世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●天皇譲位問題、安倍官邸板挟み 国民9割VS日本会議

2016年08月12日 | 日記
なぜ会津は希代の雄藩になったか 名家老・田中玄宰の挑戦 PHP新書
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●天皇譲位問題、安倍官邸板挟み 国民9割VS日本会議

 陛下がビデオ・メッセージで「お気持ち」を表明されたわけだが、 天皇のお気持ちの論旨には、国民の総意による「象徴天皇」にも、日本社会同様に高齢化問題が訪れている。その結果、定められた国事行為のみであっても、完全に貫徹することへの危惧を抱く。摂政制度と云うものもあるが、憲法が求めている「象徴天皇」の国事行為は、象徴天皇自身が実行出来るという大前提があるわけで、国民の総意によって成り立っている「象徴天皇」が、自ら行うべき事が重要な「国事行為」であり、臨時代行は別にして、長期にわたり、摂政が行うような状況は好ましいとは考えていない。

 筆者は、陛下のビデオ・メッセージを、以上のように解釈した。そして、この問題は、日本社会の状況から類推する限り、将来的にも起こり得る問題と捉えていると受けとめるべきだ。つまり、今上天皇一代に限る問題ではなく、「象徴天皇」の皇位継承のルール作りを、皇室の少子化問題も加味した上で、恒常的定めが加えられることを望んでおられたと解釈している。この陛下の「お気持ち」は、天皇を「元首」に祭り上げる憲法改正を核に目論んでいる勢力にとっては、天皇の「生前退位(譲位)」など、あってはならない観念であり、悲鳴が聞こえるわけである。安倍首相本人が、象徴天皇を元首に変える問題に、どの程度拘っているのか判らないが、彼を強力に支持し、周辺を取り巻いている「日本会議勢力」にとっては、死んでも認めたくない「生前退位(譲位)」と云うことになる。

 「万世一系」と「崩御」は、大日本帝国憲法においても、日本国憲法においても、国家神道系勢力にとっては、一片たりとも譲ることの出来ない、生命線である。現在、与党においては、特別立法で「今回に限り法」で、ご都合主義な詐術を用いて乗り切ろうなどと考えている輩もいるようだが、特別立法であっても、日本会議的主張が本物であるなら、一切認める余地はない。彼らの主張がホンマものである。つまり、原理原則の原点であるのなら、是々非々と云う政治判断をするようであれば、まさに、ご都合主義のまがい物イデオロギーだと、白状するに同義である。国家神道・日本会議の唯一の美点、スパッと切り口が鮮明なことであろう。この切り口に歪みや汚れがついても平気な“「万世一系」と「崩御」”は容認。こう云うお茶濁しのような弥縫策につき合うようなら、その唯一の潔さまで失うことになる。

 皇室典範の改正であろうが、特別立法でお茶を濁そうが、原理原則では、同じことである。であるなら、より上位法律を改正するのが筋だ。特別立法云々で、今上天皇が退位なされば、上皇とか太上天皇と云う存在が生まれる事実は変らないのだから、幻の「元首」願望族にとって、忌々しき事態である。つまり、象徴天皇の「元首」改憲論が、根本的に封じられたと言って過言ではない。国民の考えが、上述のような根本問題まで加味して、賛成反対を選択したとは思えないが、国民に寄り添う「象徴天皇」であれば、日本国民が構成員である日本社会の影響を受けるのは当然と、解釈したのであれば、理屈抜きに、実は正しい選択である。

 まあ、現実には、安倍首相や日本会議系の勢力の人々にとって、都合の良い「元首」を望んでいると云う本音があるので、原理原則はさておき、実質的に「元首化」出来ればいいか‥と、ものは考えよう等と考えないでもないだろうが、現時点では、日本会議系の完敗であり、グタグタと外野から声高に威嚇的発言をするしか手段がなくなっているようだ。安倍政権も、時間延ばしを目的に、有識者会議を立ち上げ、グタグタと時間を稼ごうとするのだろう。安倍首相にしてみれば、この問題で旗幟を鮮明にしたくないのが本音なので、自分の在任中には結論を出さないのではないのだろうか。どちらに転んでも、国民か、日本会議勢力のどちらかを敵に回すのだから。以下に、上記問題に関する、幾つかの情報(報道)を参考引用する。


≪ 天皇陛下の生前退位「認めるべき」89% 本社世論調査
 日本経済新聞社とテレビ東京は9~11日、天皇陛下が「生前退位」の意向を示唆された「お気持ちの表明」などを受けて緊急の世論調査を実施した。 現在は認められていない生前退位を「認めるべきだ」は89%に上った。「認めるべきでない」は4%。生前退位とともに皇位継承を安定的にするため女性・女 系天皇や女性宮家を検討すべきかどうかは「どちらも検討すべきだ」が58%に上った。
 生前退位を認めるべきだとの回答は、年代別、性別、 職業別、支持政党別などでみて、あらゆる層で9割前後に上り、全国民的に満遍なく支持を得ているといえる。聞き方が異なるため単純な比較はできないが、7月下旬の調査では生前退位の容認派は77%で、お気持ちの表明で支持が広がった形だ。
 皇室のあり方を定めた皇室典範には生前退位に関する規定がなく、生前退位を実現するには皇室典範を改正するか、今の天皇に限った特例法をつくる必要がある。
 生前退位を認めるべきだとした人に、政府はどう対応すべきか聞いたところ、恒久的に「今後の天皇すべてに認める制度」が76%に上った。「今の天皇陛下に限って認める制度」は18%だった。
 憲法は天皇の政治的な言動を認めていないが、陛下のお気持ちの表明について「憲法上、問題があるとは思わない」が83%で「問題がある」は9%だった。
 安倍内閣の支持率は58%と、7月調査から横ばい。不支持率は32%で3ポイント低下した。  調査は日経リサーチが9~11日に全国の18歳以上の男女を対象に乱数番号(RDD方式)による電話で実施。固定電話と携帯電話を合わせて1016件の回答を得た。回答率は45.2%。

◆本社緊急世論調査 (8/9~8/11に実施。単位%、カッコ内は7/22~7/24の前回調査。四捨五入したため合計が100%とならない場合がある)

Q1.あなたは安倍内閣を支持しますか、しませか。  
支持する 58(58)
支持しない 32(35)
いえない・わからない 10(7)

Q2.あなたは今、どの政党を支持していますか。ひとつだけお答えください。
自民党 41(46)
民進党 12(11)
公明党 5(3)
共産党 5(6)
おおさか維新の会 3(5)
社民党 1(0)
生活の党と山本太郎となかまたち 0(0)
日本のこころを大切にする党 0(1)
その他の政党 0(0)
支持政党なし 26(24)
いえない・わからない 6(4)

Q3.あなたは改造後の安倍内閣や自民党執行部の顔ぶれを評価しますか、しませんか。
評価する 40
評価しない 34
どちらともいえない 9
いえない・わからない 16

Q3SQ1.(「評価する」と回答した人に)評価する最大の理由は何ですか。ひとつだけお答えください。
首相が指導力を発揮した 18
能力主義が重視された 8
派閥の意向にとらわれなかった 10
首相に近い議員が数多く起用された 7
安定感がある 27
若手の登用が進んだ 9
女性の登用が進んだ 18
その他 0
いえない・わからない 2

Q3SQ2.(「評価しない」と回答した人に)評価しない最大の理由は何ですか。ひとつだけお答えください。
首相が指導力を発揮しなかった 4
能力主義で選ばれなかった 11
派閥の意向にとらわれていた 17
首相に近い議員が数多く起用された 28
安定感がない 14
若手の登用が進んでいない 14
女性の登用が進んでいない 3
その他 2
いえない・わからない 7

Q4.安倍政権に優先的に処理してほしい政策課題は何ですか。次の中からいくつでもお答えください。
景気対策 37
財政再建 23
年金など社会保障改革 51
規制改革 5
原発・エネルギー政策 21
地方の活性化 25
憲法改正 11
外交・安全保障政策 27
その他 1
いえない・わからない 7

Q5.政府は事業規模が28兆円を超える経済対策をまとめました。あなたは、これが景気回復につながると思いますか、思いませんか。
つながると思う 24
つながると思わない 61
どちらともいえない 3
いえない・わからない 13

Q6.安倍首相の自民党総裁としての任期は再来年の9月までです。総裁の任期が終わると首相も交代することになります。自民党総裁の任期を延長して安倍首相が続投することに、あなたは賛成ですか、反対ですか。
賛成だ 41
反対だ 45
どちらともいえない 7
いえない・わからない 7

Q7.9月に民進党の代表選が行われます。岡田克也代表に代わる新しい代表にふさわしいと思うのはだれですか。次の中から1人だけお答えください
江田憲司(代表代行) 2
枝野幸男(幹事長) 8
長島昭久(元首相補佐官) 3
長妻昭(代表代行) 4
細野豪志(元環境相) 5
前原誠司(元外相) 10
蓮舫(代表代行) 39
その他 0
いえない・わからない 27

Q8. 天皇陛下が、高齢になるに従い、象徴としての務めを続けるのが難しくなるのではないかという気持ちを明らかにし、事実上、存命中に天皇の位を譲る「生前退位」の意向を示されました。憲法は天皇の政治的な発言を認めていませんが、あなたは、今回の「お気持ちの表明」は、憲法上、問題があると思いますか、思い ませんか。
憲法上、問題があると思う 9(11)
憲法上、問題があるとは思わない 83(80)
どちらともいえない 1(2)
いえない・わからない 7(7)

Q9.あなたは、天皇の生前退位を認めるべきだと思いますか、思いませんか。
生前退位を認めるべきだ 89
生前退位を認めるべきでない 4
どちらともいえない 3
いえない・わからない 5

Q9SQ1.(「生前退位を認めるべきだ」と回答した人に)生前退位を認める場合、政府はどう対応すべきだと思いますか。
今の天皇陛下に限って、生前退位を認める制度をつくるべきだ 18
今後の天皇すべてに、生前退位を認める制度をつくるべきだ 76
どちらともいえない 1
いえない・わからない 5

Q9SQ2.(「生前退位を認めるべきでない」と回答した人に)生前退位を認めるべきでない理由は何ですか。次の中からいくつでもお答えください。(回答者の母数が少ないため、参考として選択肢だけを回答の多い順に並べた)
天皇の位にあり続けてこそ象徴天皇といえるから 公務を代行する摂政という制度がすでにあるから 天皇の意思でなく強制的に退位させられる可能性が出てくるから 長い皇室の歴史では退位した天皇と次の天皇との間に争いが生じたことがあるから

Q10.皇室のあり方では、皇位の継承を安定的にするため、女性や女系の天皇を認めることや、公務を分担しやすくするため、女性の宮家を認めるべきだとの議論もあります。これらを生前退位の問題と一緒に検討すべきだと思いますか。
女性・女系天皇は検討すべきだ 16
女性宮家は検討すべきだ 6
どちらも検討すべきだ 58
どちらも検討すべきでない 11
その他 0
いえない・わからない 10
 ≫(日経新聞電子版)


 ≪ 特別立法軸に検討 政府、制度化を避け
 政府は、天皇陛下が生前退位の意向がにじむお気持ちを表明されたことを受け、現在の陛下に限る特例として退位できる特別法の制定を軸に検討を始めた。皇室典範改正で永続的な制度とした場合、皇太子さまも含めた将来の天皇にも退位を認めることにつながり、象徴天皇の地位が不安定になるとの見方も出ているためだ。世論の動向や近く設置する有識者会議などを参考にしながら、調整を進める。 安倍晋三首相は周辺に「現在の陛下に限った制度を考えている」との趣旨を漏らしているという。
 憲法2条は皇位について「皇室典範の定めるところにより」継承すると定めている。現在の典範には退位規定がないため、生前退位を実現するには「天皇が崩 じたときは、皇嗣(継承順位1位の皇族)が、直ちに即位する」と定める典範4条の改正が必要になる。または1代限りの退位をできるようにする特別法でも可 能で、政府関係者は「特別法も事実上、典範の一部だとみなせば、憲法2条と矛盾しない」と話す。
 法整備では退位の条件をどう明確に規定するかが課題だ。陛下は8日に公表されたビデオメッセージで、高齢に伴い「全身全霊をもって象徴の務めを果たして いくことが、難しくなる」と述べた。典範改正でこうした条件を明文化すると、将来の天皇も縛られ、強制的な退位につながりかねない。首相を支える保守系の 自民党議員らは、退位の制度化に慎重で、必要最小限の法的措置にとどめたい考えが強い。「あらかじめ制度化するより特別立法とする方が、恣意(しい)的な 退位や強制退位の弊害が比較的小さい」(園部逸夫・元最高裁判事)とする学説もある。
 憲法1条は天皇の地位を「主権の存する日本国民の総意に基づく」と定めているため、政府関係者は「安全保障関連法の強行採決のような事態は避けなければ ならない」として、与野党の幅広い賛成が必要との見方を示す。与野党の議論も政府の対応に影響を与える可能性がある。
 ≫(【毎日新聞:田中裕之】 )


≪ 自民保守系、退位に慎重 地位揺らぐ懸念
 安倍晋三首相を支える保守系の自民党議員は、生前退位に慎重だ。現行制度の範囲内で、天皇に代わって国事行為を行う「摂政」で対応すべきだとの意見が多 かった。首相に近い官邸関係者は「摂政を認める理由に『公務に支障を来すため』と加えるのが落としどころ」と話していたが、天皇陛下が8日のお気持ちで摂 政に否定的な考えを示された後、「摂政のカードは切れなくなった」と残念そうに語った。
 保守系議員が慎重なのは、天皇の地位が揺らぐことへの懸念があるためだ。過去に政府が検討した女性・女系天皇や女性宮家に反対したのも、皇位継承の安定 性が失われかねないという危機感からだった。皇室典範改正の議論に関わった元政府高官は、保守派の懸念を「女系天皇も退位も一つでも制度を動かすと、皇室 全体に影響すると考えている」と解説する。
 近代国家として明治憲法と旧皇室典範を定めて以来、終身天皇制が続く。明治憲法を作った初代首相の伊藤博文は1887年の会議で、「ひとたび践祚(せん そ)(皇位の継承)された以上は随意にその位をのがれる理はない」と主張した。天皇を「統治権を総攬(そうらん)」する「国家の機軸」(伊藤)と位置づけたうえで、天皇の意思で政治が左右されない制度設計とした。また伊藤が発行した旧典範の解説書「皇室典範義解(ぎげ)」は、権力を持った臣下が天皇を強制 退位させたことが、室町時代前半の「南北朝の乱」の原因になったと指摘している。
 敗戦で天皇の地位が揺れたこともあった。連合国軍総司令部(GHQ)の占領下の1946年帝国議会で、退位が話題になった。しかし金森徳次郎国務相は 「国民の総意によって国の象徴たる仕事を行うことは、一人一人の都合によってご退位になる筋合いのものではない」「天皇に私なし」と答弁した。47年施行 の現憲法は、天皇を「国民統合の象徴」と新たに定めたが、改定した現典範と合わせて終身天皇制は貫いた。
 以後、昭和天皇の晩年、高齢を理由に退位が国会で議論された際も、政府は(1)歴史上、上皇や法皇の弊害があった(2)政治的な思惑で天皇が退位を強制されることはないか(3)恣意(しい)的に退位すると天皇の地位が安定しない−−とする答弁を踏襲した。
 8日に示された陛下のお気持ちは、近代天皇制の転換を提起した。象徴としての務めについて「人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うこと」 を重視し、「各地への旅も天皇の象徴的行為として大切」と語った。憲法が定める国事行為だけでなく、象徴としての務めを「国民と共に」果たしてこその天皇 だと、平成流の天皇像を強調した。
 ただし保守系の憲法学者は「陛下は勤勉で公務を拡大したが、象徴としてのハードルを高くすると、次の世代の天皇が大変だ」と懸念を示す。首相と近い別の学者も「皇位継承に政治や天皇個人の意思が介入できないから、天皇の地位は安定している。退位の議論をしたら国の機軸が揺らぐ」と話し、「官邸は対応に困っているようだ」と明かした。
 対応を検討している政府と並行し、自民党は近く党内で議論を始める。お気持ち表明後、保守系議員は表立った発言を控えるが、首相の側近議員は「皇室をよく知る人ほど慎重だ」と話している。
 ≫(【毎日新聞:野口武則】)


≪「天皇陛下のお気持ち」心と魂の叫びだ 
作家・保阪正康さんが読み解く
 八日公表された天皇陛下のお気持ちには、生前退位への強い意向がにじんだ。法整備や制度変更を求める政治的な発言ができないという大きな制約がある中で、陛下は何を伝えようとされたのか。皇室に詳しいノンフィクション作家の保阪正康さん(76)に読み解いてもらった。
 心と魂の叫びだ。「平成の玉音放送」であり「天皇の人権宣言」ともいえる。六月だったか、天皇、皇后両陛下にお目にかかる機会があった。お元気そうに見えて、代替わりは今すぐの問題ではないと感じていた。だが象徴天皇というご自身がつくってきた道を歩みたいと思いつつ、体がそれに応えられるかどう か不安に思っておられたのだろう。
 冒頭で「個人として、これまでに考えて来たことを話したい」と断っておられる。陛下はこれまでも憲法を守る決意などを個人の視点で語ってこられたが、それは象徴天皇として。今回のお気持ちは、それを離れた個人として表明した大変なメッセージだ。
 「八十(歳)を越え」ということを二回繰り返しており、老いを相当自覚しておられる。その上で「天皇の高齢化に伴う対処の仕方が(中略)限りなく縮小していくことには、無理があろうと思われます」というのは、公務削減論への反論と言っていい。
 摂政を置いた場合についても「十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま(中略)天皇であり続ける」として否定されている。大正天皇の晩年、皇太子だった昭和天皇が摂政を務めたときに起きた天皇の形骸化を、遠回しに例示しているのだろう。また天皇として最期を迎えた場合、昭和天皇の時のような 自粛ムードで国民生活に支障が出ることを避けたいという思い、喪儀(そうぎ)を軽減したいという思いが強くにじむ。そしてこの中で言及する「残される家族」には、われわれと同じような庶民的なニュアンスがある。
 結語の「国民の理解を得られることを、切に願っています」とは、まさに「生前退位を強く望んでいることを理解してください」ということだろう。天皇もこのような状況に置かれていたという悲しさも伴う。
 大日本帝国憲法下では、憲法と旧皇室典範がセットで統帥権と統治権を持つ天皇制の枠組みを決めていた。戦後、憲法は国民に個人の自由や市民的権利を認める現行憲法に変わった。しかし典範は旧憲法の色合いを残し、ほとんど変わらなかった。われわれが市民的権利を享受していながら、天皇には終身在位を 求めて一切隔絶された空間に置き、知らん顔しているのはむちゃな話だ。そこに基本的な矛盾がある。
 天皇が個人的な意見を言うのはおかしいという意見もあるだろう。確かに政治や軍事について発言するのはどうかと思うが、こと皇統に関しては、当事者である天皇が発言する権利を認めなくてはおかしい。問題は制度で論じている段階ではないと、当事者が言っているのではないか。
 陛下は戦没者の追悼と慰霊を自らに課してこられたが、皇太子さまは二月の記者会見でこれを受け継いでいく考えを示された。秋篠宮さまも言及されている。天皇家の中で、円滑な譲位の形が出来上がっていることを前提とした語り掛けだろう。
 天皇も一人の人間であり、感情もある。肉体的老化も、妻への思いもある。その苦衷を、国民は初めて知った。 (談)

 <皇室典範> 皇位継承や皇族の範囲など、皇室関係の事項を定めた法律。1947年に制定された現行の皇室典範は、1条で皇位継承を「皇統に属する男系の男子が、これを継承する」とし、2条で継承順位を天皇の長男の「皇長子」を第1位、天皇の長男の子どもである「皇長孫」を第2位などと明記する。 継承時期は4条で「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」とし、現行では生前退位は認めていない。ほかに天皇の心身が重篤な状況に陥った際は摂政が置けることや皇室の範囲、皇籍の離脱、即位の礼や大喪の礼の実施なども定めている。

<ほさか・まさやす> 1939年、札幌市生まれ。同志社大卒。出版社勤務を経て、昭和史を中心とする著述活動に入る。皇室にも詳しく、著書に「昭和陸軍の研究」「明仁天皇と裕仁天皇」などがある。

 

  ≫(東京新聞)

毒! 生と死を惑乱 ―「薬毒同源」の人類史
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2 コメント

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安倍日本会議のキッチュ感 (Unknown)
2016-08-12 18:55:59
特別法でお茶を濁すにしても、憲法改正を行って、「皇室典範の定めるところ」を「法令の定めるところ」との文言に変えなければ、憲法違反です。

陛下はお言葉で、政治的影響をご否定なさっていたので、生前の退位問題によって改憲することは、まさに逆賊朝敵行為です。

たかだか100年余りの国家神道を、さも日本古来の伝統文化のように祭り上げて固執する安倍日本会議には、そこはかとなくキッチュ感が漂っていますね。
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Unknown ( 武尊)
2016-08-13 00:26:57
家族全員で京都に引っ越ししてもらう。これが一番の解決策じゃないですかね。更に言えば権能とか国事行為に付き合うのを止めさせる。私は必要なのは祭祀以外は皇室外交と国民との触れ合いだけで良いと思ってる人間なんで、それだけで十分だと思うんですよね。法律にサインしたり読んだりなどの行為をさせるから「利用」しようとする奴らが付きまとう。まァ、きっとそういう奴らはそれが目的で、そういう作業を残したんだとは思うんですが。
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