蒼穹のぺうげおっと

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精霊の守り人 文庫版 感想

2008-01-23 23:47:44 | 小説 感想
「精霊の守り人」については、これまで有名であるがゆえに手を出してこなかった&アニメが放送されたのに見逃してしまった、という理由でこれまでなんとなく読むことが出来なかった本だったのですが、昨年末のオフ会「蒼蒼3」で、参加者のこばやしさんから文庫版を頂く機会があって、これは思わぬところできっかけを与えてくれたものだ、と喜んだのでした。
#こばやしさん、ほんとありがとうございます。

その後すぐ読めばよかったのですが、つい先日、韓国出張があったので、その飛行機で読もうと決めていたんですよ。
ちょうど世界観の雰囲気的にも、そちら側の雰囲気があったのと、韓国までの飛行機の時間は短いので往復で丁度読み終わるかな、という計算で。

読み進めていくと、なるほど、舞台の国は半島ということだし、五行のような感じもあり、出張の雰囲気を盛り上げてくれる出だし。
というか、もう出だしから引き込まれてしまう展開。

文庫版の解説にもあるのですが、冒頭で既に、女性主人公バルサがたまたま通りかかってみた光景、それが彼女の「運命を変えた」から始まるわけですよ。

著者の上橋菜穂子さん曰く、映画の予告編で炎上するバスから女性が子供助けるシーンを観て、そこから始まったというだけあって、一気に物語が進んで行きます。

そして僕は帰りの飛行機の中、クライマックスのシーン、そしてラスト、悪天候で揺れる飛行機の中、ひとり涙をぐっと堪えて読み終えました。

素晴らしい読後感。

面白かったです。

本作はもともと児童文学ということで、子供向けに執筆された作品なのですが、読者年齢層の幅は本当に広い、というふれこみの通り、子供から大人まで十分に楽しめる作品になっていると思います。

それはやはり本作がそういうことを意識して作られているとともに(子供の頃、指輪物語に非常に影響を受けた、とあとがきにあり納得)、二つの視点、一つはバルサ、そしてもうひとつはチャグムという、大人と子供の視点、それぞれを交互に組み合わせている点にもあると感じます。


武勇において名を馳せる女性槍使いバルサ(30歳)。
何故、彼女が強くなったのか、何故、彼女が用心棒をしているのか。

そして師匠の言葉、

いいかげんに、人生を勘定するのはやめようぜ。
#この言葉の意味はあえて未読の人のために伏せておきます。

はっとするよね。


過酷な運命を背負った第二王子チャグム(12歳)。
何故、自分なのか、何故こんな目にあわなければならないのか。

どんなに強い子供でも、めぐり来る過酷な運命。

アニメ版のキャッチコピー。

運命には勝てない。
でも、運命には負けない。

泣きそうになるよね。


物語は非常にシンプルに出来ています。
1996年に出来た話だし、児童文学ということもあり、複雑さよりも、ストレートさを重視している。

けれども、そこに描かれる世界観や、その政治、歴史、それらは複雑さをシンプリファイして織り込んだ美しさと深さがあります。

子供の頃に読んだならば、歴史などを勉強しながら、また人生経験を積み重ねながら、ああ、あのときの言葉はこういうことだったのか、ヤクーたちの言葉はこういうことだったのか(例えばそれを盆踊りって何故するのだろうか?という疑問とその答えを見つけたときに思い出すかもしれない)、と気付いていける、そういう物語。

シンプルなんだけれども、こういう作品を作ることができる、というのは本当に凄いことだなと思います。
ある種のマスターピース的作品なのかもしれないなぁ。


今回文庫版で出たということもあり、これに続く「闇の守り人」・「夢の守り人」も既に購入。
守り人シリーズ、旅人シリーズ、文庫版で追いかけて行きたいと思います。


できればこれは自分の子供たちにも読んで欲しい作品ですね。

例えば先日、しっかり作ってあって家族で一緒に楽しみにしている作品として「Yes!プリキュア5」の記事を書いたり、親の本棚を見て、そこから子供は何気なく自分に興味のある本を取って読んでいく、という記事を書きましたが、そういう意味でこの「精霊の守り人」は本棚にそれとなく置いておいて、それとなく読んで欲しい、そういう作品なんだと思います。

日本のサブカルチャー、ポップカルチャーは成熟期に入って(けれどもまだまだ発展期の気もします)、ジャンルも細分化して、これが良いんだよ、という推薦作品も個人の趣味が(成熟した中では)違えば人それぞれ、そういう時代に突入して久しいですが、ある種のマスターピースに近い作品なんじゃないかなぁ、日本児童文学的に。

個人の目線と親の目線、そういう意味でバルサ、チャグム、この二人を取り囲む状況を一緒に楽しむことが出来たんじゃないかと思います。

良作です。

さあ、続き読むぞー。

あと、アニメ版、公式HP見たけど、凄い綺麗ですねー。
つか、バルサが若い&綺麗!!これも良いなぁ。
つか、チャグムもカッコイイけど、タンダ、タンダ!!
なんか想像よりもめっちゃカッコいいんですけど!!

アニメ版精霊の守り人公式HP


文庫版 精霊の守り人

文庫版はこの後「闇の守り人」・「夢の守り人」と続刊。

DVD 精霊の守り人1

イメージは初回限定のもの。バルサ美しい!!