本屋で、なんとなく買った本があった。
政府は必ず嘘をつく
ーアメリカの「失われた10年」が私たちに警告する
こと
堤 未果著
角川SSC新書
である。
著者の堤 未果氏の、ファンである。これまで、
出版された本でも、その内容に大きな衝撃を
うけた。
TPPでも政府は嘘をつく
ハリケーン・カトリーナと3・11を重ね合わせ
「復興特区」の危険を指摘したハワードの警告は、
もうひとつの大きな流れとつながってくる。
2010年10月に突如としてマスコミに現れ九
〈TPP〉だ。
「2015年までに工業製品、農産物、知的所有権、
司法、金融サービスなど、24分野の全てにおいて、
例外なしに関税その他の貿易障壁を撤廃する」という
その内容は、まさに投資家や企業にとって〝バラ色の
未来〟と同義になる。
政府が外資の参入に対し国民を守る責任を放棄して
くれるだけでなく、自分たちの利益を損なう規制に関
しては、その国を相手に訴訟を起こす権利(ISD条項)
までついてくるのだ。
現時点での加盟国は9か国。だが、アメリカにとって
は日本の参加が重要な意味を持っている。
日本が加わると全加盟国のGDP比は日米2か国が9割
以上を占めるため、〈TPP〉は実質、日米の二国間
貿易協定となるからだ。
政権交代以降、戦争の拡大と市場化政策でアメリカを
さらに貧困大国化させたため、支持率が急降下し再選が
危ぶまれるオバマ大統領にとって、日本のTPP加盟は
大きな意味を持っている。
アメリカの大統領選は、資金が恐ろしくかかるのだ。
2008年の大統領選挙で当選したオバマ大統領が集め
たキャンペーン金額は7億5000万ドル、2012年
の再選を狙う次の選挙ではこれよりさらに多く集めること
が必要になる。
何億ドルという単位は、市井の有権者から少しずつ集めて
いては間に合わない額だ。
よって、上位1%の超富裕層や大資本からの支援を取り
つけざるを得ない。
アメリカを貧困大国化させている元凶である〈コーポ
ラティズム(政府と企業の癒着)〉にメスが入らない大き
な理由のひとつは、この政治資金法のゆるさにある。
幻想だった「チェンジ」に有権者が怒り狂う今、世界を
市場とするグローバル資本に日本という魅力的な市場を提供
できれば、選挙資金の高額スポンサーである投資家や業界の
支援を取りつけられる。
「TPPの自由貿易で、10億ドル輸出するごとに5000
人の雇用を生む」というオバマ大統領の国内向けPRは、
ウオール街デモ抗議者や膨れ上がる失業者たちには届いて
いない。
グローバル企業は規模が拡大するほどに、製造も販売も国外
に移っていくからだ。
限りなく低コストを追求する市場原理主義社会では、彼ら
のような中流以下の労働者は価格競争の中で自然に切り捨
てられてゆく。
そしてここでも、政府は国民に正確な情報を伝えて
いない。
「オバマ大統領は、〈TPP〉で国内の雇用が増えると
いう。
だが、それが事実じやないことに、俺たち労働者はもう
気づいてる。前にも政府に同じ嘘をつかれたからね」
そう言うのは、シカゴ在住で雑貨店を経営するボプ
・ジョーンズだ。
ボブは、祝日のレイバーディにグランドパークで行わ
れたTPP反対集会に参加している。
「その集会は、アイスクリームのペン&ジェリー社が
主催だった。
たくさんの参加者を前にして、彼らは『自分たちは99%の
側につき、フェアトレードを推進する』と宣言したんだ。
全ての企業が自由貿易によって膨大な利益を得てきたわけ
じゃない、あれは世界を市場にしているグローバル資本の
ためのものだ。
中小企業や俺たちのような普通の労働者は、今よりもっと
搾取され生活が苦しくなるんだよ」
「日本では、アメリカ政府が〈TPP〉に積極的だとして
報道されていますが」
「政府はこの自由貿易で輸出を増やすとjって、アメリカ
国民を騙してる。
だが、輸出は増えないよ。なぜなら、アメリカには売る物
なんか残ってないからだ。ウオール街デモを見てみるといい。
アメリカ政府が大企業と癒着して、莫大な企業献金と引き
換えに規制緩和を進めてきた結果があれだ。
この国は、1%のスーパーリッチとワーキングプア労働者
という、おかしな国になっちまったんだよ」
「国民は〈TPP〉について、どのくらい知らされている
んですか?」
「アメリカはテレビ社会だから、まあ関心がない層が大半、
組合やごく一部の労働者が危機感を持っているというのが
現状だね。
特に俺のような中流以下の労働者は、貿易に関する規制撤廃
への警戒感が強い。NAFTA(北米自由貿易協定)でひどい
目にあってるからな」
〈国内に膨大な雇用を生み、安価な農作物が食卓に上る〉
と謳われて導入されたNAFTAは、結果的にメキシコで
300万人、アメリカで200万人の失業者を出し、カナダ
政府に国民の健康を守るための規制を撤廃させた。
「あの時も政府は、俺たち国民にこう言った。NAFTA
で雇用が拡大し、繁栄がもたらされるとね。だが、嘘だった。
『NAFTAが始まれば大搾取が起こり、何百万もの仕事が
他国に流れるだろう』と言ったロス・ペロー氏の警告が正
かったんだ。
儲けたのは、安い労働力を得るためにメキシコに工場を移し
た企業だけで、結局アメリカとメキシコでは500万人が
職を失った。
この500万人という数字は、オバマ大統領は前回の選挙戦
で批判的に使っていたがね」
「政府は事実を伝えなかったと」
「伝えなかったね、政府はバラ色の未来が来るようなことを
言って、自由貿易を推進した。
だが、うなるように儲けたのは、穀物メジャーやアグリビジ
ネス、製薬会社の連中だ。
結局、メキシコでもアメリカでもカナダも、勝ち組はグロー
パル企業、負け組は労働者だった。
俺たちは、懲りずに再び別の夢を見たんだが」
「そう。労働者の味方になってくれるりリーダーがきっと
現れるという夢だよ。
2008年の政権交代が、どれほどアメリカの国民を高揚
させたか知ってるだろう?
オバマ大統領は大統領候補者の公開討論会で、共和党政権が
推し進めてきたグローバリゼーション、いわゆる新自由主義
的政策をめった切りにしてくれたんだ」
確かに、あの時の選挙キャンペーン期間中、オバマ氏は
労働者が多い地域に行くたびに、ブッシュ政権の通商政策が
自由貿易一辺倒であることを激しく批判した。
海外移転を促進した大企業に対し、失業率拡大の責任を厳しく
追及する若いオバマ候補は、新自由主義で苦しめられていた
労働者たちの心を強くとらえたのだ。
ミシガン在住のある機械工はあの時、私にこう言った。
「アメリカは変わる。やっと私たちのヒーローが出てきた」
そう伝えると、ボブは苦笑いを浮かべながら、ため息をつく。
「大統領に就任した途端、彼は180度変わってしまったよ。
前政権の政策の中枢にいた人物を次々にホワイトハウスに入れ、
企業寄りの政策をさらに強化していった。教育、医療、食料、
そして戦争……。
それから、再び自由貿易がやってきた。NAFTAなんか比に
ならない、ずっと進化した内容の〈TPP〉が」
「民主党と共和党、どっちが貧困を悪化させますか?」
かつてアメリカの.二大政党は、それぞれ代表する利権が
はっきりと分かれていた。
労働者の代表である民主党の政策は社会保障、健康保険、フード
スタンブ(食料配給券)、失業保険、教育、公民権などが中心で、
完全雇用実現のためには多少のインフレも容認する。
一方、企業側につく共和党が目指すのは、社会保障削減と規制
緩和による小さな政府だ。
オレゴン州在住の新聞記者でピューリッツァー賞受賞者でも
あるリチャード・リードは、マスコミ業界に起こったある変化が、
二人政党消滅の序章だったと語る。
「レーガン政権前までは、テレビは大統領選の候補者を平等に
映していた。
メディアは公共所有だったし、労働組合も強かったからね。
でも、レーガン政権が行った規制緩和がメディアの企業所有を
解禁してから、まるっきり変わってしまったんだ」
この規制緩和によって、1980年代にテレビ市場の9割を
占めていた三人ネットワークテレビ局に、たちまち大資本が
群がった。
NBCは世界最大のコングロマリット(複合企業体)であるGE
に、CBSは投機会社に、ABCはウオルト・ディズニー・カン
パニ-にと、次々に買収されてゆく。
大資本によるマスメディアの集中と系列化が進んだことで、
ニュース編集の一元化による情報操作が頻繁に起きるようになり、
多様な意見が反映されなくなっていった。
さらにその後、各政党の台所事情にも変化が起きる。
クリントン政権のさらなる規制緩和の下、企業が製造拠点を
労働賃金の安い海外に次々と移転、国内の労働組合が弱体化し、
民主党は一気に政治献金のスポンサーを失った。
その結果、共和党だけでなく民主党も、石油業界やウオール街、
製薬会社、軍産複合体やアグリビジネスなどの業界から、大口
政治献金を受けざるを得なくなる。
世界市場拡大を目指すグローバル企業にとって、マスコミと
政府を押さえることは常識だ。
形としての二人政党は、民主主義の基本である〈選択の自由〉が
まだ機能していると国民に思わせる効果もある。
かくして、大資本からの政治献金は両党に均等に配られ、選挙に
おける〈政策〉はもはや重要ではなくなっていったのだった。
選挙キャンペーンが始まるたびに、大資本傘下のマスコミは
一斉に対立軸を強調する報道を流す。
二人政党が土台から崩れたことに、多くの有権者たちはいまだ
に気づかないのだ。
1970年代以降、自由貿易交渉の中身は〈関税〉から〈非
関税障壁〉にシフトした。
グローバル化による世界市場が拡大するほどに、モノだけでなく
市場で売れるあらゆるもの、サービスや金融、投資といった分野
まで含めた企業利益の前に、相手国の法律や規定が邪魔になって
くる。
「だが、そうやって日本を次の市場として狙う製薬会社や医療
保険会社を、単に〈アメリカ〉としてくくると本質を見誤るだろ
う。
嘘だと思うなら、彼らが自国の患者たちに何をしているか見て
みるといい。
なぜ毎年、アメリカ国内で無保険ゆえに4万人の患者が死に、
保険がありながら100万人の被保険者が破産し、薬の副作用
で30万人が命を落とすのか。
グローバル企業にとって、患者の国籍や名前など意味を持たない
からだ。
アメリカ人だろうが日本人だろうが、グローバル経済の前で命は
〝数字〟なんだ。
それ以上でも以下でもない」
アメリカ国内における強力なTPP推進派、「NFTC(全米
貿易協議会)」という、ニューヨークとワシントンを拠点とする
全米最古で最大規模の財界団体だ。
NFTCは、会員として所属する300以上の企業の利益拡大の
ために、政府関係者に対し強力なロビー活動を行っている。
会員企業の顔ぶれは、世界に市場を持つグローバル資本がほと
んどだ。
ボーイング、シェブロン、GE、ヒューレット・パッカード、
インテル、マイクロソフト、モンサント、ニューズコーポレー
ション、IBM、ジョンソン&ジョンソン、GAP、ウオルマ
ート、コカ・コーラ、ファイザー、シティグルーブ、ハーバ
ライフ、ダウ・ケミカル、リーバイス、オラクル、UPS、
タイム・ワーナー、VISA、ゼロックス……。
このような大資本に加え、アメリカ国内の知的財産権や著作権
を扱う米国出版社協会や全米畜肉協会、全米音楽協会、全米
映画協会、商工会議所など、各業界のロビー団体も名を連ねて
いる。
オーストラリアのメルボルン出身の経済アナリストである
ルーク・カツリスは、自由貿易というコンセプトそのものが、
グローバル企業と法治国家の力関係を変えてしまう性質を持つ
と主張する。
「グローバル経済が支配する世界の中で、今後ますます
各国の憲法や法律、規制といったものは意味を失ってくる
でしょう。
国の介入は、小さければ小さいほど利益が上がる。
グローバル経済の最終ゴールは、規制ゼロの〝統一世界市場〟
だからです」
ルークの言う通り、グローバル企業が世界に市場を拡大
するほどに、国境は意味を持たなくなるだろう。
先進国で国内の労働者が失業する一方で、年金や生活保護
など国の負担は重くなっていく。
第三国はますます資源を奪われ、通貨は効率よく統一され
ていくだろう。
その時「国家」という形は、いったいどうなってしまうのか。
「TPP反対派はその中で、国境を超えて影響が出てくる
人権や環境、労働者の権利や食の安全、医療や教育へのアク
セス、といった部分での懸念を抱いています」
「そうでしょうね。ですが、今挙がったようなことは本来、
企業ではなく政府が責任を持つことです。
ピジネスの目的は、純粋な利益です。極端な言い方をすれば、
企業には利益を生み出す地域や人々に対する義務はありませ
ん」
以上。
この本の内容をブログにアップしたのは、この内容と
日本の政治の現状をみた場合に、戦慄する思いがした
からだ。
一番最大の理由は、大阪維新の会(みんなの党を含む)の
動きだ。
地域政党・大阪維新の会代表の橋下徹大阪市長は10日、
環太平洋経済連携協定( TPP)への参加や日米同盟を
基軸とした外交などを次期衆院選の公約として掲げる
意向を明らかにした。
いうニュースが流れた。
このまま、大阪維新の会の思うままにされては、日本は
アメリカのような貧困化へまっしぐらだ。
TPP、まさに、亡国の罠だ。
アメリカで、1%の超富裕層に対する反発のデモが開催
された。
アメリカでは上位1%の人間が、国全体の富の8割を
独占している。ということだ。
この1%の超富裕層の富を拡大するための、手段として
TPPが目論まれているようだ。
これが、本来のTPPの姿のようだ。それが、自由貿易と
いう美辞麗句で、飾られて国民をかどわかしているよう
だ。
1%の超富裕層が、国家の枠を超えて、人類の富を収奪
する。その収奪の前に、国家は国民を守りきれない。
という恐ろしい世界がまっている。
99%の人間が、1%の超富裕層のために、養鶏場の鶏の
ように、檻の中で、卵を生み続けるような生活がまって
いる。
それから、心配しているのが、
憲法改正し大統領制を」 民主党の代表選に絡み、大阪府の
橋下徹知事は4日、「公開討論もせずに国会議員だけで選ん
でいる。
国民が1票も入れることができない議院内閣制の限界」と
強調。
「憲法を改正して大統領制にするべきだ」と報道陣に語っ
た。
先程の本の引用にもあったように、
大統領制にすれば、それこそ、超富裕層の操り人形になって
国民を収奪するシステムが作れてしまう。
あれほど、アメリカは、勿論、日本も騒がしたオバマ大統領
の出現、結局は、1%の超富裕層の操り人形になってしまっ
ている。
橋本氏は、「いつまでも物事が決まらない。」と、現状の
政治的状況を非難しているが、これに乗せられると、恐ろ
しい結末がまっている。
1%の超富裕層に、収奪される国家システムを作られて
しまったら、おしまいだ。
ヒットラーのように、大きくなってしまってからでは、
取り返しがつかない。
誰かが言ったが、地獄への道は、善意で舗装されている。
なんとかしなくては。
政府は必ず嘘をつく
ーアメリカの「失われた10年」が私たちに警告する
こと
堤 未果著
角川SSC新書
ぜひ、多くの人に読んでもらいたいものだと願っている。
できれば、世界中の人に読んでもらいたい。
アメリカの1%の超富裕層が、全人類から収奪しようと
いうシステムが、このTPPだからだ。
発禁にならないうちに。
それから、この本と合わせて、
⑴ ルポ 貧困大国アメリカ 堤 未果著 岩波新書
⑵ ルポ 貧困大国アメリカⅡ 堤 未果著 岩波新書
⑶ アメリカから〈自由〉消える 堤 未果著 扶桑社新書
⑷アメリカの経済支配者たち 広瀬隆著 集英社新書
これらの本を一緒に、読み合わせてみると、なお一層
この本の趣旨の理解が深まるように思っている。