acc-j茨城 山岳会日記

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谷川岳・衝立岩中央稜

2006年07月05日 17時31分27秒 | 山行速報(アルパイン)

2006/7月上旬 谷川岳・衝立岩中央稜

魔の山

魔の山、そう呼ばれるに至る背景に一ノ倉の断崖は言葉を必要としない。 
ここには息詰まる荘霊な雰囲気がある。軽口をつかせぬ圧力がある。 
そうして淡々と時は過ぎゆく。佇む魔に影を踏まれぬように。

朝、一ノ倉出合はクライマ-が数パ-ティ-。 
お互いのポジショニングに気をかけつつ、梅雨の晴れ間に喜びの声。 思い起こせば一週間前、パ-トナ-は「ハレる!」と断言していた。流石である。

一ノ倉の雪渓を登る季節は初めてのさかぼう。 
テ-ルリッジ末端までもうすぐってところで急になってくる雪渓に運動靴。 
もう少し硬いソ-ルにしときゃよかったななんて思ったのも束の間、いつの間にやら左手人差し指に裂傷、出血。 
滴った血でズボンの左膝には真っ赤な血痕。幸い、絆創膏のぐるぐる巻きで止血できた。 
今にして思えば、魔はここにあったのである。 

 

ル-トミス 

先行は変形チムニ-と中央カンテ取り付きに配備していた。 
中央稜は一番乗り。 気分良く準備をしていると南稜パ-ティ-に続いて中央稜後続が一団体2パ-ティ-。どうやら学生らしい。

1ピッチ、リ-ド。暑くもなく寒くもなく、程よく乾いた岩に程よいガバ。こりゃええなぁ。 

2ピッチ、フォロ-。左に回りこんでルンゼ。ここはコ-ルが聞こえ難い。 

3ピッチ、リ-ド。左フェ-スから右の凹状へ。テラスを見送り左のフェ-スをひと登りでビレイ。 

4ピッチ、一段上がっての核心はスタンスが少ない。

縦リスハ-ケンにスリング立ちこみでA0。 いやA1か?あとはヌンチャクを掛け変えながら体を引き上げる。フィフィ着けてくればよかった。このピッチ、 楽でない。

※後日談ですがこの3・4ピッチはル-トミスが発覚。どうりで悪い訳である。

正規には3ピッチ目のテラスで切って、右のカンテを越えてフェースに行くのが正解。 

5ピッチ、リ-ド。フェ-スは快適。しかし核心で消耗したためか体が硬い。慎重に慎重に。 

6ピッチ、フォロ-。陰惨な凹状は濡れていて意外と悪かった。 
7~9ピッチ、ツルベで終了点。ルンゼと凹状をつなぐらしいが、リッジ沿いを行ったりきたり。 それなりに快適な岩登り。 この辺は浮き石が多くて神経を使った。

岩つばめ 

雷鳴にも似た雪渓の崩落音に目を向ければ、谷を自由闊達に飛び回る岩つばめ。 
ゆったりと座れる終了点で大休止。今の登攀を語り合う。 
下山は同ル-ト下降とし、要領を確認しあったら後発で懸垂下降。 
3ピッチ下ったところで後続とバッティング。登り優先でシバラク待機。 
ロ-プの回収には細心の注意をした。幸い順調に下降できたが、 聞いていた通りロ-プが引っかかりやすい箇所が多い。 
先行が下降し回収確認すると結び目が岩溝に嵌まり込むこともしばしば。 この回収確認はかなり有効なのだと思い知らされた。 
中央稜取り付きで小休止したら下山にかかる。 

 
ブロック 

快適な登攀に気を良くして下山はコロコロと。最後は懸垂下降でテ-ルリッジを下りきり、 雪渓の下りは軽アイゼンを装着する。 
ロ-プ回収の間に先行したパ-トナ-を追いかけて下りはじめたそのとき、崩落音。 
衝立スラブ側の上部からブロック雪崩。氷塊はアッという間に雪渓を転がり落ちてくる。 
「まずい」 
氷塊はまるで岩場に打寄せる荒波のように四方八方に氷屑を撒き散らし、迫る。 長い長い一瞬にパートナーの声が聞こえた。 脚は咄嗟に本谷側へ向いた。 
氷が砕け散りながら目の前に迫った瞬間身を伏せた。パラパラといくつかの氷屑がザックに当たったが、 幸いテ-ルリッジ末端で方向を変えて落ちていった。そうして何事もなかったかのように谷は静寂に包まれる。 
運、不運の境目なんて紙一重。左手の裂傷がすこし疼いた。

sak


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