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おおるりが赤裸々に綴る脱線転覆の感想記!(舞台やライブの感想です)

映画「少年H」

2013年09月04日 18時33分14秒 | 映画

【原作】「少年H」妹尾河童
【監督】降旗康男
【出演】妹尾盛夫:水谷豊/妹尾敏子:伊藤蘭/妹尾肇:吉岡竜輝/
妹尾好子:花田優里音/うどん屋の兄ちゃん:小栗旬/下山幸吉(オトコ姉ちゃん):早乙女太一/田森教官:原田泰造/久角教官:佐々木蔵之介/吉村さん:國村隼/柴田さん:岸部一徳

雨が降っては止んで晴れ、また降り出してはすぐに晴れる・・・そんな天気の今日。
今年の夏がすっかりと終わってしまう前に、必ず観ようと思った映画、「少年H」を観てきました。

  

映像も無いエンディングロールになってから、物語をかみ締めるように静かに涙が流れました。
良き映画を観せてもらい、降旗康男監督に「ありがとうございました」と言いたくなりました。

こういう作品を観ると、「やっぱり映画って素晴らしい」と思います。
何といっても、映画は日本全国で同じものが観られますから。
レディース・ディやレイトショー、映画の日や各劇場のポイントなどを使えば、大人でもチケット代は1000円以下になりますし、DVDも良いけれど、やはり劇場に足を運びたいものです。

などと、今さらですけど。
この映画は老若男女にお勧めです。やはり「すべての人の物語」だと思いますので。

H少年の父親(水谷豊さん)は、この時代に本当にこんなお父さんでいられたのが信じられないくらいでした。
何ていうのでしょう? 素敵とか、立派とか・・・ちょっとそういう形容で表しては違うというか、足りないような気がしますが、とにかくこのお父さんと、その家族、少年Hがあの戦禍を生き残ってくれて良かったと思いました。
そして、この時代を描きながら、今にも通じる大切なメッセージを伝えてくれたことに感謝したいです。

という私は、いかにも原作を読んでなかったのがバレバレ(笑)

原作は妹尾河童さんの大ベストセラー小説なので、映画館に行けない人は小説をどうぞ。
なので、詳しいストーリーなどは書きませんけど、やっぱり、借り物ではない自分の目で見て、感じて、考えることが大切ですよね~。

ところで、この物語の舞台は神戸です。
私はつい先日に神戸に行ったばかりで、その時に映画のロケに使われた異人館「萌黄の館」を見てきました。


え~、実を言えば私はここの写真を撮ってこなかったので、この写真はネットで拾ったものです
この建物でどんなシーンがあったかというと、少年Hのお父さんが外国人のスーツを仕立てるために、採寸に来るんです。
お父さんは紳士服の仕立て屋さんなんですよね。
ですから、この時代だというのに、水谷豊さんはいつもパリッとした仕立ての良い背広を着ていて、すご~く素敵でした。
途中で国民服になった少年の服も、妹の服やお母さんのブラウスやコートも、みんなきちんと体に合っていて、アイロンが当てられていたのは、この家族ならではでしょうね。
手作りの服って、愛情がこもっていて良いですね~!

ついでに旅先で見てきた神戸の街の話をしますと、あの阪神・淡路大震災がまるで嘘のように甦ったように見えました。
もちろん、私たち観光客の見えない部分では、まだ痛みや苦しみの傷は残り、癒すことのできない悲しみもあるのでしょうが、よくぞこの街をここまで建て直したものだと、ここに希望の光を見たように思いました。

ですが、この映画を観ると、大震災だけでなく、戦争当時の空襲もまた酷い有様だったんですね。
広島を旅した時にも思いましたが、苦しい時代にも決して希望の光を絶やさず、必死に立ち上がって逞しくく生きて復興してきた名も無き多くの人々に、心から頭が下がります。

そのようなことは、私のような者が書くと、どうも薄っぺらくて申し訳ないのですが、だから「映画を観て下さい」と言うしかないですね。
この映画に限らず、いろんな作品の、それぞれの視点、それぞれのアプローチで届けられるメッセージ、問いかけられたものに、いつまでも敏感でいなきゃと思います。

滅んでは甦り、また滅ぼされても必ず甦る、人の持つ力を信じて、今のこの国に生きる私たちに、これから何ができるのか。
自分の目で見て、考えなくては・・・

「恥ずかしい人間になっとったら、あかんよ」

少年Hのお父さんの言葉が、いつまでも耳に残りました。