蒼穹のぺうげおっと

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小説 「博士の愛した数式」 感想

2005-10-20 23:33:41 | 小説 感想
僕は結構出張中の移動時間が好きで、飛行機であれ、新幹線であれ、目的地に向かうまでの限られた時間を使って本を読む、これが結構自分の中では至福のときに近い感じがあるんですね。
今回の出張の相手に選んだのはこの本。

■博士の愛した数式


以前から読みたいなと思っていた本で、丁度僕の後ろに座っている先輩が読み終えたところだったので、そのまま借りてそのまま出張へ。
#ちなみのこの先輩は研究所出身で数学にめっぽう強い人なんです。僕と正反対(笑)。
そしていつものごとく読了。

そして・・・。

良かった。
これはとても良かった。
面白いという感想だけでなく、ほんとに良かった、そういう本です。

とても静かで、とても優しくて、とても慎み深い。
思う浮かぶ情景がとても優しく、思い浮かぶ思慮は優しさを備えた明るさ。
そして切ない。

こんなに静かな気持ちで本を読み、そしてしみじみ感動してしまったのは久しぶりです。
これは今年の個人的お勧め小説として間違いなく推したいと思います。

■数式なんて苦手という人へ
ちなみに僕も数式がとても苦手です(実話)。
SEという仕事をやっていても昔っから(多分小学生の頃から)算数苦手だし、よっぽど勉強してない今のほうが算数できると思います。
そんな僕でもしっかりと読めるし、分かりやすい。

というより、本当のテーマは数式が好きかどうかとか、そういうのを理解するとか、そういうところにあるのではなく、数式に秘められた思いを紐解きながら、それを通じて描かれる人間性、作品の雰囲気を楽しんで頂きたいなと。

むしろ数式が嫌いな人ほど、読むことによってこれまでと違った気持ちで数式に接することができるかもしれません。
それは作中に登場する、博士、家政婦さん、その息子ルートの3人の人との接し方、人間性を通じて得ることができるんだと思います。

■eπi + 1 = 0
僕は基本的に相互理解ものの作品が非常に好きなんですが、「eπi + 1 = 0」というこの公式でそれを表現されるとは夢にも思いませんでした。
ちなみにこの本を読むまでこの公式の存在すら僕は知りませんでした。
けれどもそこに描かれていた内容は、そんなことは全く関係なく感動させてくれました。
静かに、静かに、感動しました。

人にとって何が美しいのか?と感じるポイントは人それぞれだと思うのですが、こういう美しさ、慎ましさがあるということを教えてくれたような気がします。
これはひとつ、静かにお勧め、そんな1冊です。