貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち (講談社現代新書) | |
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●自由貿易一部に貧困偏在? 極貧3割、予備軍4割なのに?
今夜は時間の関係で、筆者の意見は最小にとどめる。資本主義の大きな歴史の中で、英エコノミスト誌のコラムが切り取った時間軸は、最後の資本主義のパターンでしかない。つまり、ごまかしコラムと云うことだ。よく、竹中平蔵ら、自由主義貿易支持者で、市場原理主義で資本主義の終焉に歯止めをかけようとしている連中の、悪足掻きである。
資本主義の変化は、利子率で見事に言い表せるものだ。実物経済で頂点の利子率は概ね10~15%で、この実物経済の利子率が落ちると、必ず、金貸し的な金融経済へ移行していく。こちらの利子率も、ピーク時には10~15%に達する。そして、資本の覇権は移動すると云うのが、世の常であった。エコノミスト誌は時間軸を戦後にとって、人びとをたぶらかそうとしている。イタリア・ジェノヴァで誕生した資本主義は700年の歴史を持つので、戦後のアメリカ資本主義だけで、真理を語るのは無知蒙昧だ。
どうも、資本、此処ではマネーと呼んでも良いが、利子率が2%を切ると、不平不満だらけになるらしい。マネーも不満たらたらだが、そこに住んでいる人々の間にも、不平不満が蓄積される。そう云う歴史的な事実が存在する。21世紀になって、資本(マネー)が望む、10%前後の利子率を確保しているものは、所謂ジャンクものであり、破たん寸前の国の国債や、サブプライム金融商品のようなものになる。
思うに、EUも日本もマイナス金利なわけだから、これだけの経済現象が起きているのに、以下の、英エコノミスト誌のような論調を邦訳して流している方が、笑い者になる時代に思える。トランプの主張には破綻や無知も含まれるが、肌で、自由貿易や、金融経済を悪魔化しているのだろう。サンダース議員の場合、民主社会主義だから、自由貿易、金融経済なんて、もう完璧な悪魔である。この問題は、グローバル世界が蔓延している前なら、案外簡単に是正可能だった。しかし、フロンティア地域探しに血道を上げたアメリカの金融経済勢力の蛮行は、緩やかなランディングを許さない状況を作ってしまったようだ。
利上げのタイミング探しでウロチョロしている米国債10年物の利子率が1.8%前後で、最も安全運用対象。EUも日本もマイナスだからね。よくよく、ものごと単純に考えるのが一番なのだ。1970年~1980年代の郵便貯金の利率は8~12%あったのを知っていますか?日本国債だって5%の利回りがあったのです。今は、郵貯でも0.1~0.2%ですからね、日本国債に至っていはマイナスですから(笑)。こりゃ、屁理屈抜きに、資本主義は成り立たなくなっている、完璧な証拠。筆者は、そう信じている。ゆえに、世界は揺らでいるのですが、どうも日本では、ピンと感じない「空気」で覆われているようだ。
≪ 米国で過熱する議論、自由貿易は是か非か
自由貿易は必要、だが”被害者”には支援を
米国のカントリー歌手ロニー・ダンは2011年、新曲『Cost of Livin’』を収録した。「生活費」を意味するこの作品は、職を求める元工場労働者の姿を切なく歌っている。「銀行からの電話が鳴り始めた/家の戸口に は狼どもが待ち構えている」――。求人数をはるかに超える求職者が溢れる未来を感じているのか、彼の意欲的なトーンは絶望感へと成り代わっていく。
同様の叫びは米国中の工業地帯から聞こえてくる。製造業において1999年から2011年の間に失われた職の数はほぼ6万にのぼった。
この規模そのものは特に驚くべきものではない。動きの激しい米国経済においては、毎月およそ500万の就職口が生まれては消えていく。だが米国の 主要大学の経済学者たちが最近行った一連の研究から、気がかりな結果が明らかになった。先に挙げた、1999年~2011年に失われた職の5分の1は、中国が競争力をつけたことが原因だった。
このとき失業した人々は新たな仕事を近隣で見つけることができなかった。かといって、別の地域で職探しをしたわけでもない。彼らのほとんどは、失業したか、働くのを完全にやめてしまったのである(多くの人は後者を選んだ)。就職をあきらめた人の多くは障害者給付金を請求した。現在、25~64歳の米国人の5%がこの手当を受給している。
■主な大統領候補はみな自由貿易に背を向ける
こうした研究成果によって不安が高まったため、「貿易」は今回の米国大統領選において試金石となる問題になっている。共和党の指名争いで首位を走るドナルド・トランプ氏は、中国とメキシコからの輸入品に禁止関税をかけると公約している。
民主党の最有力候補とされるヒラリー・クリントン氏を相手に健闘しているバーニー・サンダース氏は、貿易協定に反対することを誇りのしるしとして いる。当のクリントン氏も、環太平洋経済連携協定(TPP)に距離を置くようになった。TPPはオバマ大統領が取り組んでいる貿易協定で、クリントン氏も 以前はこれを支持していた。
貿易の自由化は、第二次世界大戦が終って以降、数十年にわたって米国その他の国家に繁栄をもたらす原動力の一つとなった。であるにもかかわらず、 主流をなす政治家たちは今、自由貿易への支持をためらうのみならず、積極的に反対している。これは嘆かわしいことだ。自由貿易は、今でも大きな支持を得るに値するものである。たとえ、それによって害を被る人たちへの手厚いケアが必要になるとしてもだ。
■自由貿易がもたらすデメリットは偏って存在する
自由貿易の支持者たちは、貿易が自由化されれば大多数が恩恵を受けるものの一部には損失を被る人がいることを、いつの時代も理解していた。ロバート・ピール卿は1846年に穀物法の撤廃を要求する中で、この法律が農業労働者にもたらし得る害に対して人々が抱く懸念について認識していた(本紙=The Economist=はこの運動を支援するために創刊された)。ピール卿は「誰も苦しめることなく法制度を改正することができればいいのに」と語る一方 で、次のように主張した。「穀物にかけられる関税に誰よりも苦しむのは、他でもなく最も貧しい農場労働者だ」。そして、この指摘は正しい。
これに関連して、最新の研究から明らかになったことがある。自由貿易が米国にもたらす損失は、想定されていた以上に特定の層に集中し、しかも影響 が長引くということだ。その大半は、中国が猛スピードで台頭してきたことによる。世界のモノの輸出に占める中国の割合は1991年には2%だったが、 2013年までに19%へと急増した。
中国の台頭が引き起こしたこのショックは、米国経済における断層線もまた露わにした。労働者たちは以前に比べ、転職や他州への移住をしたがらなく なった。持ち家の所有率が上がっていることが理由の一つと考えられる。地域が衰退しても人々はそこに留まる。活力のある地域は価格が高すぎて手が出せないのかもしれない。どんな説明をつけるにしろ、自由貿易は一部の場所に大きな犠牲を負わせる可能性がある。
■自由貿易は米国民から購買力を奪う
こうした懸念への対応として最悪なのは、トランプ氏が大々的に謳っている保守主義の姿勢だ。中国から流れ込む安価な輸入製品――衣服、靴、家具、玩具、電子製品など――の波は、低所得層の購買力を大きく押し上げた。また、低所得者たちが買うことのできる品の種類も増やした。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)とコロンビア大学の経済学者たちが、米国が貿易に門戸を閉ざした場合の影響を試算している。それによると、米国の中位所得層は購買力の29%を失う。さらに、最貧困層は実に62%を失うという。彼らが買うものは輸入品に偏っているからだ。
加えて、豊かになった中国市場が輸出業者にもたらす恩恵について考えてほしい。世界の市場をまたにかけた競争や、消費者向けの製品(米アップル製 のiPhoneなど)に使用する安価な材料が米国内のイノベーションを誘発し、米国の設計者の生産性を上昇させる。これらを考慮すれば、自由貿易を支持す る論調に抵抗するのは難しい。
■失業者向け支援を拡充せよ
外国勢との競争によって損失を被る労働者を保護するには何をすべきだろうか。連邦政府の貿易調整支援(TAA)制度が提供するセーフティネットはお粗末としかいいようがない。失業した米国人労働者の多くが、より高い収入を得ることができる障害者給付金を受給する道を選び、労働市場を完全に離れる理由はここにある。
米国は欧州の最悪な側面の一部を導入する一方で、欧州にある素晴らしい制度を見逃している。ドイツは欧州における屈指の製造大国だ。中国の競争力 の向上と東欧諸国の欧州連合(EU)加盟という2つのショックをうまく吸収してきた。その理由の一つとして、労働者のスキルを常に向上させることができる徒弟制度の存在がある。
これに対して米国では、スキルの格差を縮小するため、衰退地域におけるコミュニティカレッジの役割が有望視されている。だが、高額な4年制大学で受ける教育が相変わらず重視されすぎている一方で、職業訓練が極めて軽視されている。
米国は“労働市場に対する有効な政策”という点においても他の先進国に後れをとっている。失業者たちが新たな職を探すのを支援するため、もっと多 くのことができるはずだ。職業紹介サービスや、スキルを身につけるための各種コースを活用すればよい。地理的に極めて広域な米国の労働市場においては、輸入増加の影響で不利益を被った労働者が移転した際に補助金を与えるということも考えられる。
失業者の多くが不満を抱いているのは、サービス部門で見つけた新たな職の給与が以前より低いことだ。製造大手から支給されていた健康保険や年金が 得られなくなることもある。こうした声は、転職しても引き続き享受できる福利手当制度の確立を求める主張の強力な論拠となっている。賃金保険制度も有効かもしれない。
このような政策を必要とするのは米国に限らない。英国の製鉄所は国内産業の崩壊に直面している。ここで求められるのは、貿易によってもたらされる ショックを取り除くことだけではない。このような政策の多くは、安価なロボットから3Dプリンタなどの新技術に至るまで、国内に混乱をもたらす他の原因に対処するためにも必要だ。
保護主義者は昔のやり方に戻りたがっている。だが、変化に備えて労働者たちを訓練しつつ、自由貿易がもたらす永久的な利益を得るほうがよっぽど賢明である。
© 2016 The Economist Newspaper Limited. Apr 2nd -8th 2016 | From the print edition
英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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