今宵も劇場でお会いしましょう!

おおるりが赤裸々に綴る脱線転覆の感想記!(舞台やライブの感想です)

「CHESS in Concert」(その2)

2012年02月04日 06時20分25秒 | 観劇(ミュージカル/音楽劇)

【作曲】 ベニー・アンダーソン ビョルン・ウルヴァース
【作詞】 ティム・ライス
【演出・訳詞】 荻田浩一  【音楽監督】 島健  【指揮】 上垣聡
【出演】 安蘭けい 石井一孝 浦井健治 中川晃教 (五十音順)/他

(その1)からの続き

「CHESS in Concert」東京公演6回のうち、当初私が観る予定だったのは4回。
26日の初日とその翌日のマチネは、どうも最近は月末近いそのあたりは仕事の予定が読めなくて、私にしては珍しく初日参戦を逃しました。
けれども予定外に翌日のマチネ(昼公演)に走ったのは、その日の会議が中止になってくれたおかげもあるけれど、何と言っても初日の評判が凄くよくて、ネットでそれが瞬く間に広まったからでした。
聞くところによると、カテコでスタンディング・オベーションだったとか。
ツイッターでも、初日参戦の友人達が大絶賛で呟いている模様。
なので、いてもたまらず、午後半休を取って久しぶりに劇場まで走ったわけですが…

私は思った。
「まだまだ。立つのは早い。確かに感動はしたけれど、そこまで大絶賛するにはまだ早いではないか?」と。
そして、初日のスタオベは、「この難しい楽曲を短期間で良くぞここまで仕上げた、歌いきった!」という、そういう意味での賞賛ではなかったか?と思ったんですよねぇ…。
もちろん、キャストの歌は素晴らしかったけど、ここ数年で観てきた四人の実力からすると、こんなもんじゃない、この先はもっと凄くなるんじゃないだろうか?という気もしました。
ところどころにまだ一杯一杯な部分も見られたし。
だから、なんというか、初日は観客がこれを初めて観て聴いたという衝撃と興奮、そしてキャストから伝わる達成感が共有できたという感動を含めてのスタオベだったのかな?…とか。
けれども、一杯一杯はこちらのほうもそうだったので、その辛口な感想は、私のほうの耳のせいでもあったかもしれません。
それにまあ、自分がその初日に立ち会えなかったという、多少のやっかみもあったりして(笑)

実際、この「CHESS」の楽曲は開幕前から難しいとは聞いていましたが、なるほど、歌うに難しそうではあるけれど、聴く側にとっても難しい歌でもありました。
歌の難しさというのは、いろいろとあると思うんですが、たとえば、簡単な旋律を何度もただ繰り返すような単純な歌は、聴くほうは簡単でも、歌うには案外と難しいのかもしれないと思ったりもします。
ましてやプロが歌って、人に「聴かせる」となれば。
けれども、「CHESS」の楽曲は変拍子が多くて、半音の上がり下がりは頻繁だし、シンコペーションもあるしで、曲の展開も全く先の予測できない複雑さ。
まさに、難曲です。
え? これって三拍子だけど、ちょっとまて!今、四拍子になったけど…いや、瞬間七拍子?とかね(笑)
解らないまでも、「楽譜を見てみたい」と思った舞台なんて、これが初めてかも。
そんなわけで、慣れない難しい曲を、無意識に頭で音楽を理解しようとするから、初めて聴いた回では私の耳のほうが余裕がなかったのかもしれません。
キャストの皆さんは、ほんとうに良くぞこれを覚えて、楽譜なしで歌いきったと、それだけでも賞賛に値します。しかも、ちゃんと心がこもっている。エクセレント!です!

けれども、この難しさは難しいだけに、かなり面白いと思いました。ジャンルもいろいろで、それぞれの曲のメロディーも素敵です。
こんなにも面白く、そして素晴らしい楽曲だったんだ?!と心から感動したのは私は二度目(27日ソワレ)に聴いた時からでした。

そして、私の三回目28日のマチネ。
こ~れ~が~ね! 唯一B席で観て聴いた回でしたが、二階席の一番上だったのは、とーっても!とーっても!良かったんです!

私は昔々の中高生時代に吹奏楽でパーカッションをやっていたので、パーカッションが活躍するオケを見るのが好き!
今はもちろん、すっかり敲けなくなりましたが、打楽器好きは変わりません。
そして、「三連符フェチで、三拍子好き、変拍子にはわくわくする~! シンコペーションには超萌える!」というヘンタイなので(笑)、このコンサートも二度目とあれば、その難しさや多彩さが耳に慣れていくに従って嬉しくってしょうがないです。
それに、遠目に見下ろすから舞台の上の指揮者の指揮棒が常に目に入り、前日に複雑でつい頭で理解しようとしていた楽曲のリズムやメロディーがすんなりと体に入ってきて、この難しさこそが心地よくてわくわくし、その素晴らしさにどんどんと楽しくなってきました。

それでね、次の大阪公演で二階席から見下ろすお席に座る方には、ちらっとでもいいから見て欲しいのが、オケの上手(かみて)のブースです。
まず、管楽器の方は幾つかの楽器を持ち替えています。
さっきまでクラリネットを吹いていたかと思うと、いつの間にかフルートに、そしてピッコロを手にしていたりします。
ベースや管楽器の方は、いくつかのパートを一枚の楽譜にして編曲されたものを、次々と楽器を持ち替えて演奏していました。

そしてこのオケの私的な必見は、やっぱりパーカッションだわ!
このパーカッション奏者の方は、普通のオケなら三人は必要だろうという楽譜を一人で演奏していました。
まず、ティンパニのスティックが、確認できただけでも三種類あった…というのは普通ね。
その違いはスティック(棒)の先の丸い部分の硬さの違いで、叩く音の柔らかさの違いを変えているのは言うまでもありませんが、そのうちの一本は反対側の先端がスネアドラム用に変形してあって、片手でくるりと回すとティンパニから即時にスネアが叩ける仕様になっていました。
これは後から友人に効いたところ、「ラ・マンチャ」などでもそうだったということですが、そのくるりと回して、一拍の間も空けることがないというのが凄い! ってゆーか、見ているだけで燃える~~っ!かっこいい~っ! できるものならやってみた~い!
反対側の先端をスネア用に削ったら、スティックのバランスだって変わってしまうだろうに、そういうの平然とやっちゃうところは、さすがプロ。職人芸って感じ。
そして、二つのティンパニの前には小さな鉄琴もあって、ティンパニを叩く間にそれを叩く…ということはだ! 右手に細くて硬い先端のスティックと、ティンパニ用のスティックの二本ををV字にして持っていたりするんだな~。そんな珍しいもの、普通のオーケストラじゃ見れませんって!

…と、あ~、なんだか書いているうちに興奮してきて、つい口調が変わってしまった(笑)
いや~、弦といい、管といい、打といい、あの少ない人数で、皆さん良い仕事を見せて、聴かせてもらってほんとうに楽しかったです。
お疲れ様!! そして、ありがとう!
いろいろなジャンルの楽曲がそれぞれに素晴らしくて、あっきー達の歌が堪能できて大満足に感動できたのも、二階席が思いがけなく楽しかったのも、指揮者とこのオケの皆さんのお陰です。そして、もちろん音楽監督の島健さんのお陰よね。
ほんとうに聴けば聴くほどに良い曲ばかりでした。

初回はスタオベしなかった私も、この時こそは文句なく、「これは立つっかないでしょう!」とすぐに立ち、二階席の奥から大きな拍手。
そしてその拍手は、前楽、そして千秋楽と、回を増すごと、観るたび、聴くたびに、どんどんと力が入ってきたのは言うまでもありません。

それにしても、私も楽しかったけど、あの素敵な曲を歌うのも、演奏するのも、大変だったかもしれないけれど、さぞかし遣り甲斐があって、とっても楽しかったでしょうね?!
音楽家達は羨ましいわ!

というわけで、何だか妙な話の方向になってしまったけど、この舞台の感想はさらに(その3)に続きます。