atプラス23 | |
柄谷 行人,水野 和夫,中山 智香子,大竹 弘二,いがらし みきお,井野 朋也,迫川 尚子,山崎 亮,大澤 真幸,岸 政彦 | |
太田出版 |
ランキング参加しております
●全国紙は通信社記事泥棒 テレビニュースは7割歪曲
マスメディアと云うものに、理想形態があるかどうか、これは議論の余地がある。右寄り、左寄り、親欧米系、親BRICS系、親イスラム系、親イデオロギー系‥等、その色合いが鮮明なのも構わないだろう。そのような新聞やテレビにも、それなりの存在価値があるのだと思う。問題なのは、中立的ポジショニングを標榜しながら、思い込みな歪曲的報道をする手合いの報道機関が最も厄介だ。識者、ジャーナリストなどを例にとれば、立花隆、長谷川幸洋、佐藤優など、ポジショントークが目立つ人々だ。しかし、彼らはニュートラルだと思われている。
上述は卑近な例なのだが、日本の報道の自由度ランキングが酷く落ちている。「国境なき記者団」にも、それなりの色は着いているだろうが、かなりの面でフェアな格付けをしているので、概ね信用して良いだろう。ただ、この団体の価値観には、自由と民主主義が正しいのだと云う土俵に乗っていることを忘れてはならない。また、言論の自由、表現の自由、信仰信条の自由を保証し、時には、資本の自由も保証されている社会構造に価値観を置いている点は、哲学的には一考あって然るべき部分でもある。朝日が、このランキングについて、以下のように報道している。
≪ 国境なき記者団「報道の自由が悪化」 旅券返納も批判
国際NGO「国境なき記者団」(本部・パリ)は12日、「報道の自由度ランキング」を発表した。北欧諸国が上位で、北朝鮮や中国が最下位グループなのは例年通りだが、世界中で状況が悪化していると強調。対テロの名のもとに進む盗聴などにも警鐘を鳴らした。
180の国・地域の状況を調べた。上位はフィンランド、ノルウェー、デンマークの順。下位は北朝鮮(179位)、シリア(177位)、中国(176位)など。
過激派組織「イスラム国」をめぐっては、米国人ジャーナリストの殺害などを例に挙げ、「敵とみなした記者らを容赦なく排除する」と批判した。一方で、対テロの名のもとにフランスが個人の監視手続きを簡単にしたり、英国が記者らの個人情報を収集したりしたことにも懸念を示した。
日本は二つ順位を下げて61位。昨年12月に施行された「特定秘密保護法」をとりあげ、「『不当に』情報を得た記者らも懲役刑の対象となった」と指摘した。
今回のリポートには含まれないが、シリアに渡ろうとしたフリーカメラマンの旅券を日本政府が取りあげた問題について、アジア担当のベンジャマン・イスマイール氏は朝日新聞に「明らかに報道の自由の侵害だ。取材に行くかどうかはメディアやジャーナリストが決めるものだ」と強調した。 ≫(朝日新聞デジタル:パリ=青田秀樹)
記事が報じているように、安倍政権になってからの日本の報道の自由度は、調査のある度に下がっている。このランキングには、メディアの自粛や、ジャーナリスト精神の欠如など、計量化出来ないファクターは考慮されていないわけだが、「空気」を重んじる日本においては、ここに示されているランキング以上にポジションは下位に低迷しているものと推量できる。兎に角、日本の全国紙など見ていると、文化やスポーツ面を除けば、独自取材の記事は僅かである。政府か官僚機構に属する記者クラブ等からのご説明付発表を垂れ流しているだけで、見出しのつけ方程度の相違しか見られない。
言ってみれば、官報を意訳したかわら版みたいなもので、月々3千円も4千円も出す類のものではない。これなら、共同通信一社の無味簡素な記事の羅列の方が、人々に比較検討する学びの機会を与えるので、有効なくらいだ。また、世界全体の情報を得る努力を提供する意味で、海外の新聞、雑誌の記事を翻訳したペーパーなども有効だろう。無論、著作権や翻訳の権利の問題はあるだろうが、英国、フランス、ドイツ、ロシア、中国、韓国、豪州、米国‥等の各紙等の見出しを羅列するだけでも、非常に有効な情報発信基地になるだろう。
筆者が、24時間以上の時間を与えられたら、そう云うサイトを立ち上げたいところだが、流石にそこまで手を伸ばす余裕がない。そうするだけでも、世界の価値観の違いが理解出来るに違いない。まあある程度の素養がないと、見出しでは、何を言われているか判らない不安は残るのだが(笑)。こんな風に、日本の新聞やテレビニュースを考えると、不要なもので生きている人々がいたり、不要なものに金を出している人々がいるものだなと、ふと思う。しかし、政治や国際欄を見ない人もいるわけで、それなりに価値があるとも言える。
さて、国際NGO「国境なき記者団」のランキングで、目についた国を見てみる。上位は北欧が居並ぶ。気になる国を上位から探してみると、8位にカナダが入っている。ドイツは12位で健闘。ベルギーの15位、ポーランド18位は幾分甘い点数に感じる。豪州は25位だ。スペイン33位、英国34位、フランス38位は順当か。米国の49位は少し甘いが、日本が61位なら、相対的には正しいようだ(笑)。韓国が日本の一つ上の60位と云うのが皮肉っぽくて愉しい。モンゴル54位で日本や韓国よりも上と云うのは興味深い。
香港は70位、イタリア73位とベルルスコーニ支配が響いているのか、マフィアの所為か判らない。クウェート90位、ギリシャ91位、ペルー92位となっている。ブラジルが99位と云うのは意外な感じだが、ジャーナリズム精神が南米自体全体に弱いのかもしれないし、欧米支配との闘いの中で、プロパガンダだけが成長したのかもしれない。話題のイスラエルは101位なのだが、この国と軍事同盟に接近中と云うのだから、わが政権も相当に怪しいものと世界は見ているのだろう。
*今、西側報道機関がウクライナ政府発表の記事を垂れ流しているが、この国の順位は129位だが、もう少し下でも良い感じだ。タイは134位、インド136位、インドネシア138位、フィリピン141位。日本政府が頼りきったヨルダンは143位にランクインしている。トルコが149位だから、ヨルダンの方がましだと思ったのだろうか(笑)。
下位低迷では、ロシアはウクライナより下位の152位と云うのは政治的意図もありそうだ。エジプトは158位、サウジ164位、キューバ169位、ソマリア172位、イラン173位、ベトナム175位、中国176位、シリア177位、北朝鮮179位は常連。名誉の180位最低ランクはエリトリア?知らない国名だったが1991年にエチオピアから独立した国らしい。“イスラム国”が含まれたら、どの辺のランキングになるのだろう?このランキングを見ていて思ったのだが、170位台は番外地にしたいのが国際NGO「国境なき記者団」の本音かもしれない。
ただ、国家体制が報道の自由、言論の自由を標榜している国と、何らかの報道の制限を課している体制によって下位にランクされる場合もあるわけだから、その辺の考慮があっても良いように感じたし、逆に、報道は公正公平だと言い募る国家だけを抽出したランキングも面白い試みだと感じた。日本では、マスメディアの記者もいない、外交ルートも定かではない国や地域の情報を、フリーランスの記者や通信社の記事をクレジットなしで報道し、自らの取材のように装うのが、日本のマスメディアの一大特長である。つまり、通信社の記事を自らの取材記事のように書き語り、マスメディアは報じている。メディアリテラシーもヘッタくれもあったものではないのだね(笑)。
現代思想 2015年3月臨時増刊号 総特集◎宇沢弘文 -人間のための経済- | |
クリエーター情報なし | |
青土社 |