ネットにあったコラムである。
ブログで、紹介するには長すぎる気もする
が、抜粋ではコラムニストの趣旨が伝わら
ない気がする。わたしも、著者に賛同でき
ので、全文紹介してみたいと思った。
若者にワークライフバランスなんていら
ない
城繁幸氏と考える「日本に依存しないキ
ャリア」(中)
ムーギー:最近は、参入障壁のない仕事を
やってしまうと、グローバルな競争に巻き込
まれてしまって、インドや中国の人たちとの
戦いになっちゃうんですよね。
彼らは賢いうえ努力家だから、何でもかんで
もすぐに学んでしまう。私が今住んでるフラ
ンスでも、夜9時以降や週末に開いてるのは
中華料理屋かインドカレー屋くらいで、平均
年間休暇8週間のフランスにいると「アジア
人は頑張っとるな」と実感するわけです。
1つ面白いエピソードを紹介すると、先日、
新日本プロレスの木谷高明会長にインタビュ
ーをさせてもらったんですが、そのテープ起
こしをどうしようか困っていたんです。
そしたら、いつもはコストに厳しい新米編集
長が、「テープ起こしはこちらでやりますよ」
と快諾してくれたんで不思議に思ったら、今
は中国に音声ファイルを送ると、1週間くら
いでテープを起こしてもらえるそうなんです
よ。しかも、激安価格で。
城:そうなんですか! でもそうなると、フ
リーライターの人は失業してしまいますね。
取材などで編集者にひっついてきて、テープ起
こし代わりにまとめるという仕事が国内から消
失してしまうわけで。
ムーギー:そういうことなんですよ。つまり、
テープ起こしのように、時間があれば誰にでも
できるタイプの仕事は、全部グローバルな戦い
が起きて、日本からなくなってしまうわけです。
たとえば金融業界でも、財務モデルの基本と
なる雛形を作ったり、財務モデルに数字を入れ
たりする仕事は、随分前からインドのオフィス
にかなりアウトソースしています。今までは、
日本で若手のアナリストにやってもらっていた
んですが、インドなら日本の10分の1のコス
トでできてしまう。だから単純労働をやってい
る人は、これからますます厳しくなりますね。
城:でも僕は、仕事ってそういうものだと思う
んですよ。
別に仕事で成長しないといけない理由はないし、
まして企業がその人を成長させないといけない
理由もない。もっと言うと、その人の人生設計
まで企業が考えて食べさせてやる必要はないわ
けで。第三者がやるとしてもせいぜい政府の仕
事であって、終身雇用であるべきや否やという
のは、政府の大小とはまったく関係ない話です。
ムーギー:企業にどのような社会的使命を担
わせるかという大きな問題につながってくるわ
けですが、企業が面倒を見てくれる、ないし見
る余裕のある時代が長く続いてしまったので、
それが当たり前になってしまったんでしょうね。
実際に職業訓練機能に関しては大学は一切機能
を担わず、企業が終身雇用の前提の下、手厚い
社内訓練を施してこれたわけですから。
ただ不幸なことに学校教育では現実に起きて
いることを教えてもらえないし、メディアでは
無責任な評論家の先生方が「企業は個人の幸せ
の最大化のために社会的責任を……」とおっし
ゃる。そして従業員の幸福を追求させる余裕の
ある一部の成功企業を取り上げて、まるですべ
ての企業がそうしなければならない、ないしで
きるかのような幻想を与えている。
若いうちに自己責任で付加価値をつけ、特定
の企業という文脈に頼らずとも食べていける、
自分にしかできない仕事をやっていないと、本
当に月給10万のワーキングプアになってしまう
ことへの切迫感がないんでしょうね。
グローバル市場での労働賃金に関して一物一
価が適用されていく中で、国外に目を向けたと
きの競争環境激変への心の準備もないままに、
いきなりそういう状況に追い込まれて、なんで
会社は面倒見てくれないんだ、なんで学校や社
会は面倒見てくれないんだ、となってしまって
いる人がいます。
城:大学に行って話をすると、東大や慶応と
いった首都圏のいい大学の学生はわかっている
けれど、それ以外の学生はまだあんまりわかっ
ていない。
だから、誰かがきちんと教えてあげないといけ
ない。そうでないと、本当に人生取り返しがつ
かないことになってしまう気がするんですよね
城:数年前、東大でOBと在学生の交流会みた
いなのがあって顔出したんですが、「これから
自分はどうやってキャリアを積めばいいんでし
ょうか?」と質問した学生に「大丈夫だ、東大
生なんだからもっと胸を張ってどんと構えてろ」
と言ってるOBがいて、蹴っ飛ばしてやろうかと
本気で思いましたね。ああいう年長者がまだまだ
多くて、せっかくつきかけた火をもみ消したり
している。
ムーギー:その意味で日本は、「不幸中の幸い」
の逆の「幸い中の不幸」というか、ゆでガエルに
なれる過保護経済なんですよね。
つまり、親世代に貯蓄がいっぱいあるので、親
世代の援助で子世代はどうにか生きていけると
ころがある。子どもが生まれても、おじいちゃ
んとおばあちゃんが、やたらと面倒を見てくれ
たりする。自分で稼げなくても、親の貯蓄を食
い潰して生きていけるところがあります。国の
財政面でも、個人のキャリアの面でも、過去の
貯蓄があまりにも大きいがゆえに、ゆでガエル
になれる環境があったわけですよね。
それに対して、韓国の場合は、1997年のIMF
危機のときに、外国からおカネを引っ張ってく
るしかなくなって、厳しい大リストラを受けざ
るをえなかったわけです。
城:ああ、そうですよね。あのときまでサム
スンなんて日の丸電機のライバルだなどと誰も
考えていなかった。でも5年後にはブランドと
技術力以外で負け始め、今ではブランドでも負
けている。
ムーギー:韓国の場合は、脆弱なところがあ
ったからこそ、グローバル競争に対応するため
急激な改革をせざるをえなかったわけですが、
日本の場合は、体力があったから、ゆでガエル
になれるほど生温かい温度を20年間も続けるこ
とができた。
強かったからこそ、それが今の自助努力の遅れ
につながっているのかもしれません。
城:「企業は個人を成長させてくれなきゃダ
メだ。それができない会社はブラックなんだ」
という論調は、僕は違うと思っていて。
ムーギー:自分でやれと。
城:そう、基本は自分でやれと。確かにユニ
クロには問題があるんだろうし、厳しいんだろ
うけど、ユニクロはもう、「安定していればい
い」という人には向いていない会社なんですよ。
若いころは「ワークバランス」ではなく、「ワー
クワーク」が当然
ムーギー:ユニクロの内実について私は存じ
上げないので個別企業に関して申すつもりはな
いのですが、一般論としてワークライフバラン
スを求めている人がちょっと甘いなと思うのは、
私も今でこそワークライフバランスが昔よりそ
こそこよくなっていますけど、そこに至るまで
は、やっぱりもうワークワークだらけでしたよ。
大学卒業後に最初に勤めた投資銀行やその後
のコンサルティングファーム時代なんて、毎日、
朝の8時から夜中の2時まで、ずっと休みもな
く働いていましたからね。でも、そうした時期
があったからこそ、キャリアとスキルのベース
がしっかりして、働く国や会社の文脈から抜け
出ても働けるようになれるわけじゃないですか。
そうしてファイナンスのキャリアやコンサル
ティングのキャリアに、香港やシンガポールで
の経験や人脈をくっつけることによって、参入
障壁が上がって、競争相手の数がちょっと減っ
てくる。
すると、どんぐりの背比べの戦いから抜け出す
ことができて、以下は私のことではないのです
が、給料は上がるし、面白い仕事のオファーは
来るし、死ぬほど働かなくていいし、というサ
イクルに入っていくわけです。
城:それはありますね。以前、某キー局のプ
ロデューサーとブラック企業問題について話し
ていたとき、最後に「でも、考えてみればうち
もバリバリのブラック企業なんですよね」と言
っていた
(笑)。
ムーギー:それなのに、今の新卒の学生で緊
張感のない人は、「どれだけ休みがあるんです
か?」とか、「ワークライフバランスが充実し
ていますか?」とか質問してくるんですが、そ
んなことを気にしている時点でダメですよ。
城:確かに僕も今39歳だけど、同じ世代の連
中を見ていて、ワークライフバランス実現して
る奴は、だいたい20代に超ブラック職場で働い
ていた人が多い。20代に必死に働いて、ある程
度のポジションを得たり、おカネを貯めて事業
をやったりして、今になってワークライフバラ
ンスを実現できている。
逆に、20代にしっかり働いていない奴は、今一
番ワークライフバランスがない気がする。
ムーギー:そうなんですよ。だから、「俺だか
らこそできる」という仕事があって、初めて市場
から自分への需要が積み上がり、ある程度ラクに
稼ぐことができるようになるわけです。
今回の対談で印象に残ったのは、城氏が“ブラ
ック企業”および“労使の使い捨て”についてし
きりに言及されたことだ。私は“ブラック企業”
について見識が浅く、仕事を通じて成長を志向し
て参入障壁を築けという話をしていたため、ここ
での議論に若干かみ合わない点がある。これは以
下で説明するように、労働者と人財の間で二極化
が進んでいて、我々がそれぞれ異なる労働市場を
想定して議論していたためだろう。
いわゆるエリート層の獲得に奔走するグローバ
ル企業は、自社の差別化要素となる“人財”を引
き付け、引き留めるために、ますます社員の幸福
や自己実現を重視するようになってきている。こ
れは労働力の二極化にともない、企業側も“人財
社員”と代替可能な“労働力”とみなす社員への
対応に明確な差をつけるようになっているためで
あろう。
そもそも世間で語られる “ブラック企業”とは
何か。本来はおそらく労働者を搾取し、その外面
と反社会的な実態がかけ離れているような悪徳企
業を指したのだろうが、今では労働者を単純に投
入コストとみなす企業をも指すようになっている。
グローバル化が進めば、参入障壁が低くグロー
バル競争にさらされる性質の労働者への分配率は
日本国内の規制では守れずグローバルなオープン
マーケットで決まる。よって仮に田中さんなり佐
藤さんが、差別化された付加価値を会社にもたら
す“人財”ではなく、グローバル競争にさらされ
る単純労働しか提供できないのであれば、企業の
労働者に対する責任からの“労使契約以外の要素
の排除”は必然の流れといえよう。
厳しい言い方になるが、仮に田中さんや佐藤さ
んがゆでガエル経済に護られてきて、グローバル
市場の観点からは “代替可能な労働者”である
ならば、ワークライフバランスや自己実現を要求
できないということだ。それを望む前に、企業の
差別化要素となる人財になることをまず目指せ、
というある種当たり前の話を再認識することが重
要であろう。
ただし私は決して“労働者の使い捨て”に与し
ているわけではない。むしろ、“企業を使い捨て
られる”ように、若い頃に全力で自己研鑽に努め
てほしい、というのが趣旨である。タイトルは新
米編集長の意向でやや刺激的に“若者にワークラ
イフバランスなんていらない”となっているが、
真意は「ワークライフバランスや自己実現を企業
に求める交渉力が身に付くよう、独自の付加価値
と生産性を高めてほしい」という暖かい応援メッ
セージだと受け止めていただければ幸いだ。
城繁幸氏との対談感動の最終章である次回コラ
ムでは、今後のキャリア設計に向けた建設的提案
と、グローバルな争奪戦となっている"人財"を獲
得するために、日本企業がなすべきことを語らせ
ていただきたい。
以上。
厳しい見解である。しかし、これが、現実だろう。
ただ、この現実に理解が及ばない人々が多くいるの
も事実であろう。
ネットで、就活について、いろいろあるが、やとう
方も雇われる方もいろいろのようだ。
もっとも、冷酷な見解だが、このような情報で知ら
れる話は、負け組の世界の話であるから、情けない
話しか聞こえてこないかもしれない。
勝ち組の人間だったら、ネットでこんなことを書い
ている暇はないし、ネットでグタグタいっているほ
ど話し相手に不自由するはずがないからである。
もっとも、書いているわたしもその負け組の一員の
はずだから、身も蓋もないことを書いているのだが。
この記事に、「幸い中の不幸~ゆでガエルになれた
日本経済」というのがあるが、この指摘、冷汗三斗
の思いである。
後続世代からして、われわれ団塊の世代は、逃げき
り世代のようだ。
しかし、ただ単に、歴史的に幸運だっただけの過去
の成功体験が桎梏となって、そのことが、我が身の
災いと化せんとしているのではと、懊悩している。
さりとて、手に携えているのは、時代遅れの兵器。
未来切り開く術を手にするほどの若さは、とうに
萎えてしまっている。
いかんともし難い現実に、地団駄を踏む思いだ。
なんとも厳しい時代が、出現したものだ。
かなり、長い文章になりました。
一息つくのは、いかがでしょう。