5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

中津川の「鬼めくり」

2014-02-10 21:26:30 |  旅行・地域
節分から1週間が経過したが、冬の寒さはいっこう逃げていかない。

そんな節分行事の小道具を展示した展覧会が岐阜の中津川で開かれているというニュースを読んだ。小道具というのは地元に古くから伝わる「鬼札」という魔よけの短冊である。

鬼の絵を描いた短冊を節分の日に家の門に貼っておくと、夜には子供たちが「鬼めくり」といって密かに剥がして廻る。これで家の者が知らぬうちに鬼が逃げていったことになるわけだ。土地の人間なら夜中に鬼札をこっそりと剥がす音を聴いた経験をもつものも多い。田舎には今でもいろいろとその土地土地の珍しい習わしが残っているわけである。これからも大切にしたい文化だ。

会場には子供から年寄りまで世代の異なる500人が描いたユニークな「鬼札」が貼りだされている。赤鬼青鬼いろいろあるが、いずれも素人の作品だから怖い鬼というよりユーモラスな鬼が多いようだ。縦長の短冊の上部に鬼の顔、下部には何故か五画の星印が描いてあって、上と下が鎖状のデザイン線で結ばれているところは、やはり魔よけの性格を表わしたシンボルデザインなのだろう。

立春と正月がほぼ同じとされた昔、前日の節分は年の終わりであり一年分の穢れを捨てる日だった。坪内信夫によれば、節分の晩は「生活が新しくなる境目」であり、大人はもちろん、子供も「歯軋り」や「枕を外す」悪い癖を捨てた。よその家の軒下で「歯軋りいりませんか」とつぶやき、家の中から応答があると、「売った!」と叫んで逃げ帰ったとある。

これは坪内稔典の「季語集」、冬の季語の部に引用されたものだ。中津川でも「鬼めくり」に子供が登場する。昔の子供たちは、こうした年中行事に参加することで、すこしづつ大人の仲間いりをしていったわけだろう。しきたりが教育として活きていたのだ。

「光ましゆく節分の一つ星」 伊藤通明






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