もう「東大話法」にはだまされない 「立場主義」エリートの欺瞞を見抜く (講談社+α新書) | |
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“瞬間芸”で政治を判断すると世論を笑えない 内閣総理大臣野田が手本を示している
各メディアが行う世論調査には、常にヤラセとか質問設定誘導等々の疑惑が常につきまとう。最近、筆者はその上に、世論調査に二つ返事で応答する国民の資質も大きく影響している疑惑をつけ加えることにした(笑)。ジッと各メディアの世論調査の結果と新聞TVにおける露出度が極めて鮮明にリンクした関係だと思うようになった。まぁ自分の実生活以外は「空気感」で日常を過ごす一般市民は、そんなものだろう。特に、その人々を非難するつもりもない。ただ、最近の世論が、瞬間芸的断面で捉えられる傾向が強くなるばかりだな、と云う感想を持つ。今であれば、4人の政治家が鍔迫り合いを繰り広げている“自民党”がサブリミナル的に、時間軸輪切りの瞬間として捉えられるのである。故に、すこぶる自民党の支持率が上昇している。「国民の生活が第一」の支持率が1%前後になっているのも、この点からみれば自明なのだ。
各メディアへの露出度では、「生活」など相手にもならない程の露出度のある「日本維新の会」などは、上述の理屈からすると常に15%程度の指示は獲得しそうだが、どうもその論理が通用しないようで、政党支持では「ドコデモ数%」に甘んじている。政党のネーミングが世論調査対象者の脳裏にインプットしていない所為なのだろう。「橋下維新の会」とでもすれば、10%は上積みしているのかもしれない(笑)「国民の生活が第一」にも多少似たような傾向はあるだろう。橋下維新が田原を呼んで第二回の公開討論会を行った。橋下は「討論会は面白さでやっているわけでない」と冒頭言い訳をしたが、実は余程ショックだったとみえ、歴然たる証拠に田原総一朗を雇ってきた。田原の今日の役回りは、完全に「朝生」同様の“モノ言う司会者”だった。幾ら支払ったのか?聞く勇気のあるメディアは居なかったな(笑)。まぁ雇った甲斐があったようで、記者とも質疑応答も活気があった。朝日は以下のように伝えている。
≪ 維新の会、国会議員9人に さらに十数人増える可能性も
大阪維新の会(代表・橋下徹大阪市長)は23日、新党「日本維新の会」への参加を希望する国会議員との第2回公開討論会を大阪市内で開き、新たに民主党の今井雅人(比例東海)、自民党の谷畑孝(比例近畿)両衆院議員が参加した。維新側は入党を認める方針。両氏は近く所属政党を離党する見通し。維新の国会議員は計9人となる。
維新幹事長の松井一郎大阪府知事は討論会後、両氏の受け入れを表明した。討論会は今後も開かれ、維新幹部によると、参加する国会議員はさらに十数人増える可能性もあるという。
討論会は外交・安全保障がテーマ。橋下氏は竹島や尖閣諸島の問題をめぐり「威勢のいいことばかり言ってはだめ。積み重ねられた事実を相互に確認すべきだ」と指摘。野田政権の尖閣国有化を批判した。竹島問題では国際司法裁判所で決着をつけるよう韓国に働きかけるべきだとし、日韓の共同管理が望ましいとの考えを示した。
集団的自衛権は行使を認めるべきだとの考えを重ねて示したが、対象地域については「議論しないといけない」とした。 日米同盟については「日本が自立していないから(米国に)頼らざるをえない。自立して沖縄の負担やオスプレイの問題を主張する立場を取るなら、防衛費の 上限をGDP(国内総生産)1%とせず、どこまで防衛力を持つかを決めないといけない」と指摘。沖縄県の普天間飛行場の移設先について「今のところ(同県名護市の)辺野古以外の案は頭の中にない」とし、「普天間を他県に持っていけるという二枚舌は使ってはいけない。沖縄の人たちに『申し訳ないけど』とお願いしなければいけない」と述べた。≫ (朝日新聞デジタル)
考えてみると、長谷川幸洋氏ではないが、野田佳彦も“瞬間芸”に生きているのだから、国民の”浮世度”をどうこう云うのも、如何なものかと云うことになる。長谷川氏が指摘するように、一般的に「政治家は信念にしたがって行動し、理想を実現するために政治活動をしている」と勝手に思っているが、政治家の実情は異なるだろうし、野田佳彦などは、その状況、状況に即時即応、行動するのが有能な政治家であると自負しているのかもしれない。マニュフェスト破りも当然、近いうち解散も反故、何ごとも臨機応変がすべてである。
野田自身は、この瞬間芸を、現実的状況への合理的対応と云う風に理解している節がある。尖閣に突如深夜、数十人の中国人活動家が上陸、構築物を作ろうとしたら、即時即応、現実状況への合理的判断として自衛隊出動を命じるかもしれない。政治理念などに振りかざすは、臨機応変な対応の出来ない頭でっかちな政治家に過ぎない、と思っているのかもしれない(笑)。その辺は、長谷川氏のコラムを載せておくので、読んでお好みのようにご判断ください。オヤスミナサイ!
≪ 「近いうち解散」「シロアリ退治」「原発稼働ゼロ」・・・約束を平気で次々に破る野田佳彦という政治家の「本質」
野田佳彦首相が「秋の解散」先送り発言を繰り返している。
9月19日のテレビ朝日系列「報道ステーション」では「『近いうち』と言ったのは事実。ただし、それは内閣不信任案と問責決議という野党にとっての異議申し立てを放棄するという前提での話だった」と述べた。そのうえで自民党総裁選の後、新しい総裁と「3党合意をどうやって実現していくのか腹合わせして、今後のスケジュールを考えたい」と語った。
私は先週のコラムで 「10月解散の話は消えた」「野田は党代表に再選されれば、新しい自民党総裁と党首会談を開いて、3党合意やその先にある連立の可能性について突っ込んだ 協議をする運びになるだろう。解散に踏み切るかどうかは会談の結果次第だ」と書いたが、まさにその通りの展開になった。
谷垣との約束を一方的に破った野田
注目されるのは、野田が谷垣禎一自民党総裁との会談の中身に触れた点だ。近いうち解散の約束は「内閣不信任案と問責決議の放棄が前提だった」と暴露している。先週のコラムで書いたように、谷垣は「会談について外に出すのは『近いうち』という部分だけにする、と合意した」と語っている。そうだとすると野田は今回、この約束も破った形になる。
ここが、むしろ重要だ。政治家同士の密約で中身と公表の仕方は表裏一体、ワンセットである。野田は公表の仕方について谷垣との約束を一方的に破ったのだから、合意の中身についても、もはや「守る理由はない」と考えているとみて間違いない。
野田が暴露したように、もしも谷垣が本当に「近いうち解散」と引き換えに内閣不信任案と問責決議を封印する約束をしていたなら重大だ。言うまでも なく、野党にとって最大の武器は内閣不信任案、次いで問責決議である。この2つを封印するなら、いわば完全武装解除したのと同じになる。戦う前から政局のイニシアティブを敵に渡したも同然だ。「あなたを信じますから、私は武器を捨てます」という話なのだ。
野田の話が本当なのかどうか。もし違うなら、谷垣は堂々と反論すべきだ。だが20日夜になっても、谷垣サイドから何も反論が出ていないところをみると、どうやら谷垣は武装解除を本当に約束していたのかもしれない。そうだとすると、野田に封印を約束しながら結局、野党7会派が提出した問責決議に同調したのだから、谷垣もブレにブレた格好である。これでは野田のほうが一枚上手と言わざるをえない。
いずれにせよ、自民党新総裁との話し合い次第の面はあるが、これで10月解散話はいったんリセットとみるべきだ。
野田という政治家の本質とは
野田は「2030年代に原発稼働ゼロ」というエネルギー戦略の閣議決定も見送った。今回の「近いうち解散」先送りと原発ゼロ閣議決定の見送り、さらに5月25日コラムで紹介した消費税をめぐるシロアリ発言を合わせて考えると、あらためて野田という政治家の本質が見えてくる。
*野田はどうして、こう次から次へといったん口にした約束を平気で破れるのか。その謎が解けてきたような気がするのだそれは、こういうことではないか。
野田にとって発言や政治行動はあくまで、その場の状況に合わせたものなのだ。状況が変われば、全体の判断も変わり、したがって発言も行動も変わる。それで何の問題もない。不都合とも思わない。野田はそういう政治家である。
野田にとって重要なのは、いつでも目の前の「状況」である。選挙の時は自分が当選する。それがもっとも重要な「自分が置かれた状況」だったので、 当選するには「消費税を上げる前にシロアリ退治をします」と約束する。それはそれで、もっとも合理的なセリフになる。
次に谷垣との会談では、野田の最優先事項は消費税引き上げ法案の成立と、できれば内閣不信任案や問責決議の提出阻止だった。増税法案成立だけでも十分だったはずだが、欲張って不信任案と問責決議の封印を持ち出してみたら、なんと谷垣はそちらも同意してしまった。それなら、まったく文句はないので 「近いうち解散」を約束した。野田の言い分が本当だとすれば、そういう話になる。
だが後になって、谷垣自民党が問責決議に賛成するという「新しい状況」が生まれる。すると野田の判断も変わって「いまや前提が崩れた。新総裁と話し合ってみなければ分からない」という話になる。
官邸を取り巻く数万人の群衆は予想外
原発ゼロも同じである。当初は霞が関(とせいぜい経済界)の風景しか目に入っていないから、経済産業省の言い分にしたがって関西電力大飯原発の再稼働を決めた。将来のエネルギー戦略についても、経産省まかせで「2030年原発ゼロ案」「15%案」「20~25%案」という3つの選択肢を用意し、真ん中の15%案への着地を狙っていた。ほぼ同時進行で、これまた霞が関まかせで原子力規制委員会の露骨な原子力ムラ人事を内定した。
ところが毎週末の首相官邸前抗議行動が象徴するように、脱原発世論と原子力ムラ人事への批判が高まると、野田にとって状況が変わる。反対派の抗議 を「大きな音」などと口が滑ったが、官邸を取り巻く数万人の群衆は予想外の「新しい状況」だったのだ。
だから、あわてて軌道修正を図る。さすがに大飯原発は止められないでいるが、15%案はあきらめてゼロ案に傾く。原子力ムラ人事は国会同意をあきらめ、首相権限での任命という非常手段に訴えざるをえなくなった。それはたしかに乱暴だが、むしろ野田がそれほど追い詰められていた、と理解すべきであ る。批判が効いたのだ。
ゼロ案を公表してみると、当然なのだが、経済界や原発立地県、青森県などから猛烈な反発を浴びた。それがまた野田にとって「新たな状況」になる。 すると、今度は閣議決定の見送りに舵を切り換える。
もう1つ、例を挙げよう。野田は先の番組で12月訪ロ予定について「11月までは次官級、外相級の会談があるので、総理が訪ロするなら12月になる。だから12月訪ロ希望を言った。それと解散時期の話は関係ない」と説明した。これも同じだ。
プーチン大統領を目の前にして、野田の視野には「日ロ交渉をどう進めるか、という状況」しか入っていない。解散は関係ないのだ。だから12月訪ロという答えがスッと出てくる。ところが、もちろん現実には訪ロだけでなく解散をどうするかという問題がある。
特例公債法案の成立が見通せないなど政権が行き詰まって解散せざるを得なくなると、今度は解散不可避という「新しい状況」が目に入ってくる。そこでは12月訪ロの約束など、どこかに消え失せてしまうに違いない。そのときは日本人だけでなく、プーチンまでがあっけにとられることだろう。
野田は信念の政治家ではない
以上のように徹頭徹尾、野田の行動原理を支えているのは、常に目の前の状況である。状況に応じて対応するのが「悪いことだ」とか「信念に反する」といった考えは初めからない。もともと信念など持ち合わせていない。むしろ「状況に応じて柔軟に対応するのが政治家の手腕、力量」と考えているのではないか。
これに対して、普通の人々は「政治家は信念にしたがって行動し、理想を実現するために政治活動をしている」と思っている。野田のように自信満々で 「シロアリ退治」を訴えられると「その通りだ。彼は信念の政治家だ」と勘違いしてしまう。人々は「政治家は信念で活動してほしい」と願っているから、そういう風に演じられると、つい「信念の政治家」と思い込みたくなってしまうのである。
自分が願うように現実を理解する。これは日本社会のいたるところで見受けられる。日本人の悪い癖だと思う。最近の一例を挙げれば、環太平洋連携協定(TPP)への態度もそうだ。TPP反対論者は野田が昨年、TPP交渉について「参加に向けて協議する」と表明したら「あいまいだ」とか「参加はとんでもない」と批判した。
日本が「参加に向けて協議する」と表明したところで、相手が参加を認めるとは限らない。当たり前だが、参加できるかどうかは相手次第の面が半分、 あるのだ。現に共和党のロムニー大統領候補は交渉が減速する懸念があるので、現段階での日本の参加に反対している。とにかく交渉反対という立場の人はとも かく、新聞や識者が野田の言い方をあいまいと批判するのは、自分の都合でしか物事を判断しない視野狭窄である。
脱線した。
野田は信念の政治家ではない。そうではなく、その場の状況に対応する政治家だ(こういう人を「政治家」と呼ぶのはためらうが)。その場しのぎの人である。多くの人が「政治家は信念の人」であってほしいと願うのは勝手だが、間違ってはいけない。政治家も人それぞれだ。実績と行動で正しく判断すべきで ある。
野田には初めから信念だとか、実現すべき理想のようなものはない。あったとしても、それは「床の間の掛け軸」のようなものだ。あれば格好よく収まりもいいが、別になくても困らない。邪魔になれば、いつでも外す。その程度なのだ。
そう考えると、野田の政治方針はこれからもコロコロ変わる、とみて間違いないだろう。いまや野田の脱原発路線はほとんど風前の灯火だ。だが、たとえば次の選挙で落選すれば、またまた脱原発を言い始めるかもしれない。あるいは「消費税引き上げは間違っていた」とさえ言うかもしれない。
こういう政治家が内閣総理大臣にまで昇り詰めた事実に脱力する。しかし、それが日本の現実でもある。(文中敬称略) ≫(現代ビジネス:ニュースの深層:長谷川幸洋)
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