蒼穹のぺうげおっと

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交響詩篇 エウレカセブン 第22話「クラックポット」感想

2005-09-19 08:39:30 | エウレカセブン
先週の感想で恐らく第21話「ランナウェイ」がストーリーライン上、レントン少年の底だろうと思っていたのですが、たぶんそれで正解。
ここからはレントン少年が自分自身を見つめ直すフェーズに入ると思われ、第2クールの転換点であるとともに、全50話においての丁度中間点・転換点になっていると感じました。

つか、今週はレントン少年の成長物語を描く中で個人的には珠玉の出来だったんじゃないかと思います。
今まで知っていた世界(ゲッコーステート)を飛び出して、初めて知るそれ以外の世界を実感して、少しずつレントン少年が変化していこうとしているあたりが非常に丁寧に描かれていて、この丁寧な脚本こそがエウレカセブンの面白いところなんだよなぁと改めて実感。
今回は30分の尺の中に無駄な時間は1分の隙たりともなく、細かい伏線・演出なんかも秀逸だなぁと思っていたら案の定脚本はシリーズ構成の佐藤大さんでした。
大野木寛さんの脚本も面白いなぁとしみじみ思いますが、個人的な趣味から行くと佐藤大さんの脚本はずば抜けて面白いなと感じてしまいます。
きっとこれからも佐藤大さんの作品は見ていくんじゃないかな、僕は。

それにしても驚くほど映像・音楽・脚本ともにハイクオリティーだなぁ。

■自分と向き合うフェーズに入りました
主人公を一人の状態にして、その状態から自分の立ち位置や、これまでの環境を省みるというのは物語の運びとしては王道。
そしてそれを14歳の少年が書置きまでして出て行くのだからこれはもう立派な家出。
#つまり帰る気持ちも実はちょっぴりあるし、ゲッコーステートのメンバーも女性は特に鋭くって反抗期だなんて(笑)。

これまでマイナス思考の枠を出れなかったレントン少年が一人で世界に出てしまうことで、しがらみ無く色々考える、そういう時間が必要なんですよね。
ゆえにここからは浮上の時間です。

リアルボーダーはウィールなんて付けないのが粋だってか?
雑誌なんかじゃそう書かれているかもしれないが
リフってのは自分が面白ければ他人の目なんか関係ないじゃねーのか?
この世の中、いつだって気持ちよくなった方の勝ち
違うか?


その通りだと思った
レイアウトに載っていたから
ホランドに憧れてたから
だから俺はそれが何でも良いことだと
考えも無く決めていたんだ


ここの会話は本当に秀逸。
これは凄いよ。
少年の成長物語と自立の物語として考えた場合、DESTINYでのテーマをここだけで全部表現しきっている。
この自分の世界をきちんと持っている大人との会話、これが少年の成長の物語には欠かせなくて、そういう人と触れ合うことで自分の世界が広がったり、自分の世界を創ることができるわけで、それをこの会話に集約しているというのがホントに素晴らしいですね。

またもう一つ秀逸なのは、この会話の趣旨と冒頭のホランドとハップの会話が対応・比較されているってことなんですよ。

ただ、あんな風に直球で憧れをぶつけられるのが辛いんだ・・・

無条件に憧れていた、そしてそれを正しいことだと信じて他を考えなかったレントン、その憧れを受けることが辛いと述懐し、実はそれが自分にも経験があることだったと思い知るホランド。
同時進行で訪れる二人の心境の変化が非常に演出上上手いんですが、こういう風に変化していくならばなお、この後この二人が合流するときが楽しみってもんじゃないですか?
二人ともレントンが船を下りる前と後では心境が違っているはずなので。
ここはエウレカとレントンの関係性の再構築と含めて楽しみなポイントになりました。

■食べるための戦い
先週では観てるこっちが吐きそうなほどお菓子を食べても満腹感を得られなかったレントン少年が、今回は涙を流しながら「美味しかった」というシーンはぐっときました。
これは色んな意味を兼ねているとは思うのですが、やっぱり「食べること」と「食べていくこと」をかけていて、きっとレントン少年は自分の中でわだかまっている部分と折り合いをつけ始めていくんじゃないかな。
たぶん、それが全てではないと割り切れない思いも持ちながら、現実部分やいろんなものを内包して成長していく、そんな浮上の予感が漂っています。

自然も人も あっという間に変わってしまう
それが俺には驚きだった
なのにこんなに安らいだ気持ちになったのは
生まれて初めてだった気がしたんだ
姉さん


これはやっぱりレントン少年の心境の変化を現していて、チャールズの波乗りの仕方、心の持ちように自分でも説明できない影響を受けているから出てくる言葉なんでしょうね。
綺麗事と現実の折り合いのつけ方、やはり来週以降はここにポイントが来るんではないかと思いますね。

■視聴者の代弁
今回爆笑だったのはヒルダの言葉ですね。
ホランドの逃げの表現は制作サイドが自分たちの逃げ場を無くすために描いている(ってそれは恥ずかしいから相当勇気がいるはず)のですが、その辺をヒルダを使って説明させるのは上手いですね。
まさに視聴者の代弁みたいな。
#また第二次性徴と成長を引っ掛けているのが上手い。
#つか、男は常に第二次性徴期です(えー)。

■やっぱりイームズだ
それにしてもこのレントン少年の家出は初代ガンダムのアムロ脱走を彷彿とさせてくれてニヤニヤしながら見てしまうのですが、やはりそこで出会うランバ・ラルとハモンさんクラスの登場人物がまた魅力的でした。
#小杉十郎太さんのC.V.もカッコいいし。

先週のコメント欄で教えて頂いたのですが、チャールズとレイの名前はやっぱり世界的インテリアデザイナーのイームズ夫妻が由来ですね。
チャールズ・イームズとレイ・イームズ。
たぶんこれが正解だと思うな。
今週、チャールズ・ヴィームス(ビームス?)だ、という紹介もあったし、船の内装が綺麗なところからもやっぱりそんな感じがします。

■細かい演出
冒頭のギジェットのうろこ雲の話から地殻変動につながる部分なんかも非常に自然な伏線。
#だからチャールズの船に(ウィールでレントンがゲッコーステートのメンバーだと確信していたとしても)レントン少年が乗ってしまうあたりまで凄く自然。
#正直上手いと思います。小さな起承転結の付けかたから大きな起承転結の付けかたまでほんと上手いです。

あと今回のコミカルな演出。
ギジェットとシンクロしてスニッ○ーズを食べるエウレカ。
チャールズとシンクロしてノリノリで踊ってるレントン。
こういうシンクロ表現も笑いを忘れないあたり素敵だ。

■余談
ハップのトイレ姿には爆笑。
大学時代、飲み会の席でトイレの使い方について議論があった(何の議論だ)。
ハップのように全裸じゃないとできないって友達がいたり、便座の上に立って座らないとできないだとか、全裸まではいかないけれどズボンを半分肩に担がないと落ち着かないなど、本当に世の中広いなと実感しました(笑)。

■ドミニク・ソレル氏
既に存在だけで笑いを誘える存在に成長(笑)。
辿り付けただけで拍手を送りたいです。

いや、ほんと今週面白かったです。
個人的には今シーズンやっている作品の中でやっぱりエウレカセブンがずば抜けて面白いっす。
#いやここ数年の作品の中でずば抜けていると思いました。


交響詩篇エウレカセブン
DVD第3巻
2005/9/23発売
第7話~第10話を収録