今宵も劇場でお会いしましょう!

おおるりが赤裸々に綴る脱線転覆の感想記!(舞台やライブの感想です)

「赤い城 黒い砂」2009/04/25 

2009年04月25日 23時04分57秒 | 観劇(ミュージカル/音楽劇)
演出:栗山民也
出演: 片岡愛之助/黒木メイサ/中村獅童/南沢奈央/
馬淵英俚可/中嶋しゅう/田口守/中山仁/

先日のコンサートで、あっきーが「青の中川晃教です」と言ったとき、
「再生の青なのね?」ということはすぐに思いついたけど、同時に
「ふぅ~ん、それじゃ一番悪い人なんだ?悪い人って自覚がないよね~」と思ってしまったのは、別に、あっきーに含むところがあったわけじゃなくて、前日に観たこの舞台を思い出したからです(笑)
青い人は武器商人だったの。


この物語はシェイクスピアの「二人の貴公子」が原作となっていますが、かなりアレンジされたものだったと思います。
黒の国の英雄二人、冷静沈着な男ジンク(片岡愛之助)とその親友、自信家のカタリ(中村獅童)。
赤い国には、その勇猛さから「赤い国の魔女」という異名を持つ王女ナジャ(黒木メイサ)。

戦場で赤い国の捕虜となってしまった英雄二人のうち、ジンクは解放後に祖国を裏切り、素性を隠して敵国の王女ナジャの親衛隊長となり、残されたカタリは牢獄看守の娘ココ(南沢奈央)の手助けのもとに脱獄を図り、後に盗賊の頭となります。
二人の男が一人の女を奪い合う話とも言えます。

とにかく愛之助さんと獅童さんが素晴らしかった!
期待していたよりもずっと見応えのある舞台だったわ。
王女を奪い合う話と言いながら、ジンクの親友カタリに対する妬みや憎しみ、その屈折した想いに焦点を感じてしまうのは、この男優さん二人の力か、それともそれこそがやはり話の軸なのか。
最後の最後でジンクに撃たれたカタリは確かこう言ったと思う。いや、私がそう聞こえただけなのかもしれない。
「そうか、お前は(俺を)愛していたんだな。ずっと見ていた」

愛するということは、相手をよく見るということだと思う。
牢番の娘ココが地上の光で目をつぶされて、盲目になってしまった後、それでもなお、というよりそれだからこそ、ひたすら見えないカタリを見ていたというのも胸に迫るものがありましたよ。
はっきりとはさせなかったけど、牢番の男は、自分の娘の体を兵士たちに与えていただけじゃなく、自らも犯していたわね?
狂った愛の囚われ人であったココが、「私の体に触らないで、触らせないで!」と爆発するような感情をみせたとき、その燃えるような彼女には、目を見張るものがありました。
なぜカテコで他の三人と中央に立たなかったのかが不思議なくらい。

そして、暗い穴の牢獄というシチュエーションには、
「脱獄のロマン」も感じたな。
カタリの脱獄と、ココの脱獄。
ああ…ラプンツェル……。
囚われの身、絶望からの脱出。開放の願望。逆転の夢。
脱走物語にわくわくしちゃうのって、あるよね?
子供のころ、ドロケイ、刑事と泥棒の遊びとかしたものね。


で、実は私がこの舞台を観たのは黒木メイサちゃん目当てだったの。
彼女はとても目力のあり、美しく凛とした魅力のある女優さんです。殺陣のポーズも決まっていて、とてもカッコよかったです。
でも…惜しい!! あと一歩、いや、二歩です!
たぶん、今はまだ成長の段階かと思いました。二人の男優さん達と、それからかなり存在感があったココの南沢奈央ちゃんに持っていかれちゃった感じ。
なぜなら、王女ナジャが何を想っているのか、いまひとつ伝わってこない。
演技のトーンが終始一貫して硬質なのは、そういう役だからかもしれないけど、その中に隠された感情の揺らぎが見えなかったのは残念です。
何よりも、カタリとの、最後の殺陣の場面では、獅童さんには、「二人は
血を流しながら命を奪い合うことでしか愛し合うことができないのだ」という激しく求める気持ちが感じられたけど、メイサちゃんはまだそこまで行ってないような気がしました。
この人の目の力はとても強くて魅力的だけど、私が想像していたような魅了眼にはあと一歩だわ。
きっと元々は、魔性の女ではなくて、ハンサム・ウーマン系なのね、カッコイイ女性です。

ところが、魅了眼というのは、そういう力じゃないの。
「私を、私だけを見なさい。そして目を離さないで」という強い視線で相手を捕らえる。
それは求めの力であり、哀願であり、強い呼びかけの声。
そーいうの、見たかったのよねぇ~っ!!

でもね、この舞台で実力のある俳優さんたちとご一緒して、次に「女信長」でしょ。
メイサちゃんが、めきめきと成長して、その美しい瞳が魅了眼に輝く時がきっと来るはず。
6月には見られるかしら? ちょっとドキドキ! 楽しみだわ!!

ところで、どうして私が魔性の女に詳しいかは、また別の機会で。
あ、そうそう。
魔性の女に恋する男は、その女性を「愛している」というよりは、端からみると「ハマっている」という感じ。
魔性の女はポピュラーに好かれる芸能人タイプではなく、むしろマニアックな好みの男性向けだから、一度ハマっちゃうとなかなか抜け出せなくて、結局ボロボロにされちゃうことも多いのよね。
つまり可哀相な人だと思うのよ。
いや、そのハマってしまう男がじゃなくて、そういう女性がね。