世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

去年は橋下バブル、今年は安倍バブル 今後の政局を幻覚的に大胆予想

2013年04月14日 | 日記
政治主導vs.官僚支配 自民政権、民主政権、政官20年闘争の内幕 (朝日選書)
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●去年は橋下バブル、今年は安倍バブル 今後の政局を幻覚的に大胆予想

 「日本維新の会」の勢いが一気に下降線を描いているようだ。極めて素晴らしいことだが、不用意に喜んでもいられないだろう。彼らを支持した国民層の知的レベルを考えれば、トンデモナイ方向に向かいかねないわけだから、国家としては、さらに悪い方向に傾く心配さえ出てくる。時事通信によると、「日本維新の会」は今年1月に支持率のピーク4.6%を境に、順調に下げ続けているそうである。この調子だと、次回の調査では1.0%、参議院選の直前には0.5%の支持率になる可能性が高くなってきた。時事は以下のように報じている。

≪ 維新、支持率低迷続く=自民との差別化課題
 日本維新の会の支持率が上向かない。3月末に初の党大会を開き、夏の参院選に向けて気勢を上げたが、与党の過半数阻止を掲げる一方、自民党などとともに 「改憲勢力3分の2超」を目指す方針が有権者には分かりにくいと映っているようだ。時事通信の4月の世論調査で維新の支持率は前月より0.5ポイント下が り1.5%にまで落ち込んだ。
 昨年12月の衆院選で野党第2党に躍進した維新の支持率は、今年1月に4.6%を記録したが、その後は低落の一途をたどっている。
 維新は党大会で、石原慎太郎共同代表の意向を反映し て「(現行憲法は)日本を孤立と軽蔑の対象におとしめた」などとするタカ派色が強い綱領を採択。こうした点が「維新は自民党の補完勢力」(民主党幹部)との批判につながっており、党内からは「維新の支持層が自民党に流れている」(若手)との危機感が出ている。
 参院選を控え、自民党との差別化をどう図っていくかが課題で、橋下徹共同代表(大阪市長)は最近、「改革を進める安倍晋三首相には協力するが、自民党では既得権益に切り込めない」との論法を展開している。
 ただ、こうした理屈が奏功しているとは言い難い。ある幹部は、改憲手続きを定めた96条の改正で安倍政権に歩調を合わせる橋下氏に「すり寄りすぎだ」と苦言を呈する。橋下氏ら「大阪勢」と国会議員団の連携の悪さも維新の泣きどころで、党勢拡大への懸案は山積している。≫(時事通信)

 安倍自民のアベノミクス(円安・株高)効果が参議院選まで息切れせずに継続すれば、おそらく自民党の圧勝が予想出来る。この場合は、野党側がどんなに最善の手段で選挙に臨んでも、勝ち目も、今後に繋がる結果すら得られないだろう。しかし、円安にせよ、株高にせよ、海外ファンド系の仕手戦のような趣きで相場が形成されているのだから、ここから更に買い増しをする海外ファンド勢は少ないだろう。米国の株高にも資金を回しているので、金庫の手持ち資金はお寒い状態の筈である。

 海外ファンド勢は、一定の水準を超えた時点で、日本の機関投資家が動き出すに違いない、と云う思惑絡みだっただけに、参入してくるのが個人の提灯規模では、売り抜ける前に相場が崩れる問題があり、動きづらくなっている。6月のまとめようと考えているアベノミクスの「成長戦略」は、多くのサラリーマンが目を剥くような内容であり、安倍晋三が整合性のある考えを持たない政治家である事に、初めて気づくに違いない。彼が最初の首相としての反省を含めて考えを改めたのは、政治主導は極力控え、官僚依存、米国依存を忠実になぞることに気づいただけである。

 アベノミクスへの期待感は、偽ガン特効薬のキャッチコピーのようなもので、嘘と知りつつ、久々に空騒ぎしてみたかった大衆心理を煽るには充分な仕掛けを持っていた。しかし、空騒ぎの空気だけで、時間を延ばすことは困難なわけで、実体経済に効果が及ばない限り、賞味期限は来月には切れる羽目になる。国民が、自分の財布が重くなったと自覚しない限り、インフレが間近に迫っている、或いは消費税が10%になるからと云う動機付けで、チャラチャラ消費が拡大するなど妄想以外のなにものでもない。

 マスメディアは飯を食わされたからかどうかは別にして、アベノミクスだ、TPPだと、あきらかにプロパガンダ報道を続けている。株価が上がる事は悪い事でもないので、騙されたフリをしておこうと云うのが狡賢い国民なのかもしれない。つまり、インフレや消費増税の影響を考え、先行消費するとか、先行設備投資をする等と云う現象は一部でしか起きようがない。まして、企業の好決算やインフレに引き摺られて、賃金も上がり、消費が更に拡大するなど、誰も信じていないだろう。内閣支持率が7割と云う馬鹿げた数字も、特に悪いことも、未だしていないと云う消極的評価だろう。

 ところが此処に来てヤバイ金融情勢が現れている。債権市場が大きく混乱してきているのだ。なんと値幅制限を超える国債価格の乱高下が起きており、1週間に5回も買一時停止措置が実施された。日銀は、必死に証券会社の幹部達にレクチャーをし、日銀が最後は買い支えるから、安心して国債を保有、応札して欲しいと頼み込んでいる。現に、日銀は長期国債を何兆円も買っているのだが、その後すぐに国債は急落するのだ。つまり、民間金融機関はアベノミクスの金融緩和策に極めて懐疑的なスタンスで臨んでいる現実がある。

 0.2%だった日本国債10年物の金利は先週末0.6%(国債価格は下落)に跳ね上がった。黒田総裁の、金利を下げ、投資を促す前評判の看板が壊れかけている。米国財務省が、日銀の国債買い入れが財政ファイナンスである可能性もあるので、充分注意深くウォッチしている、と発言していたが、そのリスクが露呈した状況のようである。つまり、市場は愚民よりは利巧なので、財政ファイナンス的日銀のマネタリーベースの拡大、及び国債の無制限買い入れの罠に嵌る危険を回避しようとしている姿が現れている。

 今頃になって、黒田は泣きごとを言い出している。「政府の財政状況は持続できないだろうから、早期に財政支出の縮小が必要だ」、「現在の緩和策がいつまでも続くわけではない。物価目標が達成されれば出口ということになる」、「銀行券ルールはいずれ復活してくる」等と責任を政府に押しつけ出した。2%のインフレになるまで、やれることは何でもやる、と言った男とは思えない。財務省の財務官だった金融マフィアだが、実戦派ではなく理論派なだけに、自分の思考経路には過剰なくらいの自信があるのだが、市場の実戦を経験しているわけではないのだから、笛吹けど踊らない、白けた市場関係者に苛立っているようだ。これは実は相当にヤバイ現象で、安倍相場崩壊のシグナルになるかもしれない。

 斯く斯く然々の理由で、安倍自民の経済政策が馬脚を現し、ミニバブルの後から、株と国債の暴落と云う忌々しき経済現象を起こす可能性は参議院選前に大いにあるのが、最近の日本の経済情勢だ。つまり、アベノミクスの終焉が接近中と云う見方が出来る。上述のような安倍の経済政策の破綻が顕在化する時期がいつなのかで、参議院選の野党側の善戦度は決まるのだろう。また、調子に乗って、自民が憲法改正を参議院の争点の一つにしてしまおうと本気で思い出した場合、公明党との選挙協力態勢に歪みが出る可能性もあるだろう。

 夏の参議院選では、昨年末の総選挙の時のような“民主党政権NO選挙”の意味合いは薄れるので、投票率が戦後最低の59%ということはないだろう。4%程度投票率が上がるだけで、まず自民圧勝のシナリオは崩れる筈である。憲法改正、消費税の軽減税率適用も思うに任せない連立与党の公明党の士気は落ちている。維新の会と妾の座を争っているような趣きを見せているのだから、気分がよかろう筈もない。これに、維新の会の支持率急下降現象とみんなの党の内部分裂が参議院選前で引き摺るのか、その前に整理がつくのか、分裂するのか、それも選挙結果に大きく響くだろう。

 それでは、肝心の野党第一党の民主党はどうなるのだ。野田が民主党破壊の元凶、消費増税で自民党と手を組んだ事実が多くの支持者から総スカンを食ったわけだ。この事を踏まえて、今後の党の再生を目指すのであれば、消費増税では景気条項にスポットを当て、当面消費増税凍結宣言を出すとか、原発再稼働には、さらなる検証で、事実確認が出来ない限り稼働させず、脱原発な電力構想を打ち出し、自民との対決姿勢を鮮明にする必要がある。最期のトドメに、TPPへの参加は日本の国益に反しており、新たな貿易枠組みの構築に着手すると云う方針を出せば、反自民・維新の旗印は出来あがる。

 このままでは、民主党と云う政党が溶解するのは確実で、野党色を鮮明にすることでしか、生き残る方法論はない。当然、前原、野田などは不愉快の極みで、単なる離党ではなく、分党を要求するだろう。それなら、金をくれてでも、出ていって貰うくらいの腹積もりで、野党色を鮮明にさせる以外、生き残る術がないのは自明なのだから。現在の民主党に、それだけのエネルギーが残っているかどうか疑わしいが、それしか溶解を回避する選択はないのである。現執行部に、それを強行する力があるかどうかが問われている。

 一見、このような行為は、維新やみんなの党を利するように見えるが、維新やみんなの党が、実は隠れ自民党だと云う色分けが国民に判り易くなるので、選挙民の選択肢において、白か黒かの単純図式が出来上がり、投票率の向上に寄与する。このような流れが出来ずに、生活の党が民主党と連携することは、選択肢を複雑にするので、避けるべきである。市場原理主義に傾倒する連中を整理した後の民主党には最低限の力は残るし、安倍自民の自滅により、存在感のある野党になり得る。おそらく、憲法改正論議が日本中を駆け巡る時には、解散総選挙の選択は否応なくやってくるだろうから、その準備を兼ねた態勢づくりを考えるべきだ。

 さて肝心の生活の党はどうなるのかだが、当面は現在同様の自主路線を小沢一郎を先頭に立て、黙々と前進するのみである。現状の党勢材料から、戦略が生まれる筈もない。愚直に現在の政策を訴え続けることである。その考えがブレナイことが、自民党に対抗する野党の核となり得るわけなので、焦らない事である。前向きではないが、アベノミクスは必ず破綻する。破綻し、あまりにも前のめりだった経済政策と云うもの、修正は殆ど不可能なので、一定の野党勢力の結集時に、存在感のある政党として、生き残っていればいい。

 早晩(数年以内)には、自公維みんな的な政党の政策が、いかに国民生活をズタズタにしてしまったか明確な形で現れる。それまでは、臥薪嘗胆な政治運動になるだろうが、めげずに国民との会話を続けるべきである。そして、しつこいようだが、小沢一郎は「続・日本改造計画」を上梓して、グローバル経済の終焉に合わせた、日本の将来の具体像を、明確に国民に示すべきである。そのくらいのロングランで、事にあたらないと、またぞろ悪手に手を出す嵌めになる。本道をまっすぐに進むことである。結論ではないが、夏の参議院選の結果は、日本の政治の方向性をより不鮮明な混乱に拍車をかける結果にさせることが、日本の為である。まだ、カオスの世界が充分ではない。

現代日本の謀略事件 (別冊宝島 1981 ノンフィクション)
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敗戦国の屈辱感が劣等感になり弱虫になった国 そんな国がTPPを主導?馬鹿じゃないの

2013年04月13日 | 日記
テレビが政治をダメにした (双葉新書)
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●敗戦国の屈辱感が劣等感になり弱虫になった国 そんな国がTPPを主導?馬鹿じゃないの

 日本の独自文化を壊すTPPに反対と言っても、年次改革要望書がまとめて提示され、強制的に受け入れろと言われただけの話であり、大騒ぎしなくても良いと言えば、その通り。根本的に、日本人が真の独立など、そもそも望んでいない世間の風潮を考慮すれば、どっちでも糞喰らえってな事である。対米二国間協定から、多国間協定になった事で、アメリカの思うようにはなりにくい、とお馬鹿な解説をしているヤツがいたが、逆だよ。注文が多くなるだけで、日本が外交上押し切れる相手なんて、地球上にいやしない(笑)。

 TPPへの考察を通じて、筆者自身最も考え、躓いた点は、そもそも「日本の文化」と言っても“広うござんす”。どの時代の、どの辺を指して「日本の文化」と認定すべきか、と云う難題に出遭うのである。縄文弥生まで遡るべきかと問われると、即座にイエスとは言い難い(笑)。また、日本自体が弥生から鎌倉、戦国時代、否、その後の信長、秀吉、家康の時代にあっても、異文化を取り入れ吸収して作り上げた文化だけに、何処をどのように輪切りにして済む問題ではないのかもしれない。21世紀を生き抜く上で、その文化の取捨選択一つで、「日本文化」の意味するところは変わってくるので、一概に言えないのが難題だ。

 まぁ簡単に考えれば、昨今の「日本の社会の文化」を前提とすることになるのだろう。つまり、好むこと好まざるに関わらず、現状の「日本の文化」を守るか、壊される事を望むか、と云う問題になる。そう考えると、「日本の文化」という概念は、驚くほど掴みどころのないものになる事に気づく。日本社会に根づく“文化芸能祭りなどの伝統”も文化だし、生活慣習や食も文化に含まれる。日本語も当然重要な文化である。その文化を包み込んでいるのが、近代国家では広義の法(協定も含む)と云うものだろう。ただ、TPPが、これらの一括りの文化をまとめて壊すと云うものではないのは承知している。この文化を包み込んでいる広義の法(協定も含む)が歪むことが問題なのだ。

 「日本の文化」のすべてが「法や協定」に拘束を受けているわけではないが、「法や協定」が現在の日本と云う国の社会システムを構築する根拠となっている以上、その影響力は多大である。幕末以降取り入れられた、欧米国家と関わる「法や協定」が社会システムを形づくり、世界の激動の勢力変遷の荒波に揉まれ、現在の社会システムが出来あがっている。その間に、失われた「日本の文化」も数多くあったであろう。これは、時代と云うものが進む以上、一定の範囲で逃げられない問題なのだが、その選択を、誰がしたのかは、凄く問題だ。

 まして、貿易軍事同盟の類に、他国からの強制的関与を受け、「日本の文化」を捻じ曲げられる協定に唯々諾々と肯く政治は、正義から考えて間違いだろう。TPPそのものが、日本社会システムに浸透するまでには、多くの時間も掛かるだろうが、確実に米国型の市場原理的金融資本主義の行動原理の影響を受けた、社会システムの変質は、間違いなくやってくる。そのような協定を、国民の16%の支持しか得ていない政権が選択する権利に正当性があるとは思えない。世論調査で6割がTPP支持等と云う事実は、この場合なんの根拠にもならない。

 勿論、現在の日本の社会システムのすべてが、国民の為になっているかと言えば、改革すべきものは数多ある。しかし、それを直すのは、自国民であり、他国の干渉によるべきではない。北朝鮮のミサイル騒動と時を同じくして、TPPは貿易ばかりではなく、軍事同盟の意味合いも深いのだから、理解せよ、と安倍晋三は言っているが、だからこそ、安易に交渉に臨むべきではないと言っているのだ。今にも、北朝鮮が攻め込んでくるのを防ぐため風で、陳腐だ。今や、日本の統治権力側に立っている人々は、政界、財界、官界、言論界のすべてが、屁理屈は持って弥縫策に走り、確信を持って事にあたる姿勢を失っている。

 安倍晋三はTPP事前協議を終え、交渉参加に合意して「日米合意は国益を守るもので、国家百年の計だ。経済的メリットに加え、安全保障上の大きな意義がある」、「本番はこれからだ。早く正式に交渉参加し、日本主導でTPPのルール作りを進め、国益の増進を図りたい」などと、何やら交渉の余地が残されている発言をしていたが、日本主導もへったくれもないことは、お馬鹿な国民でさえ、肌で判っているだろう。出だしで、これだけ押されっぱなしの屈辱的妥協をしたと云うのに、どの面下げて、このような発言が可能なのだろうか。

 昨日、マハティールの話をしたが、今回のTPPの成り行きを観察していると、先の敗戦による国家の自信喪失は救い難い水準に達しているように思われる。終戦から遠のくほどに、その自信喪失は癒されるどころか、益々その症状を悪化させている。記憶を辿って行くと、筆者などはアジア・アフリカ会議(バンドン会議)と云う自尊に満ちた、アジア・アフリカの各国指導者の心意気に胸を打たれる。第二次大戦後に独立した、インド・ネール首相、インドネシア・スカルノ大統領、中国・周恩来首相、エジプト・ナセル大統領…。 *彼らは、大戦前まで英仏米蘭など帝国主義国家の植民地支配から独立した国々である。詳細は省くが、戦後の世界が米国中心の西側諸国とソ連中心の東側諸国のいずれのグループにも属さない、第三世界の樹立を夢見た。バンドン十原則は以下の通り。彼らの心意気が判ると云うものだった。

≪平和十原則 正式名称は世界平和と協力の推進に関する宣言。バンドン十原則(ダサ・シラ・バントン)とも呼ばれる。
1. 基本的人権と国連憲章の趣旨と原則を尊重
2. 全ての国の主権と領土保全を尊重
3. 全ての人類の平等と大小全ての国の平等を承認する
4. 他国の内政に干渉しない
5. 国連憲章による単独または集団的な自国防衛権を尊重
6. 集団的防衛を大国の特定の利益のために利用しない。また他国に圧力を加えない。
7. 侵略または侵略の脅威・武力行使によって、他国の領土保全や政治的独立をおかさない。
8. 国際紛争は平和的手段によって解決
9. 相互の利益と協力を促進する
10. 正義と国際義務を尊重≫(ウィキペディア参照)

 このアジア・アフリカ会議(バンドン会議)は先の大戦の犯罪国家(西側諸国にとって)・日本に対して温かかった。仮の話になるが、この会議に、日本が強く関わる意志力があれば、世界の流れはもっと早く動いたとも言える。ウィキペディアによると、この会議に呼ばれた日本は、米国の顔色を見ながら、恐る恐る出席、政府レベルの姿勢を見せられなかった。

≪ 日本は高崎達之助経済審議庁長官を代表として十数名が参加したが、他国はいずれも元首、首相級が出席し、政府レベルの国際会議となった。出席者のなかには周恩来、インドのネール、エジプトのナセル等の顔もあった。加瀬俊一外務相参与(後に国連大使となる)は、外務大臣代理で出席したのだが、その時の模様を次のように語っている。 “この会議の主催者から、出席の案内が来た。日本政府は参加を躊躇していた。アメリカへの気兼ねもあったが、何分現地には反日感情が強いに違いない、と覆っていた。私は強く出席を勧めて遂に参加が実現した。出てみるとアフリカからもアジアの各国も『よく来てくれた』『日本のおかげだ』と大歓迎を受けた。 日本があれだけの犠牲を払って戦わなかったら、我々はいまもイギリスやフランス、オランダの植民地のままだった。それにあの時出した『大東亜共同宣言』が よかった。大東亜戦争の目的を鮮明に打ち出してくれた。『アジア民族のための日本の勇戦とその意義を打ち出した大東亜共同宣言は歴史に輝く』と大変なもて方であった。やっぱり出席してよかった。日本が国連に加盟できたのもアジア、アフリカ諸国の熱烈な応援があったからだ。”と語っている。≫(ウィキペディア)

 日本が敗戦コンプレックスを撥ね退け、真の独立国を目指せる気運は戦後何度かあったのだが、時の政府は肝試しする気力がなかった。その弱虫の心根は営々と今に繋がるのである。鳩山由紀夫の「東アジア共同体構想」も、このバンドン会議の精神は受け継がれているし、ASEAN+3などの構想にも受け継がれている。アジアはアジアでと云う、精神は結構根強いもので、ゆえにアメリカは横車を押さざるを得ないわけである。アメリカ一国で、世界金融マフィアの食欲を満たされては堪らない。故に、アジアにも悪魔の餌食になれ、と恫喝している様は、到底覇権国家の矜持とは言い難い。

現代日本の謀略事件 (別冊宝島 1981 ノンフィクション)
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TPP交渉参加決定! あまりの嘘つき政権に、誹謗中傷する言葉すら浮かんでこない

2013年04月12日 | 日記
経済学者の栄光と敗北 ケインズからクルーグマンまで14人の物語 (朝日新書)
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●TPP交渉参加決定! あまりの嘘つき政権に、誹謗中傷する言葉すら浮かんでこない

 随分あっさりTPP交渉参加の日米合意が出来たものだ。今日にも、閣議で合意文書を決定、安倍が発表すると云う。民主党時代から、霞が関が着々アメリカと交渉していたのだな、でなければ、2,3ヶ月で合意などする筈もない。朝日新聞によると、早速日本郵政傘下のかんぽ生命のガン保険など、外資のガン保険と競争する新商品を出す予定だったのに、潰されたようだ。安倍晋三は日本の生命保険会社を守らず、アフラックスを守ると云うことだ。最近の右翼ってのは、米国を守るイデオロギーなンだね。マハティールがルックイーストで日本に学べ、日本よ、アジアを纏めろ!と発言した時代があった事さえ幻のように思える。

 マレーシアの政治家、医師であり、マレーシア第4代首相のマハティールは、22年間を首相を務め上げた。開業医から政治家に転じ、欧米諸国ではなく、日本の経済成長を見習おうという「ルックイースト政策」をはじめ、長期に及ぶ強力なリーダーシップにより、華人からマレー人によるマレーシアをつくりあげ、マレーシアの国力を飛躍的に増大させた。同氏がルックした当時の日本には見るべきものが数限りなく存在した。時代は異なるが、ポルトガルの宣教師たちも、日本社会の安定度に度肝を抜かれ、苦しく悲惨な民があっての宣教だけに、何処から布教の足がかりを見出すか苦労したようである。話は逸れてしまったが、月刊日本に面白い記事の一部があったので、以下に掲載しておく。

 マハティールに見捨てられる日本   稲村公望
(前略)

欧米流の発展とは別の道がある

ーーーところが日本は、マハティール氏が手本とした日本独自の手法を自ら捨て去っていった。

稲村 一九八〇年代にも日米の通商摩擦はあったが、それでも日本は独自の経済運営を維持していた。ところが、東西冷戦 が終結する一九八九年頃から、日本の規制や制度に対する批判が強まっていった。例えば、ジェームス・ファローズ氏は一九八九年五月に「日本封じ込め」と題 した論文において、「自己中心的な日本人には、かつては封建領主への、そして現在は会社にたいする忠誠心や家族の名誉心はあるが、欧米の価値観である慈善 心、民主主義、世界規模の兄弟愛はもち合わせていない。これが日本と欧米の決定的な道徳上の行動形態の違いである」と述べ、日本の文化、道徳的価値観、習慣のすべてを日本は変えるべきだと要求した。
 まさにこの時期に、日本の制度をアメリカ流に変えようとする試みとして日米構造協議が開始され、やがてそれは日米経済包括協議、年次改革要望書として受 け継がれていく。構造改革の名のもとに、日本の制度を破壊しようという目論見は、小泉政権時代に一気に加速した。そして今、TPPによって再び大掛かりな 日本の制度破壊の謀略が進められている。

── 日本に対するマハティール氏の失望感は、察して余りある。

稲村 日本はアメリカへの従属を深め、自らの国の運営を放棄して欧米流を礼賛してきたが、マハティール氏は欧米流の発 展とは異なる独自の発展の道を高らかに掲げた。彼は一九九一年に、二〇二〇年までの国家ビジョンを示し、「強い宗教的・精神的価値意識を持ち、最高水準の 倫理を持つ」ことを目標として掲げたのだ。
 これは、新自由主義者たちが期待する国家の対極にあるものだった。だからこそ、マハティール氏は孤高の戦いを続けなければならなかった。
 一九九〇年に彼は東アジア経済グループ(EAEG)構想を提唱した。先進国との通商交渉を東アジアが団結して乗り切ることがその第一義的な目的ではあっ たが、そこには価値観を共有する東アジア諸国間の交流を深め、欧米主導の経済秩序を転換させようという狙いがあったのではないか。自由競争を徹底させ、強 者が一方的に勝つような秩序ではなく、平等、相互尊重、相互利益の原則が貫かれる経済統合のモデルを作ろうという考え方だ。
 いまTPPによって、国家主権より大企業の特権が保護される時代が訪れる危険性が指摘されているが、マハティール氏はまさに欧米大企業による世界支配の 危険性をいち早く察知していた。彼は、一九九八年六月、東京で開かれたセミナーで「明らかに、わずかな巨大企業だけで世界を支配することは可能だ。それに 備えるかのように、大企業や大銀行は吸収・合併でより巨大化しつつある」と語っていた。

── マハティール氏は、再三にわたって日本がEAEGを主導することを要望したが、日本はアメリカの顔色を窺うばかりで、マハティール氏を失望させた。

稲村 その後、EAEGの枠組みの会議は、ASEANプラス日中韓として実現したが、日本はリーダーシップをとらな かった。その結果、マレーシアのみならずASEAN各国は中国への傾斜という道を選ぶ羽目になった。 以下全文は本誌4月号をご覧ください。≫(月刊日本HPより)

 これ以上望月氏の話を読みたいときは月刊日本を購読してください。マハティールや「ルックイースト」に興味がある時は、検索すると色々と考えさせられる情報に出遭うので、是非キーを叩いてみてください。もう今日の出来事で、日本はズブズブの泥沼に嵌ったようだ。自民党は、先の選挙公約を守るささやかな抵抗一つ見せず、勝ち誇ったような態度を取るのだろう。どういうことなのだ?舌の根も乾かぬうちに、息するように嘘を吐く安倍自民。それに歓喜で応える愚民の群れ、あぁ疲れて文章が浮かばない。今日は筆を折ることに……


色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
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北朝鮮ミサイル騒動 怪しいのは最も利益を得るヤツってのがセオリーなのだが…

2013年04月11日 | 日記
金融緩和の罠 (集英社新書)
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●北朝鮮ミサイル騒動 怪しいのは最も利益を得るヤツってのがセオリーなのだが…

 10日に打ち上げと言われていた北朝鮮の中距離弾道ミサイル・ムスダンは10日現在打ち上げられることはなかった。今度は15日前後が一番危ないだろうと云う観測である。今日になった、格納し始めた、などと云う報道まである。時事通信によると、ムスダンの同時発射から、スカット、ノドンも加わる“三色最中”風味になってきたようだ。それにしても、北朝鮮のミサイル発射技術を評価する場合、絶対に他国の領土に命中しない(被害を出さない)事実は、注目に値する。つまり、標的に間違っても当てない技術が裏付けられているとも言える。盗塁を助ける空振りのようなものだが、結構難しいのだそうだ(笑)。

≪ 北朝鮮、日米韓に同時圧力=各種ミサイル発射の構え
 【ソウル時事】北朝鮮が中距離弾道ミサイル「ムスダン」に加え、短距離の「スカッド」や中距離の「ノドン」も発射する可能性が浮上、日米韓は10日午後、厳重な監視を続けた。北朝鮮は、日米韓それぞれの脅威となるミサイルを同時発射する構えを見せ、圧力を高めようとしているもようだ。
 韓国国 防省当局者は、日本海側に移動されたムスダンは燃料注入が終わり、いつでも発射できる状況とみている。また、10日付の韓国紙・東亜日報によると、米国の衛星が、日本海側でノドン、スカッドと推定される物体が搭載された発射車両3、4台をとらえた。
 推定射程3000~4000キロのムスダンは米領グアムに届く。同約500キロのスカッドは韓国、同約1300キロのノドンは日本が主なターゲットといわれる。  北朝鮮の労働党機関紙・労働新 聞は10日の論説で、「わが軍は、日本やアジア太平洋の米軍基地も撃破する報復能力を十分に保有している」と強調した。各種ミサイルの同時発射により、ムスダンでグアム、ノドンで日本の米軍基地を封じた上で、スカッドで韓国を攻撃する能力を誇示する可能性がある。≫(時事通信)

 報道機関はネタとして美味しいと云う意識があるだろうが、隣接する韓国の国民も、理屈上一番打ち込みやすい日本の国民も馬耳東風と云う感じだ。一つには北朝鮮の度重なる瀬戸際外交や恫喝発言が、“オオカミ少年”と受けとめられている証左だろうが、このような行為で、彼らが確信的利益を得た事実はない。国内の国威高揚だけの為に、ここまで大掛かりな事をする必要もなさそうだ。つまり、北朝鮮は、親子二代に亘って骨折り損なことをしているとも言える。支援が欲しいのであれば、ニコニコ外交している方が余程実入りは良い筈なのだ。このように考えれば、少し妙である。

 一般的論調は、世界のあらゆる勢力が、北朝鮮の“金王朝”の消滅を狙っている。それを阻止する為に、国内の不満の矛先を変える為とか、攻撃的武力を保持することによって、自立外交を組み立てようとしている等があるが、その目的への手段が、必ずしも合理的に説明出来ない部分がある。最近では、核も開発保有しているだろうと言われるわけだから、米国本土まで到達するミサイル開発まで手を伸ばさなくても、十二分に威嚇的武力を保持している。韓国であろうが、日本であろうが、ミサイルを撃ち込む態勢さえ出来れば、米国に対しても充分な外交カードになり得る。米国に届かない核爆弾なら、気にしないと同盟基軸国としては言えない。

 北朝鮮の外交姿勢は、兎に角、米国と二国間協議に持ち込むことだと言われるが、6カ国協議で特に拙い事もないだろう。米国と二国間協議して結ばれた協定より、中国、ロシアが加わっている6カ国協議の方が、絶対に都合は良い筈だ。北朝鮮が、専らアメリカとだけ話がしたいと云う言説にも、疑念が持たれる。如何にも、米国が偉大な世界の王のような存在に印象づけられている。つまり、そのように傍から見えるように、誰かが小細工していると云う考えも捨てきれない。北朝鮮も馬鹿ではないのだから、米国の覇権国としての威勢のよさが、相当程度剥げている事は知らないわけがない。

 北朝鮮は国連にも加盟している独立国である。通説のように、“米国に対し、北朝鮮の体制を認めよ。また、北朝鮮を特段の理由もなく攻撃しない約束を取り付けようとしている”なのだが、幾ら暴力大好き国家アメリカでも、気に入らん政治体制であろうと、意味もなく(実際はコジツケの理屈はつけるが)、国連加盟の独立国を奇襲で攻撃するわけもない。そこまで偉そうな態度は、イラク戦争の失敗で、当分使えそうもないのである。確たる国家主権は牛耳られるとしても、日本や韓国程度には自由裁量権はあるのだから、特にそれ以上を望む理由もない。独裁国家であっても、世界の主たる勢力と穏便につき合えば、積極的に、その体制崩壊に舵を切る理由もない。

 何か、北朝鮮の領土に、ほっても掘っても尽きることがない金鉱でもあるならいざ知らず、わざわざ北朝鮮の領土や主権を思い通りにしたとして、米国にだって、これだ!と云うほどの理由は見つからない。また、金王朝を崩壊させる為に、隣接する中国、ロシアへの影響や、まして同盟国である日本、韓国を戦火に巻き込むことを、好んで行う理由も曖昧だ。以上のように、北朝鮮にも、米国政府にも、特段のメリットがない行為を、前向きに行う理論づけは、どうも説得力に欠ける。しかし、地球上が安定的であることを好まない勢力は存在するだろう。

 欧米中露やイスラエル、中東の政府と、そこに存在する勢力が一致している事は稀で、多くの場合Wスタンダードな状況で存在する。彼らの多くは、公の行動を取る必要がないので、隠密裏に多くのことを行える。平たく言えば、地球上に、常に不穏な空気を醸成し、その威嚇に対し、万全の防衛体制を構築する必要性を、それぞれの国家や国民にアカウンタビリティ用の危機を用意する必要がある、と考えてみる必要もあるのだろうと思う。この論を進めていくと、所謂“陰謀論”になるのだが、最近の日本で起きている多くの事実を、色々と吟味してみると、陰謀論が荒唐無稽なものだと一笑にふす程、いい加減なものではない印象も持つ。

  国家や政府の陰謀と云う見地から、その陰謀画策の正体を突き止めるよりは、ある事象により、不承不承利益をうるような立場にいる勢力に目を向けてみる必要があるのだろう。勿論、その勢力は一つではないので、その全体像を把握することは困難だ。国際金融勢力かもしれないし、あらゆる国にある産軍複合体であるかもしれないが、これらの抽象的集合体は、その構成員を明確に指摘出来ない難しさがある。いずれにせよ、筆者は、度重なる北朝鮮の核開発やミサイル発射問題で、一番利益を得るのが、当事者である北朝鮮でも金正恩でもないような気がする。

農は輝ける
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憲法改正 「ごちゃごちゃ言っているが、9条を変えたいだけだろう」 by小沢一郎

2013年04月10日 | 日記
本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」 (「戦後再発見」双書2)
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●憲法改正 「ごちゃごちゃ言っているが、9条を変えたいだけだろう」 by小沢一郎

 言い回しは違うが、自民党の憲法改正草案を眺めた結果、「自民党の改正草案を見たところ、9条以外について見るところはない」、「96条の手続き部分だけを先行するのは非常に邪道」と批判した。そう、それだけなンだよね。だいたい本格的に憲法改正の手続きを踏む事は、数年に及ぶ国民投票が必要になるので、投票貧乏に陥る笑い話のような猿芝居になる。まぁ、安倍と橋下が96条改正談義をしたようだが、「自民維新の会」がハッキリして良いことだろう。先の大戦の戦勝国(米国中心)が押しつけた日本国憲法のすべてを覆すとなれば、それこそ米国が北朝鮮以上の暴挙に出ても不思議ではない。筆者の、そのような論理的思考の腰を折るような発言がカーター米国防副長官から発せられた。

≪ 集団的自衛権容認に期待=安倍政権を評価-米国防副長官
 【ワシントン時事】カーター米国防副長官は8日、ワシントン市内で講演し、安倍政権が検討を進めている集団的自衛権の行使容認について、「自身が持つ力量を認識し、何十年も前に自ら課した制限を緩和することは非常に前向きな姿勢だ」と期待感を表明した。
 副長官は、紛争当事国やその恐れのある国への兵器売却を禁じた武器輸出三原則の見直しを含め、「好ましいことだ」と評価。安全保障面で日本が国際社会で必要とされる役割を果たすことにつながるとの認識を示し、こうした動きは「歴史を乗り越えようという、米国も後押ししてきたプロセスの一環だ」と指摘した。 
 副長官はまた、アジア太平洋地域に戦略の重心を移す「リバランス」(再均衡)について、今後10年にわたり国防費の削減を見込む中でも「脅かされることはない」と語り、優先的に予算を配分していく方針を示した。
 具体的には、2015会計年度(14年10月~15年9月)中に、グアムに攻撃型原子力潜水艦1隻を追加配備すると表明。アフガニスタンでの戦争終結に伴い、6万人規模の兵力や同地で活動していた戦略爆撃機B1が太平洋軍の指揮下に入るなどと語った。≫(時事通信)

 これで、米国が国防費削減のツケを、日本や韓・豪・フィリピンに負わせようとする意図がハッキリした。つまり、アメリカは、自国と共に軍事活動をする日本を望む以上、「不都合になった日本国憲法」を自国の都合で、一部訂正せよ、と命じていることになる。小沢が望む「普通の国」は、米国一辺倒の独立国ではないが、自民や維新が望む独立国(普通の国)は、老いた大国アメリカ軍の一個大隊となれと云うことだったのだ。なんともはや、人の国をなんだと思っているのだろう。まさに鬼畜米英(最近は英国抜きの鬼畜だが)という名にふさわしいことだろう。

 まぁ、長谷川幸洋によるとTPPの本質は軍事同盟だと云う説の通りである。だから、長谷川はTPPに参加するのは当然だと思い、筆者は、だから絶対に参加すべきではない、と言っている。論理的思考の経路は同じでも、最終結論は、猛烈な意見の相違なのだ。最近の長谷川は、東京新聞内で浮き上がっている。コラムに切れがなくなった。なぜか?そう、権力に魂を売った瞬間にジャーナリストは腐って行く。昔と違い、アンチ権力な言説に一定の市民権が生まれてきた状況では、昔のように「脱官僚」のキーワードだけで、市民を騙しきれない世界が到来している点は、悪い方向ではない。筆者の勘だが、長谷川が新聞社を辞するのは、時間の問題になってきたようだ。長谷川をウォッチしていれば、“維新”の眺望(正体)も見えてくる。

 また、日本のバブル景気による、世界景気の牽引を望んでいるIMFは、そろそろ踊り場を迎える株価の息が切れないように、“世界の中央銀行は、将来物価が急上昇する懸念を理由に金融緩和をためらうべきではない”というリポートを発表している。あきらかに、日銀サイドの応援リポートなのだが、過度の金融緩和で、過度のインフレは起きないから、安心してドンドン金融緩和すべし、と“IMF日本フロアー”作成のリポートを公表した。ジャパンマネーが青息吐息の先進各国市場に流れ込み、バブル経済の恩恵でひと休みしたいと言っている(笑)。

 ここに来て、砂川事件における、東京地裁での伊達裁判長による「米軍駐留は憲法違反」という砂川事件判決の“跳躍上告”を受けた最高裁が早期の結審にたどり着けなかった事情が判明した。米国立公文書館で閲覧禁止とされていたが、布川玲子元山梨学院大教授が請求し開示された。なにせ、米軍の駐留が憲法違反だというのだから、岸信介も驚いた。安保改定を目の前にして起きた法治国の司法の正義の鉄槌は、時の自民党政権を揺るがした。

【跳躍上告】
刑事訴訟法上、第一審判決に対し、その判決において法律・命令・規則・処分が憲法に違反するとした判断、または地方公共団体の条例・規則 が法律に違反するとした判断を不当として、直接最高裁判所に申し立てられる上告。飛越上告。(デジタル大辞泉より)

 最近の高裁による一票の格差判決で“違憲、選挙無効”と云う鉄槌以上の衝撃が、当時の政権与党と米国に走った。その結末が、当時最高裁長官だった田中耕太郎とマッカーサー駐日大使と数回にわたり密談の事実を指摘、開示文書は59年8月3日付で駐日米大使館から国務長官宛てに送られた公電なのだが、この調査が炙り出した裁判の事実も大きいが、それ以上に米国が独立国の司法にまで、完璧に関与していた事実が如実に現れた。今さら、驚くに値しないと言えばそれまでなのだが、このような不都合な事実は、まさに現在も行われている事を彷彿とさせる。

 田中耕太郎といえば、最も長きに亘り最高裁長官の頂点にいた人物で、閣僚経験者の経歴を持つ、唯一の最高裁の裁判官だった。名裁長官の名を欲しいままにした男で、東京帝国大学大学法学部長、第1次吉田内閣文部大臣、文化勲章と勲一等旭日桐花大綬章、大勲位菊花大綬章、挙句に正二位の追贈を受けたトンデモナイ人物である。違憲判決には“事情判決”と云う、判決によって既成の事実を覆すことが公益上好ましくない判断があるが、田中耕太郎のとった態度は、あきらかに政治家、乃至はクリスチャンと云う信仰と信条においてなされた“忖度裁量裁判”を日本の司法に根づかせた人物と評しても良いのだろう。

 陸山会事件における、小沢一郎への高裁“無罪判決”の直前に、竹崎博充最高裁長官が訪米した事実があった事を思い出す。表向きの目的は、ワシントンで連邦最高裁のロバーツ長官らと意見交換すると云うことだったが、最高裁長官の公式訪米は矢口洪一長官以来、23年ぶりの出来事なのだから、今回の件同様の意志確認があったと考えても不思議ではない。逆に、矢口洪一長官の時も、何か日米関係にまつわる裁判があったのかもしれない。米国の意志が小沢一郎の政治生命の根絶であったため、無罪放免とする日本司法の限界を説明に行った可能性もある。

 まぁこんな風に、米国の表裏に亘る日本への口出しを眺めていると、北朝鮮のミサイル騒動までが、ヤラセではないかと云う気分にさせられる。現に陰謀説には、そう云う言説も出ている。どうせなら、ご主人様なら暴君らしく、欺瞞な手法を取らずに日本国民を屈服させたら如何なものだろう?筆者などは、そう思う。酷いことを想像すれば、裏で米国が技術指導しているので、北朝鮮のミサイルは、思った処に着弾させられるのかもしれない。隷米右翼などと云う、“トンデモ右翼”などに資金援助などせずに、悪魔の牙をむき剥きしたら如何なものか。さぁ今日は10日です。ミサイルは何処に飛んで、どこに着弾するのでしょう?落ち所が悪いと、株高景気も目茶苦茶になるのだろう。南無阿弥陀仏、俺の近くにだけは落ちるなよ!(笑)。

最高裁の罠
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限りなく下がる“円”日本が悲鳴をあげる日 最初に叫ぶのは9割の庶民なのに…

2013年04月09日 | 日記
円安恐慌 (日経プレミアシリーズ)
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日本経済新聞出版社


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●限りなく下がる“円”日本が悲鳴をあげる日 最初に叫ぶのは9割の庶民なのに…

 案に相違して、週明けの8日の東京株式市場では、為替相場の大幅円安を好感して全面高となり、終値は前週末比358円95銭高の1万3192円59銭と、08年8月以来4年8カ月ぶりの高値水準となった。5%ほど手取りを損したようだ(笑)。まぁ手仕舞いした銘柄を覚えておくほど素人でもないので、次の展開を待つことにしよう。過度の円安による生活実感の悲鳴と資産インフレ効果の鬩ぎ合い、どちらが勝つかと云う勝負になってきた。経団連のモンサント米倉は以下のように、自己チュウで身勝手な願望に溢れたコメントを残している。こいつは本当の馬鹿だよ!

≪ 経団連会長、円安・ドル高進行「このくらいであればいい」
 経団連の米倉弘昌会長は8日午後に記者会見し、外国為替市場で円相場が1ドル=98円台まで下落していることについて「あまりにも急激だけれども、(製造業として)このくらいであればいい」と話した。ただ、一段の円安は電力など一部の業種にとり輸入コストなどの負担増になる可能性があるとして、今後の為替動向を見守る姿勢も示した。株高が加速していることについては「素晴らしいことで、資産効果で消費が上向いてくる」と話した。
 発足か100日が過ぎた安倍晋三政権については「非常にいい仕事をしている」と評価。12年冬の衆院選挙中には、大胆な金融緩和方針が財政規律に及ぼす悪影響を懸念していたが「(日銀による国債の直接引き受けなどの)財政ファイナンスについては黒田総裁も安倍首相も完全に否定している。心配はいっさいなくなった」として、政府・日銀による財政健全化努力に期待を示した。≫(日経QUICKニュース)

 資産インフレを起こそう、と日本経済の舵取りをする日銀と政府がマネタリーベースを倍にする、と世界に宣言したのだから、円安に振れるのは当たり前のことである。米倉が「このくらいが丁度いい」等と言っても相場が聞いてくれる筈もない。「今後の為替動向を見守る」など、偉そうに口走っているが、オマエが見守って投機市場が動くなら、神も仏もいらない浄土が誕生するようなものだ、たわけ者!

 為替相場は、日銀の量的質的緩和姿勢が明確過ぎるわけで、海外資金の多くが基本的に「ソロス・チャート」の信奉者であり、現在の円安の流れに逆張りする勇気を持つファンドは滅多にいない。つまり、政府や日銀の思惑通りの“円”のポジションをキープすることは不可能なのである。まして、経団連が望むような円レートで、相場が落ち着くことなどはありえない。また、国内資金は現在模様眺めだが、国債金利が限りなくゼロに近づくにつれ、海外への流出の誘いに抗い切れないであろう。

 国内株式市場は、株価のROEはPERやPBR等の縛りを無視して買い上がれるものではない。つまり、株式や土地の値上がり分だけ収益が上方修正出来たとしても、本業における損益が伸びない限り、株バブルの喪失イコール評価損が現れるわけだから、ジャブジャブにだぶついた国内資金の海外流出を止めることは容易ではないだろう。おそらく、対ドルは110円レベルを間違いなく目指す流れだ。

 既に、日本の超金融緩和政策で、円キャリートレードによる、米国株や商品取引市場を荒らしているわけだが、スーパー超金融緩和になった現在、円キャリートレードによる、謂わば裏技が跋扈すれば、為替の理論値以上の円安相場もあり得る状況なので、上述の110円を抜けると、想像を絶する未体験ゾーンに入らないとも限らない。貿易収支のファンダメンタルが、完全に入超になった日本経済の構造不況は、危機を深めるかもしれない。無駄な外貨準備金だと言われ続けた貯め込んだ決済基軸ドルが底をつく心配までしてしまう。

【円キャリートレード】
≪円の金利は現在、海外の通貨と比べて格段に低い。日本銀行が景気の下支えのために超金融緩和策を続けているためだ。 こうした、低金利の円を調達(円借り)して、外国為替市場で米ドルや豪ドルといった金利の高い通貨に替え、その国の株式や債券などに投資、運用する取引を円キャリートレードという。金利差益や投資運用益が見込める。円借り取引とも呼ばれる。 円を売って、高金利の外貨を買うため円安要因になる。投資家は最終的には調達した円を返済しなければならない。円を調達して米ドルで運用していて再び円資金に転換する場合、円安ドル高になっていたら、為替差益も入る。 企業や個人が既に保有している円資産を外貨に交換して運用するのも「広義」の円キャリートレードとされている。なかでも存在感を増しているのが、個人が少ない元手で多額の外貨を売買し、金利差に応じた差益を稼ぐ外国為替証拠金取引(FX)で、大きな円安圧力となっている。 担保として預ける証拠金の数百倍もの金額を取引できるが、為替が大きく変動した場合のリスクが大きい。円キャリートレードの定義はあいまいなうえ、調達した円資金にどの程度のレバレッジがかかっているかが不明であるため、実態をつかむのは難しい。 日本の投資家による対外債券投資なども加えて、その規模は40兆円程度との推計もある。政府・日銀による円売り・ドル買い介入も広い意味で円キャリートレードの一種といえる。介入して得たドルを主に米財務証券で保有。結果的に低利の円を調達してドルに替え、相対的に高金利のドルで運用しているからだ。≫(知恵蔵より)

 こうなると、日本の国際収支が俄然問題になる。財務省が2月の国際収支状況速報によると、経常収支が4カ月ぶりに6千億円の黒字となった。これは円安により、海外からの利子や配当が円換算で膨らんだだけであり、基本である貿易収支は、当然のように赤字だった。前年比で、5割程度の経常収支の黒字では、経常収支が改善したとは到底言えない。問題は、これから益々、貿易収支の赤字が膨らむであろうから、我が国は、完璧に輸入国になるのである。貿易立国も輸出立国も過去の話なのだが、どうも未だに理解出来ない人が多いようだ。

 貿易収支が基本的に赤字だと云うことは、海外からの輸入で日本人の生活が成り立っているわけだから、当然、モノの値段は徐々に、しかし確実に上がって行く。必然的経済成長がなく、資産バブルによる成長などはマヤカシなのだが、マヤカシが原因でも、生活費は増加する。本来の経済成長があれば、賃金もそれ相応に上がるから問題はないのだが、肝心の賃金が上がるのは僅かな企業であり、それも一過性の政治的配慮のボーナスに反映されるだけだろう。 それも大企業の一部であり、7割の中小企業の賃金に反映することは殆どない。つまりは、国民のサラリーマン以外の家庭も換算すると、9割の人々の懐は増えずに、出費がかさむと云う現象が生まれる。しかし、その政策を実行する自民党を支持する人が7割を占めると云うのだから、自ら首を絞め、随喜の涙にくれるのだから、“なんともはや”である。ご愁傷さま~(笑)。

2013年世界経済総崩れの年になる!
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なぜ、悲劇のロイヤルファミリーのキャロライン・ケネディが駐日大使に浮上したのか

2013年04月08日 | 日記
親米と反米―戦後日本の政治的無意識 (岩波新書)
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岩波書店


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●なぜ、悲劇のロイヤルファミリーのキャロライン・ケネディが駐日大使に浮上したのか

 故ケネディ元大統領の長女、キャロライン・ケネディが米国の駐日大使に就任するのではないか、と云う確度の高い情報が米国メディアから発信されている。ジョン・ルース駐日大使の後任に起用する見通しだと云うもので、米民主党の関係者は1日、ケネディ氏が大使就任を打診され、身辺調査などが進んでいることを明らかにした。単純な感想としては、ケネディ神話に心酔している多くの日本人にとっては朗報である。

 特に日本の地位を表層的に見たがる無教養な保守層やネット右翼な人々にとっては有頂天な出来事だ。アメリカの外交の切り札とも言える、一番有名なケネディ家のキャロラインが駐日大使になるのだから、有頂天になる気持も判らんではない。おそらく、彼らは、いかに米国が、オバマが日本を重視しているかの証左に他ならないと自慢したくなるだろう(笑)。

 しかし、具体的政治経験が殆どなく、ハーバード大とコロンビア大を卒業後、ジョン・F・ケネディ図書館やアメリカン・バレエ・シアターなど、ニューヨークを拠点とする各種の非営利組織の弁護士として関わり、プライバシー保護に関しての厳しい考えやリベラル度はかなりのもので、日本の無教養保守層やネット右翼や安倍自民が手放しで歓ぶのは、勘違いになる可能性も相当ある。 春名幹男氏は日刊ゲンダイで以下のように評している。

≪ 「ケネディ大使」で赤坂にパパラッチ集結か [春名幹男「国際情報を読む」]
 次の駐日米大使への指名がほぼ確実な故ケネディ大統領の長女キャロライン・ケネディ氏(55)。 父が暗殺された悲劇は5歳の時。そして1969年、11歳の時に彼女をモデルにしたニール・ダイアモンド作の「スイート・キャロライン」がヒットした。
 弁護士にして作家、そして与党民主党の有力者。まさにアメリカを代表する超セレブだ。 菅義偉官房長官は「日本でケネディ大統領は非常になじみがあり、あこがれを持っている」と歓迎を表明した。日本側の受け止め方はいつも、そんなふうに情緒的だ。
 だが、彼女は単なる名家出身のエリート女性ではない。自立心が強く、政治的には非常にリベラル。歯に衣着せぬ発言が時に物議をかもす。
 2008年米大統領選予備選ではクリントン氏を支持せず「人々をこれほど鼓舞したのは父親以来」とオバマ氏を支援した。 しかし就任後のオバマ大統領は、期待したほどリベラルではなかった。彼女は失望し「彼の声に我慢できない。彼は嘘つきより悪い」と語った、とホワイトハウ スの内幕を描いた本「アマチュア」(2011年)で紹介された。
 09年クリントン上院議員が国務長官に転出後、空いた議席を狙ったが、選挙区のニューヨーク州内で反対も出て、断念。オバマ大統領に教育に関する提言を出 したが、無視されて不満を募らせたとも伝えられていた。 そんな中での大使起用。大使人事は通常、論功行賞か邪魔な大物を海外に放り出すかのいずれか。彼女はその両方、と言えるかもしれない。
 クリントン国務長官 だと実現不可能だが、ケネディ家に近いケリー国務長官の就任で本人の希望と大統領の意向がうまくマッチさせられたようだ。 だが、彼女が日本で自民党政権とうまくやれるかどうかは別問題。 何せ彼女のリベラル姿勢は半端ではない。同性婚にも自動車産業支援にも全面賛成だが、自由貿易には条件を付ける。環太平洋経済連携協定(TPP)に対する姿勢は未知数だ。保守の自民党にどう対応するか、注目だ。
 もうひとつの難問は、パパラッチ対策。3月中旬、デザイナーの夫(67)と2人の娘と過ごしたカリブ海の仏領の小島で水着姿を撮られ、英紙に掲載された。 大使公邸は東京・赤坂の大使館裏。警察の警備はさらに大変になる。≫(日刊ゲンダイ)

 キャロラインは、2009年にオバマ米大統領が、バチカン(ローマ法王庁)の大使にケネディ元大統領の長女キャロライン・ケネディ氏を任命しようとしたところ、同氏がカトリックの反対する人工妊娠中絶を容認してきたことを理由に、バチカン側から受け入れを拒否されていた。又、駐カナダ大使は格が納得出来ずキャロラインが辞退したとも伝わる。駐英大使の話もあった模様だ。いずれにせよ、春名氏が指摘するように、リベラル色が強く、自立自尊の精神性に満ち溢れている女性なのだ。彼女は強い味方であった反面、政治的妥協を通じて政権を維持するオバマとしては、目障りな存在でもあるわけだ。スケールこそ違うが、真紀子と純一郎の関係に似ている(笑)。

 まぁ、オバマとケリー国務長官の思惑が一致し、日本に存在する一定の強固な嫌米層の懐柔にも、何らかの効果を期待しているかもしれない。TPP、オスプレイ、辺野古移設強行と米国との距離の取り方を考え出す属国の国民の目を誑かす(たぶらかす)狙いもあるだろう。中国や北朝鮮に、日本との同盟は強く存在する、と云う外交上のメッセージにはなるだろう。しかし、逆に沖縄の置かれている立場や日本の男社会に対する嫌悪があからさまにキャロラインの口からほとばしらないとも限らない。実現すれば、かなりのインパクトを日本社会に振り撒くだろうし、話題性はつきないのではないのだろうか。

図説 世界が賞賛するニッポンの技術 (別冊宝島 1978 ノンフィクション)
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小沢イズムと堀茂樹 小沢一郎はスーパー保守政治家、超がつくとリベラルにも見える

2013年04月07日 | 日記
「帝国以後」と日本の選択
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●小沢イズムと堀茂樹 小沢一郎はスーパー保守政治家、超がつくとリベラルにも見える

*小沢一郎と慶大教授堀茂樹氏の対談が“市民による市民のための市民ネットメディア”さんの主催で行われた。(http://www.ustream.tv/channel/voice-of-citizen
 日常的政治や政局レベルから離れ、小沢の政治哲学をメタな視点から抉り出そうとする堀氏の哲学的、しかし愛情あふれた対談態度に敬服した。勿論、同氏の投げかける様々な政治の根源的問いに応じる小沢一郎の応対も真摯なものであったことは言うまでもない。

*最終的には「政治とは何か」と云う話に至る事で、小沢一郎の不器用と評しても構わない程の愚直さに出遭う。器用とか、小利巧に生きることが、利害損得における“得”を座標軸に置き、生き方を定義づける時代において、小沢の“超”を超える保守主義は、仁徳天皇の物語性にまで及ぶ。「国家は民なり」、民の充足あっての国家であり、極端に表現すれば、国家よりも民の方が大切だと云う哲学にまで至る。小沢の保守性(縄文の心)は、スパーの冠が載ることで、面白いようにリベラルな風情を見せる。今や民よりも国家、ついには国家より資本が大切と云う時代だけに、民に戻るのは難儀な話である。この辺の言質を引き出した点、小沢一郎が政治家のポジションを僅かに超越した政治哲学を保持する点を見出した点は、堀氏の巧妙な得点である。

*対談の堀氏の前説が非常に多くのことを示唆していた。ウォルフレンの著書で強く言及した「人物破壊」がシステマチックになされた事実は、民主主義の闇で裁かれる怖さを現実なものとして、我々は目撃したのである。マスメディアのメディアスクラムが、こと小沢一郎叩きになると、朝日から産経までまったく同様のロジックで口汚く社説まで動員して罵るのだから、異常以外のなにものでもない。また、堀氏は、言論人・知識人として一定の評価をしている人々の中にも、数多く誤った小沢評を繰り返す事実に驚いている。

*筆者が思うには、堀氏が例示した中西輝政、福田和也、山口二郎、松原隆一郎、宮台信司、内田樹、姜尚中、高橋源一郎等々の、小沢一郎否定論を紹介していたが、この有能と言われている現代の言論知識人は、あきらかに二次、三次情報やマスメディアが作り上げた小沢一郎人物糾弾マニュアルを参考にしているに過ぎない。おそらく、上述した人々の一人たりとも、小沢一郎と膝を突き合わせて語った上で評論している者はいないだろう。彼らは、時の流れに乗っておこう、と云う安易な人物評価を口にしているとしか理解のしようがない。まぁ一見知的言動を好む人間達にとって、小沢がつき合い難い人物である事は幾分納得できるが、だからと言って表層的人物評論を公言して良いとも思えない。

*対談において、哲学者でもある堀氏と小沢一郎の相性が抜群だったわけではない。小沢の議院内閣制(イギリス)と堀氏が学んだ共和制(フランス)には幾分消化不良な部分もあった。小沢が現代の知性の代表者とも言えるエマニュエル・トッドを知らなさそうだった点は少々がっかりだったが、まぁ致し方ないのだろう。それこそ仁徳天皇の「政」の原点から発する、小沢の政治哲学には、今さら不要な知識だとも言えるだろう。面白かったのは、堀氏が最近(06年だが)の小沢の著書「小沢主義」を中心に話を進めながらも、「続・日本改造論」が上梓される事を希求している点、筆者は強く同意した。他の政治家の著書は判らないが、政治家が著する主義主張は、その政治上の理念哲学が籠められるものであり、政治行動上、非常に有意だ。以下は、堀氏のブログから引き出した小沢に関する一節である。

≪ 同一性と変化 ― 小沢は「保守」か「革新」かという疑問への脚注 ―
 小沢一郎という政治家については、自由主義から平等主義に転じたとか、小さな政府から大きな政府に乗り換えたとか、親米から親中にシフトしたとか、できの悪い座標軸しか持たぬ評論家等によって、デタラメばかりが流布されてきた。どこがどうデタラメか全部まとめて解説したいところだが、あいにく暇がない。そこで、とりあえず今日は、小沢はいったい「保守」なのか、「革新」なのか、それとも「保守」と「革新」の間で矛盾しているのか、という疑問に対して、少し哲学的な(?)アプローチで補助線を引いておくことにする。
 よく知られているように、小沢一郎は、好きな言葉としてしばしば、ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画『山猫』の中の台詞を引く。遠い青年時代の記憶に基づくためにその台詞を吐く人物を間違えているらしいのだが、ともかく小沢一郎は、2006年4月の民主党代表選挙における政見演説の終盤にも、次のように述べた。 《「変わらずに生き残るためには、自ら変わらなければならない。」英語で言うと We must change to remain the same. ということなんだそうです。確かに、人類の歴史上、長期にわたって生き残った国は、例外なく自己改革の努力を続けました。そうなのだと思います。よりよい 明日のために、かけがえのない子供たちのために……》
 こうして、We must change to remain the same.を唱える小沢は、「変わらずに生き残る」ことを目的とするのだから「保守」だろうか。それとも、「変わらなければならない」と言うのだから「革新」だろうか。はたまた、同一性を保とうとする「保守」と、変化を追求する「革新」の間で、矛盾しているのか?否、彼は何ら矛盾してはいない。なぜか?
 例えば、「彼女はすっかり変わった」というフレーズに注目していただきたい。これは、以前の彼女と今の彼女は同一でない、少なくとも部分的には別人だという判断の表明であろう。ところが、「彼女は…」というように「彼女」を主題としている以上、このフレーズは、「彼女」の同一性を暗黙のうちに認めている。つまり、彼女の変化は、以前の彼女と今の彼女の同一性に支えられていると言わざるを得ない。しかも同時に、本人が意志したことであったかどうかはともかく、彼女は変化することによって同一の彼女であり続けた、とも言える。この面から見れば、彼女の変化こそが、彼女の同一性の存続を可能にしたということになる。
 同一性と変化のこうした二重構造は、地上のあらゆる人と物象に見出すことができる。われわれ個人をはじめ、学校も、会社も、国家も、人類も、この二重構造の中で生きている。人間の悟性を超えて世界そのものを考える形而上学においても同様だ。一方には、古代ギリシャのパルメニデスの教えにしたがって世界を永遠不変の存在の相の下に視ようとする傾向があり、他方にはヘラクレイトス風に万物流転の生成を感得する傾向がある。これまた、件の二重構造の反映にほかなるまい。
 そういえば、ヘラクレイトスは、「同じ川に二度浸かることはできない」と言ったと伝えられる。わが国中世の歌人鴨長明の絶妙な表現を借りるなら、「行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし」(『方丈記』1212年)だからで ある。すなわち、「行く川の流れ」は、「絶え」ぬ(=同一だ)からこそ「本の水にあらず」(=変化している)と言える。それでいて、「本の水にあら」ぬ (=変化している)からこそ「絶え」ることがない(=同一である)、とも言える。このように、「同一性」と「変化」は、対立しながら常に支え合っている。
 個人も、グループも、国家も、自分らしく生きようとするときにこそ変わることができ、積極的に変わることによってのみ本来の自分と同一であり続けることができる。この角度から見ると、「変化」とは、いわば「脱皮」なのではないか?そして、いま日本に必要なのはまさに脱皮としての変化であろう。
 かの米国は9.11を機に脱皮するどころか、現職大統領ブッシュの下で大義なきイラク戦争へ突入して行った。その後オバマが登場し、"We are, and always will be, the United States of America."と米国の同一性を鼓舞しつつチェンジ(変化)を先導しようとしたが、時すでに遅しだったようで、竜頭蛇尾の感が否めない。
 日本の3.11と米国の9.11は性質も規模も異なるので、共通の平面で比較することはできない。しかし、死者・行方不明者の数や国土の破壊という観点から見れば、3.11で日本の国家とネイションが蒙ったダメージは、9.11で米国が受けたショックよりも遙かに、圧倒的に大きい。
 わが国は本当に正念場を迎えている。脱皮しなければサバイブできない。つまり、「変わらずに生き残るために、自ら変わらなければならない」のである。ところが、菅直人首相とその政府は、もちろん頑張ってはいるのだろうけれども、その「頑張り方」たるや、まるで「危機感」が欠伸をしているような様子だ。福島原発危機への対応はごく控えめに言っても初動に甘さ、生ぬるさがあったし、震災から一ヶ月以上経過したのに、被災地で仮設住宅建設の目処さえ立っていな い。いつもながら日本人という集団は、超優秀な「兵卒」および「下士官」を大勢抱えていながら、ろくな将軍に率いられていないところが弱点なのだ……。
 ならば今こそ、「保守」のための「革新」の人であるがゆえに左から疎まれ、右から恐れられ、長年にわたって政権中枢から排除され続けてきた ― しかも近年は明らかにアンフェアなやり方で排除されてきた ― 小沢一郎という政治家の剛腕を、思い切って試してみるべきではないか。≫(2011年4月15日付:『堀茂樹のブログ、あるいは不敬の義務』より) http://irrespect.txt-nifty.com/blog/2011/04/post-531f.html

*同じブログサイトで同氏は10年の8月に、以下のような感想も述べている。
≪2010年8月26日~  小沢一郎は至極まっとうだ。 小沢一郎が昨日自分の政治塾でやった講演、Ustで聴ける。話の内容は著作を読んだ者にとっては新味なし。概念の詰め方もおおまかで、知的刺戟に欠ける。語り口も、中途半端に頭のいい若者にウケルようなかっこよさが皆無。ところが、それにもかかわらず、耳を傾けさせるだけの厚みがある。 少し古いタイプのまっとうな日本人が、個人も国家もまっとうに生きることが大事だと説いている ― それが、小沢講演の与える印象である。 小賢しさ(=戦略的思考に非ず)から千里隔たっている。小沢が「選挙至上主義」だとか、近頃では「反米」だとかいうのは、いい加減な風説にすぎない。
 @miyake_yukiko35 小沢氏が議事堂玄関で律儀に天皇を出迎えるのは、生身の人間としての天皇個人を特別に敬うからではないはず。そうではなくて、憲法が天皇を主権者たる国民 の統合の象徴と定めているという点を大まじめに尊重するからでしょう。古風な立憲主義者の論理的行動です。
  民主党の代表選を注目して見てきた。私がいちばん問題視するのはマスメディアによる小沢叩きのアンフェアさ(汚さ)だが、そのことを別にしても、一 国の宰相にふさわしく、国際的な場でもへらへらすることなく振る舞えるだけの見識と胆力を持っているのが菅直人でないことは、火を見るよりも明らかだ。≫(堀茂樹のブログ、あるいは不敬の義務より)

*堀 茂樹(ほり しげき、1952年 - )は、日本のフランス文学・哲学研究者、翻訳家、慶應義塾大学教授。早稲田、慶応で学んだ後、フランス政府給費留学生として渡仏し、仏文・仏哲学を学んだ。アゴタ・クリストフの小説「悪童日記」の翻訳に着手、仏研究者と仏文翻訳者の道を歩む。
 ブログの副題になっている「不敬の義務」とは、
≪自由人としてこれをしたい。そうすればおのずから「不敬の義務」 ― フランス語でいうところのle devoir de l'irrespect ― を果たすことになるはずだ。実際、公共の場で、どんな権威にも服さず、どんな流行のイデオロギーにも阿らず、どんなに「お世話になっている方々」にも遠慮 することなく「不都合な真実」を述べること、すなわち「不敬」は、民主主義を支える市民(≠住民)にとって当然の権利であるであるばかりか、言論を事とする者にとっては義務ですらあるのだ。このことを私はかつて、ジュリアン・バンダ(Julien・Benda1967-1954)の数々の著作との出会いをとおして確信した。 不敬の義務を、そろそろ自ら実践すべきときが来ていると感じる。暗黙の口裏合わせと、(批判的知識人のポーズ の中にまで顕著な場合がある)迎合主義と、見せかけだけの甘ったれた露悪趣味ほど、日本の社会を風通しの悪い、嘘っぱちの社会にしているものはない。そんなものと馴れ合ってたまるか! というわけである。≫と言っている。

注:仁徳天皇の「政」の物語は、検索等で参照して頂きたい。

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)
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知的アリバイ工作 日経、朝日、毎日は「黒田日銀」の政策賛美の方向をチェンジ

2013年04月06日 | 日記

 

人口減少社会という希望 コミュニティ経済の生成と地球倫理 (選書899)
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●知的アリバイ工作 日経、朝日、毎日は「黒田日銀」の政策賛美の方向をチェンジ
 

  4日に黒田日銀総裁が「異次元金融緩和」を発表。下げで始まった東証日経平均は、後場、日銀の荒唐無稽な金融政策を受け、270円近い終値を示したが、下げ上げの振幅は500円以上のものとなった。5日も、この流れを受け興奮した買い注文が殺到、前場、600円近い上げ幅だったが、終値は200円を切って終わった。米紙ウォールストリート・ジャーナルは社説で、黒田東彦総裁の主導で日銀が新たな金融緩和策を打ち出したことについて黒田は「日本のバーナンキFRB議長」だと評価した。問題は、こうした政策転換を通じて民間経済にお金が回るかどうかだと論じているが、米国金融が、日本のバブルを期待しているのだから、当然の論評である。

 経済成長が、構造的に無理になってしまった状況の国家経済に、無理やり食い物を食べさせるようなもので、北京ダックを生産するようなものである。つまり、マネタリストの幻想が現れたわけだが、百歩譲って成功したとしても、投機バブルが起きるだけで、実体経済を成長させる効果はゼロだろう。その投機バブル自体も、まったく腰が座ったトレンドを示しているわけではなく、一日の間に利食いが起き、一進一退の相場を形成しているのだから、それすらも怪しい。挙句に、どれ程の「異次元金融緩和」であっても、材料が出尽くしているわけだから、買い上がる材料の枯渇の方に目は向くだろう。一昨日に続き、安倍相場の危険性を憂慮する日経QUICKニュース編集委員・永井洋一氏のコラムを紹介しておこう。

≪ アベノミクス相場に小泉改革後型リスク 異次元緩和 市場好感、消費者は?   日経QUICKニュース 編集委員 永井洋一

 前日の日銀の「異次元緩和」を好感した株式市場。日経平均株価は5日、一時1万3000円台を回復した。だが、就任100日を超えた安倍晋三首相の内心は複雑かもしれない。「消費者のことを考えれば、株高に浮かれてはいられない」と極めて冷静に眺めているのではないだろうか。
 先月下旬発表になった2月の貿易統計。輸出数量指数が前年同月に比べ16%低下した。財政・金融・産業の各政策を総動員し、日本をデフレ脱却へと導こうというア ベノミクスにとって目下、最大の敵は輸出の減少だ。

 ■輸出減、アベノミ クスに最大の敵

 1ドル=80円近辺から96円台へと、この5カ月近くで15円以上、下落した円の対ドル相場。円安が加速したのに輸出が減ったのはなぜか。中国や欧州を中心に海外景気が低迷しているためだ。  円安は輸出企業の手取り収入の増加をもたらすが、企業が販売計画を変更するのは、たやすくはないから、一般的には海外で日本製品が値下げされるまでには、半年から1年程度のタイムラグが必要とされる。
  多くのエコノミストの間では、すぐに輸出は伸びなくても、いずれ価格競争力の向上による輸出数量の増加、いわゆる価格効果は表れるとみられている。これが期待されているアベノミクス効果の一つでもある。
 ところが、SMBC日興証券の宮前耕也エコノミストは、「数量が回復する保証はない」と指摘する。円高だろうと円安だろうと、「海外の現地価格は大きく動かない」とみるためだ。
 例えば、当時の小泉純一郎首相が唱えた構造改革を受けて円相場が1ドル=101円台から124円台に下落した2005年1月から2007年6月まで。海外に輸出される財の価格を対象とした日銀の輸出物価指数をみると、円ベースは112.7から125.8に1割あまり上昇したが、現地通貨ベース(契約通貨ベース)は100.8から99.7とほとんど変わらなかった。円安による手取り収入の増加を原資とした日本製品の「円安(ドル高)還元セール」が、 海外であまり広がらなかったことが読み取れる。
 品目別で、この間の現地通貨ベースの価格推移をみると、輸送用機器(自動車)の値下がり率 は1%あまりにとどまった。大幅な値下げが難しいというコスト構造や電気機器などに比べ在庫として抱えても陳腐化しにくいという製品性が影響しているとみられる。
 電気・電子機器は14%値下がりし、価格効果が働く余地がある製品といえる。しかし、スマートフォン(スマホ)販売の伸び悩みにより日本では、「電子部品・デバイス工業」の在庫が2年ぶりの水準に積み上がっており、当面は生産の活発化は見込みにくい。電気・電子機器は05~07年 には国内でも値下がりしており、世界的に競争環境の厳しさがうかがえる。
 円安でも現地価格を下げなければ、企業のマージン(利幅)は増えるため、1株利益(EPS)を重視する株式市場の投資家にとっては好都合だろう。
 だが、輸出数量が増えなければ、日本経済全体には円安の恩恵は及ばない。その兆しはすでに表れている。日銀が1日発表した企業短期経済観測調査(短観、3月調査)は、大企業も中堅企業も中小企業も、さらに製造業、非製造業問わず、13年度の設備投資計画が前年度比マイナスだった。異次元緩和は、企業の設備投資意欲を刺激するのが狙いの一つだが、それが成功しなければ、国内景気の回復を伴わない資産バブルのリスクが高まる。

 ■資産バブル到来見越す市場関係者

 電気料金、ガス料金、小麦粉、輸入家具、印刷用紙……。新年度に入り、値上げが予定されている品目を挙げれば切りがない。円安で輸入製品価格が上昇しているためだ。では05年1月~07年6月の輸入物価はどうだったのだろうか。
 日銀の輸入物価指数(円ベース)は4割上昇。品目別では、貴金属や非鉄金属などの金属・同製品が2倍、石油・石炭・天然ガスが9割、食料品・飼料が4割それぞれ上昇した。同じ期間の国際商品相場(ロイター・ジェフリーズCRB指数)の上昇率1割を大きく上回る。アベノミクス効果が実体経済に広がるまで、消費者はいったん、厳しい季節を迎えるかもしれない。
 「何が何でもという意味ではない」。2日の衆院予算委員会で、円安の弊害を軽視してでも、日銀に2%の物価上昇率目標の達成を求めるのかと問われた首相の、こんな発言が市場に一瞬動揺を誘った。そのせいもあってか、市場との対話に積極的な黒田日銀。だが、QUICKの調査によれば、債券市場関係者の約8割が資産バブルがありうるとみている。市場に配慮しすぎれば消費者の負担が増し、消費者重視だと市場の期待が低下する。
 07年以降の株式相場は、世界景気の悪化で崩れた。今回も海外景気の低迷が続けば、アベノミクス効果は半減する。アベノミクス相場に小泉改革後型リスクが潜んでいるのを一番知って いるのは、安倍首相本人かもしれない。 ≫(日経新聞:マーケット:コラム)

 おそらく、5日辺りの株式相場の動きを見ていると、個人投資家が大量に買いを入れ出した傾向がみられる。あまりにも低すぎる金利と閉塞感で苛立っていた人々から見れば、仮に景気が一過性のバブルであっても、ひと儲けしたい気分が高揚する心理も肯ける。ただ、ここ二日間の日経平均の動きを見る限り、5日の終値が、ババだった可能性も否めない。その理由を明確に指摘は出来ないが、何故かここに来て、マスメディアが安倍・黒田相場に水を差すような解説記事が軒並み報じられていることだ。煽って買わせ、買い込んだ後で、アリバイ記事を書き出した趣きがある。

 日経・朝日・毎日は、アリバイ記事の傾向は顕著で、産経・読売はピンと来ていない。おそらく、何が何でもアベノミクス神話を作ろうとするメディアと“知性ヅラ”したいメディアの差が出ているものと思われる(笑)。安倍・黒田の金融政策の思惑は、日銀が大量無制限に国債を買えば、金利の指標である国債利回りが下がる(金利低下)。つまり、借金しても目茶苦茶金利が安いのだから、家も買うし、設備投資もするだろう、と云うことだ。家を買おうとする人々の行動を早める起爆剤にはなるだろう。来年の消費増税も視野に入れれば、不動産の動きが活発になる可能性はある。しかし、エコポイント同様に、消費の先食いなのだから、数年スパンで見れば、平準化され元の黙阿弥である。需給のバランス(供給過多)が是正もされていないのだから、金利が安いだけで、設備投資が前向きになる可能性は少ない。

 次に、国債利回りが、限りなくゼロに近づくので、金融機関は運営費用捻出の為にも、貸し出しを増やさざるを得ない。故に、市中にマネーが行き渡ると云う考えだが、2001年から06年に量的緩和を実施し、35兆円の資金を流し込んだ。しかし、銀行は貸し渋りを実行した。原因はバブルで傷んだ銀行自体が消極的だったから、と云う意見が多いが、当時は経済成長は健全だったのである。今回は、体質強化されている銀行だから、決断するだろうと云う思惑だが、困ったことに経済成長はマイナス、決断する条件は意味合いこそ異なるが、揃ってはいない。まして、現在の金融トップは、バブルで酷い目に遭っている人々が占めているのだから、期待する方が無茶である。

 次が、値上げのトレンドが予感される事で、早目に設備投資をするとか、賃貸不動産投資が活発化するだろう、と云う思惑だが、年内の景気動向は善くなるとして、消費増税がしやすくなるだけのことである。また、財政出動で公共投資景気も生まれているが、減価償却に見合う期間の継続的注文が来ると云う見通しのない中で、設備投資が上向くと云うのは幻想だろう。その上、大企業の殆どは内部留保を抱え、安くても金利がつく借金を、敢えて取る必要性は高くない。

 消費の先食いを、個人消費の範囲で誘発する可能性は高いが、企業にまで及ぶ可能性は乏しい。それこそ、社会主義市場経済ならいざ知らず、自由競争の民間企業に、そのリスクを強制することは出来ない。その内、劇薬的円安の副作用の方が顕著になり、グローバル経済の一大特長、「賃金はひたすら下降する」は、TPPの参加により拍車を掛けるだろうから、生活者目線では塗炭の生活苦が押し寄せる可能性は一層高まっている。NHKなどが、株価ボードを眺めている年金生活者の「良いね~値上がりで真赤だよ!」等と云うインタビュー画像を流し、国民に提灯をつけさせ、ババを掴まさせる煽り報道などは、国民を罠に嵌めるような報道である。

 世界市場は、安倍・黒田のバブル経済政策を他所目に、現実の地合いを眺めながら、昨日も下げ相場を形成している。ウォールストリート・ジャーナルは黒田総裁を「日本のバーナキン」だと褒めそやしているが、奴らが金融マフィアの仲間だからと云うだけで、実体経済になんの貢献もしない事は百も承知である。アジアも欧州も米国も、すべての株式市場が下げている現実を冷静に見つめて貰いたいものである。筆者は、5日の前場で、持ち株の殆どを手放した。その点では、安倍・黒田相場に感謝するが、このようなコラムを書いているように、うたかたの夢は、さっさと確定させておく方が賢明だと思う。

テレビが政治をダメにした (双葉新書)
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円安で輸出額は増えたが数量は減った! “気分”で買い物する中間層の貯蓄激減

2013年04月04日 | 日記
経済学者の栄光と敗北 ケインズからクルーグマンまで14人の物語 (朝日新書)
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●円安で輸出額は増えたが数量は減った! “気分”で買い物する中間層の貯蓄激減

 今夜は筆者がとやかく解説を加える必要もないコラムに出遭ったので、全文掲載する。結構長いが、経済にズブの素人でもよく判るアベノミクスと日銀の関係。及び、その関連から生じるであろう重大な問題点を指摘している。マスメディアは、アベノミクスが折角作った、幻の好況気分に水を差したくない、と云うエクスキューズはあるだろうが、日経ビジネスが、藻谷俊介氏の懐疑的コラムを載せたことでアリバイづくりをしたのかもしれないが、載せただけでも良心的だ、と思う。問題はここまで深く経済を考えていない国民が多いことが問題なのだろう。

≪ 日銀さん大丈夫? 「日本はスタグフレーションです」          
   藻谷俊介氏が指摘する「停滞と物価高」

 アベノミクスによる株高と円安で、中間層は沸き上がっている。だが、輸出数量が減少し続ける中で、物価が上昇する景気の現況は、経済の教科書にある「スタグフレーション」そのものだ。人気エコノミスト、藻谷俊介スフィンクス・インベストメント・リサーチ代表が、日銀と安倍政権の「連携」を憂う。 (聞き手は金田信一郎)

――日本銀行の新総裁に黒田東彦氏が就任しましたが、2%の物価上昇率を達成することを約束させられる格好になりました。そもそも、日銀総裁は、就任当初からこれほど金融政策を縛られるものなのでしょうか。 売れないのに値段が上がる

藻谷:その約束させられたことを、張り切ってやっているような感じがします。この人もなかなかフレキシブルな人だな、と思いました。 自我を強く持った人ですと、他人から横やりを入れられることを好まないものです。ある程度の要望を言われて仕事を受けたとしても、「過剰サービス」だと思ってしまいます。報道を通して見ているだけですが、黒田さんはハッスルしているみたいで、それが少し気になりますね。
 とにかく「常識人」としてやってほしい。(金融緩和を)やめる、やめないという判断について、(安倍晋三首相の)期待に応えることをベースにするのでなくて、黒田さんが専門家として、自分で考えて決めてほしい。当たり前のことなのですが、本当にそれができるのか、報道を見ていると不安になります。

――安倍首相は日銀との連携を強化すると言っています。でも、つい10年ほど前には、「日銀の独立性が重要だ」 と議論されていました。中央銀行の独立性を強化するという話はどこに行ってしまったのでしょうか。

藻谷:時代と状況が変わったんでしょうかね。でも、中央銀行の独立性は、今のような状況こそ必要なんです。  政府は「景気をよくしたい」「中央銀行にカネを刷らせたい」と思っている。それに対して、中央銀行が金融政策の専門家集団として、違った意見を持って臨むことが重要です。これはバブル経済の反省から生まれた議論でした。しかし、今では「バブルを作ったっていいじゃないか」という雰囲気になっている。黒田さんも、「これをバブルと言われても、私は構わない」と実は思っているんじゃないか。
 景気について言えば、経済データは、実はよくないんですよ。特に気になるのは、輸出数量が毎月のように減っていることです。ただ、25%も円安になったおかげで、輸出は金額ベースで大幅に手取りが増えている。でも、数量が減っているのだから、国際競争に負けているということです。
 だから、なぜエコノミストが指摘しないのか不思議なんですけど、これこそが「スタグフレーション」なんですよ。

――あの、社会の教科書に載っていたヤツですね。

藻谷:だって、販売数量が減っているのに、物価が上がるんですから。今こそ「スタグフレーションの状態だ」と言わなければならない。でも、言わない。どう見ても、今こそ「スタグフレーション」に一番近い状態です。だとすれば、こういう状況下で株と地価だけが上がるとすれば、まさに「バブル」でしょう。今こそ、中央銀行の独立性が、本当は必要な時なんです。

現代の建艦競争
――この状況を日銀が放置すると、どうなるんでしょうか。

藻谷:かつての建艦競争を思い出しますね。軍事力の優劣を決するのは、軍艦の数だとされて、各国が建艦計画を競っていく。その結果、「あっちが造るなら、こっちも」 と無益な国際競争に巻き込まれてしまう。
 現代の通貨戦争においては、カネを刷って金融緩和をする国際的な競争が起きています。でも、無益であるばかりか、害が出てくる。だって、カネばかり刷っていても、世界の需要はそれほど伸びていませんから。リーマンショック前まで、米国は3.5~4%の成長率で推移し、中国は10%成長を続けていた。しかし、当時と今では、需要の伸び率が全然違うわけです。それなのに、当時を上回るようなお札の刷り方をしていたら、全人類が不利益を被るようなインフレが発生する危険が高まる。それなのに、やめようとしない。それどころか、日本がその流れを助長するようなことをしている。それが、建艦競争の後の破滅を予感させます。
 タイミングが悪いことに、キプロスの財政危機という問題が浮上して、ECB(欧州中央銀行)も建艦競争に参加する理由ができてしまった。そこにもってきて米国のQE3(量的緩和第3弾)が本格的に始動して、マネタリーベースの伸び方がぐっと上がってきています。
 そこで、黒田さんは早速、金融政策決定会合でまた供給を増やそうとしている。考えられる理由は、「米国がまた始めたから」としか言いようがないんですよ。
 これまでは、日銀の方が(米連邦準備理事会より)ペースが速かったけど、今はマネタリーベースで見ても、(中央銀行の)バランスシートで見ても、連銀の方が勢いがあります。すべて黒田さんに責任を押しつけることはできないけれど、ここは中央銀行としての良識を見せないといけません。

――しかし、黒田総裁と日銀は「建艦競争」に負けじと、金融緩和の手を次々と打ってきます。

藻谷:中国人民銀行も困っていると思いますよ。日本と米国は「ゲームで勝とう」と思って必死になっているけど、巻き添えを食って付き合わされる側はたまったものではありません。だから、ECBも辛いでしょうね。
 中国はどうするのか。為替をコントロールしている国ですから、すぐに通貨が動いてしまうわけではありませんが、それでも強い「元高プレッシャー」に直面します。悩ましいのは、最近になって中国の地価がまた上がり始めていること。バブルが起きることを嫌うなら、元を高くするしかない――。そういう選択を突きつけられている状況です。先進国がカネを刷りまくることによるインフレの危険は、我々よりも中国などの新興国の方が深刻でしょう。
 そう考えると、金融緩和競争は、本当に建艦競争に似ている。誰にとっても利益にならないし、明らかにリスクを高めています。でも、止めようと思っても、 誰にも止められない。そういう意味で、すごく類似性が高い。
 そこに、「どんどん軍艦を造るぞ」と言っている人を総裁に選んだ国が出てきた。「イケイケ」という雰囲気が止められなくなっている。

 成功するほど、反動が大きい

――20世紀末に続いて、また日本でバブルの生成と崩壊の悲劇が起きるかもしれない。

藻谷:すでにあちこちで、バブルが生まれています。「国債バブル」もそうです。本来、インフレ政策をとっていれば、長期金利が上昇して、債券は売られなければいけないはずです。

――ところが、「日銀がガンガン買います」と宣言している。

藻谷:だから、それを多くの人が期待して、国債を買ってしまっているわけでしょう。こんなことが続けば、いつか大規模な修正が起きることになります。
 だから、アベノミクスは成功すればするほど、大規模な調整が必要になってくる。まさに危険な政策というわけです。国債が売られ始めれば、下落が止まらなくなり、円安を伴いながらさらに落ちていく。しかも、実体経済の“健康状態”はかんばしくない。  結局、「インフレが望ましい」という理由は、健全な景気状況を反映して、物価上昇が起きるからなんです。それが、インフレ自体を目的化して、「物価が上がれば何でもいい」という発想になってしまった。だから、スタグフレーションに陥るわけです。実質成長を伴わない物価上昇になってしまうと、それは「お門違いのインフレ」なんですね。
 でも、今はその区別をメディアも認識していない。私も「本当に2%のインフレになるのか」とばかり質問されます。それは、どういう「2%」を意味してい るのか、そこが重要なんですね。見かけ上の「2%インフレ」なんて、円安にすれば達成可能ですよ。だけど、それでは経済にとって逆効果になってしまう。

――黒田総裁も、アベノミクスとは一線を画した政策判断が求められます。

藻谷:今の日銀は、グローバル経済のダイナミクスと、突然のごとく現れた安倍首相に流されていますね。
 それにしても、安倍首相は何をやりたいのか。というのも、第1次安倍政権というのは、戦後史上、最もマネタリーベースを増やさなかった政権だったんですよ。その人が、まったく違う政策を掲げている。「君子豹変す」と言えばかっこいいのかもしれないけど。本音は、「憲法を改正したい」ということで、経済は 「人気を高める道具」程度にしか思っていないのかもしれません。

――でも、今のところ円安と株高に沸いて、アベノミクスは成功すると思っている人が多い。

藻谷:でも、これほど一気に円安に振れて、米国が文句を言わなかったことはありませんからね。しかも、実体経済を見れば、輸出数量は下がり続けているという恐ろしい状態が続いています。
 まあ、「日本企業が国際化して、海外に工場を建てているからだ」という見方もあるでしょう。でも、海外生産移転を最も進めたのは米国です。その米国が、 今は国境の外に向けて輸出数量を伸ばしている。この瞬間において、リーマンショック前のピークの数字を上回っていますから。欧州ですら、ちょっと(リーマンショック前の数字を)上回っている。そう考えると、日本の数字は尋常ではありません。

最後の日本脱出

藻谷:でも、アベノミクスに沸いて、センチメントだけは上向いています。消費がちょっと改善して、貯蓄率が減ったんですね。そうした変化は現れていますけど、テレビもクルマも、エコポイントなどで需要の前倒しをしてきたので売れない。
 では何が売れているかというと、食料品などが上がっています。ささやかな贅沢をしているんでしょうね。和牛ステーキとかを買っているのかな。あとは、衣料もちょっといい。でも、大型商品である自動車やテレビは売れないんですね。
 センチメントだけが急上昇している。2カ月でこれほど上昇したことは、過去にありません。日本人のみなさんが、気持ちよくなっていることは間違いないんです。でも所得は増えていないから、結局、貯蓄率が下がってしまう。
 もう1つ重要なことは、消費性向が上がっている人々の分析です。実は、年収360万~870万円の「中間層」のセンチメントが上向いている。所得が少ない人々は下がっています。物価上昇に身構えて、逆に不安になっていると思うんですよ。民主党の時はこの層がちょっと上がっていたんだけど、今は逆方向になっています。「また二極化するんじゃないか」という恐怖ですかね。そして、最も所得が高い「お金持ち」のセクターも下がっている。「アベノミクスで景気回復なんて、信じちゃいないよ」という感じでしょうか。  こうした経済データを定点観測している立場からすると、見れば見るほど「これでいいのか」と思ってしまいます。

――安倍首相は、アベノミクスがもたらすリスクも見据えた上で、判断しているのでしょうか。

藻谷:そこは懐疑的ですね。将来に禍根を残すという意味では、非常に懐疑的です。みんなでこんなに浮かれて、後でひどい目に遭うのではないか、と。
 中国も今、地価が再び上昇してきて、また引き締めに走るような予感もあります。それでも、中国の方が中長期的な視点で経済政策を打っているという見方もできるかもしれません。中国が発展途上国、日本は先進国、という目で見たら、日本のやっていることは、先進国らしからぬ経済政策であることは間違いありませんね。
 もちろん、中国の方がまだしっかりしている、と見えてしまうのは、中国への目線を若干低くしているからかもしれません。しかし、そうだとしても、日本の方が将来の問題を把握しないまま政策を打っている気がしてならないんです。そこが怖い。中国は、将来の舵取りを共産党がやり遂げられるかどうかは別にしても、迫り来る問題を把握しているのではないでしょうか。
 一方、この安倍首相という人は、これから先に起こる問題が分かっていないように見えます。アベノミクスが掲げる「三本の矢」を見ても、国際競争力という点では、まったく役に立ちません。「おカネを刷る(金融緩和)」と「堤防造る(公共工事)」は論外ですが、「規制緩和」の効果も期待できない。規制を撤廃する分野がサービス業中心なので、製造業の復活が描けないからです。
 これだけ中国のコストが上がってきているにもかかわらず、日本の競争力は回復せず、むしろ落ちている。このままでは「最後の日本脱出」が始まって、日本 の産業基盤がガタガタになってしまうのではないでしょうか。 ≫(日経ビジネス:マネージメント:キーパーソンに聞く)


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首相の金銭解雇の発言修正 社員を削除する衰退産業の“切り捨て”に舵を切れ

2013年04月03日 | 日記

 

成熟日本への進路 「成長論」から「分配論」へ (ちくま新書)
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●首相の金銭解雇の発言修正 社員を削除する衰退産業の“切り捨て”に舵を切れ

 最近マスメディアや学者は“成熟産業”と“成長産業”云う言葉を連発している。成熟と云う言葉を遣うなら、成熟国家と成長国家と云う表現が増えても良さそうなものだが、一部の社会・経済学者以外あまり遣わない。おそらく、その言葉には“つまり…”と云う含みがあるからだろう。成熟と云う言葉には、いい意味で“安定”した感じがあるが、成長は期待できないと云う意味があり、最終的には衰退が待っている事まで含んだ言葉と云うことなのだろう。

 つまり、成熟とは、その次に衰退が待ち受けているという方向性を明示している。その所為か、成熟経済とか成熟国家と云う概念を認めたくないと云うことなのだろう。殆どの政治家も、成熟経済とか成熟国家と云う言葉を忌避する傾向がある。成熟が老兵のような感じで、投票行動に結びつかない言葉に思えているのだろう。本来であれば、小沢一郎くらいの政治家であれば、そのネガティブと受けとめられそうな言葉を遣ってでも、国民を説得する馬力を見せて貰いものである。その為にはこそ、「続・日本改造計画」の上梓が必要なのである。言質で突かれない防御の為にも、一貫した主張が、今の小沢一郎「生活の党」に求められているのだ。

 竹中平蔵ら学者や経団連勢力が、「労働市場の流動化」を日本企業が産業競争力をつける為には“必要だ論”を展開している事は周知の事実だ。小泉構造改革で頓挫した竹中は、名誉挽回とばかり、墓をひっくり返して「労働市場の流動化」を掘り出してきた。安倍晋三は、この産業競争力会議の「労働市場の流動化」の意味がよく理解出来ていないらしく、「解雇を自由化する考えはない。金銭によって解決していく考えはない」と28日に断言した。(注:安倍の人の好さから出た発言)しかし、昨日の衆院予算委員会の答弁で、官僚が書き上げた、霞が関強弁文学をしどろもどろになりながら、漸く読み切る事が出来た。毎日は以下のように報じている。

≪ <安倍首相>「金銭解雇しない」発言修正 「事後」は容認
 安倍晋三首相は2日の衆院予算委員会で、政府の産業競争力会議で提起されている解雇の規制緩和について、解雇を無効とする判決が出た後の事後的な金銭解決のルール化は同会議の検討対象として容認する考えを示した。3月28日の同委では「解雇を自由化する考えはない。金銭によって解決していく考えはない」と答弁していた。
 首相は「(判決で)解雇無効となった場合、事後的に金銭支払いにより労働契約解消を申し立てる制度は(金銭解雇に)含めていない」と指摘。28日の答弁で否定したのは「事前型」の金銭解雇だったと説明した。そのうえで、事後型については「産業競争力会議や規制改革会議で自由闊達(かったつ)に議論をしており、さまざまな視点を含めて検討していく」と説明。検討対象として残っていることを明らかにした。
 解雇規制の緩和をめぐっては、規制改革会議、産業競争力会議で民間議員が「日本の解雇は硬直的だ」などとして、金銭解決を労働契約法に盛り込むなどの ルール化を提案している。ただ、政府・与党側には労働者側の反発を懸念して、夏の参院選前の抜本改革には慎重な意見もある。【光田宗義】≫(毎日新聞)

 安倍晋三の2日の答弁内容は、事前とか事後とかの問題ではなく、実はトンデモナイ事を言っているのだ。安倍自身、この答弁書の意味がよく判らずに、読んでいた感も否めない。なぜなら、前もっての金銭解雇は駄目だが、事後の金銭解雇はオッケーと言っている。この前後を別ける分岐点が「解雇無効判決」である事が決定的にトンデモナイ不当労働行為に該当するのである。つまり、安倍の答弁を素直に受け取ると、解雇された労働者は、不満があれば裁判をせよと言っている。しかも、裁判で無効が出ても、再雇用せずに金銭で解雇しても構わないと言っているわけだ。

 判決が解雇の無効を決定しているのに、「労働市場の流動化」を日本企業が産業競争力をつける為には必要だから、判決が解雇無効でも雇用を回復せずに済むルールを作ろうと云うことになる。何か答弁書を間違って書いたか、読んだかでもない限り、幾らなんで無茶苦茶すぎる話のようだ。早い話が、選挙区割違憲判決で裁判所を蔑にし、ペナリティーを受けそうだと云うのに、此処でも、裁判所の判例を、立法の力でねじ伏せようとしている。本気なのだろうか?

  マスメディアも、2日の金銭解雇に関わる安倍首相の答弁の趣旨が充分理解できないか、トンデモ発言だと思ったのか、毎日新聞以外は、スル―している。自分だけは解雇なんかされないと高を括っているサラリーマン中間層を狙い撃ちしている安倍の成長戦略だと云うのに、株価が上がったと嬉々として、安倍自民を支持しているらしい。なんとも不思議な人々だ。日本にはマゾヒストと云う人種が主流を占めているのかと頭を捻ってしまう(笑)。

 逆の側面から観察すれば、そういう時代についていけないサラリーマンを淘汰する話が出る以上、その企業が属する産業自体も、時代についていけなくなっているわけで、その産業をバックアップするような手助けをする事も、産業競争力を弱めることになるはずだ。成長産業へ、成熟産業の労働力がスムーズに流動化するためには、成長産業側の雇用環境が、以前の環境に近いものである必要がある。その点を無視して、強者の論理だけで年収1000万から400万の産業に労働者を追い込むことを政治が後押ししている事実に気づかないのだろうか。

 成長産業の創設や充実に、成熟産業へ温存の予算を移動させる政策がセットになっているのなら、一定の理解は可能だ。そのような理に適った流れで話が進むのなら、論理的矛盾はない。しかし、今までの話だと、単に労働者側にだけツケ回しをする産業競争力会議とは、弱い者いじめだけの胡散臭いものだと証明している。正社員のランク付けの限定社員にしても、「追い出し部屋」の話も、WE制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)にせよ、働く国民の人格を家畜同然に扱い、単に勤労者を”資本”の奴隷に貶めようとする政治を、安倍自民は行おうとしている。何と云う政治なのだろう。非正規雇用の蔓延で、これだけ中間層が激減していると云うのに、安倍自民は国民と云う人格を弄んでいる。

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TPP交渉座礁 表見代理人オバマの恫喝にビビった“安倍心臓”骨抜き協定の実態

2013年04月02日 | 日記
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●TPP交渉座礁 表見代理人オバマの恫喝にビビった“安倍心臓”骨抜き協定の実態

 3月20日付拙コラム「日中韓FTA、RCEP交渉を急げ 貿易協定とは思えぬTPPの異質性に気づくはず」 で指摘したような展開が僅かに雲間から見えてきた。上述コラムで指摘するような按配になってきている。既出コラムで以下のように述べている。

≪…自民党自体が、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の方が日本にとって有利だ、と衆議院選前に野田民主相手に明言したはずだ。この変節が、安倍訪米でなんなく覆ったのだから、オバマの脅しが効いたのだろう。しかし、オバマが、このTPPに関して、全権限を持っているわけではない。むしろ、官僚と議会が具体的協定内容を吟味決定する権利を有している。つまり、オバマが安倍に約束したこと自体が越権と云うか、口先介入である可能性もある。年内の合意を目指しているようだが、まだまだ交渉参加各国との鬩ぎ合いは続いているようで、難産が感じられる。
 TPPより先に、中韓FTA協定が先行するかもしれない。それに引き摺られるかたちで、日本も加わり、日中韓FTA協定に発展する事も考えられる。それとRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の協議が再開されれば、TPPがすべてはないことが日本の国民に理解できるだろう。日本の嘘こきマスメディアは、如何にも自由貿易協定がTPP唯一のような報じ方に徹しているが、さにあらずだ。 RCEPは日本、中国、韓国と東南アジア諸国連合(ASEAN)、オーストラリア、ニュージーランド、インドの16カ国の正真正銘のアジアの成長を相互に取り込む自由貿易協定の枠組みなのである。≫(拙コラム)

 上記のような貿易協定ばかりではなく、日欧EPA交渉なども含めWTOに替わる自由貿易協定は乱立気味であり、その協定間の整合性を調整するだけでも、気が遠くなるような作業が待ち受けている。その上、米国側の交渉窓口である米通商代表部(USTR)は、各国との例外規定問題の調整に苦慮している情勢が明確になりつつある。オバマが全権限を持っているような顔で“安倍の心臓”をぐさりと抉ったのだが、そのオバマが表見代理人のような地位である事が判明しつつあるのだ。

 米通商代表部(USTR)は、このまま内容では到底議会の承認は得られないと思ったのか、此処に来て“貿易相手国の市場開放に向け、TPAを巡る作業を始めたい」”と米上院財政委員会で表明している。TPP交渉の中身をある程度議会に提示しない限り、大統領権限を拡大する大統領貿易促進権限(TPA)が易々と議会で認められる可能性は低い。TPA付与には、TPPの場合乗り越えなければ条件が多々あり、見通しは暗いのだ。

■大統領貿易促進権限  Trade Promotion Authority(TPA)とは、従来「ファスト・トラック」権限(追い越し車線の意)と呼ばれていたものであり、期間を限定し、行政府に対し議会への事前通告や交渉内容の限定などの条件を付す一方で、かかる条件を満たす限り、議会側は行政府の結んだ外国政府との通商合意の個々の内容の修正を求めずに、迅速な 審議によって通商合意を一括して承認とするか不承認とするかのみを決することとすることを法律で定めるもの。

 その上、オバマは安倍に対し、軍事同盟的色彩もあると云う言い回しで脅したであろうが、他の交渉参加諸国の中には、そんなこと関係ねぇ!と云う認識もあり、NATOのような話になるとは思えない。おそらく、オバマの計算違いは、交渉参加の中小国が一人前に口を利いてくるとは思わなかった節がある。グローバル経済の進展は、発展途上国乃至は後進国が自国の市場価値を認識し始めたわけで、「今は貧乏だが、俺達が成長しなければ、お前たち先進国も市場を失うだろう」と云う立場を充分に理解しているので、アメリカ様が言っているのだと云う脅しは、通用する国が日韓くらいに狭まったと云う現実を表している。所謂「モノ言う小国」の時代が来ているのである。

 おそらく、TPPの交渉破綻では、オバマの顔も立たないので、骨抜きな「環太平洋パートナーシップ協定」がいずれ結ばれるのだろうと思う。骨抜きになった事で、聖域なき関税撤廃の難は、各国それぞれ逃れたことになる。しかし、参入障壁への風当たりは強くなるだろう。つまり、年次改革要望書と同じことが繰り返されるのだろうが、この交渉は個別国家間の問題であり、日本政府が参入を認めない限り、参入する他国企業もないわけだから、問題のISDS条項が発動される事もない。

 中国や韓国には、言いたいことは山のようにあるが、それでも今世紀最後の成長市場といわれるASEANを含むアジアを見過ごし、アジアにいながら、アメリカ市場と手を結ぶのは、どんな外交防衛的経緯があっても、筋は通らない。最後に毎日新聞のコラム:風知草が良い記事を書いているので紹介しておく。

≪ 風知草:飢えるのは、あなたです=山田孝男
 日本の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加と農業保護問題の核心をついた問答がある。
 シンポジウムで都会の女性が尋ねた。「日本に農業が存在しなければならない理由は何ですか?」
 農民が答えた。「カネで食料を買える間はいいですが、経済破綻すれば飢餓ですよ。私はいいのです、百姓だから。日本農業が滅びようが、どうなろうが、屁(へ)とも思ってない。自分の食うものを自分がつくるだけの話。飢えるのは私ではなく、あなたですよ」
 農民は山下惣一(76)である。父から受け継いだ佐賀県唐津市の田畑でコメやミカンを作るかたわら、毒気とユーモアが身上の作家として活躍している。
 この問答は、TPPと農業保護をめぐる二つの考え方の本質的な違いを浮き彫りにしている。明日の世界は平和で農産物の輸入も自在と見るか、繁栄の基盤はもろいから食料は自前でと考えるかの違いだ。
 TPPは「聖域なき関税撤廃」を目指す。そのまま受け入れれば国内農業が立ち行かない。自民党は「コメ」「麦」「乳製品」「牛肉・豚肉」「砂糖やでんぷんなど甘味資源作物」の5品目を例外と決め、首相が先月15日、記者会見して交渉参加を表明した。  例外扱いが国益か、農業団体のワガママをたしなめるべきか、世論は割れている。東京では「農業よ、甘えるな」「高品質商品を量産して輸出せよ」という論調が主流を占める。
 山下はこれが気に入らない。「香港の富裕層に日本の高品質の農産物を送れということは、日本の低所得層は中国の安い農産物を食えということですよ」
 「安全で高品質な農産物はTPPに反対している人たちの口には入らんで、TPPを推進している人たちの口に入る。イヤなんだよね、これが(笑い)」
 聖域なきTPP参加となれば、次は農協解体、農地法撤廃、企業参入へ進むだろうと山下は見る。企業が農協に取って代わる。構造改革派にとっては痛快だろうが、少なくとも地域農協は、カネがすべての企業支配よりも人間的だ。一握りの企業の特異な成功例を引き、農家をむちゃなカネもうけに走らせ、地域社会を壊してくれるな−−。
 憂国の山下節は、先月出た、山形県高畠町でコメとリンゴを作る農民詩人、星寛治(77)との対談集「農は輝ける」(創森社刊)からあふれ出てくる。
 山下の一連の著作は、農を軽んじ、農を見下す潮流との闘いの記録だ。休耕田にしめ縄を渡してゴミ投棄を防ぐ小説「減反神社」が81年の直木賞候補。
 父の急死と農家の相続を扱った自伝的小説「ひこばえの歌」はNHK「ドラマ人間模様」(82年)になった。これまでに約50回、海外農業事情を視察、取材を踏まえて多くのルポやエッセーも書いている。
 TPP交渉参加という決定は、日米安保強化の要請上、やむを得なかったというのが通説だ。首相は「日本の田園風景を守る」と強調しているが、山下は危ういと見ている。
 「所得が今の半分だったころはみんな村に住んで活気があったのに、所得が倍になったら誰もいなくなった。なぜですか?」  経済成長を求め、矛盾はカネで埋め合わせるやり方では農業に明日はない。このままでは第二の敗戦になり かねぬ−−。  山下の慨嘆は重い。世界が混乱し、輸入が止まっても国民を飢えさせない基盤があるか。そこまで見据えた TPP参加交渉であってほしい。(敬称略)≫(毎日新聞)

農は輝ける
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悪徳経済学者・竹中平蔵の騙しのテク 市場原理コンサル・大前研一のすり替え論

2013年04月01日 | 日記
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●悪徳経済学者・竹中平蔵の騙しのテク 市場原理コンサル・大前研一のすり替え論

 今日は、「日経BP net」の市場原理主義信奉者達のコラムを紹介する。日経新聞系の媒体は、既にTPP参加が前提の特集コラムや規制改革問題を頻発させている。彼らと云うか、日経にとって、市場で好き勝手に暴れる事が可能な日本と云う国家を望んでいる姿が露骨に現れている。TPPの交渉撤退などあり得ないと云う鼻息で、TPP、規制改革が前提の世論誘導に必死である。特筆すべき点は、彼らの多くが「農業問題」を中心に論を進めている点である。他の領域、工業製品・医療・金融・保険・公共事業等々の分野への言及は僅かだ。やはり、他の分野を言及は避けておきたいと云う意志、乃至は交渉内容に関する、然したる情報を把握できていない事を表している。

 4月1日現在の「日経BP net」のコラムの題名を拾いだすと、以下のようなものがある。≪TPPをてこに日本の農業を強くする発想を≫、≪労働市場の流動化」とともに「経営者の新陳代謝」も必要だ≫、≪成長戦略の策定に立ちはだかる「二つの構造問題」≫、≪既得権を崩す「新しい革新」が日本を変える≫、≪崩壊の危機に直面する日本の医療、重点分野への集約化が求められる≫≪「農業を成長分野に」でムダな補助金をばらまくのはやめるべきだ≫等々だ。

 しかし、TPPにせよ、規制改革にせよ、維新の会が考えている規制改革や統治機構の改革などは、この「日経BP net」に執筆している、竹中平蔵、大前研一、財部誠一、伊藤元重などだが、彼らが、何らかのミッションで動いているわけではないのだろうが、押し並べて強者の論理に貫かれている。言い換えるなら、金融資本の動きまわるスペースの拡張に論者として奮戦しているわけだが、逆に見ると、それだけ金融資本の動きまわるスペースが21世紀に枯渇した事実を表してもいる。

 自民党はまだしもマシな方で、維新などに至っては、弱者切り捨てどころか、中間層の人間まで切り捨てようと考えている。仮に、考えていないとすると、何をやっても上手く行かないのだから、何をやっても同じだろう。それなら、人気の出そうな、未だやっていない方向に向かっても、駄目なのは同じじゃん、と云う発想なのだろう。おそらく、竹中平蔵も、維新の会の顧問等に就任している論者たちも、責任ある立場で論を展開しているわけではないので、非人道的な事でも、美名のロジックで実験してみようとしている。

 安倍晋三にしたところで、失敗したら首相の座を追われるだけで、懲役刑や死刑になるわけではない。その点は、小泉、麻生、菅、野田がピンピン生きているのだから証明済みだ(笑)。結局、つまるところ、資本主義にとって、グローバル化が最期の逃げ場だったわけだが、そのグローバル化にも限界が近づいている証なのだろう。しかし、資本主義の限界を指摘する論者の意見を読んでみても、明日にも金融資本主義のプレイヤー達が消えてなくなるとは言っていない。努力に努力を重ねるわけだが、最終的にくたばると云うだけで、何時くたばるか、その辺はまちまちだ。ただ、その都度、バブルを起こし、経済的強者に水を補給するので、格差は益々拡がる。

 時期的に早い方の意見を参考にしても、おそらく中国やロシアなどBRICsで金融資本がひと暴れした後に起きると予測している。概ね、50年から100年先のようだ。問題は、カンフル剤的なバブルをどれだけ上手に創造し、破裂させ、収束するかの経済金融のテクニックの問題のようである。ただ、その都度、世界的に金融空間で蝕まれた資本が、その価値を失ってゆく。その先に何があるのか、誰ひとり、的確に説得力のあるイメージを提示しているわけではない。最後に、あまりにも怪しい竹中平蔵のコラムを参考に一本添付しておく。嫌がらずに、先ずは読んで、その騙しのロジックと議論のすり替えの上手さは一級品だ。是非、皆さまなりに検討して頂きたい。

≪ 「労働市場の流動化」とともに「経営者の新陳代謝」も必要だ
 成長戦略の要は労働市場とコーポレートガバナンスの改革だ。特に経営者は、解雇規制緩和を一方的に求めるだけではなく、みずからの痛みを伴う社外取締役の義務づけを推進するべきである。

 「成長会計」と呼ばれる概念
 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加の決断により、アベノミクスの3本目の矢である成長戦略に注目が集まっている。成長戦略を考える際に基本となるのが「成長会計」と呼ばれる概念だ。経済にはインプットがあってアウトプットがある。その関係性の中で、経済成長を見ていく必要がある。
 もちろん、成長会計におけるアウトプットは国内総生産(GDP)だ。GDPを増やそうと思ったら、インプットを増やさなくてはならない。インプットは 「資本」「労働」「生産性(技術進歩率)」の三つで構成される。
 産業競争力会議でも、成長会計の観点から成長戦略について議論している。まず、労働をどうやって増やすかということがテーマとなっている。
 日本は人口が減少している。そんな中、労働を増やそうと思えば、やはり女性と高齢者がもっと働けるような環境を整えなければならない。つまり、もっと働きやすい多様な労働形態をつくる必要がある。
 ところが、ここ数年の間、「正社員が良い。非正規雇用はダメだ」という乱暴な価値観が蔓延して、正社員を増やすことだけに議論が集中してきた。

 雇用形態は多様かつ公平なものに
 しかし実際には、正社員という働き方ではやっていけない人もたくさんいる。子育てや親の世話などがあるため、残業も含めフルタイムで正社員として働くことができないケースも少なくない。
 雇う側も、正社員だけでは困る。なぜなら、諸外国に比べて日本の正社員は法的に過剰保護されており、企業にとってはコスト高につながるからだ。そのため、非正規雇用などを増やしてきたという経緯があるのだが、非正規雇用がダメということになると、採用そのものを減らすしかない。非正規雇用を制限しても雇用は増えず、企業は拠点を海外に移してしまうことにもなる。
 働く側からも雇う側からも、多様な雇用形態を望む声が大きくなっている。ただし、多様だが公平な制度でなければならない。最終的には正社員と非正規雇用の区別をなくし、全員が公平なルールの下で保険・年金に加入し、長時間労働か短時間労働かといった雇用形態を自由に選べるようにする。そのための制度づくりが重要になってくる。
 その第一歩が、解雇規制緩和である。もちろん、解雇は簡単にしていいものではない。必要なのは、解雇のルールを明確にし、多様な雇用形態と公平性を経営的に可能とすることだ。
 現在、解雇に関するルールは、1970年代の判例によって縛られている。法律的には業績悪化による解雇(整理解雇)が可能となっているが、判例で事実上、整理解雇が禁止されており、企業は正社員を解雇することができなくなっている。判例による不透明なルールが、雇用のあり方を歪めていると言える。

労働移動を促し経済の生産性を高めるのが鉄則
 もちろん、雇う側と働く側を比べた場合、一般的に働く側の方が立場が弱いのだから、労働者の権利を守るという原則に立ちつつ、解雇のルールを再整備する必要がある。また、正社員も非正規雇用も同じ解雇のルールを適用することは、「同一労働同一条件」という原則を徹底することになり、雇用形態間の公平性も保たれる。
 そのうえで、生産性の高い部門に労働を移動させることが重要だ。経済全体にとってプラスになるのは当然のこと、労働者も賃金が上がり、労働意欲が高まることになる。
 労働移動を促し、経済全体の生産性を高めていくことは、成長戦略の鉄則である。ところが、近年の政権は雇用調整助成金によって労働者を塩漬けにしてきた。
 雇用を守るための雇用調整助成金は、一見すると労働者に優しい政策のように思える。しかし実際には、労働者の移動機会を奪い、生産性の低い部門に労働者を縛り付けてしまっている。経済全体の生産性も低迷させることになる。
 産業競争力会議では、労働移動についても提案を行った。厚生労働省も、この提案には前向きに回答している。  労働移動を促すには、たとえば現在、雇用調整助成金に使われている1000億円(ピーク時には6000億円)のお金を、労働移動のための補助金にシフトしていくことが必要だろう。これまで、労働移動のための補助金には5億円しか配分されてこなかった。1000対5の予算配分を逆転させるくらいの思い切ったことをしなくてはならない。

 産業の新陳代謝をどう高めるか
 ハローワークの外部委託も必要になる。具体的には、ハローワークが持っている情報(求人情報や求職情報)を、民間企業にも公開して、雇用のマッチングを進める。
 すでにオーストラリアでは職業紹介事業の民間開放を行っている。その結果、真剣にマッチングを進める民間企業が実績を伸ばし、公営の職業紹介所を凌駕している。
 このハローワークの外部委託についても、厚労省は前向きに回答した。ただ、回答文には「求人情報を公開する」としか書かれていない。求職情報は含まれないというのだ。
 おそらく厚労省としては、個人情報保護などを言い訳にしているつもりなのだろう。しかし、そこには現状を維持したいという意志が感じられる。
 こうした労働問題と合わせて、もう1つ議論されているのが、産業の新陳代謝をどう高めるかというテーマである。開業率を見ると、欧米の10%に対し、日本は5%と低い。さらに日本は廃業率も5%と低いのが特徴だ(欧米の廃業率は10%弱)。
 つまり、日本では収益性の低い企業が生き長らえているということになる。だから、新規企業の参入も行われにくい。日本では成果を上げられない社長がクビ にならずに居座れるシステムが存在することも影響しているだろう。

独立した社外取締役がいるのが当たり前
 そう考えていくと、議論はコーポレートガバナンスの問題に行き着く。具体的には、独立した社外取締役に関する取り決めの問題だ。普通の国なら、たとえば社長が2年間(1期)で実績を上げられなかったとしたら、「社長を辞めてくれ」と提言できるような独立した社外取締役がいるのが当たり前である。
 世界の中で日本だけが、独立した社外取締役の就任を義務づけていない。せいぜい、東京証券取引所の努力義務、社外取締役が1人置かれる程度なのだ。他の国では、取締役の半分が独立した社外取締役になるよう何らかの形で義務づけられている。
 この問題を議論すると、法務省は「経済界が反対しているので」と難色を示す。産業競争力会議でも、経済界出身のメンバーの何人かは、社外取締役の義務づけに反対だ。
 経済界はTPP問題や電力問題などで政府に要求を突きつけるのに、自分たちの居心地が悪くなることには反対する。こういう志の低さがある限り、やはり日本は良くならない。
 経営者は労働市場の流動化を求めるが、そうであれば、同時に経営者の流動化、新陳代謝も促さなくてはならないはずだ。このコーポレートガバナンスの問題や労働市場制度改革が、「日本の風景が変わった」と思えるほどの成長戦略を打ち立てる試金石になると私は考えている。 ≫( 日経BP net:企業・経営:竹中平蔵の「経済政策ウオッチング」)

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