今宵も劇場でお会いしましょう!

おおるりが赤裸々に綴る脱線転覆の感想記!(舞台やライブの感想です)

「リチャード三世」

2012年10月09日 01時17分54秒 | 観劇(ストレートプレイ/人形劇)

【作】W.シェイクスピア 
【翻訳】小田島雄志
【演出】鵜山仁
【出演】岡本健一/中嶋朋子/浦井健治 ほか


眼鏡の浦井くんって、ちょー可愛い~なぁ~っ

いやいや、演劇(あくまでも、舞台上の)生首愛好家(爆)としてはですね~、どーして前作と同じ、灰色の生首にしなかったのか疑問だわ。
前作の流れに沿って、ここはリアルな生首じゃなくても良かったのに
ってか、「ヘンリー六世」の時の、あのグレーの生首は個性的で私は結構気に入ってたし、今回あれをオペラグラスで拡大して見るのが楽しみだったのに、ざんね~ん!

という、マニアックな(悪趣味な?)話はともかくとして

信頼には信頼が、愛には愛が返ってくる。
それが「必ず」というほどには、世の中のすべてが甘く出来ているわけじゃないけれど、
裏切りには裏切りが、憎悪には憎悪が必ず返ってくるものなのね。

思い出したわ、リチャード三世を観ると、私は泣いてしまう、ということを。
前に別の舞台で観たときは、彼が死ぬシーンで泣いたっけ。
今度は、戦場の寝床に次々と亡霊が現れるシーンで。
どうしたってあれは泣ける。
まわりの人が泣いてなくても、私は泣きたい。

リチャード三世に殺された亡霊たちが、次々と現れては呪いの言葉を浴びせます。
「絶望して、死ね」

入れ替わり立ち代り、恨みの言葉、呪いの言葉をこれでもかと聞かされるほどにリチャード三世は確かに悪い奴だった。
だけど、私がこの人から何をされたわけじゃないもの。
別に悪い男に惹かれるってわけじゃないけれど、いや、絶対にこんな男は嫌だけど、愛も友情も信頼も安らぎも・・・何も持てなかったこの救いのない人生に泣ける。
醜く歪んだ姿で生まれた運命と、それゆえに心まで歪んでしまった彼自身に、その逃れようのない有様に泣ける。
そして、人間の欲望と、その果ての絶望にも。

その亡霊達が現れるシーンは、舞台の中央が回り、くるりと裏になると、ヘンリー七世が寝ています。
そのヘンリー七世に、亡霊は勝利の祝福を祈ります。
まるで、光と闇ほどにも違う二人です。
周囲に愛され忠誠を尽くされる爽やかなヘンリー七世と、かたや憎まれ恨まれ呪われた醜い姿のリチャード三世。
これも人だ。人の人生なのだ。

ところで、前にも思ったけど、この劇での女性たちの恨み言が凄い!
マーガレット役の中嶋朋子さん、ものすごく存在感あります!
マーガレットは憎悪と悲嘆に狂っているようでいて、その呪いの言葉はとてつもなく知的で詩的です。
そのマーガレット、エリザベス、ヨーク公爵夫人(リチャードの母)の三人の呪い合戦は見応えありました。

それにしても、言葉の力は侮れないですね。
リチャードは舌先三寸で次々と人を謀略に陥れていくわけですが、女性を口説くにもその力を発揮します。
夫と子供の仇でこの世で一番憎いと思う男をですよ、それも美形どころか「ヒキガエルのような」と言われる醜い男に、たとえ一時の迷いでも揺れてしまう女心の複雑さ。というか、単純さ。
これを思うと、世の男性たちはリチャードを見習えば、どんな美女でも落とせるかも?
つまり、「なんてあなたは美しい。あなたほど美しい人はいない。あなたこそが私の心を惑わす。あなたは私の救いであり光だ。私はあなたを幸せにする」・・・と、ですねぇ、延々と繰り返して言えば良いのですね。呪文のように延々と。
たとえ最初は疎まれていても、とにかく「美しい」と褒めあげて、「欲しい」という気持ちを切々と、めげずに繰り返せば、そのうち美女はなびくらしい。

う~ん、ほんとうだろうか。
真心もなく、ただの口先のみで恋の形勢大逆転はありえるのか??


あ、それが感想の最後になると思うと、いくらなんでも情けないので(笑)
最後に、
リチャード三世役の岡本健一さんは良かったです!
「ヘンリー六世」の、あの長丁場のあとに、「このキャストで続きのリチャード三世をぜひ観たい!」と多くの人が思ったはず。
なので、また岡本さんで観られて満足です。
カーテンコールで、背筋を伸ばして笑顔の岡本さんは劇中の彼とギャップがあり、どちらも魅力的でした。