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交響詩篇 エウレカセブン 第23話「ディファレンシア」感想

2005-09-26 23:55:01 | エウレカセブン
今回もしみじみ面白かった、十分面白かった、ほんとに物語の見せ方っていうのが上手いなぁエウレカセブンは。
特にタイトルの意味がやっぱり素晴らしくて、レントン少年の持っている世界観の中の正しいと思っていた価値観と、世界・世間の中にある価値観とその多様性との違いを身を持って思い知る、こんなに真正面からやってくれるなんて、ほんと丁寧に心理描写してるなぁ。
しみじみ面白いです。

■ディファレンシア
ディファレンシア=本質的な差異、単なる相違点ではなく、自分の世界の小ささと、その違いを思い知ってしまうという、そんな大きな相違点。
この境地に到達するまでに積み重ねられてきたレントン少年の心理描写、それに前から気付いてたけれど昔の自分を見ているようで嫌悪していたホランドの描写など、この一点に到達するまでに丁寧に丁寧に物語を進めてきた構成はほんと素晴しいと思うし、少年の中にある世界と、現実の世の中の価値観の相違をここまで残酷に、ここまで明確に、30分という枠の中で表現しきるってほんと凄い。

あの娘はきっと僕を恨んでいるでしょうね・・・
あの娘の気持ちなんてこれっぽっちも考えず
助けなきゃって勝手に思い込んで
それが正しいことなのかすら僕は考えもしなかった・・・

結局僕のやったことは人を助けるどころか人を傷つけただけだ
傷つく必要の無い人を
もう十分傷ついている人を
もっともっと深く傷つけてしまっただけだ!

きっと今までだって僕は・・・
ゴメン・・・


今回はレントン少年の行動に歯がゆい思いをした人も多かったんじゃないかと思うんですよね。
何でそんなことも分からないんだ、という感じで。
これって作中でのメッセージ性の理解をしやすくするための表現なんで余計にそう思えるところなんですが、スケールダウンして考えてみると、僕個人としては新入社員時代に仕事の中でこういう自分の価値観とその暴走と、後でやっぱり自分の世界は狭かったと痛感することもあったりとで、いつもながら笑えない(笑)。

新入社員というか入社2・3年目で、自分のやり方にそれなりに自信持ってきて、これが正しいんだ、何故PMはそれをやらないのか?と喧嘩腰になったりと、色々ありましたが、それってやっぱり若気の至りというか、経験の無さから来るところなんですよねぇ・・・。
ああ恥ずかしい・・・。
経験積んだ今だからこそ、そういう状況にある人のことを理解できるというか、そうじゃないだろ、と初めて言えるというか。
またこういう入社2・3年目の後輩がいるからまた笑えない(笑)。

といつもながらレントン少年には新入社員時代の自分を思い出させられて辛いんですが(笑)、そういう脱線は置いておいて、14歳の少年がこの心境に辿りつくというのは正直辛いよなぁ、と思いつつ、こういう表現を逃げることなく描いている制作スタッフに脱帽です。

あまりこういうことは言わないようにしようと思っていたのですが、僕個人としてはDESTINYでのシンにはこのプロセスを歩んで欲しかったなと、今回の放送を見ながら正直思いました。
物事の多面性、多様性、価値観の違い、本人が正しいと思っていることが本当に正しいのか?このテーマを描くにあたって、今回のエウレカセブンの30分は本当にきっちりと、1分の隙もなく描いてくれたなぁと思います。
DESTINYではDESTINYでしか描けないテーマがあった、だからそのプロセスを明示しなかったのかもしれないですし、単純にこの作品との比較というのはあまり意味が無いのですが、むしろ両方の作品を見ることで一つのメッセージ性が見てくるのかもしれないですね。

こうしてレントン少年は大人に一歩ずつなっていくのですね。
うんうん、頑張れ、レントン少年!!

■経験者は語る
今回はレントン少年が自分の価値観との相違点に気付いていくところが最大のポイントでもあったわけですが、もう一つ見逃せないのがやっぱりホランド。
マシューの家出話の「経験者は語る」自体が伏線になっているとは。
そう、ここで言う経験者は語る、というのは他でもない、ホランド自身のことだったんじゃないかなと。

うるせぇんだよ、テメェ等!!
アイツは寂しさや気まぐれ誤魔化すために出て行ったんじゃねぇ!!
本気で出て行ったんだ!!


デューイから逃げた、そんな台詞がタルホさんからあったような気もしましたが、昔からホランドはレントン少年のことを自分の出来の悪いイミテーションのようい昔の自分を重ねてしまうところがあるんじゃないかと思うんですよね。
だからいつもイライラしてしまうし、レントン少年の青臭い正義感が鼻についたり(かつて自分もそうだったんじゃないかと思うし)、家出したレントン少年の気持ちが一番分かってしまうんじゃないかと思うんですよね。

第2クールっていうのは、レントン少年とエウレカが自分の心と向き合うためのパートだ、なんて言ってましたが、やっぱりここにはホランド自身が自分の心(レントン少年)と向き合うという意味合いも多分に含まれているのかもしれないですね。

■お客さんか仲間か
ビームス夫妻の待遇と、ゲッコーステートでの待遇が明らかに異なるように描かれているわけですが、これも一つの多様性というか、場所が変われば人も風も変わるという意味なんですよね。
でも、僕はやっぱりもう一つ意味があるんじゃないかなと思っているんですが・・・。

ビームス夫妻がゲッコーステートのメンバーよりも大人に描かれている(これも上手いんですが)ということもありますが、ビームス夫妻としてはレントン少年を息子のように思っているところもありますよね。
この時点で既にゲッコーステートとは扱いが違っているんですが、実はこの扱いの違いも(制作サイドとしては)狙いのうちなんじゃないかなと。

ゲッコーステートではレントン少年は下っ端扱いですが、メンバーは「仲間」としてレントン少年を見ているんじゃないかなと。
そしてその「仲間」という関係性が鍵になって、レントン少年がゲッコーステートへの復帰を遂げる、そういう展開も見てみたいなぁ。
#もちろん、その背景の主たる要因は、今回レントン少年が「傷つけてしまった」と気が付いたエウレカにあることは間違いないと思いますが。

■年頃の息子を持つってのは

悪くないよね?

ああ、悪くねぇ・・・

ほんとうにこの作品はしみじみいい作品だ・・・。
こんなイイ台詞を持ってこられたら、この後きっと来るであろう、レントン少年との別れやゲッコーステートとの衝突が辛くなるじゃないかぁ(涙)。

■レントン、会いたいよ・・・
主人公同士を物理的に遠ざけることで互いの関係性を再確認させるというのは王道中の王道ですが、これはほんと参った(笑)。
何ていうですか、第2クールって内省のテーマを担ってるから暗かったじゃないですか。
そういう中でこういう展開ですよ。
もうきっちりタメられた分、これからの展開が楽しみで仕方ないじゃないですか!?

物語がきちんと積み上げられていく実感がある。
しかも丁寧に。
これがやっぱりエウレカセブンの一番の面白味なんじゃないかと思う今日この頃。


交響詩篇エウレカセブン
DVD第4巻
2005/9/23発売
第11話~第14話を収録