世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●コラムと書籍紹介(2) 今上天皇“譲位問題”は難解

2016年08月07日 | 日記
憲法の涙 リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください2
クリエーター情報なし
毎日新聞出版

 

三島由紀夫と「天皇」 (天山文庫)
クリエーター情報なし
大陸書房


応援に感謝、励みになります!
にほんブログ村 政治ブログへ

●コラムと書籍紹介(2) 今上天皇“譲位問題”は難解

 明日、8月8日午後3時から、天皇陛下の「お気持ち」が放送される。実況ではなく、ビデオメッセージにしたと云うことは、一つは、表現上の問題点などが生じない為に、慎重に検証したいと云う考えがあるのだろう。第二に、実況生中継にすると、人々の生活環境により、不公平が生じる惧れや、各放送局により編集が、意図に関わりなく、本意と異なるニアンスになる惧れがあることではないのだろうか。時間の都合で、各放送局などは、当日の同時間以外は編集するだろうから、宮内庁は、公式HPで、全文、誰でも視聴できるよう配慮している。

≪ 天皇陛下のお気持ち表明は10分間 自らの原稿読み上げ
宮内庁は5日、天皇陛下がお気持ちを表明したビデオメッセージを8日午後3時に公表すると発表した。天皇の位を皇太子さまに譲る考えを周囲に示していた天皇陛下が、象徴天皇としてのお務めについての考えを、自ら示す内容になるという。
 ビデオメッセージの形式は、2011年3月の東日本大震災後に天皇陛下が国民にお気持ちを表明して以来2度目。宮内庁は「天皇陛下のお言葉、お気持ちが国民に確実、正確に分かりやすく伝わるのに一番ふさわしい方法」と説明した。
 お気持ちは約10分間にわたり、天皇陛下が自ら用意した原稿をカメラに向かって読み上げるという。テレビ各局が放送する予定で、宮内庁のホームページでも見ることができる。
 陛下が生前に皇位を譲るには皇室典範の改正が必要だが、憲法で天皇の政治的発言は禁じられている。そこで、退位などの表現は用いず、象徴天皇としての思いを表明する内容になりそうだ。英訳も宮内庁のホームページで公表されるという。
 宮内庁の山本信一郎次長は5日、「陛下が国民一人一人にお話しされることになった。大変重いことだと思う」と説明。事前に表明の日時を公表した理由については「多くの方々に関心を持っていただきたいため」と話した。
 お気持ち表明の日程をめぐっては、8月初旬に公表する案もあったが、すでに決まっていた公務のほか、広島、長崎の原爆の日にあたる8月6日と9日、全国戦没者追悼式の15日を避け、8日に決まった。リオ五輪開催中でもあり、競技日程と重ならない時間帯として午後3時に設定したという。
 安倍晋三首相は8日中にも記者団の質問に答える形で、政府としての受け止めを示す方向で検討している。大島理森衆院議長と伊達忠一参院議長もそれぞれ、コメントを発表する方向で調整している。 
 ≫(朝日新聞デジタル:島康彦、多田晃子)


 今夜は、以下の現代ビジネスの天皇継承問題について、詳細に伝えている。専門家から言わせれば、不十分かもしれないが、最低限の天皇継承問題についての情報としては、2つのコラムを読んでおくと、概ねの状況把握に役立つだろう。 *筆者の個人的感想だが、日本の象徴天皇を「元首」にすると云う主張をする人々も多いようだが、戦前回帰であり、それら勢力の主張の経緯から察するに、ノスタルジックな気持以外から主張されているように感じる。その意味で、天皇の地位が「象徴」から「元首」にすることは、色んな屁理屈はあるだろうが、隠された「天皇の地位の政治利用」に結びつくことなので、慎重を要するだろう。

 しかし、象徴天皇だからと言って、政治権力は存在しないとしても、その発言に「政治性」があることまで、否定すべきかどうかは疑問だ。おそらく、60代以上の国民には、天皇の存在に、一定の気持ちの拠りどころを持つことが多い。無論、それは、義務でもなんでもなのだが、内から出てくる感情の発露としてだ。或る意味で、日本人の八百万の神に、天皇が参加している情緒性があるのだろうと認識する。

 被災地を訪問し、見舞いの言葉を掛けるお姿は、被災者の心に、特別響くものがあるように思われる。安倍首相が行っても、「行政の長として、するべきことを、さっさとやれ」そう云う感情がメインになる。しかし、多くの被災者は、心の底から感謝しているように映像は流れる。たぶん、天皇には政治権限がないゆえに、感謝の念だけが生まれるのだろう。仮に「元首」となれば、被災者から、「何なにをしてくれ」と云う注文が口をつくかもしれない。それでは、被災者慰問の意味合いは半減するだろう。

 現憲法の解釈によると、天皇の行える国事行為等、極めて限定的であり、自由度がなさ過ぎると、筆者は感じている。「政治的権力」を持たない点は、それで良いのだろう。権限があるところでは、必ず、どの権力においても、腐敗や独り善がりが生まれるのだから。しかし、国民の総意に基づく、国の象徴であると云うことは、国民のメジャーな「良識」を代表していてもおかしくはない。つまり、天皇が、世界や日本国民の「良識」として、一定の範囲で「政治姓を帯びる発言」が行われても良いのではないかと云う感想だ。

 無論、憲法上、この「わたくしは、斯く斯く然々と思料する」と云う、天皇の感想表明を、どのように定義するか難しいだろうが、「政治性を含む感想表明」に、自由裁量が存在しても構わないと考えている。勿論、民主主義国家なので、選挙により選ばれた代議員が行うのが立法であり、行政でもあるわけだで、天皇の「政治性を帯びた発言」に影響を受けることなく、政治権限は行使される。しかし、その天皇が発する「天皇の良識感想」は、権力に対して、強制性はないが、メッセージ性はある。

 国民の劣化した感情を戒めるとか、他国に対して、「本意で、そのように考えているわけではありませんから」と云った、隠れた外交への武器になるだろう。ヘイトスピーチや、歴史修正主義発言、無差別殺人やテロ行為に対し、原理原則的に、筋を戻す役割は、それなりの価値がある。キリスト教国における、ローマ法王にも、政治的発言の自由があるのだから、我が国の象徴天皇にも、一定範囲で、発言の自由が認められても良いのだはないかと考えている。ローマ法王にも、象徴天皇にも、政治権限はないと云う絶対条件は必要だが。 おそらく、世界で、このように日本の皇室が現存している希少価値であり、筆者個人は、それを使わないのは、宝の持ち腐れだと思うことが多い。


 ≪ 天皇・皇后両陛下 熊本地震の被災地「日帰り強行軍」の舞台裏
 天皇、皇后両陛下は、死者の魂に祈りを捧げ、悲しみに沈む人たちを励ます。スリッパを履か ず、床にひざをつき、同じ目線で話を聞く姿勢は変わらない──。5月19日、熊本地震の被災地訪問に同行した朝日新聞記者・島康彦(宮内庁担当)が、被災 地に寄せるおふたりの思いを書き留めた。
*  *  *
「こちらが学生が亡くなったアパートです」
 騒音や振動で会話がままならない自衛隊ヘリコプターの機内。フリップの説明で示されたのは、東海大学の学生が亡くなった南阿蘇村のアパートである。
 窓際に座った天皇陛下は体を傾けるようにして小さな窓の外を見つめ、隣に座る皇后さまと、おふたりで黙祷(もくとう)を捧げた。
「両陛下はとてもお悼みになられている様子でした」  同乗した宮内庁幹部はそう明かした。
  5月19日、両陛下は熊本地震の被災者を見舞うため、日帰りで熊本県を訪れた。長崎県の雲仙・普賢岳噴火(1991年)、阪神・淡路大震災(95年)、新 潟県中越地震(2004年)、そして東日本大震災(11年)。災害が起こるたびに、現地に駆けつけ、被災者を励ましてきた。
 今回も「一日でも早い訪問を」と、希望していた。だが、余震が収まらず、復旧作業も困難を極めるなか、日程調整は容易ではない。
 5月は叙勲受章者の拝謁(はいえつ)が続き、多忙を極める。18日まで叙勲関連行事が入っていた。さらに、19日から22日まで静岡でのご静養が内々に検討されていた。
 だが、熊本地震を受け、両陛下は4月下旬に取りやめを決める。代わって、被災地をお見舞い訪問する案が浮上したのだ。現地の受け入れ態勢や、余震の危険性を視野に入れての検討が続き、詳細が固まったのは訪問の1週間前だった。
 震災直後のお見舞い訪問は、日帰りが基本だ。宿泊すれば、警備など現場に負担がかかってしまう。
 今回も、日帰りを前提に検討された。だが、熊本県は遠方なうえ、一日で南阿蘇村や益城(ましき)町を巡るには時間が足りない。移動に自衛隊ヘリが導入されたが、午前10時に皇居を発ち、皇居帰着が夜9時前という、異例の強行日程になった。
 最初の訪問地である南阿蘇村は、15人が亡くなり、いまだ1人が行方不明。役場庁舎前では、周辺で車上生活を送る被災者たちが、両陛下を待ち受けていた。
 両陛下は、庁舎に向かうマイクロバスの車内で、立ったまま、手すりにつかまるようにして左右に移動していた。沿道で待つ人たちを自ら見つけ、手を振って応えようとしたのだろう。
 記者はこうした両陛下の姿を、過去何度も目にしてきた。両陛下は、被災地や地方の訪問中、出迎える人に応えようと、電車やバスの車内を移動する。被災者と同じ目線にいようとするからこそ、両陛下の姿を目にする人たちは感激するのだと、改めて感じた。
 両陛下は、被災者の姿が目に入れば、設定された場所以外でも駆け寄って声をかける。南阿蘇村の庁舎前でも、両陛下は被災者に歩み寄った。まず、天皇陛下が優しく話しかけた。
「ご家族はみんな元気でしたか」「大変だったでしょう」  皇后さまも、次々に声をかけてゆく。 「怖かったでしょう」「暑いから、しっかり水分をとってくださいね」
 4、5分ほども続いただろうか。声かけを終えた両陛下が庁舎に入る瞬間、自然と拍手がわきおこった。
 続いて、すぐ近くにある南阿蘇中学校の体育館を訪れた。212人が避難する建物内は、生活スペースごとに青色のシートが敷かれただけで、隣との仕切りはない。両陛下はスリッパを履かず、二手に分かれると一人ひとりに歩み寄った。
  天皇陛下は硬い床に両ひざをつくようにして、じっくりと時間をかけて話をしているようだった。皇后さまはできるだけたくさんの人と触れ合おうと、体育館内 をせわしなく回った。被災者を見つけるとしゃがみ込み、また立ち上がって次の被災者まで小走りで近づく。その繰り返し。
 ご負担がないわけがない。帰りの熊本空港では、少し足を引きずるような場面もあった。
  3千人余りが避難生活を送る益城町に自衛隊ヘリで向かう際も、両陛下らしい姿勢があった。西原村や益城町、そして当初の計画より西に移動して熊本市東部を 視察した。できる限り多くの被災地を目にしたいという両陛下の意向を受けたものだった。そして、幾つもの場所で、両陛下は黙祷を捧げた。
 ≫(ライブドアニュース>※週刊朝日  2016年6月3日号より抜粋)


≪ 宮内庁が密かに頭を悩ます 浩宮が即位したら、「皇太子」がいなくなる 
秋篠宮も愛子さまも悠仁さまも、皇太子にはなれない
・12月23日に81歳を迎える今上天皇は、かねてよりご自身の陵墓案など「その日」を視野に入れた活動をされてきた。だが皇族の身分を規定する『皇室典範』には、代替わりについての大きな穴があった—。

■「皇太弟」に「皇太甥」
「えっ、そうなんですか?皇太子という存在は必ずいるものだと思ってました。皇太子がいない状況というのは、神話とかそのあとの時代ぐらいなのかと」(漫画家・倉田真由美氏)
・おそらく大多数の人が倉田氏と同じ思いを抱くだろう。今上天皇が代替わりし、現皇太子の浩宮徳仁親王が皇位に就いたとき、皇室には「次の天皇(皇嗣)」たる権利を持つ「皇太子」がいなくなってしまうのだ。
・そんな話があるか、秋篠宮文仁親王も悠仁親王もいらっしゃるではないかという反論が返ってくるだろう。確かに皇位継承権を持つ皇族男子は存在する。けれども、お二人は「皇太子」にはなれない。『皇室典範』が定めている皇太子の条件に合致しないからだ。 皇室典範が定める皇太子の定義にはこうある。
〈第八条 皇嗣たる皇子を皇太子という。皇太子のないときは、皇嗣たる皇孫を皇太孫という〉 ここに出てくる「皇子」とは、天皇の息子を意味する。だから現在、皇太子の地位には、今上天皇の長子である浩宮がついている。
・では、浩宮が即位して天皇となった場合はどうなるのか。浩宮には娘(愛子内親王)はいるが、息子(皇子)はいない。皇室典範第一条には〈皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する〉とあるので、息子がいない以上、「男系男子」の孫(皇太孫)も当然いない。
「現皇太子が即位した時点で、皇位第一継承者は弟宮の秋篠宮文仁親王 になります。ただ、秋篠宮は『皇嗣たる皇子』ではないから、皇太子にはなりません。歴史上の表記でいえば、〝皇太弟〟ということになる。悠仁親王はどう か。たとえば、父である秋篠宮が兄の天皇より先に亡くなった場合、悠仁親王が皇位第一継承者になるわけですが、悠仁親王は皇太孫ではなく、天皇の甥なの で、やはり皇太子にはなりません」(ノンフィクション作家・保阪正康氏)
・皇太子不在を、それほど問題にする必要はないという意見もある。近現代史研究家の浅見雅男氏は言う。
「歴代の天皇家において、皇太子が空位だったことは決して珍しいこと ではありません。皇室典範が穴だらけなのはそのとおりですが、むしろそれによって皇位継承は、昔から融通無碍におこなわれてきた。世継ぎの方に対して、皇 太子という呼び方を絶対にしなければいけないという決まり自体がないのです。もし、浩宮在位中に悠仁親王が皇位継承第一位になった場合は、『皇太甥』とするのが、一番自然ということになるでしょう」
・今の世に皇太甥と書いて「こうたいせい」と読める人がはたしてどれだけいるだろうか—。

■「東宮職」もなくなる
皇室ジャーナリストの山下晋司氏が語る。
「皇太子がいなくなれば、宮内庁法第六条によって〈皇太子に関する事 務をつかさどる〉とされる『東宮職』がなくなります。東宮職は、現在約50名。ほかに料理人や運転手などの管理部の職員もあわせると六十数名の居場所がな くなります。解雇できませんので人事異動で対応するしかありませんが、それだけの人数を異動させるとなると大変です。宮内庁には頭の痛い問題でしょう」
・皇太子としての公務を誰が担うのか、という問題も、当然出てくる。
「皇太子殿下が即位されれば、皇位継承順位第一位の秋篠宮殿下が、今の皇太子殿下の職務を引き継がれるでしょう。そうすると、宮家皇族としてこれまで秋篠宮殿下がやってこられた公務はどうなるのかという問題が出てきます。 外国交際の面でも、悩ましい問題が生まれるでしょう。事実上の皇太子 ではあるが、法的には一宮家の親王という場合、外国に対してクラウンプリンス(皇太子)という言葉を使うのか、それともただのプリンスとするのか。当然、 次期皇位継承者ということでクラウンプリンスとして活動していただいたほうが日本の国益にはなるでしょう。国内と海外で使い分けをするという可能性もあります」(前出・山下氏)
・東宮家と宮家では、公的な活動の内容も大きく違ってくる。宮家皇族は公益法人など各種団体の名誉職に就いて活動できるが、皇太子・皇太子妃は、天皇・皇后と一緒で、原則的には団体の名誉総裁には就かない。秋篠宮は、現在、世界自然保護基金ジャパン名誉総裁や日蘭協会名誉総裁など多くの名誉職に就い ているが、皇太子の職務を引き継いだ場合、これら名誉職や、その活動はどうするのかもはっきりしない。実際問題として、宮家皇族としての公務と皇太子の公 務を兼任するというのは難しいだろう。
・もっと大きな問題もある。「生活費」の問題だ。
・皇族には「内廷皇族」(皇后・皇太后・皇太子・皇太子妃など)と、内廷から独立して一家をかまえている「宮家皇族」の2種がある。ちなみに特別な存在である天皇は、内廷皇族にも宮家皇族にも含まれない。
・国が支出する費用は、内廷皇族と宮家皇族ではまるで違う。天皇および内廷皇族に支出される「内廷費」は、平成26年度は年額3億2400万円。現在 の状態のまま天皇が代替わりすると仮定すれば、内廷皇族は美智子皇太后、雅子皇后、愛子内親王の3方。天皇を加えて4方の世帯ということになる。仮に愛子 内親王が結婚して皇籍を離脱し、3方になったとしても、金額は同じだ。
・他方、宮家皇族に支出される「皇族費」は、親王で3050万円、親王妃がその半額というように、頭数ごとに皇室経済法で定められているが、内廷費と比べると極端に少ない。
・秋篠宮、あるいは悠仁親王が、事実上、皇太子の役割を担う場合も、現行法では内廷費の対象にはならないので、すべて皇族費でやりくりしなければならないという事態になるのだ。
・内廷費と皇族費は、いわば皇室のプライベートのお金だが、それとは別に、内廷諸費以外の宮廷諸費に充てるための「宮廷費」というものがある。宮内庁 が経理を担当する公金で、平成26年度の予算は55億6304万円。この宮廷費も、支出内容によっては、内廷皇族は使うことができる。たとえば、愛子内親 王の学費・教育費は、宮廷費から支出されている。
「将来の天皇なのだから、悠仁さまの学費もオモテの金である宮廷費から出しましょうという話があったんです。でも、これは実現せず、悠仁さまの学費は、従来どおり秋篠宮家の皇族費から出されたと聞いています」(宮内庁関係者)

■「次の天皇=皇太子」の違和感
・このように、皇太子の不在により多くの問題が噴出してくる。そもそもなぜこんなことになっているのか。 「今の皇室典範、皇室経済法という法律も、宮内庁という組織も、皇位は親子継承しか前提にしていない。だからこんな問題が生じてきたのです。確かに今までは親子継承が6代も続いてきた。しかし、そのほうが日本の歴史上から見れば珍しいのです」(前出・保阪氏)
・愛子内親王を皇太子とすれば、これらの問題は回避できる。けれども、この方法は無理だろうと言うのは、宮内庁担当記者だ。
「愛子さまを皇太子にするということは、『女系・女帝』を容認するということです。でも、これは国論を二分しかねない大変革で、宮内庁はもちろん、政府も手をつけたくないでしょう」
・では、どうすればいいのか。皇室典範にある皇太子の定義を変えるという案が、宮内庁でひそかに検討されているという。
「現行の第八条の条文を、『皇位継承順位第一位の皇族を皇太子とい う』に改正する方法があります。そうすれば、皇太子殿下が即位された時点で秋篠宮殿下は皇太子となります。皇太孫に関する部分を削除する必要はあります が、この皇太子の定義を変えるだけで、内廷費・皇族費のことや東宮職のことなどの問題は解決します」(前出・山下氏)
・だがそれでは、従来「天皇の息子」だったはずの皇太子に、「天皇の弟」がなっているという国民の違和感はぬぐい難い。
・宮内庁ははたしてどう考えているのか。
「代替わりの際に皇太子に当たる皇族がいなくなることについての見解」を質すと、以下のような回答があった。 「(代替わりとなった場合の秋篠宮の呼び名として)現在、『皇太弟』という制度はありません。 (将来の対策について)将来的に生じうる様々なケースを想定し、研究しておくことは有益であると考えております」
・前出・浅見氏は言う。 「皇室典範第三条には〈皇嗣に、精神若しくは身体の不治の重患があ り、又は重大な事故があるときは、皇室会議の議により、前条に定める順序に従つて、皇位継承の順序を変えることができる〉とあります。たとえば秋篠宮が皇 嗣となって10年、20年後に兄の天皇ともども老年に達した場合、皇位の安定のためにも壮年となった悠仁親王と皇位継承順位を取り替えてはどうか、という 意見が出てくるかもしれません」
・声を上げるとたちまち議論百出となるのが皇室問題。
冒頭の倉田氏は「皇位継承で一番大事なのは、波乱がないことだと思うんです」と案じている。おそらく宮内庁も、根回しをすすめながら、じっとタイミングを窺っているのだろう。
 ≪現代ビジネス>(オトナの生活>賢者の知恵「週刊現代」14年11月29日より)


 ≪ 岐路に立つ天皇家〜"菊のカーテン"の裏側で何が起きているのか
・なぜ、いま、このタイミングでの報道なのか。天皇の「本心」はどこにあるのか。御簾の向こう側で何が起こっているのか。そして、これからの皇室はどうなっていくか。国民の知りたい疑問に答える。

■NHKは誰に聞いたのか
・なぜ今、このタイミングだったのか。情報源はいったい、誰なのか。NHKが7月13日夕方に報じた天皇「生前退位」のスクープが様々な憶測を呼んでいる。 「特ダネをものにしたのは橋口和人宮内庁キャップです。10年以上、宮内庁を担当し、皇太子の子供の性別や、紀子妃のご懐妊などをスクープしてきました。特に侍医グループには深く食い込んでおり、『陛下の体温まで知る男』と呼ばれています」(全国紙宮内庁担当記者)
・御年82歳となった天皇の意向を受け、「生前退位」について宮内庁の幹部が検討を始めたのは、今年5月からのことだった。その内容は逐次、首相官邸の杉田和博官房副長官にも報告されていたという。
「NHKもこうした動きは察知し、実はもっと早い段階で一報を打てる状態ではあったのです。事前にNHKサイドが官邸に確認取材に走ったところ、検討しているのは事実だと内々に認めたものの、参院選と重なってしまうため、報道の時期の調整をできないか、と。 生前退位は皇室典範の改正なしには不可能ですが、皇室のあり方を見直す意味では憲法改正にもつながってきます。 改憲を目指す安倍政権にとってみれば、選挙期間中に改憲の議論が浮上し、世論に刺激を与えることは避けたかった。そんな政権の意向が反映され、報道が参院選後になったとも言われています」(自民党幹部)
・天皇の胸中を知りながら、報道各社は安倍政権の顔色を窺って、選挙を理由に報道を控えた可能性があるというのだ。
・天皇はこうした政権の先行きにこそ不安を抱いているのではないかと、宮内庁元幹部は推察する。
「天皇陛下は平和憲法の精神を遵守し、象徴天皇として国内外で慰霊の旅を続けて、平和を希求してこられました。天皇を『日本国の元首』にし、自衛隊を『国防軍』にするような自民党の憲法改正草案に危機感を抱かれたとしても不思議ではありません。 陛下が生前退位のご意向を側近に明らかにすることで、ご自身の立場を規定している憲法論議が活性化し、むしろ拙速な改憲論には歯止めがかかると、お考えになったのかもしれません」
・そもそも「生前退位」自体は今になって降って湧いた話ではない。数年前から天皇は皇太子と秋篠宮、時には美智子皇后を交えて、月に一度会合を持ち、その場でご自身の体調について相談されてきたという。
「5年前には秋篠宮殿下が天皇陛下の公務について『定年制というのは、やはり必要になってくると思います』と皇族として異例の発言をなさっています。 皇太子さまも『公務の負担軽減』について、『配慮がますます重要』と口にされている。'12年に心臓手術を受けられた頃から、宮内庁内でも公務を大幅に軽減しないといけないという声が強くなってきました。 ところが陛下は、ほとんど公務を軽減されませんでした。天皇というのはあくまでも公務が完璧にできてこそ天皇だというお考えがあるから、ご自身が高齢でできなくなったら、できる人が天皇になるべきだというお考えを持っているのだと思います」(皇室ジャーナリスト・久能靖氏)
 
■皇太子の還暦前に……
・皇太子も56歳。天皇が即位した時の年齢を超えた。このまま皇位の継承がなければ、即位するときの年齢は還暦を過ぎることも考えられる。
「天皇は即位してから国民に敬愛されるまで、何年もかかります。実際、今の天皇も何かと昭和天皇と比べられてご苦労されました。だから、少しでも早く即位して、実績を積み、尊敬される天皇になってほしいというお気持ちだと思います。 60歳を過ぎてからご公務を一から始めるのは大変です。世間では定年退職する年齢ですよ。せめて皇太子が60歳になる前に即位を、と天皇陛下はお考えになっているのかもしれません」(前出・宮内庁担当記者)
・象徴天皇は政治関与を制限されているため、法律の改正を伴う生前退位を自ら口にすることはできない。熟慮の末、ついに漏れ伝わってきた天皇のご意向。国民が天皇のあり方を考える時がやってきたのである。

■愛子天皇の可能性は?
・雅子妃の体調が、目に見えるように回復しているという。 ・前出の久能氏が言う。
「4月に行われた神武天皇式年祭で雅子さまは皇后陛下の御名代を務め られ、御拝礼の所作をこなされていたと出席していた人から聞きました。たしか7年ぶりですが、手順も間違えることなく完璧だった、と。それを考えると、雅 子さまなりに皇后になるお心構えはできていると思います」
・雅子妃が「適応障害」と診断されて12年。春の園遊会に出席したり、2週続けて地方公務に出かけたりと、このところ積極的に公務に携わっている。
「要因は天皇の生前退位のご意向ではないでしょうか。皇太子から雅子さまへも伝わっているはずですから。雅子さまの主治医も『環境が変われば体調は改善する』と侍医に漏らしています。皇后になることもまた、大いなる環境の変化と言えます」(宮内庁関係者)
・天皇の生前退位が行われるかは別としても、いずれ皇太子と雅子妃が天皇、皇后に即位する。議論となるのは、今年15歳になる愛子さまの今後だ。
・皇室典範は女性天皇を認めていないため、愛子さまに皇位継承権はなく、皇太子が天皇に即位すれば、皇位継承権第1位は秋篠宮に、第2位は悠仁さまとなる。
「雅子さまは外務省のキャリア官僚として働くキャリアウーマンでした。男女平等志向をお持ちなので、なぜ愛子さまが女性というだけで天皇になれないのかと疑問を抱くこともあるでしょう。 かつても女性天皇はいたわけですから、皇室典範を改正して、愛子さまを天皇にする方法を雅子さまが意識しているとしても、それは自然なことではないでしょうか」(前出とは別の宮内庁関係者)
・現行の規定のまま時が経ち、悠仁さまの時代になれば、皇族が悠仁さまとその家族だけになる事態も考えられる。
・そうなる前に皇室典範を改正し、女性宮家の創設を議論することは必要に違いない。
「(一般人を父とする)女系天皇まで容認すると、保守派から大きな反発が生まれるので議論は確実に紛糾しますが、女性天皇までは認めてもいいのではないでしょうか。愛子さまが天皇になれば、将来、悠仁さまとご結婚される方へのプレッシャーもいくばくかは和らぐでしょう。 天皇陛下が『数年内』の退位を漏らされたのは女性宮家の問題もあるのです。秋篠宮家の眞子さまは24歳で、年齢的にはご結婚されてもおかしくありません。そのため、女性宮家を創設して皇族として残すなら、早く決定しないといけないのです。 眞子さまがご結婚された後に法律が改正されて女性宮家の創設が容認されたら、眞子さまは一般人で、妹である佳子さまが皇族のままという事態になってしまいます」(前出・久能氏)
・悠仁さまお一人だけに皇位継承の重責を担わせるのはさすがに酷というもの。雅子妃が「愛子を天皇に」と考えているとしたら、それは皇室の未来のためには理に適った選択とも言えるのだ。

 ■天皇はとにかく激務
・天皇の仕事はとにかく激務だ。国会の召集や法律の公布、内閣から届く書類を決裁する「執務」といった「国事行為」に加え、さまざまな人に会う「拝謁」などがある。
「『執務』のお姿は国民の目には触れませんが、毎週火曜日と金曜日の定例閣議後にはその日のうちに内閣府から関係書類が届けられます。これはご静養中であろうと、国内にいらっしゃる限り届けられるものです。陛下は丁寧に目を通され、ご署名などをされます。 春と秋の叙勲の時期には数千人分の名簿も届き、陛下はこれにもすべて目を通されています。陛下が外国ご訪問中やご入院中などの場合は、皇太子殿下が臨時代行としてこれに当たります」(元宮内庁職員・山下晋司氏)
・地方訪問を含む「行幸啓」も重要な公務の一つだ。新幹線で地方を訪れる際、天皇は一編成全車両を借りきって移動する。一方、皇太子は3両。ちなみに宮家は数席を押さえるだけで、一般の乗客と同じ車両で移動する。
「外国を公式訪問される時は、天皇陛下も皇太子殿下も通常は政府専用 機をお使いになります。ただ、訪問国での待遇は当然違います。天皇陛下は『国賓』で、皇太子殿下は『公賓』といえるでしょう。たとえば、各国の元首など、 賓客が一堂に会する場なら天皇陛下はかなり上席になりますが、皇太子殿下ですと各国元首の下になります。 普段のお食事内容に違いはありません。御料牧場の生産品は、天皇陛下にも皇太子殿下にも同じようにお渡ししています」(前出・山下氏)
・下世話な話だが、おカネについてはどうだろうか。天皇家には現在、プライベートに使える「内廷費」として、毎年3億2400万円が支出されている。これは皇太子夫妻、愛子さまも含めた金額だ。
・一方、宮家皇族である秋篠宮家には「皇族費」として6710万円が支出されている。天皇が生前退位したとしても、現在の皇室典範では秋篠宮を皇太子とする規定がないため、現状では秋篠宮家に支出される金額はこのままだという。
「秋篠宮家、とくに紀子さまが周囲にお漏らしになられているのが、おカネの問題です。後々天皇をお継ぎになる可能性もある秋篠宮さま、さらに悠仁さまに帝王学を教育されるには、いまの皇族費では賄いきれないというのです。 そこで、生前退位に付随して進められる皇室典範の改正で『皇太弟』のポストを新設するなりしてもらい、予算を皇族費から内廷費に切り替えてもらい、立場に見合った金額を支出して欲しいとお望みのようです」(宮内庁担当記者)
・予算や扱いの面で、天皇は皇太子とも大きく異なる唯一無二の存在だ。その分、公務は極めて厳しい。体力、気力がなければ、とても天皇としての重責は果たせない。
≪現代ビジネス>(オトナの生活>賢者の知恵「週刊現代」16年8月6日号より)

象徴天皇という物語 (ちくま学芸文庫)
クリエーター情報なし
筑摩書房


天皇論 象徴天皇制度と日本の来歴 (文春学藝ライブラリー)
クリエーター情報なし
文藝春秋


応援に感謝、励みになります!
にほんブログ村 政治ブログへ



コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。