●「国民ファースト」は倒幕できるか、核心・細川護熙インタビュー
ちょいと興味深い記事を読んだ。以下の毎日新聞の細川元首相のインタビュー記事だ。 *筆者の知る限り、小池百合子は、安倍晋三以上にタカ派な保守政治家だ。核武装論容認派であり、再軍備にも前向きな政治家だ。日本会議に名も連ねていいる。だから、小池百合子が実質的に率いる「都民ファースト」、ひいては「国民ファースト(仮称)」は右翼政党だ、と云う単純な解釈ではない。
国政における政治家の立ち位置と云うものは、融通無碍な側面があるわけで、国民の思う方向性に寄り添う場合、所謂ポピュリズムなわけだが、票を集める都合上、様々な顔を持つと考えておくべきだ。つまり、矛盾する顔を平気で使い分ける自在性が必須条件にもなると云うことになる。
仮に、過去の小池百合子の政治経歴において、超改憲派で、再軍備論者で、核武装論的発言が目立つ超タカ派路線を標榜する政治家であったとしても、民主主義体制の国家においては、そのような思いのままのルペン女史のような主張を掲げて、日本の国政政党として、倒幕出来ることは、これは不可能だ。安倍のような子供じみた“お仲間政権”という、公正公平の逆張り政権を倒幕するためには、安倍自民党的なものを“ぶっ潰す”旗印が必須だ。
安倍自民政権を“ぶっ潰す”為には、公平公正、滅私奉公な見るからに「国民ファースト」な政治を目指す旗を立てざるを得ないのが現実だ。少なくとも、安倍よりは公正で公平だと思える主張が必要だ。どうしても、安倍の何倍かリベラルにならざるを得ない。守屋次官を更迭したように、小池は不正に厳しい性格なので、萩生田や家計、籠池のような輩を重用することは考えにくい。現状の都民ファーストの野田数と云う男は、当面の便利屋だろう。
そうしないと、団塊世代以上が生き残っている2025年以前の日本の政治においては、超改憲、再軍備などを引っ提げて、政権を維持し、思いを実行することは困難なのが現実だ。仮に、朝鮮半島を核とした戦争が勃発した場合でも、公正公平な政治権力構造の中で政は司られるべきと、国民の多くは考える筈だ。その時でも、私利私欲で権力を振り回す安倍自民政権よりは、公正公平に右翼的政治方向を示す政治権力の方が支持を得るだろう。
個人的には、小池百合子の「都民ファースト」そして、生まれるであろう「国民ファースト」を支持することはないが、少なくとも「安倍自民党政権」よりは、数段国民の方向を向いた政治をするであろうことは想像に難くない。裏声で君が代程度には期待する。しかし、小池も保守なので困るのだが、民進党は弱体化甚だしく、共産党にリベラル性を求めるしかないのは、何とも辛い。そう言えば自由党があるのだが、小沢一郎さんは、何らかの動きをしているのだろうか?多分しているのだろう。志位和夫と小沢一郎のツーショットが見られたのだから、小池百合子と志位和夫のツーショット?いや、小池と山口、小沢のスリーショットかな?(笑)。
≪ 小池さん「倒幕」するかもね 細川元首相が読む次の一手
小池百合子東京都知事が率いて都議選で圧勝した「都民ファーストの会」。かつて都議選の勝利をステップに国政選挙に挑み、自民党を下野させた日本新党旋風に重なる。彼女を政界へ引き入れた細川護熙元首相の思いを聞くと、意味深長なことを言った。「いずれ倒幕の動きがあるかもしれない」--。【鈴木琢磨】
なにやら都が、国が騒がしく、さぞや殿も絵筆が進まないのではと気になった。還暦を区切りに永田町を去り、近ごろは東京湾岸の倉庫にあるアトリエにこもり、ふすま絵を描いていた。「そりゃ、小池さん、同志ですから」。あれは四半世紀近く前、1993年6月。前年に発足したばかりの日本新党が都議選で20議席を得て大躍進した。当時の新聞を読めば、代表の細川さんは投票率の低さにふて寝していたものの、大勝との結果に55年体制の崩壊を感慨深く語っているし、選対本部長の小池さんはセーラー服っぽい格好で、コーラを飲みながら、喜びにはじけていたと伝えている。「へえー、もうすっかり忘れましたなあ」
まるで同窓会に呼ばれた白髪の先生のごとく、教え子のことをときに厳しく、ときに自慢げにしゃべる感じ。日本新党という「学校」への強烈なノスタルジーもあるのだろう。で、都知事になった教え子は同窓会といわず、恩師を訪ねているらしい。「会ってますよ。ホテルでコーヒーを飲み、相談を受けたりしています。都議選告示の2週間ほど前にも会ったかな。ぴりっとはしませんでしたが、豊洲市場問題は選挙までに明らかにしておくこととか、自民党の党籍は向こうが切るまでほうっておけとか。メールもきますよ。小さなことで<一生のお願い>とか言って、アハハ。もっと大きな相談をしてもらいたいんだけどね」
その小池さん、大きな相談を持ちかけなければならない状況になってきた。都議選での「都民ファースト」の大勝で国政への進出が取りざたされているからだ。「来たるべき総選挙で、少なくとも東京の小選挙区で、小池新党は戦うだろうし、全国展開もあり得る。本人はやらず、都政改革、オリンピックの成功へ向けて専念するでしょう。それでいい。各地の首長などに日本新党の同志も結構いますから。政界、野党再編につながるかもしれない。小池さんは重要なプレーヤーとしての役割を果たすだろうし、期待もしています。もちろん、戦後の価値観、戦後憲法による平和で自由な社会を守る保守中道であってもらいたいが」
そういえば、先日、小池さんとも因縁浅からぬ自由党共同代表の小沢一郎さんを民放テレビの番組でお見受けした。なんでもバラエティー初出演とかで、お笑い芸人とそうめんをすすっていた。そう水を向けると、細川さん、飲んでいたカフェオレのカップを置き、にやっとした。「番組は見てないんだけど、新聞のテレビ欄で見ました。おやっと思いましたよ。そろそろ小沢さんも蠢動(しゅんどう)しはじめたのかなあと」。非自民の細川政権樹立の仕掛け人であり、立役者が小沢さんだった。将来、小池政権を誕生させるにはあの剛腕も借りるべきだということなのか。
ずばり、小池さん、初の女性首相になりますか? 単刀直入に問うと、こう返ってきた。「そればかりは運ですから。相変わらず民進党は浮足立ってバタバタしているでしょ。私のところにも連絡がきますが、逃げ出したい連中ばかりで。落城とわかっても野田(佳彦)さんや岡田(克也)さんのようなサムライは最後まで城に立てこもる。覚悟を決めていますから。そこに初めて倒幕を目的とした薩長同盟という可能性も生まれてくる。民進の核となる人たちと小池さんの党で倒幕がやれるのではないか。すぐ逃げ出して、よそと合併したがる連中がいるが、合併する必要など全然ない。民進党から逃げ出すやつは逃がせばいい」
都知事というポジションゆえか、小池さんはこれからの「国のかたち」をちゃんと語っていない。細川さんは保守中道で、質実国家を提唱している。「私は産業政策としても環境政策としても、そして何より文明論として原発ゼロを実現すべきだと思う。その一点を訴え、小泉(純一郎)さんと組んで都知事選に挑んだ。小池さんには原発のことも言いましたよ。でも、どこに気をつかっているのか、返事は『?』。少しあいまいな表現でもいいから、原発ゼロを目指すとの方向性くらい示さないと、多くの国民はついてこないんだけどね。ドイツだってやってるんだから」
「安倍1強」の崩れる音が聞こえるものの、憲法改正は首相の悲願、あらゆる手練手管で改憲へ走りそうな気配である。「私は安倍(晋三)さんによる安倍さんのための改憲に反対です。改憲のための改憲にも反対です。いまは改憲すべきときではない。安倍さんとしては小池さんを改憲賛成勢力に巻き込みたいだろうし、そう立ち回るでしょう。そのとき、小池さんの判断が日本の将来を左右する。極めて重要な判断になる。そして日本の行く末のキーは公明党も握っている。細川政権時、公明党は頼りになりました。責任ある判断を期待したいです」
それが戦略なのか、小池さんの本心をうかがい知るのは難しい。ニュースキャスター出身らしい立て板に水のトークには感心させられるが、肝心なポイントは笑顔ではぐらかす。「そう、改憲なのか護憲なのか、親自民なのかどうか、わかりにくい。でも、私もそうだった。日本新党のとき、マスコミから細川は改憲か護憲か、自民の補完勢力か非自民なのかとしつこく詰め寄られた。私はあいまいにしか答えなかった。<護憲的改憲>とか言ったりして。評論家の江藤淳さんはそんな私のことを『この男は天下を狙っている』と言っていた。まあ、腹の内は見せたり、見せなかったりするぐらいが一番いいのかもしれないですな」
若く見えるが、この15日で65歳になる小池さん、やはり天下を狙っているのか。79歳になる師は含み笑いをし、2杯目のカフェオレを飲んだ。日本新党結党宣言にこんなくだりがある。<荒海に漕(こ)ぎだしていく小舟の舳先(へさき)に立ち上がり、難破することをも恐れずに、今や失われかけている理想主義の旗を掲げて、私は敢(あ)えて確たる見通しも持ち得ないままに船出したいと思う>。そうか、だから小池さん、セーラー服だったのか。
そんな可愛い教え子に贈る言葉は「犀角(さいかく)」だという。「釈尊の言葉です。犀の角が一つしかないように、求道者は他人からの毀誉褒貶(きよほうへん)にわずらわされず、自分の確信に従って、目指すところへ突き進めという意味です」
≫(毎日新聞)