40代からの節制は寿命を縮める
EBMが教える、「我慢型医療」のウソ
和田秀樹
の本にあった話である。
血糖値を下げすぎると、死亡率が高まる!
ところで、血圧と同様、血糖値も「下げればいい」というもの
ではないことをご存じだろうか。
食事制限やインスリン注射で血糖値を厳しくコントロールされて
いる糖尿病患者にとって、これは聞き捨てならない話だと患う。
ちなみに、糖尿病の治療で目安として値われる数値は、健康診断
で調べられる血糖値と同じではない。
健康診断で測るのは一時的な血糖状態だが、糖尿病患者が測定
されるのは、過去I~2ヵ月の平均的な血糖状態を示す。
「ヘモグロビンA1cという数値だ。日本糖尿病協会の基準
では、これを6・4パーセント以下に抑えるのが、患者にとって
良好な状態だとされている。
ところが2010年、イギリスの医学誌「ランセット」に、この常識
をひっくり返す研究論文が発表された。
『血糖値を正常近くに下げると死亡率が上がる」というのだ。
調査対象は、インスリンおよび2種類の飲み薬で治療を受けている
糖尿病患者およそ4万8000人。
開業医のカルテのデーータベースに基づき、20年近い歳月をかけて
実施された、きわめて信頼性の高い調査だ。
その結果を見ると、患者の血糖値を下げた場合、ヘモグロビンA1cが
7.1パーセントまでは、従来の常識どおり、たしかに死亡率が下が
った。
しかし、それ以上に血糖値を下げると、逆に死亡率が上がってしまう。
もっとも死亡率が低いのは、ヘモグロビンA1cが7.1パーセントの
ときだ。
それが6.0パー‘セントに下がると、死亡率が52パーセントも上昇
する。
先ほど述べたとおり、日本ではいままで糖尿病患者の血糖値を6.4
パーセント以下に抑える努力をしてきた。
このイギリスの調査結果が正しいとすれば、それは「患者の死亡率を
高める努力」だったことになる。
実はイギリスでこの研究論文が発表される2年前(2008年)にも、
アメリカで同じような調査結果が発表されていた。
「アコード試験」と呼ばれる臨床試験で、ヘモグロビンA1cを6.0
パーセント未満まで下げた糖尿病患者グループと、7.0~7.9
パーセントに保ったグループを追跡調査している。
これまでの常識なら、当然、後者のほうが死亡率が高くなるはずだ。
しかし実際には、6.0パーセント未満に下げたグループのほうが、
22パーセントも死亡率が高かった。
あまりにも「死にやすい」ことが明確になったので、当初は5年間の
予定だった調査が3年半で中止されたほどである。
イギリスの「ランセット」に発表された論文は、このアコーード試験の
結果を強力に裏付けるものだった。
二つの調査結果によって、糖尿病の治療方法は根本的な見直しを
迫られたといえるだろう。
ちなみに日本国内でも、こんな調査結果がある。
老人ホームで暮らす高齢者の耐糖能別の生存率を比較したものだ。
耐糖能とは、糖尿病の基礎検査で血糖値とは別に測られる指標の一つ。
グラフを見ればわかるとおり、正常植でも境界値でも糖尿病でも、
死亡率には大差がない。
以上。
抜粋するつもりだったが、抜粋のしようがなかった。
今回、この本を読んで一番関心が湧いた部分だ。
実は、去る6月の地域の健康診断で、この値が高いと言われた。
糖尿病予備軍だという話だ。
想定外のコメントである。
なんせ、コレステロール、中性脂肪、悪玉コレステロール等の値が
ずいぶん改善されたのだ。
どうして? である。
わたしの値は、5.3である。基準値は、~5.1%である。
検査結果のコメントが出た時は、なんとも気がかりであったが、
今回の本で、述べられている数値を見て、ほっとすることに
なった。
メタボの定義でも、現実にあわないのではという、指摘が
出てきたりして、健康診断の基準値について、信頼性が
薄らいでいるきらいもあるが、指導する立場にある者は、
しっかりしてもらいたいものである。