世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●アメリカの最大の欠陥 米国人が自国に惚れすぎていること

2015年12月15日 | 日記
〈文化〉を捉え直す――カルチュラル・セキュリティの発想 (岩波新書)
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●アメリカの最大の欠陥 米国人が自国に惚れすぎていること

日本の政党の話(中編)を書くつもりだったが、時間がない。ということで、軍事評論家田岡俊二氏のコラムを掲載しておく。概ね、彼の見立ては間違っていない。アメリカと云う国は、第二次大戦後、多くの平和や富を得た国々に対しては、ほぼ、自国の利益に合致する外交戦略が出来る。しかし、アメリカの影響下になかった、或いは恩恵を受けていない国や、その国の人々に行う外交戦略、攪乱戦略、乃至は武力介入は、悉く失敗していると云う事実を、我々日本人も確認しておく必要があるだろう。

日本人の多くは、未だにアメリカ帝国は厳然と存在して、未来永劫、その地位を留まっていてくれると思いこんでいる。アメリカ人が、自国の歴史的裏づけがゼロの自由と民主主義、金融資本主義、グローバル経済等々の理念に根っから惚れこんでいるのは良いとして、他国であるわが国が、それ以上にアメリカの存在を神格化している現状は、あまりにも愚かと云うか滑稽である。アメリカにはアメリカの国益があり、日本には日本の国益がある。アメリカと日本の国益が一致しているなんてのは、まったくの出鱈目だし、本気で考えていたら気が狂っているとしか思えない。

筆者も唯我独尊をモットーに生きてはいるが、こちらは影響力ゼロの個人なのだから、周辺の数人が被害を蒙るだけである。しかし、アメリカと云えば、衰えたと雖も未だ覇権国であり、基軸通貨ドルを自在に扱える地位にいるのだから、独善に対するチェックを機能を、疎かにすることは許されないだろう。彼らが己惚れる理念(自由と民主主義、金融資本主義、グローバル経済等々)が普遍的価値であるのなら、ギリシャ・ローマ時代にでも気づいていた事だし、二度の大戦だって起きる筈はなかった。実際には、価値観などは、多種多様であり、パーソンの数だけ価値は存在する基本を忘れた、アメリカの振舞いは、世界中の市民を殺戮し、何百万もの難民を生んでいる。アメリカの振舞いが、死と飢餓と不安を世界に撒き散らしているのだとすると、アメリカが「魔女」扱いしている人々や国が正しく、アメリカこそが「魔女」と云う理屈も成り立つ。

今夜、筆者が一番言いたいことは、世の中で、メインプレーヤーが語る言説は、常にプロパガンダ的で、虚偽の情報が紛れ込み、彼ら既得権益層にとって、都合の良い方向に市民を向かわせようとしている点だ。わが国の諮問会議等々に呼ばれる有識者の多くが既得権益で生きているわけだから、マイナーな人々の言葉に耳を傾ける姿勢が常に求められる。一定の平和と一定の富を得た人々や国々は、「そのまま、このまま」を望むわけだが、未だ富まざる人々が、国々が、存在している事に目を瞑ることは、「悪」である。平和と富の中で見ている「善」は、実は、「悪」であるかもしれない。アメリカが実は「魔女」と云う視点を我々は抱かな過ぎる。特に、アメリカ人自身が、その罠から抜け出して欲しいものだ。


 ≪ ISのタンクローリー攻撃にやっと踏み切った米国の苦しい裏事情
自称「イスラム国」(IS)の最大の資金源は支配地で出る石油の密売だ。そのルートを断つのは簡単で、砂漠を走るタンクローリーやドラム缶を積んだ大型トラックを戦闘機、攻撃機の機銃掃討で壊せばよい。
 米国防総省は11月13日に起きたパリでの同時多発テロ事件後の11月23日、「米軍機が11月15日と21~22日にシリア東部と北部ではじめ て石油輸送トラックを攻撃、399輌を破壊し、ISの資金源に大打撃を与えた」と発表した。今回が「はじめて」というのは驚きだ。
 米軍は昨年9月23日から1年以上もシリア領内のIS拠点に航空攻撃を加えてきたのに、ISを弱らせるのにもっとも容易で有効なタンクローリーの 破壊はこれまでしていなかったのだ。ISの勢力が意外に衰えなかった主因は多分これだ。シリアを巡る米国、トルコ、ロシアなどの複雑怪奇な関係をこの問題 は象徴している(シリア内戦の経緯については11月25日配信の本欄を御参照ください)。
 米国財務省の推計では、ISは昨年毎月4000万ドル(約50億円・年間で約600億円)の石油密売収入を得ていると見られている。この他の資金 源としては支配地域住民からの徴税が年に数億ドル(数100億円)、身代金が年に2000万ドルないし4500万ドル(約25億円~55億円)、外国から の寄付が年に5000万ドル(約60億円)以上とされ「史上最も裕福なテロ集団」と言われている。
 だが、アラブ諸国の富豪の寄付は減り、身代金収入も一時的で不安定、税収も支配地からの国外難民・国内避難者の大量流出で減少している様子で、石 油密売の収入がIS資金源の過半を占めている。米国財務省は、イラクが旧フセイン政権時代に経済制裁をかわしてトルコ経由で石油を密売し、密売システムが 確立した、としている。
 米軍は11月15日からタンクローリーなどの攻撃をはじめて行い、その作戦を“Operation Tidal Wave II”(巨浪作戦2号)と名付けた。第2次大戦中の1943年8月1日、ドイツの第1の石油供給源だった同盟国ルーマニアのプロエシュチ製油所を、リビアのベンガジから発進した米軍のB24爆撃機177機が襲った大作戦“Operation Tidal Wave”にちなんだものだ。実はこの作戦では54機のB24を失ったが製油所に対する効果は一時的で、すぐ復旧した。だが、米空軍では勇壮な大作戦とし て伝説化されていて、その名を継いだところにIS撃滅への米軍の気負いが示されている。

 ■これまでの米国のシリア空爆は 「警備員が裏口を開けておいた」ような形
 今回の攻撃はパリでの同時多発テロ事件の2日後の11月15日に行われ、シリア東部のアブカマル(イラク国境の西約10km)付近でタンクロー リー116台を破壊、さらに21日から22日にかけてシリア北東部ハサカ(トルコ国境の南約100km)などで283台を破壊した。
 有志連合司令部の報道官S・H・ウォーレン米陸軍大佐は「ISの収入の半分以上が石油の売り上げで、1日平均100万ドル(約1.2億円)だ。一 連の航空攻撃でISに大打撃を与えた」と戦果を誇った。破壊した約400台以外に、残ったタンクローリーが600台ほどあるとしても、空から丸見えの砂漠 の道路をタンクローリーで走ったり、石油積み込みを待って駐車場に並ぶのは今後は極めて危険になる。密輸トラックの運転手は「命あっての物種」で、ISに よる石油密売が激減するのは確かだろう。
 だが、米軍がその攻撃の効果を強調すればするほど「なぜこれまでそれをやらなかったのか」との疑問が生じる。
 私は昨年9月に米軍などがシリア領内のIS拠点の航空攻撃を始めた際、「タンクローリーを壊すのは容易で、それをすればISの資金源の大半を断て る。他のゲリラと異なり地元に深く根を下ろしていないISは衰弱する」と説いていた。誰が考えてもきわめて簡単で有効な戦術だから、米軍などがとっくに やっているはず、と思っていたが、今回がはじめて、と知って驚いた。まるで銀行の警備員が裏口を開けておいたような形だ。米国などが1年以上航空攻撃を続 けても“イスラム国”が衰弱しなかったわけがやっとわかった。
 それをしなかった理由として米国防総省当局者は「民間人であるトラック運転手を死傷させるおそれがあったため」と説明し、「今回は事前にビラを撒 いて警告した」とも言うが、ISの“首都”ラッカなどの攻撃でも住民に多くの死傷者が出ているし、戦時に石油を運ぶトラックの運転手は、潜水艦に狙われや すいタンカーなど商船の船員に似ており、都市の住民のような純粋な民間人とは異なる。
 米国などがタンクローリー攻撃を控えた理由としては、
(1)以前からシリアのIS拠点攻撃を行っていた米国、豪州、カナダおよび親米派のイスラム教スンニ派諸国(トルコ、ヨルダン、サウジアラビアな ど)は「アサド政権打倒」を唱えていたから、アルカイダに属する「ヌスラ戦線」とならぶシリアの二大反政府勢力の主体であるISの命脈を本気で断とうとは せず、目こぼしをしていたのか。
(2)ISの石油密売先は米財務省が言うようにもっぱらトルコであり、トルコの闇商人のタンクローリーが石油買い付けにシリアに通っていたならば、 それを攻撃し、トルコ人運転手を死傷させれば、シリア政府に対する反乱の支援でのトルコの協力を得にくくなる。米国は反政府部隊の訓練や兵器の引き渡しなどをトルコで行っていた。また昨年9月から今年1月まで、トルコ国境に近いシリアのコバニの町でクルド人住民とIS部隊が争奪戦を展開していた際には、イ ラクのクルド自治区から救援のクルド兵をトルコ経由でコバニに送ろうとし、クルド人と対立するトルコを説得して通過を認めてもらったこともある。このた め、トルコとの対立を招くようなタンクローリー攻撃はためらわざるをえなかったのか、
 の2点が考えられる。おそらく(2)の方が主な要因ではなかったか。 ところがロシアが9月30日からシリアのIS、ヌスラ戦線など反政府勢力への攻撃を始め、9月27日からフランスもシリア領内のIS攻撃に参加し、 11月13日のパリでのテロ事件後、攻撃を強化する情勢となっては、米国も何かはっきりした戦果をあげないと指導力が低下するし、国内でもオバマ政権批判 が高まる。
 1年以上航空攻撃を続けてもISは弱らず、一部では支配地を拡大さえしている。米国が支援した「自由シリア軍」は消滅に近い状態だ。その代わりに 「新シリア軍」を作ろうとし、5400人を2016年5月までに募集する計画だったが、応募者は200人に満たず、トルコで訓練した54人を7月にシリア に戻したが9月には4、5人しか残っておらず、第2陣の70人を9月に帰国させるとすぐヌスラ戦線に降伏、兵器、車輛を引き渡すありさまで、米国はその計 画をあきらめた。
 こんな失敗続きではシリア内戦の停戦を目指す関係国会合でも米国の発言権は弱くなるから、米国としてはもはやトルコ人の感情などに構っておれない。そこであえてタンクローリー攻撃に踏み切ったのだろう。

■米国のロシア批判は 「アルカイダを攻撃するな」も同然
 11月24日にはトルコ空軍のF16戦闘機がシリア北西端のラタキア付近でロシアの戦闘爆撃機Su24を撃墜し、救出ヘリコプターの乗員を含め2 人が死亡した。シリアとトルコの国境が入り組んだ地域で対地攻撃を続けていれば、ロシア機がトルコ領空をかすめることはありそうだが、10数秒領空を通り 抜けた外国機を撃墜するのも乱暴な話だ。
 この背景にはロシア機の対地攻撃がISだけでなく、ヌスラ戦線やそれと共闘する反政府勢力に向けられていることがある。その航空支援下でシリア政 府軍がヌスラ戦線が占拠しているイドリブの町を奪回しようとしているから、反政府勢力を支援するトルコはシリア領内で多数のトラックをロシア機に破壊され て焦立ちを強めていたこともあるだろう。
 米国は「ロシアがISだけでなく、その他の反体制勢力も攻撃している」と非難するが、「IS以外の反体制勢力」とはアルカイダに属するヌスラ戦線 を中心にそれに同調する他の27もの雑多なイスラム武装集団が加わった「ファトフ軍」が主で、米国が言う「穏健な反政府勢力」とは具体的にどの集団を指す のか定かではない。米国の非難は「アルカイダをロシアが攻撃するのはけしからん」と言うのと同然だ。
 内乱に際して、他国が政府側を支援し、治安の回復、国の統合の維持を助けるのは適法だが、反徒に武器や資金を提供したり、訓練を施すのは「間接侵 略」に当たる。これはもし日本で騒乱が起き、他国が暴徒に武器などを提供することを想像すればすぐ分かることだ。ロシアがシリア政府を支援してISとヌス ラ戦線などを区別せず、反政府軍を攻撃するのは非難しえない。
 ロシアはトルコが自国機を撃墜したことを「テロリストの共犯に背後から撃たれた」と非難し、トルコがISの石油密売の相手方であることを強調し、 トルコはそれを否定している。トルコ政府自身がそれをしているとは思えないが、米財務省のISの資金源に関する調査報告などから見て、密輸を十分に取締っ ていないことはありそうに思える。 ロシアはトルコへの旅行の制限や農産物輸入の停止など部分的経済制裁を行ったが、石油や天然ガスの輸出停止など全面的な禁輸は自国への打撃が大きいから、それに至る公算は低いだろう。

 ■アサド政権下のシリア政府軍に  IS討伐させる以外にない
 いずれにせよ、米軍による「巨浪作戦2号」や、ロシアとの石油密売論争の結果、トルコ経由のISの石油密売はほぼ停止するだろう。ISの資金は涸渇し、地元民が外敵に対し抵抗するゲリラというより、給料目当ての傭兵集団の性格が濃いISは弱体化することになりそうだ。
 一方、米国では「アサド政権はISと裏でつながっており、ISから石油を買っている」との説が出ている。ISが支配地で産出した石油を全て密輸出 しているわけではなく、一部は簡易な製油所で精製し、自分達が使ったり支配地の住民に販売もしている様子だ。闇商人がそれを仕入れて、政府側の地域で売る こともありそうだが、シリア政府がその石油を買ってISの資金源になっている、との説は極めて疑わしい。シリア政府にとって最大の危険はイラク、シリアで 推定3万人の兵力を有し、攻撃的なISであり、兵力約1万2000人と推定される「ファトフ軍」や存在すら怪しげな「穏健派反政権勢力」ではあるまい。もしシリア政府がISを育成しヌスラ戦線と噛み合わせようとすればISに政権を奪われかねない。
 この話はイラク攻撃の前、米国で流布したデマ「9.11事件を起こしたアルカイダとイラクのサダム・フセインはつながっている」を想起させる。フ セインは偶像崇拝を忌むムハンマドの教えを無視して、自分の銅像や肖像画を国内にあふれさせたり、顔を丸出しにした女性兵士に銃をかつがせてパレードをさ せたりしたから、イスラム原理主義者から見ればとんだ罰当たりで「アルカイダの暗殺リストの上位に入っていた」という話もうなずける。
 常識があれば「フセインとアルカイダが共謀」という説はすぐウソと分かるはずだが、米国人には自国は善玉、逆らう者は悪玉との信念が強くあり、悪玉同士は仲間、との宣伝に引っ掛かりやすいようだ。  ・前回(11月25日配信)で も述べたが、シリアからの難民430万人(他に国内避難者760万人)はトルコ、ヨルダンなど周辺諸国や欧州各国にとり極めて深刻な問題となっている。そ の解消のためにはシリア内戦の早期停戦が不可欠で、シリア政府が倒れそうな情勢ではないから、西欧諸国も米国も「暫定的に」と言いつつ、アサド政権の存続 を容認し「穏健な反政府派」との和解を求める方向に動いている。
 だが反政府派の主体はISおよびアルカイダ系のヌスラ戦線とその同調者だから、それらを和平交渉から排除せざるをえず、そうすれば実体のない交渉 となってしまう。仮にISやヌスラ戦線の支配地をそのまま残して停戦しても、内戦の再燃は必至で、難民・避難者は安心して帰郷できない。また、もしアサド 政権(シリア政府)が崩壊すれば、いまでも対立抗争をしているISとヌスラ戦線などがシリアの支配権を巡って次の内戦を始めそうだし、それでどちらかが 勝っても、シリアはテロ組織の支配する国となり、難民は戻れない。
 シリア軍は総員約18万人で、陸軍だけでも11万人はいて、政府側の民兵も10万人と見られるから、IS(イラク領内を含み3万人)とファトフ軍 (1.2万人)に対し人員では圧倒的に優勢だ。弾薬、車輌、航空機や戦車の部品などを十分に供給すれば反政府軍を制圧できるはずだ。
 ロシアのようにアサド政権を支援して、シリア政府軍にテロ集団であるISやヌスラ戦線を討伐させて内乱を鎮定し、その後各国がシリア復興を援助して難民が戻れるようにする以外に、現実的な策は無いのではないか、と考えざるをえない。  
≫(ダイアモンドONLINE:経済・時事―田岡俊二の戦略「目からウロコ」

参考
■ IS殲滅には地上戦が不可欠  日本は報復の標的となりそうか?
http://diamond.jp/articles/-/82152

■ オバマの軍事行動はなぜことごとく失敗するのか
http://diamond.jp/articles/-/81498


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2 コメント

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未来学ー100年 (おじん)
2015-12-15 07:58:14
世界は、アジアが先行し、「中国・インド・タイ・・」。
返信する
Unknown (武尊43)
2015-12-16 05:38:55
>トルコ政府自身がそれをしているとは思えないが、
イギリスなどのメディアもエルドアン大統領の息子や娘婿が関与している、と報じ始めているので、殆ど政府の関与と言えるんじゃないですかねぇ、、。
ニューヨーク在住のエージェントである、木村太郎だってこの辺は認めてまっせ(笑)
 まぁ、安倍様擁護日本メディアは報じられないとは思うが、、。
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