5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

やなぎの太箸

2013-01-04 21:21:48 | くらし
おせちと雑煮で過ぎた三が日も、四日目になると食卓が普段に戻りつつあるのがわかる。今日の夕食にはうどんと味噌おでん、それにおせちの残りが出てきた。

我が家でも新春の食卓には必ず白木の真新しい箸が添えられてくるが、関森勝夫の「文人たちの句境」には、尾崎紅葉のこんな句が引用されている。

「太箸の 鶴にあやかる 想いあり」

太箸とはこの白木の箸のこと。中ほどが太くて両端が細い形からその名前がついたのだろう。材料は柳の木。雑煮を食べるために使うから雑煮箸とも祝い箸とも云うとある。

何故太箸が縁起物かといえば、関森は俗説と断ってこう説明している。足利の7代将軍だった義勝が、不慮の落馬事故で死亡したのは、元旦の儀式に使った箸が折れたのが悪い予兆だったという反省から、跡を継いだ弟の義政は、彼の将軍時代の元旦儀式には、箸を太く削らせて折れるのを防いだというのだ。

こんな太箸をつかって食べる雑煮。真新しい白い箸で餅やおせち料理をつまみ、口に運ぶ動作から、紅葉が考えたのは瑞鳥といわれる鶴の長いくちばしのイメージだ。

紅葉は、慶応3年(1868年)に生まれ、明治36年(1903年)に35歳で胃がんで死んだ。若死だったのだ。千年長寿という鶴の元気にあやかってせいぜい長生きしたいものだと想ったのだとすれば、目出度い句であるのに、ちょっと悲しい。



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