Ruby の会

シニアライフ~能楽・ボランティア・旅行・食べ歩き・演劇などを綴っています

映画 ”The King's Speech”(英国王のスピーチ)

2011-03-10 | 映画・テレビ・演劇・芸能

 米国アカデミー賞には弱いので、受賞が決まったとたんぜひ見たいと思っていた。受賞作品が高岡で上映されるとは限らないし、ファボーレまで行くつもりでいたら、意外に早く(3/5より)高岡にも来た。来週は何かと忙しく行けそうもない。雪の舞う9日(水)、意を決して出かけた。
 先に、「ソーシャル・ネットワーク」(私は見ていない)を見た若い友人から、早口でテンポも早くついて行くのが大変、でも面白かった、と感想を聞いた。受賞後の記事に、「早口と吃音の対決は吃音に軍配が上がった」とあったが、両映画が作品賞を競っていたようだ。

 「マイ フェア レディ」は、ヒギンス教授がコックニー(ロンドン下町の言葉)を話す花売り娘イライザの言葉を矯正し、レディに仕立て上げる話(映画ではオードリー・ヘップバーンがイライザ)だが、この映画は、一人の言語治療士が英国王の吃音を矯正し、王が国民に向けての重要なスピーチを立派に成し遂げる話だ。

 その英国王とは、ジョージ6世、現エリザベス2世の父君、4月に挙式予定のウイリアム王子の曽祖父になる。
 ジョージ6世は幼い頃からずっと吃音というコンプレックスを抱えていた。厳格な国王ジョージ5世は健在の頃から、さまざまな式典で王の代わりにスピーチを命ずる。その都度緊張して言葉が出て来ない。その沈黙の時間を国民は下を向いて待つしかない。

 何人もの医者、言語療法士の治療を受けるが効果はない。ビー玉を口にいっぱい詰めて話すように言う医者まで出る始末。そんな時、妻のエリザベスが知人から聞いた言語療法士を訪ねる。その言語療法士は、オーストラリア人。元は役者だった。戦争中神経症で言葉を失った戦友たちの治療をした経験を生かし、今では診療所を開き多くの患者を治した実績を持つ。が、資格も持たず、研修も受けていない。
 彼、ライオネルと王(その頃はまだヨーク公)の涙ぐましい特訓の過程が面白い。歌を歌ったり、今まで抑えてきた汚い言葉を思い切り言ったり、叫んだり、柔軟体操をしたり、…だ。そして、幼い頃に左利きの矯正、X脚の矯正で苦労し、我慢し耐える子ども時代を過ごしたこと、父王が怖くいつもオドオドし無口になったこと、乳母にまで苛められたことなどを聞き、必ず治ると、自信を持たせる。

 そして世紀の恋と騒がれたシンプソン夫人との結婚のため退位した兄の跡を継ぎ、即位し、ジョージ6世となる。第2次世界大戦が始る数年前のことだ。
 ヒトラーの率いるナチスドイツとの開戦直前、不安に揺れる国民に向けてラジオで戦争スピーチをする。王妃の励ましのキスを受け、マイクに向かい、ライオネルの笑顔を見つめながら、一言一言国民を勇気づける言葉を述べる。ラジオに耳を傾ける町の人々、家庭で、店で、駅で、戦場で、皆、頷きながら、顔を上げて…聞く。スピーチが終わり、拍手で迎えられながら、家族と共に国民の前に立つ。そして、戦争中の苦難の時代を乗り切り、国民が敬愛する国王となった。

 可愛らしい少女時代のエリザベス女王とマーガレット王女、チャーチル首相も登場します。王とライオネル・ローグのことは、王妃エリザベスが、自分の生きている間は公にしてほしくない、と言い残しておられたそうだ。妻の支え、家族愛も魅力的に描かれている感動作。

 ジョージ6世:コリン・ファース
 ジョ
ージ5世:マイケル・ガンボン…彼は”ハリーポッター”のダンブルドア校長
 
ジョージの妻エリザベス:ヘレナ・ボナム=カーター
 言語療法士、
ライオネル・ローグ:ジェフリー・ラッシュ
 兄、エドワード8世:ガイ・ピアース
 監督:トム・フーバー