Ruby の会

シニアライフ~能楽・ボランティア・旅行・食べ歩き・演劇などを綴っています

高岡薪能 ’12 (その2)

2012-08-31 | 能楽

 今年の「高岡薪能」は、第30回記念大会だった。午後からの第1部、素謡の出番が終わると一旦帰宅。早目の夕食(お弁当が出た)を食べ、娘と瑞龍寺に向かった。まだ日差しは強いので、境内の観客席はバッグなど置いて席をとってあり、皆さん仁王さまの山門の影で休んでいる。私達もそれに習った。

 5時45分、高岡能楽会理事長の開会宣言、その後、高橋市長(能楽会会長)の挨拶、金井雄資師の「本日の演能曲目・小鍛冶」の説明と続く。(↓は、市長挨拶         

 その後、金井雄資師の舞囃子「小督(こごう)」、金森秀祥師の仕舞「松虫」、大坪喜美雄師の仕舞「藤」で、第2部が始った。
 狂言は「雷」:雷 炭哲男、医者 野村祐丞
雷は自然現象だが、昔からよく擬人化される。この狂言でも、雷が雲間から落ち、腰を痛め、藪医者にかかる。威張っている雷が、鍼治療を受け、イタタタ~と叫ぶさまがコミカルで滑稽。治療代を請求され、800年にわたり日照りや水害から守ろう、出世も約束しよう、と言う目出度い結末。単純なストーリーなので、演技が物を言います。炭さんのいつもながらの大げさな所作が面白い。
 

 この後、「火入れの儀」となる。篝火の台は4つ設置され、それぞれ足元には消火器とバケツが(万一のために)用意してある。早々と消防署員の点検もあった。この日は風がかなり強く、ゴォーゴォーと言う風の音をマイクが拾うほど。もし、火が飛んだりしたら国宝瑞龍寺は焼失となりかねない。
 火入れの儀は、四津谷道昭住職、高橋高岡市長を先頭に4つのグループに分かれて一つ一つの篝火に点火された。(↓は、市長さんのグループ
  

 篝火が4つ灯り、辺りが少し明るくなる。

 いよいよ、能「小鍛冶」が始った。

 前シテ・童子/後シテ・稲荷明神:宝生流宗家、宝生和英
 ワキ・三条小鍛冶宗近:苗加登久治
 ワキヅレ・橘道成:北島公之
 間狂言:荒井亮吉
 地謡:大坪喜美雄ほか
 大皷:野尻哲雄、小鼓:住駒俊介、太鼓:徳田宗久、笛:瀬賀尚義

 一昨年、「富山薪能」で、やはり宗家のシテで「小鍛冶」を観た。その時の私のブログのコピーも交え紹介すると:
 
これは、シリアスでもなく、ドロドロともしていなく、幽玄の世界と言うでもなく、単純なストーリーだ。
 
 (あらすじ) 小鍛冶とは、京都三条の刀工、宗近(むねちか)の異称で、「三条小鍛冶」と呼ばれていた。 
 ある夜、一条の帝が不思議な夢を見て、三条小鍛冶に御剣を打たせよとお告げを受ける。 臣下橘道成(ワキヅレ)を遣わし、その旨伝えるが、宗近(ワキ)は「相槌」を打つ者がいない、と辞退する。 だが、帝の御霊夢によるものだから、と重ねて言われ、進退きわまり、あとは神力に頼るしかない、と稲荷明神に参詣する。 
 すると、目の前に童子(前シテ)が現れ、ともかく御剣を打ってみよ、と勧める。 そして、異国の名剣の話や日本武尊の”草薙の剣”の故事を詳しく語り、宗近を励まし、稲荷山の彼方へ消え失せる。(中入り)(間狂言)(後見が作り物の壇~鍛冶場を表す~を運び入れ、舞台中央に置く)
 
 宗近は壇の上に上り、天地の神々に力を貸し給えと一心不乱に祈ると、さっきの童子が稲荷明神(後シテ)になって出現する。 宗近が’ちょう’と打てば、稲荷明神も’はった’と相槌を打ち、打ち重ねて御剣を打ち上げる。 宗近が表に
、「小鍛冶宗近」と銘を入れ、明神は裏に、「小狐」と銘を入れる。 これが、名剣「小狐丸」である

 簡単に言えば、宗近が稲荷明神の助けを借り、宝剣「小狐丸」を作り上げる話だ。 
 前シテの黒頭(くろがしら)の童子ー化身ーと、後シテの稲荷明神ー狐ーを演じられたのが、宗家、宝生和英(かずふさ)さん、26歳。所作がきびきびして、とても身軽。 優しげな面をつけ若草色の衣装に身をつつんだ童子が座ったまま語る、静の場面と、狐が跳ぶように軽やかに舞う、動の場面の変化が見事である。前から2番目の席で見たので、面の美しさ、手の指先の軽やかさまでよく見えた。
 さらに、今回は徳田宗久さんの太鼓が興味深かった。「早笛」、「舞働き」、「来序」が入る。緩急の差が見事で、とても迫力があった。写真は撮れなかったので、翌日のK紙の一面の写真を、紹介します。
 
 宗家を迎えての30回記念能でもあり、また観光客も増えた国宝瑞龍寺境内の薪能にもかかわらず、場内アナウンスが些か気になった。音響係との打ち合わせミスであろうか、アナウンスの直後の私語がマイクに数回入った。また、宗家の名前の読み違いがあった。私が、「え?聞き違えた?」と思ったとたん、後座席の方が「かずふささんだよ」と呟く声が聞こえた。準備不足のためだろうか。私の友人で、詩吟の大会でいつもナレーターを務めるKAさんは、必ず原稿をワードで打ち、名前にはすべてふり仮名をつけられる。見習うべき心がけだと思った。 


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10 コメント

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Unknown (清姫)
2012-09-03 19:14:33
なはさん
昨日はよけいな説明が一切なく、自分で番組を読みながら鑑賞する形でしたね。
高岡は一般の方も多いから説明はやはり必要でしょう。だからこそ、気持ちを込めないといけませんね。
道成寺、いやぁ素晴らしかったです。一生でもう観ることはないでしょう。
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Unknown (なは)
2012-09-03 17:56:50
清姫様
昨日は久しぶりで楽しい時間でした。私が我儘を言って、「お蕎麦」にしてご免なさい!
「薪能」は大きな行事ですもの出演の方々やお客様に対しても緊張していただかなくてはと思います。
若い人に譲っていかれたらいいのですね!若い人の出番をつくってあげなくては、いい先輩とは言えないかも・・・・ね。
家でもそのようです。義母は子に譲るのが下手でした。
おかげで私達は、すぐ息子達に「あなた方がでたら・・・」と譲ったつもりです。余計なことでした。
昨日は素晴らしかったです。有難う。
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Unknown (清姫)
2012-09-03 01:33:24
風子さん
ほんとにそうですね。
「市民と市政」の音訳の時も、人名、地名など読み方がわからない時は、必ず広報課に電話を入れ確かめます。それでなければ、姓だけ読んで○○さん。
宗家はお父上が病気になられたとか、きっと早くから厳しく仕込まれた方でしょうね。
2日にも、金沢で特別能があり、「道成寺」のシテをされました。1週間おきに大変ですね。
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Unknown (清姫)
2012-09-03 01:26:13
なはさん
昨日はご苦労さまでした。素晴らしかったですね。
能楽堂の中と比べ、改めて、戸外の薪能の難しさを感じました。雨や風、気温などが変化するのですから、万全の備えをするのはさぞ大変でしょう。それを続けておられる瑞龍寺・高岡能楽会の方たちのご苦労もよくわかります。
1年ごとに改善されればいいですよね。
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Unknown (風子)
2012-09-02 12:15:27
清姫さん
事前の準備、打ち合わせは念には念を入れてもこれでいいということはありませんね。
特に名前はいろんな読み方があるから振り仮名をつけられるKAさんはプロのよう。
時々TVアナウンサーのニュースの漢字読み間違いも気になります。

宗家はお若いのに素晴らしいですね。
小さい時から厳しい練習があったのでしょうね。
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Unknown (なは)
2012-09-02 10:51:45
清姫様
気合の入れどこらが間違いだったのですね!
宗家を重んじるなら、先ず自分達が・・・と市民として言いたくなります。(私市民じゃないのでした)
昨年もナレターか司会か、雑だと思いました。
しっかり練習してと言いたいですね。遠方からに方々も楽しみにしておいでになるのに、「がっかり」させては失礼ですね。
いつも風でマイクが調子悪いのですから、せめて人は確りやって欲しいです。
でも、お能は素晴らしかったのが良く分かります。9180
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Unknown (清姫)
2012-09-01 20:20:16
なはさん
今年は特に写真撮影が厳しかったのです。
宗家だからでしょうが、許可願を出さないと「小鍛冶」の撮影はダメでした。
それはわかるのですが、それなら主催者側ももっと気合を入れないと。
すぐ訂正が入るかと思ったけど、なかったです。ま、訂正するのも恥ずかしいかも、ね。
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Unknown (なは)
2012-09-01 16:47:20
清姫様
暮色に包まれていくお寺の屋根、刻々と色を変えてやがて篝火が入るようす素敵です。
舞台はバッチリなのにアナウンスが失敗はちょっと恥ずかしいでしたね。Kさんのように準備(練習)なされば良かったのに・・・・。
「小鍛冶」の和英さんの所作が目に映るように紹介してあって、なるほどー素晴らしかったでしょうと思います。
太鼓もそのようでしたか!ご自分でも為さるから聞き方も違いますね。良かったですね。
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Unknown (清姫)
2012-09-01 06:39:24

姫ちゃん
宗家だったからでしょうね。ネットで調べても絶対写真は載っていません。
「和の会」と言うブログには、素顔がよく載っていますが…。
許可はとったのですか。実は、今日お茶の会で渡しますが、申請書を預かっているのですよ。
今から開いて読みます。楽しみ。
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Unknown ()
2012-09-01 00:41:19
私も、今日、「小鍛冶」をあげます。
今回のように、写真撮影については厳しかったことないです。
許可は取りましたが、遠慮して小さく写しました。
遠くて、良く見えませんでした。
雰囲気です。
詳しく、良く書けていますね。感心してしまいました。
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