消費期限終了

リタイアーのよもやま話

ピアノマン

2012-05-20 23:06:54 | 音楽

隣のスーパーに、スターバックスがある。

そのスーパーには、ファーストフードコーナーに
マック、スターバックスの反対側には、もともと
衣料品店があったが、今はミスタードーナツがある。

スターパックスのコーヒーが320円で、一番値段が
高い。

それでも、雰囲気が喫茶店っぽく、静けさがある
ので、ちょくちょく利用する。

最近、ビリー・ジョエルのピアノマンが流れている。

この曲は、30代の半ばに、知った。

今はシャッター街になって、ゴースト・タウン化して
いるが、そのとある一角の二階にあるこじんまりした
喫茶店で、はじめてこの曲を聴いた。

夕食のためか、ただたんにコーヒーを飲むために入った
のか、今でははっきり覚えていないが、その人気のない
喫茶店の壁際の椅子に座っていたら、とつぜん、BGMで
流れてきた。

その曲が、流れだすと、イントロから、「これは?」と
いう気がした。そして、この曲に打ちのめされた。

そこで、歌詞集を借りて、曲名を確かめ、歌詞に、目を
通した。

ちょうど、その頃、わたしは、職種替えで、喪失感
に苛まれていた。

今になると、仕事をやめないでよかったと思っている
が。やめなかったのは、一種の幸運である。

人生で行き詰まったわたしは、ある意味で「進路変更」
をした。

しかし、それまで、費やした時間が愛おしくて、気が
狂いそうだった。

その喪失感に苛まれて、夕方職場を後にすると、喫茶店
を梯子して、本と流れてくるBGMで気を紛らわしていた。

もし、わたしが、タバコを吸って、酒を飲む習慣があれば、
きっと、アル中になるか、肝硬変になっていたかもしれない。

しかし、酒を飲まないわたしは、何年も夜な夜な喫茶店
にこもって、本とBGMに耽溺し、就寝までの時間、自分の
現実を忘れようとしていた。

そう言えば、その頃、今はゴースト・タウン化したその通り
を行き来している時、わたしのように脱け殻のような眼を
した作業服姿の青年がいたが、今はどうしているのだろう?

わたしの方は、とりあえず、勧奨だが、退職までたどり着
いたのだが。

わたしが、この曲にまずショックを受けたのは、3拍子の
曲であったことだ。

わたしにとって、3拍子の曲というのは、ワルツで代表
されるように「優雅」さが伴う曲だ。

しかし、ジャズドラムを伴い、激しいアタックで、弾き
まくる激しいピアノ、激しくスピード感のある声、そして
ビブラート。何もかも、新鮮で圧倒された。


ネットからの借用だが。

訳詞である。


土曜の夜は九時

いつもの顔ぶれが揃い出す

私の隣には年を召した男性

ジントニックを愛でるように飲んでいる


彼が言う、「わかいの、思い出ってやつは
弾けるのかな

別に実際どうこうしようってわけじゃないんだ

ただ、あのかなしくて、あまいものを、おれは
忘れちまった

少なくとも、まだ若い服を着ていた頃には覚えて
いたんだがね」

La la la, de de da
La la, de de da da da


”歌っておくれよ、ピアノマン

共に今夜は歌い明かそう

皆一つそうしたい気分なんだ

私たちを晴れやかにしておくれ!”


今じゃバーテンのジョンとはすっかり友達

私のために酒も入れてくれる

味なジョークを言う彼は、他人のタバコにも
よく気がつく

けれど、彼はここにいるべき器じゃない


彼が言う、「ビル、俺はもういやなんだよ」

そう言った彼の顔からは笑顔が消えている

「なぁ、俺はなろうと思えば映画の花形にも
なれるんだぜ

ただし、ここを出られたらの話なんだ」

Oh, la la la, de de da
La la, de de da da da


ポールもすっかり人気の作家

結婚しようという暇も無いほどだ

彼の話し相手はデイビー、海軍勤めの男だ

たぶん、一生ネイビーのつもりだ


政治学を実践中のウェイトレス、

ゆっくり酔っていくビジネスマン達、

そうさ、皆が皆、孤独という酒で乾杯している

しかし、一人で飲むよりはずっといい、そうだろ


”歌っておくれよ、ピアノマン

今夜は共に歌おう

どうにもそういう気分なんだ

そうしてくれると気が晴れる!”


土曜に集まるのは良い客ばかり

マネージャーが私に微笑みかける

彼は知っているんだ、何故私のところに客が
集まるのか

一刻ばかり、いろんなことを忘れるためなんだよ


ピアノはカーニバルのような音を奏で

マイクにはビールの匂いが染み入っている

彼らが座り、私にチップを渡すと決まって言う、

「お前、まだここでやってるのかよ?」

Oh, la la la, de de da
La la, de de da da da


”歌っておくれよ、ピアノマン

今夜は共に歌おうじゃないか

どうにも一つ、そういう気分なのさ

やってくれりゃ、俺らの気も済むぜ!”


以上。


この歌詞は、好感の持てるメロディーと共に、
アフタピートの激しい3拍子の曲調は、当時の
わたしの心情に訴えかけてやまなかった。

なんとも、ハーモニカが、この曲調を盛り上げて
いること。あんな簡易楽器が、これほど説得力
を持つとは。

それにしても、高音域の英語の響きの綺麗な
ことよ。

韻の美しさよ。

美しい強弱。

目眩がする。

現職の時は、時折、この曲を聴いたが、退職して
からでは、久しぶりに聴くことになった。

懐かしい一曲である。

自分が苦しい時に、想い出になる多くの曲と出会った
のは、なんとも皮肉なことにも思うのだが。

それにしても、昔あの通りで、行き交ったかの
青年は、まだ生きているのだろうか?

わたしの方は、なんとか第一の人生、終着点まで、
たどり着いたのだが。

それにしても、一体、わたしは、何に成りたかった
のだろう。

そして、わたしは、今、どこにいるのだろう?

答えようのない問いが、胸の内で、問いかけ
くるのだが。

わたしは、今ここで、何をしているのだろう?

問いは、止まない。