
ダイヤモンド社

 

橋の下のゴールド
泉 康夫
高文研

 

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