1999/9 栗駒山
待ちに待った東北巡礼の山旅。
今回は家族サ-ビスの一環として「さくさく登山」を楽しもうという趣旨なのである。
自宅出発2時間遅れもなんのその、みちのく路を快調に北上。
しかし、平地では良かった天気が山麓に入ると共に大粒の雨。
今宵、山行の祝杯をあげる予定であった「須川高原温泉」につく頃には雷も 不気味に光る悪天であった。
30分ほど悩んだ末に本日の停滞決定。それではと秋田県側に下って稲庭うどんを いただきながら作戦会議。
結果、私一人は早朝3:00から山頂へ。下山後天気の様子を見て、皆で昭和湖辺り まで行く事とした。
草木も眠る、丑三つ時の登山道
目覚ましのアラ-ムがなると同時に 部屋の片隅でカサコソとアンパンをほおばる。
身支度を整えちょうど3:00の出発だ。
あいにく天気はガス。昨日よりは雨がないだけ状況は良くなっている。
暗い登山道をヘッドライト頼りに歩をすすめる。以前、夜間歩行想定山行を していた為、意外と落ち着いたものである。
しかし、本能である。暗いというのはさすがに恐怖感を拭い去れない。
きょろきょろと身の回りが安全か気になる。
まるで沢!階段を流れる清流
25分ほどで名残ケ原、さらに35分で地獄谷と昭和湖。
湿原をそよぐ風、険しい谷を流れる沢、風に波打つ美しい火口湖。
音はすれども姿が見えず。想像を膨らますもどうにも形にならない。
今日は秣岳へと稜線歩きを予定していたが、どうしてもこれら美しい景観を 見たくなってきた。ここでピストン山行に変更。
それにしても昨日の雨の為、登山道がまるで沢のようである。
天狗平へは昭和湖より40分ほどで着いた。
ここから稜線伝いに山頂まで歩く事になる。
この頃から辺りが薄明るくなってくると同時に風が強くなる。
たまらず天狗岩のクラックに身を押し込み休憩。
天気が良ければここから ご来光なのになあ。
そんなわがままを思いつつ、 身をかがめながら山頂へと急ぐ。
さあ山頂だ。小さな祠と大きな塔が 対照的である。
しばらく待ったがガスが晴れる事はなさそうだ。
そう言えばここの所”山頂= ガス”ばかり。「俺ってガス男か?」
仕方なく証拠写真の山頂塔を写真でパチリ。
「ん?」
ここは岩手、宮城、秋田、 三県にまたがる山と予習してきたが、塔にはこれに山形県が加わっている。
「おっと、ってことはこの廻りを歩くと四県歩いた事になるの?」
朝5:00山頂塔をぐるり回る男がひとり。(実際は山頂=岩手、宮城の県境です) ちょっと恐い絵になりそう。
下山を開始し、天狗平迄行くと 辺りがだいぶ明るくなってきた。
稜線を一歩下ると嘘のように風もない。
さあ、これからが今日一日楽しい 山歩きの始まりだ。
沢になった登山道を歩き、潅木のトンネルを抜けると 昭和湖に着く。
さっきはな-んにも見えなかったが、
あるある。火口湖が。
乳青色の湖にガスがかかりなんとも幻想的である。
しかし、 「有毒ガス発生注意」の看板。
キレイなものにはトゲがあるのだ。
この頃から登りの時の自分の足跡が 目立ってくる。
この時は何考えていたっけな?
最近、そして今後の自分の事とか、
次の山の計画といった事から、
クマが突然出てきたらとか、
最近聞いた怪談話とか、
ここで人が ひょっこり出てきたらクマより恐いなとか、
何かと恐怖に刈られたなあ。
明るくなれば恐いものなし。そんな自分が微笑ましく思える。
と思ったら木道が現れた。ここが名残ケ原だ。
ゴツゴツと岩が目立ってくると温泉 宿はもうすぐだ。
硫黄の匂いが食欲を刺激する。
まずは温泉に入ろう。そして朝食をモリモリ食べよう。
登山道は宿の露天風呂脇に出てくる。そこにはあひるのおもちゃがプカプカ浮かんで、あたかもお出迎えしているようである。
本日はまさに「朝メシ前」登山であった。
などと、暗がりの恐怖などスッカリ忘れて、強がっている自分もまた 微笑ましいものである。
sak